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「いけいけギャル」は「命令形+名詞」?!

1.「いけいけギャル」も「連用形+名詞」である
1月13日の記事の中で僕は、
警察庁が新たに考案した「振り込め詐欺」(「オレオレ詐欺」の新語)という言葉は
現代日本語としては無理のある形であるという
短大教員・鈴木克義さんの意見を紹介した。

鈴木さんはこの中で次のように言っている。

通常「詐欺」などの名詞の前に置いて複合語を作る場合、
名詞または名詞化した動詞の連用形が使われる。
(中略)
「振り込め」はどう見ても動詞の命令形だ。
これを詐欺の前に置くのは、
言語学的に無理がある。


この文章を記事で引用した後、
「本当に『動詞の命令形+名詞』の形の複合語はないのか?」
と思い、いろいろと考えてみた。
そして、考えに考えた結果、
たった一つだけ見つけてしまったのだ。
それは、
「いけいけギャル」である。

「いけいけギャル」。
これはやはり、
動詞「行く」の命令形「行け」を2回重ねて
名詞「ギャル」にくっつけた複合名詞ではないだろうか……。

しかし、昨日になってようやく僕は、
この「いけいけギャル」という言葉も
「動詞の連用形+名詞」であると説明できることに気がついた。
「いけいけギャル」の「いけいけ」の「いけ」は、
五段活用動詞「行く」の命令形「行け」ではなく、
一段活用動詞「いける」の連用形「いけ」だったのだ!
(「いける」は「状態がよい」ことを表す動詞で、
 若者の間ではもっぱら「いけてる」の形で使われている。
 しかし年配の方々も、
 「この肴〔さかな〕はいける」などという形で使うことも多い)。

「いけいけギャル」は
「行け! ギャル」ではなく、
「いけるギャル」(もしくは「いけてるギャル」)のことだったのだ。

「いけいけギャル」という言葉は、
おそらく日本語文法のことなどはろくに知らない「最近のワカモン」が作り出したのであろう
俗語の一種だ。
その「いけいけギャル」のような言葉ですらも、
「名詞の前に置いて複合語を作る場合、
 名詞または名詞化した動詞の連用形が使われる」という日本語の法則には
忠実に従っていたのである。
動詞と名詞を組み合わせて複合名詞を作る際は
「連用形+名詞」の形にするという法則は、
現代日本語においてはそれほど自然なものなのだ。


2.「振り込め詐欺」はやはり「なりすまし詐欺」に!
警察庁が考案し、
マスコミが積極的に流布しようとしている「振り込め詐欺」という言葉は
現代日本語としては圧倒的に不自然であり、
少なからぬ人に違和感を与え続けている。
お役所やマスコミで使われる言葉は
老若男女あらゆる人々に向けて発せられる言葉であることを考えれば、
そのような言葉を突然もちいるのは適切ではないように思われる。

「振り込め詐欺」は、
やはり広島県警の考案した「なりすまし詐欺」という言葉に
言い換えるべきだ。

「小学館『日本国語大辞典』に異論あり!」へ続く→
by imadegawatuusin | 2005-01-15 17:38 | 日本語論
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