名探偵コナン『14番目の標的』解説

――毛利小五郎、警察時代に妻に向かい発砲――

■目暮警部から英理・小五郎・新一へと続く
 トランプ連続殺人事件?
13.毛利小五郎の警察時代の元上司である目暮十三(じゅうぞう)警部が、
何者かによって狙撃される事件が発生した。

12.そしてその後、毛利小五郎の妻である
妃(きさき=クイーン)英理弁護士のもとに
毒入りチョコレートが送られ、

11.阿笠博士(士=十プラス一)が自宅にて狙撃……。

そう。
コナンや小五郎の縁者たちが、
トランプの数列順に次々と狙われているのである。

これは、
目暮十三警部から
毛利小郎を経て、
工藤新まで続く連続殺人事件の始まりなのか?

■衝撃のクライマックスシーンは圧巻 
今回の映画のキーパーソンは、
「おっちゃん」こと毛利小五郎探偵と、
その妻・妃英理弁護士である。
そもそも、毛利蘭の父母である2人は、
どうして別居するに至ったのか……。

蘭にはずっと、
忘れていた記憶があった。
それは、
警察官であった小五郎が英理に向かって発砲する瞬間を
目撃したという
幼いころの記憶である。
正確には、
英理を人質に取った犯人を確保しようとして小五郎が発砲し、
その弾丸が犯人ではなく英理に命中した、というものだ。

「思い出したくない記憶」は蘭の中で封印され、
長く蘭の心の底に眠っていた。
しかしその記憶が、
今回の事件をきっかけに蘭の頭によみがえってくる。

どうして小五郎は、
妻が人質に取られていたにもかかわらず、
それに構わず発砲したりなどしたのだろう。
結果、
小五郎の放った弾は英理にあたり、
英理は怪我をしてしまったのである。
英理が小五郎の家を出て行ったのは、
その日の晩のことだった。

これが、
2人の別居の原因なのか?
意地を張り合ったり、
けんかばっかりしていても、
根本的には互いのことを思いあう間柄なのだと、
蘭はずっと信じていたのに……。

よみがえった記憶を前に蘭はうろたえる。
『私 もう、
 お父さんのことが信じられない!』

現在時制で繰り広げられる「事件」と、
蘭の記憶の中の「謎」が、
作品の中で緊密に絡み合いながら同時進行する。
そして、
コナン=新一が放つ一撃が、
2つの「難問」を一挙に「解決」に導くことになるのである。
この衝撃のラストシーンの鮮やかさは、
見た人でないと分からない。

■「死なせやしねぇ。
  てめぇに、犯した罪の重さを判らせてやる!」 
妻・妃英理のからむ事件では、
毛利小五郎は急にかっこよくなる。
普段は「ヘボ探偵」とか「ダメな大人の代表」とか
言われ放題言われているが、
毛利小五郎という人は、
なんだかんだ言っても、
きめるときはきっちりきめる人なのである。

思えば、
「飲んだくれで女にだらしがなく、
 服装や食事などの普段の生活はいいかげん。
 しかし実は格闘技や拳銃の腕に優れ、
 愛する女性が危険にさらされたときには
 周囲が驚くほどの活躍を見せる……」というのは、
ある意味、
ハードボイルドもの探偵に共通した性質ではないか。
毛利小五郎にはそうした探偵たちの性質が
色濃く反映されているように思う。

全ての罪を暴かれ、
「死なせろ」とわめく犯人を前に毛利小五郎が語ったあの言葉、
「死なせやしねぇ。
 てめぇに、
 自分の犯した罪の重さを判らせてやる!」
という台詞は、
『名探偵コナン』のポリシーを実にストレートに、
そして力強く表現した名ゼリフだ。
このとき毛利小五郎は、
自らの高所恐怖症も かえりみず、
崩れ落ちる建物の際に駆け寄り、
犯人の命を助けるために大奮闘している。
『名探偵コナン』劇場版第5作『天国へのカウントダウン』の中でコナンが語った、
「悪いな。
 探偵として、
 あんたを死なせるわけにはいかねぇんだ」という台詞もいいが、
僕はやはり小五郎の直截な表現の方に
心動かされるものがある。

■その他余談いろいろ
ちなみに、
本作中の例の「水中キス」シーンは、
「コナン違い」の『未来少年コナン』の
あの超有名シーンのパロディーだろう。

また本作のエンディングテーマソングは、
名曲「負けないで」で知られるZARD(坂井泉水)の
「少女の頃に戻ったみたいに」。

くり返し見る夢に
目が覚めてみると
胸の動機が 早いことに気づく


というフレーズで始まる、
本作冒頭の蘭の夢をモチーフにした歌である。

サビの部分では

懐かしい 少女の頃に戻ったみたいに
やさしく髪をなでてくれる
そんな暖かい手を いつも待っていた


と、蘭の、別居中の母への思いが
熱く歌い上げられる良い曲だ。

なおZARD(坂井泉水)は、
アニメ『名探偵コナン』の主題歌として
「運命のルーレット廻して」を歌うなど、
『名探偵コナン』との縁が深い。


《劇場版『名探偵コナン』お薦めベスト3》
第1位『天国へのカウントダウン』
第2位『14番目の標的』
第3位『瞳の中の暗殺者』

《お勧め参考サイト》
「名探偵コナン『時計じかけの摩天楼』について」
「名探偵コナン『瞳の中の暗殺者』について」
「名探偵コナン『天国へのカウントダウン』について」
「名探偵コナン『迷宮の十字路』について」
「名探偵コナン『銀翼の魔術師』について」
「名探偵コナン『水平線上の陰謀』について」
名探偵コナン『漆黒の追跡者』を見て

酒井徹「名探偵コナン『ベイカー街の亡霊』と『自己犠牲』」

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by imadegawatuusin | 2005-09-01 16:48 | 漫画・アニメ