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フタバ産業下請・S社の団交拒否に抗議!

――「辞めさせられたのに『自己都合』おかしい」――
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■ミッドランドスクエア周辺などで宣伝行動

トヨタ系の大手自動車部品メーカー・フタバ産業の
下請会社・S社で
働いていた日系ブラジル人労働者が、
会社から無理矢理辞めさせられたのに
「自己都合」で辞めたことにされていると
訴えている。

日系ブラジル人男性のNさん(52歳)は
会社の出してきた「退職届」に
「無理矢理辞めさせられた」と
きちんとポルトガル語で書いて提出した。
ところがS社はその退職届に日本語で、
「私的理由でこのまま働くことが出来ない」
などと書き加え、
Nさんは自分で辞めたのだと主張して
労働組合の三度にわたる団体交渉の申し入れにも
一度として応じない。

Nさんの加盟する愛知県の個人加盟制労働組合・
名古屋ふれあいユニオン
(「コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク」加盟)は、
S社側のこのような対応に抗議し、
7月26日に地域の友好労組などと共同で
名古屋駅前・ミッドランドスクエア周辺など
県下3カ所で抗議・宣伝行動を展開した。 

■「辞めてもらう。理由は自己都合で」

Nさんの訴えによると、
Nさんは今年3月4日に会社の上司から事務所に呼ばれ、
「Nはよく休む。
 4月から新入社員が入るから
 3月まで働いて
 4月から有休を消化したら辞めてもらう。
 理由は自己都合で」などと言われ、
退職届へのサインを求められたという。

Nさんは、
「職場は煙で真っ白なほど悪い環境で、
 体調不良で休まなければならないことは多かった」と
言っているが、
だからといって自己都合で辞めろとは
全く筋の通らない話である。

会社の上司は3月8日にも新しい退職届を持ってきて、
これを書くようにNさんに言ったという。
Nさんはこれに対し、
ポルトガル語で
「無理矢理辞めさせられた」と明記した上で
退職届にサインした。
その際、
退職日は3月31日ということを確認したと
Nさんは強調している。

ところがS社側はこの件について、
「Nの無断欠勤が続いたため、
 2011年3月4日、
 本人を会社に呼んで事情を尋ねたところ、
 『給料が少ないためローンの返済ができず、
  ローン会社から裁判を起こされた。
  その対応のために無断欠勤をした』と
 いうことであった。
 これからもこの対応のために
 出勤が困難だと言うため、
 会社を続ける意思があるかどうか尋ね、
 3月7日までに同人から回答をもらうことになった」、
「しかし、
 3月7日は用事があるため欠勤すると連絡が入り、
 翌8日の朝、
 Nと再度面談をした。
 同人の回答は、
 『会社に迷惑をかけるから辞める。』
 というものであった。
 そこで、
 退職届の用紙を同人に渡して
 記入するよう求めると、
 同人は日本語が書けないからと言い、
 退職事由欄にポルトガル語で記入をした。
 どういう意味か尋ねたところ、
 同人は
 『体調不良の為に退職する』と記入したと答えた。
 以上の経緯から、
 当社は自己都合による退職の手続をとることとした」
などと主張しているのである。

Nさんはこれに対し、
「裁判については以前から会社には伝えてあり、
 裁判所から呼ばれるときがあったときには
 事前に伝えており、
 無断欠勤ではありません。
 病気の時にも当日電話で連絡しており、
 無断欠勤はしていません」と訴えている。

3月4日のやりとりについては、
「会社から言われたのは、
 『仕事は3月一杯で終え、
  4月から有休を使い
  4月15日で辞めてもらう。
  辞める理由を書くように』とのことでした。
 その際、
 退職届の用紙を持って帰りたいと言いましたが、
 会社に断られて持って帰れませんでした」と
言っている。

そしてさらに、
3月4日に会社から退職を求められた件については、
Nさんは3月7日に
労働基準監督署に行って相談までしているといい、
会社側の言い分は成り立たないと主張。
3月8日にも、
「会社に迷惑をかけるから辞める」などとは
言っていないし、
ポルトガル語で
「無理やり辞めさせられた」と書いたときにも、
「どういう意味か」といった質問は
会社からはなかったと言っているのである。

Nさんの側はこのように、
3月4日・7日・8日に関する経緯について、
会社側の主張に具体的に反論している。
にもかかわらず、
S社の側はこうしたNさんの反論に対して、
ただ、
「3月4日、7日、8日の経過については
 先回の回答のとおりです」などと答えるだけで、
労働組合に対して具体的な反論ができていない。

いずれにしてもNさんとS社側の言い分は
真っ向から対立している。

■退職届には「辞めさせられた」と明記!

