大阪市内中学校「タイ人生徒編入拒否事件」顛末

(2009年12月発行の『リンクニュースレター』No.63より転載します)

文部科学省が本年7月に発表した
「日本語指導が必要な外国人児童生徒」に関する
調査結果によると、
当該外国人児童生徒数は
前年度比12%増の28,575人で
過去最高となった。
在籍校では
小・中・高等・中等教育・特別支援学校など
すべての学校において増加している
(大阪府は生徒数で全国5位
 (1,819人:前年度比38%))。
2002年度以降、
生徒数は増加の一途である。

そんな状況の中、
大阪市内の公立中学校で
タイ国籍女生徒の編入を拒否するに等しい
信じられない事件が起きた。

この生徒はタイの小学校を卒業し
5月半ばに来日、
保護者は6月1日に中学校を訪れ
1学年への編入を申し入れた。
普通なら1週間程度で編入となるのだが、
学校側が返事を先送りしたため
1ヶ月の間自宅待機を余儀なくされた。
6月中旬にも
再度編入希望を伝えていたが、
学校側は手続きに必要な入学申請書を
渡していなかった。

大阪市教育委員会の指導により
6月下旬に申請書が渡され、
ようやくオリエンテーションという形で
生徒が初登校できたのは
7月1日。

その後も二週間近くクラスが決まらず
各教室を回っての「授業見学」や
会議室で一人弁当を食べるなどの
日々が続いた。

こんな事態になった大きな原因は
一部教諭(2名)の強硬な受け入れ反対にあった。
その言動は拒否に終始する。
曰く
「条件が整わない限り受け入れられない」
「小学校には行かせられないか」
「学区外の他校で引き受けられないのか」
「私に死ねというのか」等々、
もう論外、言語道断である。

外国籍生徒の編入希望があった場合、
ほとんどの学校、教諭たちは
まず受け入れありき、
それからどう対処するのかを協議し、
模索しながらも指導体制を整え
生徒にとっての最善を考慮し
対応していっている。
真逆だ。

さらに、
「タイ人は偽造パスポートなどで出稼ぎに来て
 不法滞在も多い」
「感染症は大丈夫なのか。
 調べたのか」など
偏見に満ちた言動もおこなっている。

また、
親切に声をかけた日本人生徒を
怒鳴ったりしている。
これでは仲良くしたいと思っている
他の生徒も萎縮して声をかけられない。
孤立させようとしているのではないかともとれる
行動だ。
このような人物が
教育現場にいていいのか?と思う。

学校管理職の責任も大きい。
拒否する教諭と
受け入れを求める大阪市教委との板挟みになったまま
前述したように入学申請書を渡さず、
この状態をさらに長びかせることになった。
明らかに指導力不足である。
大阪市教委の責任も小さくはない。
さらにこの間
保護者に対してなんの説明もせず、
保護者はナゼこれほど時間がかかっているのかを
まったく知らなかった。

マスコミもこの事態を知ることとなり、
7月末新聞紙上で報道された。
新聞報道の数日後、
事態を知ったタイ王国大阪総領事館も
大阪市教育委員会に
説明を求めている。

それから2ヶ月後、
事情・事実関係を精査した大阪市教委は
この2名の教諭に対し、
「職務命令違反」による停職・減給の懲戒処分を
発表した。
これは
「管理職の言うことを聞かなかった」
ということである。

しかし、
本来この事件は
そこでとどまる話ではない。
その発言・行動は、
タイ国籍者や外国籍者に対する
明らかな偏見であり、
且つ児童の教育を受ける権利、
すなわち人権を侵害するものである。
日本が批准している
子供の権利条約を引き合いに出すまでもなく
全ての児童は
等しく教育を受ける権利を有している。
いかなる理由があろうとも
それを侵すことは許されることではない。

今後、
こういった再発防止と
生徒が安心して学べる環境作りに
どう取り組んでいくのか、
大阪市教育委員会の意見も
ぜひお聞きしたいものである。

今回のことについて生徒本人は
詳細を知らない。

13歳で初めて外国、
自分一人が言葉のわからない学校に入っていく不安は
いかばかりか
想像に難くない。
そんな彼女に対し1学年の女生徒たちや
他学年の教諭たちは
総じてウェルカム状態で、
中にはタイ語で挨拶をする教諭や生徒たちもいた。
緊張が徐々にほぐれていった
入学一週間目の彼女の作文に
「今、私は学校に行くのが
 とても楽しいです」と書かれていたのが
唯一の救いだった。
(報告・文責:木村雄二)

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by imadegawatuusin | 2010-02-02 20:16 | 差別問題