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なごやボランティア・NPOセンター前で解雇に抗議

――「常勤」約束直後に勤務シフト激減――

■抗議の男性を解雇
名古屋市の「なごやボランティア・NPOセンター」
非常勤職員として働いていた男性(35歳)が、
いきなり勤務シフトを激減された上、
これに抗議していたところ解雇されたとして
地位保全などを求める仮処分を
名古屋地裁に申し立てている問題で、
男性職員と筆者を含むその支援者が
3月14日にセンター前で抗議・宣伝行動を行なった。

当初は常勤職員とほぼ同様、
フルタイムで勤務していた男性は、
「直前には上司から
 『これからは常勤職員としてがんばってもらう』と
 声をかけられていたにもかかわらず、
 いきなり勤務シフトを削減され、
 それまで月20万円あった給料が
 8万円にまで激減した」と主張。
それに対して、
指定管理者として
同センターを名古屋市から委託されて運営している
「NPO法人ワーカーズコープ」は、
男性を常勤職員にする旨の話をしたことは認めつつ、
「酒席でのこと」であるとして
その責任を認めていない。
 
収入が激減した男性は
医者にもかかれず持病が悪化。
アパートの家賃も払えなくなり、
一時ホームレス状態となったあと、
生活保護を受給して今に至っている。
 
■生活保護で生活できるから訴えを認める必要はない!?
NPO法人ワーカーズコープ側は現在、
裁判の主張書面の中で、
男性が仮払いを求めている解雇直前の賃金が
生活保護費を下回っていることを理由に、
たとえ男性の主張が認められても
賃金を仮払いする必要性はないとの主張を行ない、
「不当解雇のツケを市民・納税者に押しつけるものだ」と
大きな波紋を呼んでいる。
 
法人側の主張は次の通りである。
 
《本件申立が認められるに至った場合でも,
 その仮払いされた金額の分だけ
 生活保護費が減額されるのみで,
 現在債権者(筆者注:=男性)が受給している金額よりも
 多くの金員が債権者の手元に入るわけではない。
 すなわち,
 本件申立が認められようと却下されようと,
 債権者の経済状態に変化は生じないのである。 

 したがって,
 賃金の仮払いを求める本件申立ては,
 「債権者に生ずる著しい損害
  又は急迫の危険を避けるため
  これを必要とするとき」(民事保全法23条2項)には
 該当せず、
 保全の必要性は認められない。〔注1〕》

これに対して男性側は、
「こんなひどい主張は聞いたことがない。
 人を不当解雇しておいて、
 『税金でメシ食わしてもらえるんだから
  いいじゃないか』と開き直っているに等しい。
 自分は好きこのんで
 生活保護費以下の賃金になったのではない。
 本来ワーカーズコープが払うべき給料を払わないから
 生活保護を受けざるを得ないようになっただけなのに」と
憤りをあらわにする。
 
「私がもらっている生活保護費は
 本来市民の税金です。
 確かにこの裁判に私が勝っても、
 そのお金でそれまでにもらった生活保護費を
 名古屋市に返還することになるだけですので、
 私にとっては1円の得にもならないことは事実です。
 けれど、
 だからといって、
 本来給料を払うべきワーカーズコープが給料を払わず、
 その分税金で穴埋めされるような状態が
 許されるわけではありません」。
 
名古屋地裁での仮処分裁判は
まもなく結審を迎える予定だ。
男性とその支援者は、
仮処分での勝利と早期復職の実現を目指し、
「なごやボランティア・NPOセンター」前での
利用者・市民への働きかけを
今後強めてゆく方針だ。

〔注1〕上記の
NPO法人ワーカーズコープの主張に対しては、
男性の代理人である
名古屋共同法律事務所の森弘典弁護士が
以下のように反論している。
《これは使用者としての雇用責任を
 顧みない主張と言うほかない。

 そもそも生活保護費を下回る平均賃金しか
 受け取れないようになったのは、
 債務者(筆者注:=NPO法人ワーカーズコープ)が
 債権者(筆者注:=男性)のシフトを削減したからである。
 債務者がシフト削減をしたため、
 債権者は働いて得た収入により生活することが
 できなくなってしまい、
 居住していたアパートの賃料が支払えず、
 ホームレス状態となってしまったのである。

 しかも、
 債務者は自ら債権者を解雇しておきながら、
 債権者は生活保護費を受給しているから
 本件申立てが認められようと却下されようと
 債権者の経済状態に変化は生じないと主張しているが、
 生活保護が受給できているからこそ、
 債権者は何とか生活できているのであって、
 債権者の主張は
 国、自治体の負担、ひいては国民の負担の下に
 自らの責任を免れるものと言うほかない。
 生活保護では
 他の法律または制度による保証、援助等を
 受けることができる者
 または受けることができると推定される者については、
 極力その利用に努めさせることとされており
 (他法他施策の優先、生活保護法4条2項)、
 生活保護が賃金支払いに優先されるべきものではない。
 このような主張が通るのであれば、
 使用者は労働者を不当解雇したとしても
 労働者が生活保護を受給しさえすれば
 仮払いする必要がないこと、
 つまり、
 その責任を国、自治体、ひいては国民が
 負担しなければならないことになる。》
(インターネット新聞「JANJAN」
 3月15日掲載記事に加筆転載)


【参考記事】
ワーカーズコープはYさんを職場に戻せ!
ワーカーズコープ、男性解雇を撤回
by imadegawatuusin | 2010-03-15 18:49 | 労働運動
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