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偽装請負・労災隠しもう許さない

「れいめい」第6号に掲載された、
古木民夫さん(日本ジャーナリスト会議東海支部)の記事を
転載します。

――第2回トヨタ連続労働講座――

愛知製鋼からは2万円弱のお金が出ますが、
まずアイセラが7%ピンはねし、
三築に至っては抜けるだけ抜くので、
末端の作業員に入るのは
9000円から1万1000円くらい。
もちろん労災保険などかけていません。(槻本力也)


■愛知製鋼の派遣労働者ら実態報告
「全トヨタ労組(ATU)をサポートする市民の会」主催の
第2回「トヨタ連続労働講座」は2月1日、
名古屋市中村区の牧野コミュニティセンターで
開かれました。
自動車産業を取り巻く情勢は
昨年9月の第1回より一段と厳しく、
労働環境も深刻化しているさなかだけに
会場も緊張気味。

今回は偽装請負を繰り返し、
現在名古屋地裁と愛知県労働委員会で係争中の
愛知製鋼の問題を取り上げ、
そこで派遣労働者として働く槻本力也さんと、
名古屋ふれあいユニオンの酒井徹運営委員長が
対談する形で進められました。

この裁判に関わっている塚田聡子弁護士も
パネリストとして参加する予定でしたが、
残念ながら体調を崩して不参加。

その代わりというわけではありませんが、
たまたまこの日、
名古屋で行われた外国人労働者の
「職よこせ」集会、デモ取材で訪れた
評論家の鎌田慧さんが飛び入り参加し、
労働運動の現状について
話してもらいました。

■最初から話はずばり核心に
槻本さんらの闘いをずっと支援してきた
酒井さんが話を巧みに引き出す役を務め、
最初から迫力あるトークが展開します。

酒井
愛知製鋼で働いている槻本さんですが、
どこの人といったらいいのでしょうか。

槻本
愛知製鋼の下請け
「アイチセラテック(略称・アイセラ)」の、
さらにその下請け、
つまり孫請けの「三築」の、
もう1つ下の「林工業」という派遣会社に属し、
7年前から愛知製鋼で働いています。
愛知製鋼との契約は
一次下請のアイセラに限られているので、
働く時はアイセラのヘルメット・作業衣ですが、
アイセラの社員は全くおらず、
愛知製鋼社員の指揮命令下で作業していました。

酒井
まさに偽装請負、多重派遣ですね。
間に何社も入っており、
ピンはねも膨大なんでしょうね。

槻本
愛知製鋼からは2万円弱のお金が出ますが、
まずアイセラが7%ピンはねし、
次の三築に至っては何%というより、
抜けるだけ抜くというあくどさで、
末端の作業員が実際に受け取るのは
9000円から1万1000円くらいに
なっていました。
もちろん労災保険などはかけていません。


こんな具合に、
導入からずばり核心に迫っていきます。
話の内容は大きく分けて、
ごまかし(偽装請負)、
隠蔽(労災隠し、)
無権利の労働者に対するごり押し
(形式上法に触れなければ
 何でもあり)の3つということになりましょうか。
生々しい体験談が次々に飛び出し、
会場から何度も
「えぇっ本当?」「そんな無茶な!」といった
驚きの声がもれました。
とりわけ労災隠しをめぐる報告は衝撃的で、
ヒートアップする一方でした。
そんな中から1,2例紹介します。

■けがの手当てより、揉み消しの相談
労災が発生すると、
愛知製鋼の現場担当者は
まず下請けの社長のもとに飛んで行き、
事故の揉み消しの相談です。
病院へ連れて行くとか
休業補償の面倒を見るどころでは
ありません。
けががもとで寮からも放り出されてやめていった人を
槻本さんは何人もみているということです。

3次下請けの派遣社員が
指を挟み動かなくなり、
病院で手当てを受けて職場に戻り
報告に行くと、
現場責任者が
「君、悪いけど
 指の包帯をはずしてくれ」と言い、
大きい手袋を渡した例が紹介されました。
これをはめて仕事をせよというのです。
一方、
正規の社員が負傷し
仕事が続けられない場合でも、
帰宅を許さず事務所でじっとしておれといいます。
休まれると
「労災事故ゼロ○○日」という記録が途絶えるのを
恐れるからです。
労災には
①重大災害(死亡)
②休業災害
③不休災害
 (3日以上休むと労災事故にカウントされるため
  会社は被災者に出勤を強制する)
④極微災害
の4段階があり、
③と④なら事故にカウントされず、
ゼロのままで済み、
大きな事故もランクを低くしたがるのだといいます。
このほか、
労災発生で労基署が立入検査に来られ、
違法性がばれる恐れがあり、
事故を起こせば起こすほど
労災の保険料率が高くなるのを
避ける狙いもあるといいます。
よほど重大事故でない限り
労基署に報告しなければ、
ばれずに済む仕組みが労災隠しを
促進しているのでしょう。

