伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』

今、一番センスを感じさせる小説家は
伊坂幸太郎である。
2004年『このミス』2位に選ばれた
『鴨とアヒルのコインロッカー』を読んだときの衝撃を
僕はいまだに忘れることができない。

何気ない台詞回しの端々に
才能のきらめきを感じる……というか、
とにかく えげつなくすごいのである。
個々バラバラに見えた話が
最後にバシッとまとまった瞬間には
思わずため息を漏らしてしまう。

そんな伊坂幸太郎の原点ともいうべき作品が、
本書・『陽気なギャングが地球を回す』(祥伝社文庫)である。
伊坂幸太郎のデビュー作はもちろん
『オーデュポンの祈り』であるが、
本作の土台となった作品はそれより前に書かれている。
伊坂幸太郎は『オーデュポンの祈り』で
新潮ミステリークラブ賞を受賞する以前、
この賞に2つの作品を応募して落選している。
そのうちの最初の作品・「悪党たちが目にしみる」こそが、
本書の原型であるということなのだ。

ちなみに、若い伊坂が書いたこの作品は
「選考委員から徹底的に叩かれた」という。
それは、
「本人がもう小説を書いちゃいけないんだ、という気持ちになるほど」
であったという。

それを何度も何度も練り直し、
これほどの作品にまで磨き上げたのであるからすばらしい。
ちょっとしたエピソード同士が終盤で意外な形で結びつく、
最後の最後まで気を抜けない奇想天外な作品構成。
「嘘を見抜く男」・「すりの名手」・
「演説の達人」・「完璧な体内時計を持つ女」など奇抜で個性的なキャラクターたち。
そして何より「伊坂節」とでも言うべき
皮肉の聞いたテンポのよさが全快で、
何も考えずにスラスラ読めて面白い。

伊坂幸太郎『陽気なギャングの日常と襲撃』へ→

【本日の読了】
伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』祥伝社文庫(評価:5)

《伊坂幸太郎お薦め作品ベスト4》
1.『アヒルと鴨のコインロッカー』
2.『チルドレン』
3.『死神の精度』
4.『陽気なギャング』シリーズ
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by imadegawatuusin | 2006-05-22 09:58 | 文芸