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ジェイテクト、3たび団交引き延ばし

――なぜ速やかに話し合いのテーブルに着けないのか――

■目に余る露骨な「いちゃもん付け」
トヨタ自動車グループ
機械・自動車メーカーであるジェイテクトは、
期間従業員の雇用継続などを求める
三重県の個人加盟制労働組合
「ユニオンみえ」(三重一般労働組合)の
団体交渉要求を3たび引き延ばす「連絡書」を
4月16日付で送付した。
ユニオンみえは4月21日、
ジェイテクトに対し、
改めて、
期間従業員の雇用継続などについての
団体交渉に速やかに応じるよう、
実に4度目の団体交渉申し入れを行なった。

ジェイテクトはユニオンみえが提起した議題、
(1)「ユニオンみえ組合員
   Fさん・Sさん・Tさん・Iさんの雇用継続」について、
「議題(1)についての事実関係及び
 当社の考えは、先般ご連絡したとおりです」
とのみ回答し、
新たな論点を持ち出すことができなかった。

ジェイテクトの認識する
「事実関係」及びジェイテクトの「考え」は
これまでも報道してきたとおりであり、
ユニオン側も充分に把握している。
ユニオン側はそれを踏まえた上で、
4月8日の3回目の団体交渉申し入れの中で、
ユニオン側の認識する事実関係及び
ユニオン側の考えを明確に連絡した。
そして、
労使双方が同じテーブルにつき、
互いの証言や証拠を付き合わす中で
事実認識の差や主張の差を埋める作業に
移りたいと要求したのである。

本件については、
これまでの2ヶ月近くにも及ぶ
文書のやりとりの中ですでに
交渉議題は明確になっており、
これ以上「事前折衝」を必要とする余地は考えられない。

仮にジェイテクトの主張するとおり、
本件が「適正な雇止めであり解雇ではない」のだとしても、
ジェイテクトは労働組合との団交義務を
免れることはできない。
ユニオンみえ4名の雇用契約は、
確かに形式上は有期労働契約ではあったが、
あらかじめ契約を更新しない旨の明示が
なされていたものではなかった。

契約の「更新」・雇用の維持は
ジェイテクトの裁量によって行ない、
あるいは行なわないことのできる事項とされており、
ジェイテクトが使用者として決定可能な事項である。
雇用継続の有無は労働者にとって
重大な「労働条件その他の待遇」そのものであり、
これが労働組合と会社との間の
「義務的団交事項」であることは疑いの余地がない。

またジェイテクトは、
ユニオンみえが提示した議題、
(2)「ユニオンみえ組合員・Iさんの
   会社寮に関する問題」について、
「議題(2)については、
 住居に関しての要求内容
 『時期は何時まで、
  どのような条件で引き続き住みたいのか』に関し
 具体的に明確化していただくことを
 要請いたします」と回答している。

この回答は、
議題(1)がどのような結論に落ち着くかによって
当然変化する。
Iさんがすでにジェイテクトでの就労の意志を喪失し、
別の会社での就労で生計を立てる決断を
したのであれば、
「○月○日まで会社寮を追い出すのを待ってくれ」
という要求の仕方になるのだろうが、
Iさんはジェイテクトでの雇用継続を希望しているのであり、
そのような要求ができるはずがない。
ジェイテクトは、
団体交渉を始める前からすでに
Iさんが今後
ジェイテクトで就労を継続しないことを前提に
このような質問をしているのだろうか。
非常に誠実さに欠ける行為である。

とはいえ、
ジェイテクトが
「時期は何時まで、
 どのような条件で引き続き住みたいのか」
という問にユニオンみえが回答することが
団体交渉開催の条件であると
あくまで強弁するようなので、
ユニオンみえはさしあたり、
Iさんがジェイテクトにより「雇い止め」された
3月15日の翌日から6ヶ月間(すなわち9月15日まで)、
ジェイテクト会社寮に居住できるよう要求した。

6ヶ月後、
Iさんがジェイテクトでの就労を継続できるなら、
それ以降の居住を改めて要求するとしている。
条件については、
ジェイテクトがIさんの雇用を継続するならば
それまでの条件で、
あくまで「雇い止め」を強行するなら、
無料で居住させるよう要求している。
また、
同様のケースについても
速やかに離職者住居支援給付金を申請し、
同様の措置を執るよう要請した。

さらにジェイテクトは、
ユニオンみえが提示した議題、
(3)「血友病患者であるTさんに
   切傷危険作業をさせた問題」について、
「議題(3)については、
 貴労働組合が弊社に
 事実説明以外の
 何を要求なされようとしているのかが
 不明瞭であり対応に苦慮しております。
 要求書には議題提起はあるものの、
 『それをもって具体的に、
  どういった根拠で、何を要求されているのか』が
 把握できません」という。

