『社会民主党宣言』を読む(第3章-6)

――世界の人々と共生する平和な日本――

この章では、
おそらく『社会民主党宣言』の中で世間的に最も知られ、
かつ最も誤解の多いフレーズが登場する。
「社民党は綱領で
 自衛隊が違憲だと言っている」と勘違いされるのも
この文言のためである。

正確には、
そのくだりは次のようになっている。

「現状、
 明らかに違憲状態にある自衛隊は縮小を図り、
 国境警備・災害救助・国際協力などの任務別組織に
 改編・解消して
 非武装の日本を目指します」。

まず注目すべきは、
自衛隊について、
「現状、明らかに違憲状態にある」という表現を
用いている点である。
具体的政策として明示されているのは
「自衛隊の縮小や任務べき組織への
 改編・解消」までであり、
「非武装の日本」は将来的な課題として
「目指」すとされているだけである〔注1〕。
「自衛隊という存在そのものが
 違憲である」という考え方とは
かなりニュアンスが違う点に気づいてほしい。

厳密に言うと、
自衛隊が違憲だと言っているのではない。
自衛隊の「現状」が
「明らかに違憲状態にある」と言っているのだ。

もし自衛隊そのものが違憲なのであれば、
自衛隊についての当面の方針が
「縮小を図」るなどというものであることはありえない。
自衛隊そのものが違憲であれば、
即時廃止以外の選択肢はありえない。

だが、
『社会民主党宣言』の自衛隊についての当面の方策は
「縮小を図」ることなのだ。
つまり、
自衛隊の規模・活動実態・
米軍との一体化などの「現状」を総合的に考えて
「明らかに違憲状態」であると言っているのであり、
さしあたっては「縮小を図」ることで、
そして将来的には
「国境警備・災害救助・国際協力などの任務別組織に
 改編・解消」することで
「違憲状態」は解消しうると言っているのだ。

戦後65年もたつというのに、
日米安保条約のもと、
日本にはいまだにアメリカ軍が駐留し、
100ヶ所を超える基地がある。
日本の自衛隊は米軍の国際戦略に事実上組み込まれ、
イラクでは武装米兵の輸送まで行なっていた。
こうした自衛隊の「現状」は、
やはり「違憲」であるとしか言いようがない。

『社会民主党宣言』には、
「日米安全保障条約は、
 最終的に平和友好条約へと転換させ、
 在日米軍基地の整理・縮小・撤去を進めます」とある。
外国軍の駐留を終わらせ、
いかなる特定の国とも軍事同盟を結ばない、
国連中心の非同盟・中立の外交方針こそが
日本のとるべき道である。

外交においては、
民主的手続きによって議会や政府が選出され、
台湾本島および澎湖・金門・馬祖などにおいて
国家的実態を有する台湾や、
パレスチナの独立・国連加盟を支持し、
イスラエルによるパレスチナ占領に終止符を打つよう
力を尽くすべきである。

北朝鮮や中国・ビルマなど非民主的国家においては
民主化勢力を支持し、
社会主義インターナショナルの一員として
全世界に民主主義を定着させるべく、
奮闘しなければならない。

なお付言すると、
『社会民主党宣言』はここでも、
一語一句日本国憲法を護持するという
かたくなな「護憲路線」はとっていない。
憲法と外交方針の関係については、
「国連憲章の精神、憲法の前文と9条を指針にした
 平和外交と非軍事・文民・民生を基本とする
 積極的な国際貢献で、
 世界の人々とともに生きる日本を目指します。
 核兵器の廃絶、
 対話による紛争予防を具体化するため、
 北東アジア地域の非核化と
 多国間の総合的な安全保障機構の創設に
 積極的に取り組み、
 『緊張のアジア』を
 『平和と協力のアジア』に転換します」と
あるだけだ。

社民党にとって憲法9条は「指針」なのであって、
決して教条ではない。

個人的には、
国の自衛権を明記した上で、
国連安保理決議に基づく国際警察行動への参加を除く
集団的自衛権の放棄と
専守防衛・非核三原則を憲法に明記するなど、
より平和主義的方向での「加憲」は
『社会民主党宣言』の理念を踏み外すものではないと
考える。
将来的には、
『社会民主党宣言』にある
自衛隊の
「国境警備・災害救助・国際協力などの任務別組織」への
「改編・解消」の後、
国境警備部隊と国際協力部隊を
国連の指揮下に完全に委譲することで、
世界連邦実現時の世界警察軍の礎としたい。
もちろん、
国家主義傾向を強化する方向での憲法改悪には
断固反対である。

〔注1〕世界連邦が実現し、
世界警察軍が設置されたあかつきには、
「非武装の日本」は実現するであろうし、
困難ではあるがこのような理想の実現のために
日本は力を尽くすべきであろう。
なお日本の衆議院は2005年8月2日に決議した
「国連創設及びわが国の終戦・被爆60周年に当たり
 更なる国際平和の構築への貢献を誓約する決議」の中で、
「政府は、
 日本国憲法の掲げる恒久平和の理念のもと、
 唯一の被爆国として、
 世界のすべての人々と手を携え、
 核兵器等の廃絶、あらゆる戦争の回避、
 世界連邦実現への道の探究など、
 持続可能な人類共生の未来を切り開くための
 最大限の努力をすべきである」と明記し、
すでに世界連邦国会決議をあげている。


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【参考記事】
新しい社会主義像を求めて
小牧治『マルクス』について
レーニン「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」を読む

『唯物論哲学入門』(森信成)を読む

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by imadegawatuusin | 2011-06-13 10:41 | 政治