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「マンガ・アニメに女装少年」 『朝日新聞』が報道

――いま、男性が「女装少年」に「萌えて」いる!――

■「主人公の女装で人気上昇」
11月9日の「朝日新聞」朝刊に、
「表現の秋 マンガ・アニメに女装少年」
という記事が掲載された。
「女装少年モノ」の大ファンである僕にとっても、
大変興味深い記事である。

数ある「女装少年モノ」の中でも
僕がもっとも愛する作品は、
やぶうち優さんの『少女少年』だ。
この『少女少年』や作者・やぶうち優さんに関する情報を発信している
「少女少年ややぶうち優先生に関するブログ」の執筆者・yuuさんも
ブログの中でこの記事を取り上げ、
少女少年のことについても書いてもらえると嬉しかった

とおっしゃっている↓。
http://pub.ne.jp/yuugirlboy/?entry_id=402963

僕もまったく同感だ。
ただ、
どうやらこの記事の趣旨は、
「女装少年が登場するマンガやアニメが(最近)目立つ」、
「しかも少年マンガで、こうした傾向が見られ始めた」
ということのようであるから、
すでに連載の終了した、
しかも「少女漫画」系に分類される『少女少年』は
取り上げにくかったということかもしれない。

実際のところ、
少女漫画誌における「女装少年」というものは
以前からそれほど珍しいものではない。
やはり最近の現象として注目すべきは、
(僕も含む)男性が「女装少年モノ」に夢中になっている、という、
その点にこそあるのだと思う。

そういう意味では、
『椿ナイトクラブ』の作者・哲弘さんの、

「描きたいように描いたらこんなことに」

とか、
少年が男にホレられたり、
女装したりした回は読者アンケートの順位が上がった


といったコメントを記事の冒頭に持ってきた「朝日新聞」は
相当「いいセンス」を持っているようだ。

正直言って、
僕のような「ゴリゴリの女装少年おたく」からみれば、
この『椿ナイトクラブ』という作品は
あまり「女装少年モノ」という感じがしない。
確かに『椿ナイトクラブ』は、
表紙では主人公が女装している。
しかし実際に中身を読んで見ると、
作品の中で「女装」シーンがあるのは
数百ページのうちのほんの数カットでしかない。
僕ならおそらく、
この作品が「女装少年モノ」であると認識すること自体が
できなかったのではないかと思う。
(作品自体、あまり好みではないというのもあるが)。

ところがこの「朝日」の記者は、
『少年チャンピオン』で連載されているこの作品に目をつけて、
作者である哲弘さんにインタビューを行ない、
「少年が男にホレられたり、
 女装したりした回は読者アンケートの順位が上がった」という
実に絶妙なコメントを拾ってきている。

『少女少年』とか『ミントな僕ら』とか
(いや別に、
 『少年ヴィーナス』でも『ライバルはキュートBoy』でも何でもいいのだが)、
僕たちが考えているような典型的な「女装少年モノ」というのは、
基本的に、
最初から「少年が女装する」というコンセプトを
大前提にして書かれた作品である。
それに対して『椿ナイトクラブ』はまったく異質な作品なのだ。
作者は、この作品においては
少年を女装させようと最初から考えていたわけではなかったのである。
ところが、「もののはずみ」で女装させることになってしまったら、
どういうわけか人気が出た。
そして、男にホレさせたら さらに人気が出た。
別にそんなつもりはなかったのに、
「描きたいように描いたらこんなことに」なっていた……。
これは
(作品自体の評価は別にして)、
とても興味深い話だと僕は思う。

従来、
確かに少女漫画の世界では、
「男の子を女装させてみると人気が上がる」
というような現象はあったかもしれない。
だが、
少年雑誌で「男を女装させてみると読者の支持がアップした」
というのはあまりなかったように思われる。
その意味で、
「いま、女装少年に男が惹かれている」という現象を浮き彫りにするのに、
「朝日新聞」は実にいい素材を拾ってきたなと、
僕は感心しながらこの記事を読んだ。
(記事の中では少女漫画も2作紹介されているが、
 そのうちの『プリンセス・プリンセス』は、
 「『男子校に潤いを与えるため』
  主人公らが女装させられる」ということを伝えるためのものなわけだし)。

この記事を1本 書くためだけに
わざわざ「女装少年モノ」の同人誌即売会場にまで足を運んで
来場者にインタビューを試みているあたり、
記者の熱意が感じられる。

そして、
このインタビューに答えた男性のコメントが
これまたふるっている。

マンガもこれだけ増えると、
普通の女の子では物足りなくなる


確かに。
だが、これほど
「女装少年が登場するマンガやアニメが目立つ」ようになってくると、
そろそろ
「普通の女装少年では物足りなくなる」ような状況になりつつあるとも言えるかもしれない。
僕自身、
この記事で紹介されている作品の中でも、
宮野ともちかさんの『ゆびさきミルクティー』は結構好きだし、
つだみきよさんの『プリンセス・プリンセス』も前々作の『革命の日』以来愛読してきた一方、
新條まゆさんの『愛を歌うより俺に溺れろ!』などは
あまり趣味に合わない感じがしている。
(特に女装少年の性格!)

ボーイズラブなどは
既に「そういう時代」に入っていると言える。
どんなにボーイズラブが好きな人でも、
これだけジャンルが多様化してくると
「ボーイズラブなら何でも好き!」という人は
ほとんどいない。

あと、最後に少々不満な点を数点だけ挙げておきたい。
「朝日新聞」に載せるのであれば、
やはり今 連載中の「女装少年モノ」の中では
ずば抜けた社会性を持った、
言い換えれば本来 新聞が率先して取り上げなければならないような「重い」テーマをきちんと扱い、
なおかつそれを暖かく、
ふんわりと、軽やかに描いた
志村貴子さんの『放浪息子』をぜひ取り上げてほしかった。
(これほど「重い」テーマを
 これほど軽やかに描くというのは、
 本当に至難の芸当である。
 異性装者や「性同一性障害者」を「軽く」あつかい、
 ただ「変態」扱いして笑いものにするのは簡単であるが、
 こうしたテーマを「軽やか」に、
 かつ「暖かく」描くのは並大抵の技術では不可能だ)。

それから、
宮野ともちかさんの『ゆびさきミルクティー』の紹介として、
「主人公の少年は、
 美少女姿の自分自身にいつしか引かれる」
というのはいかがなものだろうか。
確かにそれっぽい描写がないではないが、
どうもピントが外れているというかなんというか……。

この場合、
「子供のころからの夢だったサッカーの道を捨ててでも
 女装の道を選んだ主人公
 (このまま運動を続けていると体に筋肉がつき、
  女装ができなくなってしまう!)」
という、主人公の女装に賭ける熱意というか決意というか、
そういった部分を中心に
紹介したほうがよかったんじゃないかと
僕には思えてならないのであるが……。


酒井徹お薦めの女装漫画》
1.やぶうち優『少女少年』シリーズ(Ⅰ~Ⅶ)、小学館てんとう虫コミックススペシャル
2.吉住渉『ミントな僕ら』全6巻、集英社リボンマスコットコミックス
3.志村貴子『放浪息子』エンターブレイン
4.なるもみずほ『少年ヴィーナス』全4巻、角川書店あすかコミックス
5.松本トモキ『プラナス・ガール』ガンガンコミックスJOKER

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