『ひとまねこざる』(H=A=レイ)について

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サルは人間っぽい。
もともとヒトの親戚である上に、
しぐさや動きが妙に人間くさい。
動物園でいろいろな動物を見て回っても、
圧倒的にサルが
他の動物よりも感情移入しやすく、
わが子のように思えてきてしまう……。
作者はそんなところから、
『ひとまねこざる』の着想を得たのではないか。

本書の主人公は
動物園にいるサルのジョージ。
「かかりの おじさん」の隙を見て
オリのカギを盗み出して町に出る。
皿洗いをしたり、
ペンキで壁に絵を描いてみたり、
最後は映画に出たりする。

ジョージはどんなことにも興味しんしんで、
ついつい首を突っ込んでしまう。
けれど、
肝心なところでは(当たり前だが)「サル知恵」で、
ジャングルと同じ感覚で
高いところから固い道路に飛び降りて、
足を骨折してしまったりする。
そんなジョージの
天真爛漫で好奇心旺盛な振る舞い・行動に、
本書の主な読者層である小さな子供たちを
重ねて見る人も多いようだ。

ジョージを見ていて
私がついつい思い浮かべてしまったのは、
漫画・『クレヨンしんちゃん』の主人公である
野原しんのすけである。
かつて
アニメ版の『クレヨンしんちゃん』の主題歌の歌詞に、
「距離を置いてみると それなりに
 楽しい奴 なんですが
 こうも近くにいると そのワガママさ
 ずうずうしさに ウンザリです」というフレーズが
あった(「夢のENDはいつも目覚し!」作詞:長戸大幸)。

ジョージの事由闊達な立ち居振る舞いも、
絵本を見ている私たちから見れば
非常に「楽し」くほほえましいものである。
だが、
「近く」で実際に世話をする人たちの身になってみれば
大変なものがあるだろう。
少なくとも、
カギを盗まれて逃げられた
動物園の「かかりの おじさん」は
責任問題だったに違いない。

そう思うと本書は、
そんなジョージのような子供の一挙手一投足に
振り回される親御さんたちの心を
むしろ捉えてきたのではないか。
そのことが、
戦後すぐ(1947年)に出版された本書が
今日まで読まれ続けてきた、
ロングセラーの秘密なのではないかと
思われるのである。


『ひとまねこざる』(評価:2)
H=A=レイ (著)、 光吉夏弥 (翻訳)
岩波の子どもの本(岩波書店)

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by imadegawatuusin | 2011-07-19 16:42 | 文芸