では、
この経緯に関する「物的証拠」とも言うべき、
「退職届」は一体どのようになっているのだろうか。
名古屋ふれあいユニオンは6月8日、
3度目の「団体交渉の申し入れ書」の中で、
退職届の現物を確認させるよう会社に対して要求し、
会社側にFAXで「退職届」を送らせた。

「退職届」にはまず、
「私は、
 このたび下記の理由により 
 退職いたしたくお届けします」と
『日本語で』書かれている。
日系ブラジル人労働者であるNさんが
こうした文言を読めないことはいうまでもない。

「退職届」には
確かにNさんの自筆のサインと指印があるのだが、
退職事由の欄には
当初からNさんが主張していたとおり、
ポルトガル語で
「無理やり辞めさせられた」と書いてある。
ところがここにS社側は『日本語で』、
「本人より体力的に就業困難 
 私的理由でこのまま働くことができないと申し出あり」
と書き加えているのである。
(S社側は
 「日本語は本人らが口頭で話した内容を
  弊社の担当者が記載したもの」などと説明)。

さらに「退職年月日」の項目についても、
当初からNさんの主張していたとおり、
退職日を31日とするのかどうかで
やり取りがあったことを
うかがわせるものとなっている。
「退職年月日」は
当初「3月28日」と書かれたあと、
「28日」の部分が二重線で訂正され、
「31日」に修正されているのである。
これは、
名古屋ふれあいユニオンの側が
5月17日の第1回の団体交渉申し入れの段階から
主張していた、
3月8日に当労組Nさんが
「退職日は3月31日ということを確認した」
という証言と符合する。

このように、
「退職届」そのものには疑いようもなく、
Nさんの手によって
「無理やり辞めさせられた」と
ポルトガル語で記載されているのである。
にもかかわらず会社側は、
「このように退職届が出されている以上、
 本件は自己都合による退職であり
 会社都合とは扱えません」と強弁を続けている。

どうして
「無理やり辞めさせられた」と
本人の手によって書かれている退職届が
「出されている以上、
 本件は自己都合による退職であり
 会社都合とは扱えません」などという理屈に
なるのだろうか。

■話をはぐらかすS社側

そもそも、
名古屋ふれあいユニオン側は
3回にわたって会社に対し、
一貫して団体交渉の開催を求めているのである。
ところが
5月17日の「団体交渉の申し入れ書」に対する
S社の返事は、
「2011年5月17日付の
 貴組合の『団体交渉の申し入れ書』に対する
 当社の回答は以下のとおりです」と切り出しながら、
肝心の「団体交渉の申し入れ」に対しては
一切「回答」していない。
ただただ、
「団体交渉の申し入れ書」に書いてあった内容について、
自社の見解を書き連ねているだけなのだ。
これは、
2回目の団体交渉申し入れに対しても、
3回目の団体交渉申し入れに対しても同じである。

「『団体交渉の申し入れ書』に対する……回答」を
するのであれば、
まず何を置いても第一に、
「団体交渉を開く」のか「開かない」のかを
回答しなければ全く意味がない。
一言で言えばS社側の「回答」は
全く「回答」になっていないとしかいえないのである。
話をはぐらかすのはいい加減にするべきではないか。

名古屋ふれあいユニオンは、
S社側の主張する事実関係や考えは理解している。
しかしそれは、
Nさんの主張する事実関係と異なっていることは
明らかだ。
この溝は、
労使双方が同じテーブルにつき、
互いの証言や証拠を付き合わす中で
事実認識の差や主張の差を埋める作業を通してしか
埋めることができないものだ。

そもそもわが国の憲法はその28条で、
「勤労者の団結する権利及び
 団体交渉その他の団体行動をする権利は、
 これを保障する」と定めている。

労働組合法も第6条にて、
「労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けたものは、
 労働組合又は組合員のために
 使用者又はその団体と
 労働協約の締結その他の事項に関して
 交渉する権限を有する」とはっきりと定めており、
さらに労働組合法は第7条にて、
「使用者が雇用する労働者の代表者と
 団体交渉をすることを
 正当な理由がなくて拒」むことを明確に禁じ、
使用者側の団体交渉拒絶に対しては、
労働組合側に
労働委員会への不当労働行為救済申立などの権利を
保障しているのである(労働組合法第27条)。

