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「菅よりまし」な選択肢はないが

――民主党代表選に思う――

■5氏、きょう立候補

筆者はこれまで一貫して、
菅内閣を支持してきた。
仮に菅首相を引き摺り下ろした場合、
菅直人より革新的・進歩的な政治姿勢の首相が
民主党から出てくるとは到底思えなかったからである。

市民運動出身で、
社民連で初当選、
現在も江田五月のグループに所属する菅直人は、
「保守かリベラルか」で分類すれば
間違いなくリベラルな政治姿勢の持ち主だった。
東海地震の想定震源域の真上にある浜岡原発の停止を
要請した菅首相の決断は、
その後、
「脱原発」を具体的な政治の焦点にまで押し上げる
大きなきっかけとなったことは間違いない。

それに対して本日、
後継の民主党代表選に立候補した五人はどうか。

自民党出身の鹿野氏は論外として、
松下政経塾出身の前原氏や野田氏も
間違いなく保守系の議員である。
馬淵氏も野田グループに一時所属していたというから、
保守かリベラルかといえば保守派だと思う。

かろうじて「リベラル」に分類できなくはないのは、
「市民リーグ」出身の海江田万里氏くらいだろうか。
しかし報道を見る限り、
小沢氏の影がちらつくのは気になる。
いずれにしても「菅よりまし」には全く見えない。

しかしながら、
この5人の中から
「次の首相」を選ばなければならないことも事実である。
朝日新聞8月27日の夕刊に掲載された
「候補者5氏の公約」や「推薦人名簿」などを頼りに、
検討をしてゆきたい。

■無原則な「大連立」には反対!

5人のうち、
失礼だが鹿野氏は論外だと思う。
「原発事故による避難者の早期復帰に向け、
 子どもや妊娠中の女性を最優先に
 放射能対策を推進する」とか
「地域経済活性化のため、
 6次産業化を通じて農林漁業を発展させる」
などというのは
「スローガン」ではあっても「公約」ではなかろう。
具体的でないのはもちろん、
政治の方向性を示すものとさえ言えない。
「子どもや妊娠中の女性を最優先に」した
「放射能対策」とは何なのか。
それを明らかにしてもらわないことには
検討のしようもない。
(子どもや妊婦に限って
 「自主疎開」した場合にも補助金を出す、とか?
 しかしだとすれば、
 「原発事故による避難者の早期復帰に向け」
 という枕詞と矛盾する。
 除染対策などについて言っているのなら、
 相手は人ではなく土壌であって、
 「子どもや妊娠中の女性を最優先に」行なうことなど
 できないはずだ。
 あるいは学校とか病院を優先して
 除染するという意味なのか?)

残る4人の公約を見ると、
野党との距離の取り方について、
候補者間で明らかな違いが見受けられる。
前原氏が
「各党政策協議会設置など
 与野党の信頼関係を構築する」、
野田氏が
「与野党間で対話を進める」といった主張を
行なっているのに対し、
海江田氏・馬淵氏は
あくまで自らの理念や考えを語っている。
野党(主として自民党)とのいわゆる「大連立」に
積極的な前原・野田氏に対し、
懐疑的な海江田氏・馬淵氏という構図が浮かび上がる。

私は、
いわゆる「大連立」には反対である。
衆院選で中心となる小選挙区制のもとでは、
私たち選挙民は事実上、
第一党と第二党、
すなわち「自民党か民主党か」という選択肢しか
与えられない。
その第一党と第二党が手を組んで
連立政権を樹立してしまうのであれば、
何の選挙をしたのかさっぱりわからなくなってしまう。

「国難のおり、力をあわせるべきだ」というような
もっともらしい主張もあるようだ。
だが、
力を合わせてことにあたるべきは
政府をはじめとする行政機関などである。
国会においてはむしろ、
意見の違う政党はそれぞれ自らの主張を鮮明にして
よりよい復興の方策を国民の前で討議することこそが
本来のあり方ではないのか。
国会議員の仕事はまさに「議論をすること」であり、
具体的な仕事を一緒に現場ですることではない。
意見が違うのであれば「力をあわせる」のではなく、
「意見を闘わせる」べきなのである。

そして「力をあわせる」べき内閣は、
意見の隔たりのあるもの同士の大連立でなく、
意見の近い勢力が寄り集まってつくるべきである。
もし参議院での与党の「過半数割れ」を補う、
いわゆる「ねじれ対策」を考えるのなら、
先の選挙の際の原点に立ち戻り、
自民党ではなく、
社民党との協力関係の再構築をこそ追求すべきだ
(民主・国民新党に社民党の議席を合わせれば、
 参議院で法案が否決されても
 衆議院での再可決が可能となる)。

■「脱原発」でも各候補に違い

では、
「大連立」に否定的な海江田氏と馬渕氏について
見てゆきたい。
世間では「原発推進派」と目されてきた海江田氏だが、
「公約」では
「20年代初頭までに原発依存度を20%以下に。
 原発の新規建設は原則凍結し、
 40年以内に原発ゼロ」と、
以外にも数値目標を具体的に設定した
脱原発を唱えている。
このことは、
「安全性を確認した原発の活用で
 電力の安定供給を確保」などとしている野田氏の公約や、
「原子力依存を中長期的に低下させ、
 安全性を確認できた既存原発は
 再稼動させる」としている前原氏と比べると
一目瞭然である。

一方、
具体的な数値目標こそあげないが、
馬淵氏も原発への姿勢はかなり厳しい。
「原発再稼動に厳格な規制体制で臨み、
 核燃料サイクル政策は抜本的に見直す」としている。

東日本大震災の際、
1号機から6号機まであった福島第一原子力発電所のうち
4機が制御不能になってしまった事実から考えても、
地震大国・日本における原子力発電の継続は
危険性が高すぎると筆者は思っている。

その意味からも筆者は、
「脱原発」方向での公約を唱える
海江田氏・馬淵氏を評価したいと思うのである。

■「推薦人名簿」から考える

「小沢系中心」と報道されている海江田氏だが、
推薦人名簿を見ると
社民主義・リベラル系の政治理念を持った議員が
推薦人の中に少なくない。
旧社会党で若手改革派の旗手と言われた赤松広隆氏や
狭山事件・石川さんの弁護人を務める辻恵氏、
部落解放同盟を支持基盤とする中川治氏や
「現代社会民主主義研究会」の代表を務める山花郁夫氏、
参議院からは
愛知県で反貧困運動などに積極的な谷岡郁子氏などが
推薦人となっている。

一方、
馬淵氏に関しては、
筆者とリベラルな政治理念を共有できそうな推薦人は
少ない。
愛知県選出の大西健介氏や磯貝香代子氏などが
良心的そうだ、という程度である。

こうしたことから総合的に考え、
筆者としては今回の民主党代表選において、
海江田氏を応援したいと思っている。

むろん、
いずれの候補者が代表に選ばれた場合でも、
民主党は与党第一党として
結束して新代表を首相に指名すべきである。
筆者もまた、
「与党第一党・民主党、野党第一党・自民党」という構図が
変わらない限り、
いずれの候補者が民主党代表となった場合も、
旧弊な自民党政治からの脱却、
よりリベラルな政治の実現を求め、
あくまで民主党中心の政権を
相対的に支持してゆきたいと考えている。


【参考記事】
「最小不幸社会」菅新総理に期待
保守勢力主導の内紛に社民党はきっぱりNOを!

by imadegawatuusin | 2011-08-27 19:14 | 政治
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