ユニオンみえのジェイテクトに対する要求は、
第1に本件真相の究明であり、
第2にそれを踏まえてTさんに文書で謝罪することであり、
第3に再発防止策を策定することである。
ジェイテクトが速やかに真相の究明に取り組み、
Tさんに誠実に謝罪し、
再発防止に取り組むならば、
ユニオンみえはそれ以上の要求をするつもりはないという。

ユニオンみえは
小なりといえど、
ジェイテクトの現役従業員も組織している
れっきとした労働組合である。
労組にとって職場の安全衛生問題は
労働者の命に関わる問題であり、
断じておざなりにすることはできない。
その思いはジェイテクトの正社員労組・
ジェイテクト労働組合等と何ら変わるところはない。
ひとりの問題を職場全体の問題として共有し、
会社に対して真相究明を迫り、
労使共同して再発防止に取り組んで
労働者の命を守るのは
労働組合として当然の責務である。

また、
ユニオンみえが申し入れている議題、
(4)「1月17日以降の会社都合による
   休業について、
   会社が休業手当金を支払うことに
   よってではなく、
   個人の有休を消化させて対応させている件」
についても、
ジェイテクトは、4月17日付の「連絡書」で、
ユニオンみえ組合員で
ジェイテクト現職従業員のMさんに関しては
この問題についての団体交渉を受けるとしてきたが、
すでに職場を追われた
Fさん・Sさん・Tさん・Iさんについては
受けないとしている。

しかし、
すでに「雇い止め」された
Fさん・Sさん・Tさん・Iさんも、
在職中のMさんと同様、
1月17日には年次有給休暇を一方的に
「計画的付与」され、
会社が休業手当金を支払うことによってではなく、
個人の有休を消化させて対応させられた点は
何ら変わらない。
ユニオンみえがこの件について
はじめて申し入れた3月6日の時点では
Fさん・Sさん・Tさん・Iさんも、
在職中のMさんと同じく
ジェイテクト従業員であった。
ジェイテクトがMさんに関してだけ
団体交渉に応じておきながら、
自ら団交開催を引き延ばして
「時間切れ」に持ち込んだのをいいことに、
その他4組合員に関しては
団体交渉に応じないというのでは
全く道理が通らない。

ユニオンみえはジェイテクトの要請に答え、
議題を明確に提示している。
義務的団交事項について、
労働組合が団体交渉の開催を要求している以上、
団体交渉の開催が必要なのは明らかである。
ジェイテクトにはこれ以上、
団体交渉の開催を引き延ばす
一片の道理も残されてはいない。

大体、
ジェイテクトが書面でしてきた質問などは、
速やかに団体交渉を開催して
その第1回目の冒頭に
会社側から労組に質問するなりすれば、
すぐに解決するものばかりである。
一体ジェイテクトはユニオンに、
あるいは労働者たちに何の恨みがあって、
もったいぶって団体交渉の開催を
引き延ばそう、引き延ばそうとするのだろうか。

ジェイテクトは今回の、
ユニオンみえの手になる
4回目の団体交渉申し入れを手にしてもなお、
またさらに「議題を明確にしろ」と執拗に要求し、
あるいはユニオン側が
ジェイテクトの主張に実に詳細に
回答しているにもかかわらず
「事実関係および当社の考えは、
 先般ご連絡したとおり」の一言で
逃げ切ろうとするのだろうか。

もしこれ以上
ジェイテクトがこのような態度を続けるならば、
ユニオン側の忍耐にもおのずと限度というものがある。
ユニオンみえのFさん・Sさん・Tさん・Iさんは、
初回の団体交渉申し入れ時には
ジェイテクトで就労中であった。
にもかかわらず、
彼らはジェイテクトによる団体交渉引き延ばしの中で、
労組を通じた話し合いを
一度たりとも経ることなく
職場を追われて今に至っているのである。
そのことを、
ジェイテクトは一体どう考えているのだろうか。

労働者は、
使用者に労働を提供し
対価を得ることを通じてしか
収入を得ることができない。
Fさん・Sさん・Tさん・Iさんの4人は
いよいよ困窮の度を深めている。
この現実を目の当たりにするならば、
心ある使用者ならば何はさておいても
まず話し合いのテーブルに着くことが当然であろう。
何が「議題の明確化」だろうか。
わからないことがあれば団体交渉のテーブルに付き、
納得いくまで説明を求めれば済む話ではないか。
筆者の目にはジェイテクトの仕打ちが、
団体交渉開催の引き延ばし策動にしか映らない。

ジェイテクトは以前、
筆者が運営委員長を務める
名古屋ふれあいユニオンの団体交渉要求を
執拗に引き延ばし、
ユニオンの本社前抗議行動の展開を受けて
ようやく団体交渉の開催に応じたという経緯がある。
追いつめられた労働者たちが、
ついに本社前まで押しかけて抗議の声を上げなければ、
労組との団体交渉に応じない。
使用者としての最低限の義務すら
果たせないというのであれば、
何と悲しいことであろうか。
(インターネット新聞「JANJAN」
 4月22日より加筆転載)


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by imadegawatuusin | 2009-04-30 21:30 | 労働運動
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