『社会民主党宣言』を読む(第1章)

――格差のない平和な社会を目指して――

「私たちは、
 現在そして未来に夢と希望が持てる社会を
 実現するため、
 働く人々や弱い立場に置かれた人々と
 ともにありたい」。
『社会民主党宣言』はこのような一文から始まる。

公正や平等を志向する社会民主主義の政党が、
「弱い立場に置かれた人々とともにありたい」
と考えるはある意味当然である。
注目すべきは、
そうした「弱い立場に置かれた人々」一般とは区別して、
特に「働く人々……とともにありたい」と
明記されている点である。

『共産党宣言』の昔から、
「働くものは儲けない、
 儲けるものは働かない」などと言われてきた〔注1〕。
マルクスの盟友であったエンゲルスも、
「貧しく、かつ労働する階級は、
 常に存在した。
 また労働する階級は、
 たいてい貧しかった」と言っている〔注2〕。

ならばなぜ「働く人々」を、
障害者や少数民族や性的マイノリティー……といった
「弱い立場に置かれた人々」一般とは別格に、
真っ先に「ともにありたい」対象として挙げるのか。
それは、
「働く人々」は単に弱い立場に置かれている
救済されるべき人々ではないからである。

人間は働くことでしか
富や価値を生み出せない。
社会を動かし発展させる原動力は
「労働」にこそある。
職場生産点において汗を流して労働し、
社会を実際に動かしている労働者こそは、
政治を動かし歴史をつくる力を持った存在なのだ。

働く人々はこの社会における多数派である。
本質的に少数者である経営者層は、
働く人々が団結することを何よりも恐れている。
だからこそ、
『社会民主党宣言』は、
実際に世の中を動かし、
変える力を秘めた働く人々とその運動に、
社会変革の原動力を求めるのである。

また、
社民党というと「護憲の党」というイメージが強いが、
党の綱領であるこの『社会民主党宣言』は、
厳密な意味での「護憲」にとらわれない
幅の広さを持っている。

『社会民主党宣言』第1章では、
「私たちは目指します。
 憲法の理念が実現された社会を」と書かれているが、
現行憲法を一字一句全条項を護るとは
この『宣言』のどこにも書かれていない。
『社会民主党宣言』で実現すべきとされているのは
あくまで、
主権在民や基本的人権の尊重・平和主義といった
「憲法の理念」に他ならなず、
個々の条文の文言を守れとは書かれていないのである。

だから、
筆者のように
「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し……」などと
同性同士の結婚を否定する憲法第24条は
改正すべきだと考える「改憲論者」も
堂々と社会民主党に入党できる。
筆者の場合、
文面上は「改憲論者」ということになるだろう。
だが、
同性婚の実現は
憲法の基本的な理念である「法の下の平等」を押し広げ、
さらに深める方向での改正に他ならない。
ならば、
筆者の主張する憲法第24条の改正は
「憲法の理念」を実現する取り組みに
他ならないのであるから、
社民党の綱領である『社会民主党宣言』とは
何ら矛盾するところがないのである。

社民党の党是は、
狭い意味での「護憲」ではない。
党綱領の『社会民主党宣言』に示された
社会民主主義の理念こそが、
社会民主党が党是とすべきものなのである。

〔注1〕マルクス・エンゲルス『共産党宣言』大内兵衛・向坂逸郎訳、岩波文庫68ページ
〔注2〕エンゲルス「共産主義の諸原理」マルクス/エンゲルス『共産党宣言/共産主義の諸原理』服部文男訳、新日本出版社113ページ


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【参考記事】
新しい社会主義像を求めて
小牧治『マルクス』について
レーニン「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」を読む

『唯物論哲学入門』(森信成)を読む

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by imadegawatuusin | 2011-06-01 19:11 | 政治