クーデター起こしたエジプト軍への援助停止を

(2013年9月6日掲載)

エジプト初の民主的選挙で大統領に選ばれたムルシ氏を
同国の軍部が拘束して政権を奪った政変について、
アメリカ国務省はクーデターと認定しないことにした。
アメリカ国務省の報道官は、
「そうした決定をすることは米国の国益にならない」と
説明したという。

アメリカの対外援助法は、
民主的な政府がクーデターで倒された国に対しては
援助を見合わせるよう定めている。
今回の事態をクーデターと認定した場合、
エジプト軍への軍事援助など
総額15億5千万ドルもの援助が凍結される。
そうなると、
軍事協力を通じてエジプト軍への影響力を強めることで
アメリカの友好国であるイスラエルの防衛を図ってきた
外交戦略に影響が出るため
判断を避けたのだと見られている(朝日新聞7月28日)。

確かにムルシ政権は、
稚拙な政権運営や経済立て直しの失敗などで
エジプト国民からの支持が低下していたとも
言われている。
イスラム主義を背景とする
ムルシ氏の「自由公正党」や
その母体である「ムスリム同胞団」が
政治権力を握る事態を
好ましくないとする考えも
理解できないわけではない。
しかしだからと言って、
エジプト初の民主的選挙で選ばれた政府を
軍部が武力で打倒して政権を奪う事態を
容認していいということにはならない。

民主的手続きを経て選出された政権が
直近の民意を反映しない場合の正当な対抗手段は、
署名活動や集会・デモ・ゼネラルストライキ・
不服従運動などの
平和的かつ大衆的な圧力で
辞任に追い込むことくらいだろう。
また宗教勢力が
民主的手続きを経て政権を取ること自体が
いけないのだということになれば、
宗教的な政治の実現を求める人々は
暴力的な政変に訴えるしか方法がなくなる。
民主主義は、
民主的な手続きに参加して政治を動かしていこうとする
あらゆる勢力に開かれたものでなければならない。
民主的システムがあらゆる勢力に開かれてこそ
社会は安定するのである。

イラク戦争などでアメリカは、
「民主化」を理由に
他国への侵略攻撃を正当化してきた経緯がある。
そのアメリカが「国益」を理由に、
こともあろうかクーデターを起こした軍部に
莫大な軍事援助を与え続けるのは
ご都合主義に他ならない。
軍による民主的政権の転覆は
どう言いつくろってもクーデターである。
自国の都合でクーデターと認定したり
しなかったりするのでは
二重基準のそしりを免れない。

アメリカはエジプト軍への軍事援助を
ただちに凍結するべきだ。
日本もエジプトへの援助の見直しが必要だ。
同志社大学大学院の内藤正典教授は、
「新博物館の建設など、
 不要不急のハコ物援助については、
 暴力で民主化を破壊した国には、
 断固として認めない姿勢を示す必要がある」と
指摘する(朝日新聞7月31日)。
自由と民主主義とを
本当に世界に広げてゆくのに大切なのは、
イラク戦争のような武力攻撃への追随ではなく、
今回のクーデターのような民主主義の危機に際して
筋の通った対応を地道にきちんと取ることであろう。

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by imadegawatuusin | 2013-08-01 17:04 | 国際