「公開講座・『先住民族って何?』」報告

――講師はEsamanさん――
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名古屋ふれあいユニオン運営委員で
アイヌ民族活動家のEsamanさんが
6月24日に、
名古屋市昭和区の日本聖公会マタイ教会で開催された
公開講座・
「『先住民族』って何?―アイヌについて学ぼう―」で
講師を務めた。

Esamanさんは
親が北海道から出稼ぎで「内地」に出てきた
アイヌであったといい、
その人と「和人」(いわゆる「日本民族」)との間に
生まれた。
親が「和人になろうとしたアイヌ」であった
Esamanさんは、
アイヌ文化やアイヌ語を
独学で勉強せざるをえなかったという。

Esamanさんはまず、
「先住民族」という言葉についての説明から
講座をはじめた。
「アイヌが先住民族であると言うと、
 『日本人も昔から日本に住んでいたんだから
  日本の先住民族だ』と言い出す人が
 時々います。
 しかし、
 『先住民族』という言葉は、
 単に『昔から住んでいた』ということを
 意味する言葉ではありません」。
Esamanさんによると先住民族とは、
近代にいわゆる「国民国家」が成立した際、
自らの民族の利益を代表する国家を持つことができず、
他民族主導の国家に組み込まれた民族のことを
指すというのだ。

アイヌ民族は
日本が近代化する明治期に
「和人」主導の日本国に組み入れられた歴史を持つ。
学校教育も自らの言語で行なうことができず、
アイヌの子供たちは
日本の言語・日本の歴史・日本の文化を
教育されていったのである。

そうした際に、
一生懸命努力に努力を重ね、
「立派な日本人」になろうとしたアイヌも
少なからずいた。
日清・日露戦争などで
「日本人」に負けず天皇陛下のために武勲を挙げた
アイヌもいた。
だが、
日本語を覚えても、
日本文化にとけ込んでも、
大日本帝国に貢献しても、
アイヌ民族に対する「和人」からの差別が
解消することはなかった。
また、
川で鮭を捕ったり山で山菜を採ったりする生活を
突然禁止されて
「文明的」な生活を強制されたアイヌの中には、
それについていけない人たちも少なくなかった。

そして、
こうした現象はアイヌ民族だけに起こったことではなく、
「文明化」された近代国家に勝手に組み入れられた
様々な民族に共通して見出せる現象なのだ。
そうした民族を表す概念として、
「先住民族」という言葉が使われるようになったのだと
Esamanさんは説明した。

「たとえば、
 日本の学校教育では歴史の時間に
 卑弥呼とか紫式部とかを
 『私たちの先祖』ということで教えますよね。
 紫式部はともかく、
 卑弥呼なんか今の日本人とどうつながっているのか
 実のところよく分からないわけですけど、
 とにかくそういう『歴史』を学校教育では共有します。
 ところが、
 私たちアイヌはそうした歴史を共有できないのです。
 今でこそ歴史の教科書に
 シャクシャイン
 (「和人」に対抗して反乱を起こしたアイヌの英雄)も
 出てくるようになりましたが、
 私たちのころはありませんでした。
 それが、
 先住民族であるということです」。

日本政府は2008年、
ようやくアイヌ民族が先住民族であることを認めた。
アイヌ民族の経済的水準や進学水準は
「和人」と比べて格差が大きく、
アイヌ語を解する人間はごく少数になっている。
結婚に際しての差別もなくなっていない。
先住民族であることを認めたということは、
本当は、
日本国が
アイヌ民族をこうした状態においてきた責任を自覚し、
是正に向けた何らかの措置を取る責任が
課せられたということを意味する。

ところがEsamanさんによると、
アイヌ民族に対する生活向上のための施策は
先住民族認定とは全く関係なく行なわれており、
しかも北海道でしか講じられていないというのだ。
Esamanさんの親のように、
「出稼ぎ」のために「内地」に移住せざるをえなかった
アイヌも少なからずいたというのに……。

筆者自身、
Esamanさんに会うまでは、
日本国内の先住民族問題には
非常に疎かったのが実情だ。
だが、
筆者がEsamanさんに会うまでにも、
Esamanさんの親のように
「和人になろうとした」アイヌ民族や、
「あえてアイヌだと言わなかっただけ」の友人・知人も
いなかったとは限らない。

そうした意味では
アイヌ民族の子供たちに対する教育だけではなく、
いやそれ以上に、
「和人」の子供たちに対する教育も
今後は問題にしていかなければならないのではないか。
この国が決して、
いわゆる「日本民族」だけのものではないという
当たり前の事実を、
当たり前のこととして受け止めるために、
有意義な公開講座だったと思う。

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by imadegawatuusin | 2011-07-06 22:16 | 差別問題