スマトラ島沖大地震:災害は不公平である

――災害の問題は政治の問題――

■被災国の債務帳消しなども検討を
フリーライターの永江朗さんは
新著『いまどきの新書』(原書房)の中で次のように述べている。

個人ではどうにもならないこともある。
たとえば、災害は不公平であるという現実だ。
貧しい人により過酷に襲いかかる。
貧しい人の住居は壊れやすく、
蓄えもないから、
災害後に立ち直るのにも苦労する。
こうした問題は、政治を変え、
世の中の仕組みを変えるしかない。
じつは災害の問題というのは、政治の問題なのだ。(137ページ)


「災害は、
 貧乏人にも金持ちにも平等にやってくる」などというのは
大嘘であると永江さんは言う。
昨年末にインドネシアのスマトラ島沖で起こった大地震と
それにともなう大津波の被害とを見るにつけ、
本当にそのとおりだと実感する。

マスメディアなどでは一般に、
タイのプーケットなどで先進国の旅行者がこうむった被害が
どうしても優先的に取り上げられてしまいがちだ。
これらの人々が受けた被害それ自体は、
もちろん悲劇であるに違いない。
だが、客観的に見て、
今回の災害で最も壊滅的な被害をこうむったのは、
スマトラ島北端のアチェ州やスリランカなどの方である。
ともに、
独立を求める反政府武装勢力と政府軍との間で内戦が続く地域である。
アチェ州は「自由アチェ運動」とインドネシア軍、
スリランカは「タミル・イーラム解放の虎」とスリランカ軍との内戦で、
国土がすっかり荒廃していた。
そんな所に、今回の津波が襲ってきたわけだ。

地震そのもの、津波そのものはまぎれもなく天災であろう。
しかし、
それがもたらしたこの人類史上最大規模の被害については、
一概に「天災」の一言で済ますことはできないものだ。

そもそも、今回の津波による被災地域には、
地震が起こってから津波が到達するまでに
かなりの時間的猶予があった地域が少なくない。
インド洋で津波を検知し、
ラジオやテレビで避難を呼びかけるシステムがあれば
多くの人命を救うことができたであろう。
日本やアメリカなどの豊かな国々には、
こうした早期警報システムが完備されている。
だが、インドネシアやスリランカといった貧しい国には、
そうしたシステムは いっさい構築されていなかったのだ。

アメリカの反戦団体・国際行動センター(IAC)は、
「地震や津波は天災ではあるが、
 征服戦争に何十億ドルも費やす決定をする一方で、
 人命を救う簡単な措置を無視するというのは天災ではない」という声明を発表している。
国際行動センターはこの中で、
1台25万ドルの津波計を
インド洋とインドネシア近海に合計2、3基設置しさえすれば
今回出てしまった犠牲の多くを防ぐことができたのに、
アメリカ政府は科学者たちの要望にもかかわらず予算を付けようとせず、
その一方では1日あたり15億ドルの軍事費を費やしていると指摘した。
それはおそらく、
予算を付けなかったアメリカ政府の高官が
個人的に冷酷な人物であった……などという問題ではないだろう。
これは単に、
彼らの優先的な経済的・政治的目標にそぐわないから
予算が付けられなかっただけなのだ。

また、アメリカが主導する
経済の新自由主義的グローバル化は、
いまや世界の富のほとんどをアメリカを筆頭とする先進国資本に集中させ、
発展途上国の対外債務を膨らませ続けてきた。
国際通貨基金や世界銀行は、
そうした国に資金を供給する見返りとしてその国の政府に、
福祉や保険に回す予算をカットするように指導してきた。
今、そうした政策がのツケが、
いよいよ貧しい地域に住む人々に襲い掛かろうとしているのである。
日本・アメリカをはじめとする先進国は、
単に被災地への一時的な救援のみにとどまらず、
こうした構造そのものを変えてゆくため、
被災国に貸し付けた債務の帳消しをも検討してほしい。

繰り返し言うが、今回の津波の問題は「政治の問題」、
特に僕たち先進国に住む人間の問題なのだ。
永江さんの言うように、
「こうした問題は、政治を変え、
 世の中の仕組みを変えるしかない」のである。
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by imadegawatuusin | 2005-01-10 17:01 | 国際