■だまし・だまされ種村ワールド種村有菜さんの作品の登場人物たちは、
一人一人みんな、
一番大切な「何か」を隠している。
だから、
作品を読み進めてゆくうちに、
「ちょっと待て、
これってそういう話だったの?」という瞬間に
何度も遭遇することになる。
一人一人が何らかの「嘘」をついているので、
それが全て積み重なると、
作品の構図そのものが反転してしまったりする。
(
『神風怪盗ジャンヌ』などはその典型例だ)。
気がつけば、
第1巻を読んでいたときとは、
「全く逆のお話」になっていたりすることが珍しくない。
本作・
『時空異邦人KYOKO』も当初は、
「『実は王族だ』ということを隠して生きているお姫様のお話」
として始まった。
ところがこの物語は、気がつけば、
「『実は王族ではない』ということを隠して生きてきた女の子のお話」
になっている、といった具合だ。
本作・『時空異邦人KYOKO』はおそらく、
種村有菜さんの、ある意味では最大の「失敗作」であろう。
某超有名少年漫画誌の「連載打ち切り」のような形で幕を閉じてしまう。
(特に3巻前半の、「異邦人」の集め方はあまりにも強引だ)。
しかしそんな中でも、
「だまし・だまされ」、「構図反転」の種村ワールドは全開だ。
「ストーリーは破綻してるけれど面白い」という、
ある意味不思議な作品なのだ。
登場人物のちょっとした台詞一つ一つから、
種村有菜さん独特の、
「きらめくようなセンス」が感じられる。
【本日の読了】
種村有菜『時空異邦人KYOKO』(集英社りぼんマスコットコミックス)評価:4