たとえ請負であっても、
愛知製鋼で同社の設備を使っての作業中に
起きた災害であることは間違いないのだから、
告発してきちんと当局の指導を受けさせることは
できないのかという質問が出ました。
「事故を起こしたのは
 あくまで下請けであり、
 わが方には責任がない」と突き放す
愛知製鋼を相手に闘うには、
失業を覚悟しなければなりません。
匿名の告発では
当局も本腰を入れてくれず、
勇を奮って実名で告発すれば、
そんな労災をおこす会社は使えないと
会社ごと切ってきて、
他の仲間まで失業させるリスクは免れず
「まさにジレンマです」と
酒井さんは苦しい胸の内を明かします。

一方、
正規社員、下請け、
派遣も含めた安全教育を要求するのですが、
それに応じたら労災が起きた時、
やはり愛知製鋼の責任となるのを恐れてか、
いまだに実現しません。
こういった理不尽さをなくさせるためにと、
槻本さんはふれあいユニオンに
加入を決意したといいます。

■再就職の道を閉ざされた仲間も
そんな槻本さんが2年前のある日、
けがした同僚に付き添って病院に行き
〔酒井注:この部分は
 「解雇された同僚に付き添って監督署に行き」の
 誤りである〕、
職場に戻ると課長から
「そんなことをしていたら職を失うぞ」と
脅されました。
これに反発して言い返した何日か後に
「槻本を愛知製鋼外へ異動」という
愛知製鋼の印が押された書類を
下請けの社長が持ってきて
「君を切ったら、
 あとの40人近い人は残してやる」と言っているので、
泣いてくれということでした。
「こんな会社、
 いつでもやめたるわ」と思ったものの、
愛知労働局に相談に行くと、
担当の方は
「やめる必要はない」と言い、
数時間後に愛知製鋼へ指導に入り、
おかげで翌日にはその異動は凍結となりました。

こんなことがあってその後、
末端の派遣会社12社のうち
“体力”のある4社だけが生き残り、
アイセラや三築(現在は廃業)抜きで
愛知製鋼と直接請負契約を
交わすことになりました。
仕事は従来と同じですが、
ピンハネがなくなった分、
収入も増えるし、
雇用、労災などの保険もついて
現在に至っています。

ただ、
首の皮一枚つながったおかげで
事態が好転した槻本さんですが、
このようなケースはまれで、
依然として境遇は改善されないで
苦しんでいる人や、
解雇されて提訴したものの
再就職の道を断たれた
不運な仲間もいます。
何とか裁判に勝利して、
この人たちが職を取り戻せるようにしたいと
槻本さんは訴えました。

このほか、
槻本さんらは
①裁判などでも偽装請負が明白になっているのに、
 愛知製鋼は頑として認めない
②請負を派遣に切り替える動きがある。
 最終的には正規社員に入れ替えたいが、
 スキル不足で一挙には無理。
 そこで好きな人数だけ首が切れる派遣にして、
 徐々に切り替える狙いである
③派遣切りが進む一方で、
 賃金が極端に安い外国人研修生や実習生を
 どんどん入れている
④トヨタグループの企業は
 クリーンでエコのイメージが強いが、
 実際は大違い。
 その落差があまりにも大きい
――などと話したのが目を引きました。


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職場の理不尽を許さない、強く優しい地域労組の建設を!
愛知県下の未組織労働者は名古屋ふれあいユニオンに結集し、
全ての職場に人権労働運動の灯をともそう!



労働組合名古屋ふれあいユニオン
雇用形態や国籍に関わりなく、
愛知県下で働くすべての労働者が一人から加盟できる
地域労働組合(コミュニティユニオン)。
コミュニティユニオン全国ネットワーク
コミュニティユニオン東海ネットワークにも参加。
今年3月に開かれた第10回定期大会では、
連合産別・全国ユニオンへの加盟について討議するとする活動方針を採択。
日ごろから組合員の学習会や交流会・相談会などを
積極的に企画しながら活動している。
現在、組合員数約200名。
組合員は組合費月額1500円。
賛助会員(サポーター)は年会費5000円。
住所:〒460‐0024
    愛知県名古屋市中区正木4-8-8 メゾン金山711号室
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by imadegawatuusin | 2009-04-06 23:20 | 労働運動
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