デイリーNK:「透明性前提に対北食料援助を」

――支援条件明示式でのEUの食料援助再開受け――

■監視要員常駐や抜き打ち訪問を要求

北朝鮮民主化ネットワークが運営する
インターネット新聞『デイリーNK』が、
北朝鮮における深刻な食糧不足を受け、
「透明性が確保されれば迷わず食糧支援すべき」との論説を
7月11日に掲載した↓。
http://japan.dailynk.com/japanese/read.php?cataId=nk02400&num=13831
人道支援目的の援助食料が
朝鮮労働党幹部や軍部の手に渡ることを防ぐため、
北朝鮮への大規模監視要員の派遣や
予定なしの訪問の保障、
長期間居住しての回収可否の確認、
食糧移動確認識別装置付着などの
具体的な支援条件を明示して
「北に『人道支援攻勢』を始めるべき」だと
主張している。

北朝鮮の民主化を掲げる『デイリーNK』は従来、
「北朝鮮の体制転換」を強力に主張し、
「この政権に米を支援しようとする
 韓国の『太陽政策』勢力も理解に苦しむ」と論じるなど(2011年4月15日論説)、
食糧支援については否定的な傾向が強かった。

しかし今月に入り、
ヨーロッパ連合(EU)が3年ぶりに
対北朝鮮食糧支援を再開したことで情勢は急変。
EUは支援の再会にあたり、
食料が住民に行き渡っているかどうかの
確認体勢を強化し、
朝鮮語を話せるモニター要員50人を
現場に配置することや、
施設や病院・配給所・一般家庭などの
約400カ所を抜き打ちで訪問できるようにすることで
北朝鮮当局と合意したという。
EUは、
北朝鮮側がこの合意を守らない場合は
直ちに食糧支援を中断するのだという。

『デイリーNK』はこうしたEU式支援について、
「北朝鮮当局は、
 昨年から国際社会に支援を訴えているが、
 国家単位で詳細なモニタリングについて合意を得て、
 数万トン規模の食糧を支援されるのは
 今回が初めてのケースとなる」と評価。

「北朝鮮が、
 納得に値する透明性措置を取れば、
 韓国も積極的に支援すべきだ。
 EUと米国の支援に後追いするという姿勢では、
 南北関係の主導権を維持することも難しい」として、
「米国とEUを飛び越える水準のモニタリングを
 要求しつつ、
 果敢な食糧支援を提案する必要がある。
 大規模監視要員派遣、
 予定なしの訪問の保障、
 長期間居住しての回収可否の確認、
 食糧移動確認識別装置付着などを
 強力に要求するべきだ」と結論づけている。

確かに、
北朝鮮のような独裁国家の場合、
飢餓に苦しむ市民に対する支援物資が
政権幹部や軍部の懐に入る可能性が
否定できない。
だが一方で、
国連の世界食糧計画が報告しているように、
北朝鮮の食糧不足は深刻である。
子供や妊婦を中心に、
栄養不足の人口の割合が実に20から34パーセントにも
達するという。

非民主国家である以上、
北朝鮮の民衆は
自国の政府を選び変える自由を持たない。
言い換えれば北朝鮮の民衆は、
自国の体制について
責任を負うべき立場にないとも言える。
国家が独裁的であるからといって、
多くの民衆が飢えてゆくのに
国際社会が手をさしのべなくて良いということには
ならないのは無論だ。

今回の「EU式援助」はそうした中、
人道的な観点から食料援助を実施しつつ、
情報統制の厳しい北朝鮮に
国際社会自らが自由と民主主義の空気を吹き込む
小さな一歩であると見ることができる。
何よりも北朝鮮当局に、
モニター要員の配置や抜き打ち訪問を
受け入れさせた点は大きい。
外国からの援助者と
民衆が直に接触する機会が増加することは、
民主化の観点から言っても好ましいことである。

人と人とが接触すれば、
そこで必ず交流が生まれる。
交流が生まれれば
必ず情報の流通が始まるものだ。
独裁国家にとって外部情報の流入ほど
面白くないものはないだろう。
逆にこうした小さなきっかけを通じて
北朝鮮の内部から、
拉致問題の解決などにつながる
有力な情報が流出してくる可能性もある。

「北朝鮮の体制転換」と声高に言ってみたところで、
国際秩序を破壊して軍事介入するわけにはいかない以上、
こうした地道な取り組みを続けることによってしか
大きな目的は達成できない。
現実的な選択肢は
そもそも限られていると言うべきである。

具体的な支援条件を明示した上での食糧支援は、
国際社会にとって極めて現実的で戦略的な
選択肢の一つだ。
ややもすると「対北強行派」と見られがちだった
北朝鮮民主化を唱える人たち自身の口から
こうした論説が出た意義は大きい。

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by imadegawatuusin | 2011-07-25 21:44 | 国際