「守る」運動から「変える」運動へ

「自民党をぶっ壊す」と言った小泉は総選挙で大勝し、
郵政民営化を実現した。
ところが次の総選挙では、
「政権交代」を掲げた民主党に大敗した。

名古屋の河村現象や大阪の橋本現象にも共通するのは、
「とにかく何でもいいから変えたい」という
「変えたい願望」である。

どのように変えるのかということなどは
とりあえず二の次なのである。
とにかく今の現状はよくないという不満が先に来る。
だから変えたい。
そして選挙においては、
「この人なら、この党なら現状を変えてくれる」と
思えるところに投票する。
キーワードとしては、
「既成のありかたへのNo!」である。

その証拠に、
現状に不満を言う人たちに
どんな政治を求めているのかとたずねても、
「もっと市民の方を向いた政治」とか
「迅速で機敏な対応をする政治」とか、
心構えや やる気の問題のようなものばかりで、
具体的な政治方針
(「もっと高福祉高負担の福祉社会」とか、
 「総理大臣に権限を集中した、
 機敏で迅速な対応の取れる中央集権的な体制」とか)が
出てくることはほとんどない。

こうした中で私たち「革新陣営」と言われる勢力は
どうだろうか。
実のところ「革新」と言いながら、
戦後「革新陣営」は一貫して、
「○○改悪反対闘争」や「××阻止闘争」しか
できてこなかったのが現状ではないか。
「現状に不満を持つ人たち」の目には、
「○○改悪反対」や「××阻止」だけでは
「現状保守」にしか映らない。

「革新陣営」の人たちはよく、
「護憲」と言う。
「憲法を守れ」と言う。
だがこうしたスローガンは、
「革新陣営」内部の人たちに対しては
説得力があるかもしれないが、
「現状に不満を持つ人たち」に
訴える力が薄いのではないか。

戦後66年が経ち、
戦争体験者はどんどん減っている。
「戦争反対」・「戦争はいけない」というだけで、
理屈を超えて
「そうだ、そうだ」と共感してもらえる時代は
終わったのである。

無論わたしは、
「だから9条を変えろ」と言いたいのではない。
ただ「守ろう」というだけでは、
もはやアピールできないと言いたいのである。

「憲法9条を守りたい」。
それはいい。
だったらそのために
「護憲」・「憲法を守れ」という言い方でいいのだろうか。

実際、
細かく見ていけば、
私たち革新陣営の目線から見ると、
今の憲法には文句をつけていい点が
いくらでも見えてくる。

例えば、
いま世界的に保守とリベラルの政治的焦点となっている
同性婚問題。
実は、
日本の民法は実に進歩的で、
同性婚を認めている。
民法によれば婚姻は、
「当事者双方」が署名した書面を届け出ることで
成立することになっている(民法739条)。
もっとも、
「男は、十八歳に、
 女は、十六歳にならなければ、
 婚姻をすることができない」とか、
「配偶者のある者は、
 重ねて婚姻をすることができない」など、
731条から737条までには禁止規定が並んでいるが、
ここには「男性同士・女性同士がダメ」という規定は
全くないのである。

だったらなぜ民法で認められているのに、
日本では同性婚が実現しないのか。
より上位の法律である憲法で
認められていないからとしか言いようがない。
憲法第24条には、
「婚姻は、
 両性の合意のみに基づいて成立し……」と書いてある。
両性の合意「のみ」に基づいて成立する以上、
男同士・女同士の合意によっては成立しない。
民法と同様に、
「当事者双方」の合意としておけばいいものを、
「両性の合意のみ」などと書くから
ややこしいことになるのである。

あるいは、
今の憲法では基本的人権に関する条項が、
「全て国民は……」という文言で始まっている。
選挙権とかそういったものには
議論があるかもしれない。
だが、
生存権のような「超基本的な人権」でさえ、
権利の主体は「国民」であって、
外国人に対してはそれが「準用」されているにすぎない。
日本国民の基本的人権は権利だが、
外国人の人権は
あくまで恩恵で認めてやっているに過ぎないという
立場である。

天皇制条項を定める1条から8条も含め、
「本当にこの憲法は完全なのか」という視点を失った
「憲法守れ運動」では、
なかなか共感を得られないのではないか。

確かに昔、
いわゆる「護憲派」勢力が
国会で3分の1を占めていた時代は、
「憲法を変えることはできないが、
 護ることはできる」ということで、
ただひたすら
「憲法を守れ」という言い方をするというのも
戦略上「あり」だったかもしれない。
だが、
今はもうそういう状況にないのである。

だったらむしろ、
私たち革新陣営の側からこそ、
「私たちは憲法をこういうものにしていきたい」と
提起して、
その中に9条をきちっと位置づけていくという積極性が
必要とされていくのではないか。

現行のものを
ただひたすら「守ろう」というだけの運動では
もはや人々の理解は得られない。
これからは「守る」運動から「変える」運動に
シフトしていかなければならない。
守るべきものを守るためにも
積極的に「変えよう」という攻めの姿勢を取り、
その中に守るべきものを
きっちりと位置づけるということが
大切になってくるのではないかと思うのである。


【参考記事】
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by imadegawatuusin | 2011-08-18 20:47 | 政治