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トランスジェンダー従業員、「性別」理由に解雇

――会社側、労組との団体交渉を拒絶――

■労組、「熊野の郷」の株式会社キナンに抗議
生物学的な性別に違和感を持つ
「トランスジェンダー」の従業員を
「性別」を理由として解雇し、
労働組合との団体交渉にも応じないのは
不当であるとして、
従業員の所属する
関西非正規等労働組合(ユニオンぼちぼち)
京都府労働委員会に救済命令を出すよう
申し立てた。

解雇されたのは、
戸籍上・生物学上は「男性」だが、
性的自己自認としては女性に近く、
豊胸手術などにより女性的な外見で生活している
尾崎日菜子さん(28歳)。
尾崎さんは2009年6月、
鳴尾浜温泉「熊野の郷」(兵庫県西宮市)の
マッサージ部門の面接を受けた。
京都新聞によると同部門では、
作務衣(さむえ)を着た男女の客が
同室で性別にかかわりなく
男女の担当者から
マッサージを受けていたという(『京都新聞』11月13日)。

組合側によると、
尾崎さんは面接においては、
自らは男でも女でもないと考えていたので、
性別記載欄を空白にして会社側に提出した。
その結果、
尾崎さんは7月1日から
研修が開始されることになったという。

研修では身分証明書の提示を求められたため、
尾崎さんは性別記載のない
運転免許証を提示した。
ところがその2日後の7月3日、
再度
「性別記載のある身分証明証を
 チェックさせてほしい」と
会社側から申し出があったため、
尾崎さんは「尾崎日菜子(男)」と表記のある
健康保険証を提示した。
ところが「熊野の郷」側は、
あろうことか
「性別を偽る人物は信用できない、
 他の従業員が
 悪い風評を流すおそれがある、
 顧客がクレームを言うおそれがある」
などと言い始め、
「ここで働くのは難しい。
 研修を終了する」と一方的に通告してきた。
尾崎さんが一体いつ
「性別を偽」ったというのだろうか。

さらに「熊野の郷」の支配人はこの際、
「君の横顔は男に見える」だの
「良いとか悪いとかではないが
 君は他の人と異なっている」だのと告げた上、
「前の職場の近くにゲイのハッテン場があり、
 そこから流れてくるゲイを追い払った」などと
自慢げに語ったというのである。
同性を性的指向の対象とする
男性同性愛者であるゲイと、
性的な自己自認が生物学上の性別とは一致しない
トランスジェンダーである尾崎さんとを混同し、
双方ともに貶めようという
極めて悪質な差別・セクハラ発言であることは
明らかだ。

鳴尾浜温泉「熊野の郷」側は
尾崎さんを「信用できない」と言うのだが、
ではこれほどあからさまな
差別・セクハラ発言を行なう支配人は
果たして「信用」に足るのだろうか。
支配人の立場にありながら
このような差別・セクハラ発言を
公然と行なうならば
「悪い風評」が「流」れることは必至である。
良識ある市民から
当然「クレーム」がつくことも
容易に予想できるのであるが、
それは問題にならないのだろうか。

尾崎さんはマスコミ各社の取材に対しても
自らの名を公表し、
「この職場では性別は問われない。
 自ら定義した性で堂々と働きたい」と
訴えているという(京都新聞11月13日)。
この尾崎さんの勇気ある態度に引き比べ、
労組の団体交渉要求からも逃げ回る「熊野の郷」側の
何と卑しく小さなことか。

尾崎さんの解雇には何の合理性もなく、
性的少数者への偏見に基づく
露骨な差別行為と断じざるをえない。

「熊野の郷」のマッサージ部門は
会社からの指揮命令や時間管理があったという。
そうであるならば会社側は、
労働組合ときちんと向き合い、
正々堂々と交渉に応じる責任がある。

筆者が運営委員長を務める
名古屋ふれあいユニオンは11月19日、
鳴尾浜温泉「熊野の郷」を経営する
株式会社キナン(代表取締役:角口孝幸)に対し、

1.関西非正規等労働組合と直ちに団体交渉を行なうこと。
2.解雇を撤回して職場に復帰させること。
3.トランスジェンダーなど性的少数者への理解を社内で深め、
  セクハラ発言を謝罪して再発防止の仕組みを作ること。

を要求して抗議文をFAX・郵送した。
名古屋ふれあいユニオンは会社側に、
11月26日午後6時までに
文書またはFAXで回答するよう求めたが、
11月29日現在、
会社側からの回答はない。
会社側はマスコミなどには
「コメントできない」・「特にコメントすることはない」などと
言っているという。
(インターネット新聞「JANJAN」
 11月30日より加筆転載)
by imadegawatuusin | 2009-12-01 13:09 | 労働運動
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