団体交渉は
勤労者の団結体である労働組合固有の権利であり、
日本で営業を営む全ての経営者の義務にあたる。
そしてこの団体交渉は、
「労使間の対等を実現するため、
 労働者が強力な団結力を背景に
 その威力によって交渉を行うという意味が
 歴史的に含まれているとみるべきであるから、
 憲法二八条及び労働組合法七条二号にいう
 『団体交渉』は、
 直接かつ口頭の交渉であることを
 当然の前提として規定されているものと
 解するのが相当であり、
 実際上も、
 団体交渉は労使双方の代表が
 直接に話し合う方法で行うのが通常であり、
 かつ常識的な理解である」のである
(清和電器産業事件福島地裁いわき支部判決
 平成1年11月15日)。

東京高裁も平成2年12月26日、
「使用者は
 労働者の代表者と団体交渉をするに当たって
 誠実に行わなければならないことは当然であり、
 右の見地からすれば、
 ……会社の文書による回答が
 適法な団体交渉の範疇に属するとは
 到底認められない」、
「団体交渉は
 労使双方が互いの意見を誠実に述べ合って
 労働条件についての合意に達するように
 努力することが本来の在り方であるから、
 口頭による方式が通常行われているところであり、
 また、
 それが原則である」としており
(清和電器産業事件東京高裁判決平成2年12月26日)、
最高裁もその結論を支持している
(清和電器産業事件最高裁第三小法廷判決平成5年4月6日)。

要するに
憲法・労働組合法で使用者に義務づけられている
団体交渉とは、
労使が直接対面して話し合うことで
労使双方が自己の意思を円滑かつ迅速に相手に伝達し、
相互の意思疎通を図るものを指す。
これに応じようとしないS社側の姿勢は
憲法・労働組合法で認められた
労組の団体交渉権の否認に他ならず、
労働組合法第7条で禁じられている
不当労働行為に該当する。

■正々堂々と交渉のテーブルに着くべき

使用者としてNさんに対してなした行為に
やましいところがないのであれば、
正々堂々と法に従って団体交渉のテーブルに着き、
自らの見解をその場において明らかにした上で
ユニオンの要求をはねつければよいまでの話である。

名古屋ふれあいユニオンはこれまでにも、
トヨタグループの鋼材メーカー・愛知製鋼や
S社(別会社)・ADOCO・
自由民主党愛知県名古屋市守山区第五支部・
「New club Victoria Secret」などによる
団体交渉拒絶に対し、
果敢に
愛知県労働委員会への不当労働行為救済申立を行ない、
その全てにおいて勝利的和解を勝ち取ってきた。
名古屋ふれあいユニオンは、
組合員に関する労使間の紛争を、
労使の話し合いによって解決することを本分としており、
それだけに、
団体交渉開催の拒絶に対しては、
不当労働行為の最たるものとして
特に厳しい姿勢で臨んでいる。

名古屋ふれあいユニオンはS社に対し、
直ちに団体交渉に応じるように求めている。
S社はユニオンとの話し合いに応じ、
きちんと事実を明らかにすべきではないだろうか。

【参考記事】
フタバ産業下請・S社が団交応諾
S社と第1回団体交渉開催
S社から回答書
S社事件、円満解決のご報告

労働組合名古屋ふれあいユニオン
雇用形態や国籍に関わりなく、
愛知県下で働くすべての労働者が一人から加盟できる
地域労働組合(コミュニティユニオン)。
「コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク」加盟。
「コミュニティ・ユニオン東海ネットワーク」事務局団体。
日ごろから組合員の学習会や交流会などを
積極的に企画しながら活動している。
現在、組合員数約200名。
組合員は組合費月額1500円。
賛助会員(サポーター)は年会費5000円。
住所:〒460‐0024
 愛知県名古屋市中区正木4-8-8 メゾン金山303号室
    (JR・地下鉄・名鉄金山駅下車 名古屋ボストン美術館の向かい)
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by imadegawatuusin | 2011-07-26 23:02 | 労働運動
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