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外国人「研修生・実習生」問題学習会に参加

■最賃無視・人身拘束・超長時間残業
2月18日、
名古屋労災職業病研究会(以下、労職研)の主催で、
外国人「研修生・実習生」問題に関する学習会が開かれた。

この制度は本来、
発展途上国などから来た研修生・実習生に
日本企業の持つ高度な技術・技能を習得してもらい、
帰国後、現地の産業発展に貢献してもらうための国際貢献事業として誕生した。
実際、
僕が期間従業員として勤めるトヨタ自動車の工場にも、
海外のトヨタ現地法人から多くの研修生・実習生が派遣されてくる。
彼らは日本のトヨタの工場で「トヨタ生産方式」を学び、
帰国後は現地生産の中核として活躍する幹部候補生なのである。

ところが、
こうした本来の研修生・実習生制度の趣旨に反する運用が
各地で行なわれている。
発展途上国の労働者を「研修生・実習生」の名目で受け入れ、
実際には下請け・中小零細企業で、
技能習得もへったくれもない「単純作業」に従事させる。
それでいながら、
「彼らは『研修生』であって『労働者』ではない」などと称し、
日本の労働法規で義務付けられた最低賃金すら支払わず、
罰金まで取る。
超長時間残業をさせながら正当な残業割増も支払わない。
(そもそも、
技術の「研修」に来たはずの人がなぜか残業をしているということ自体、
制度運用の欺瞞を表しているのだが)。
要するに、
海外の労働者を安価な労働力として使用するための隠れ蓑として、
この「研修生・実習生」制度が悪用されているのである。

学習会ではまず、
労職研の名嶋弁護士が制度の概要について説明した後、
主に中国人「研修生・実習生」の組織化に取り組んでいる
岐阜一般労働組合(コミュニティユニオン東海ネット参加)の本間委員長が現状報告を行なった。

岐阜の中国人「研修生・実習生」は、
通信の自由も移動の自由も剥奪された、
一種の「人身拘束」状態に置かれている。
使用者側は「実習生・研修生」の日本人との接触を極度に警戒しているようだ。
彼ら/彼女らは会社に無断での外出を禁じられているのはもちろん、
たとえ外出許可を得ても単独外出は許されない。
パスポートも預金通帳も社長に取り上げられている。
本国では、
日本で「問題」を起こせば没収される何十万円もの「保証金」を取られている。
電話は、
相手先と目的とを事前に会社に報告し、
了解を得なければ使えない。
それも電話の相手は、
原則的に本国の両親・兄弟のみと制限されている。
(頻度は2週間に1回、1回につき10分程度、との「目安」まである)。
無論、携帯電話の所持は御法度である。

■残業は「内職」、労働条件は「口外禁止」、規則違反は「連帯責任」
学習会では、
実際に「研修生・実習生」が日本企業に派遣される際の
「就労条件、確認書」のコピーが
レジュメとして配布された。
それによると、
この確認書は「日本の法律に関係なく(!)……全てに優先する」ものであり、
「内容に疑問や不満がある研修生・実習生は
 速やかに帰国させる」とのことなのだ。
そしてご丁寧にも、
「この確認書および内容について、
社外はもちろん社員・パート・内職者へも口外厳禁」と
口止めまでなされている。
内容としては、
上に書いた「無断外出・単独外出の禁止」や
「電話の事前報告・利用制限」の他、
「××株式会社のどのような罰則・罰金にも従う」という
一方的で無制限な罰則規定や、
「他の研修・実習生が規則に反する行動・行為をする、
 もしくは予測される場合は……
 総務へ報告する。
 場合によっては連帯責任となる」といった密告強要規定がある。

よって、
外国人「研修生・実習生」の組織化は、
こうした悪条件をかいくぐってのものとなる。
使用者側の監視網を潜り抜けて何とか連絡を取り付け、
夜闇にまぎれて打ち合わせを行なう。
しかし、
そうした動きが使用者側に察知されれば、
「強制帰国」が待っている。
男数人が押し寄せてきて、
(場合によっては手にした木刀で机をバンバンぶったたくといった威嚇のもとに)
「研修生・実習生」を拉致し、
車で空港に連行する。
(先述の「確認書」によれば、強制帰国の「帰国費用は全額本人負担」だ)。
それを知った組合側は急遽 空港税関に連絡、
強制帰国を水際で阻止し、身柄を組合に奪還する。
しかし、
寮を追い出された彼らにはもはや住む所がない。
彼らを受け入れてくれる支援者を求めて、
場合によっては東京にまで奔走することになるという。
団体交渉を始めても、
「残業は会社が命じたものではなく、
 自発的に行なわれたもの」と言い張ったり、
それが通らないとみると今度は
「勤務時間外の仕事は全て内職だった」と詭弁を弄するなど、
なかなか一筋縄ではいかないようだ。
(これは究極の「偽装請負」ではないか!
 「内職」中に労災が起きたら、当然すべて「自己責任」となるのだろうか)。

報告を聞いて、
僕は岐阜一般労組の行動力に圧倒された。
しかし、
この問題は他人事ではない。
ここ愛知県でも、
トヨタ自動車の下請け会社・TMCで働いていたベトナム人実習生が、
裁判闘争に立ち上がっている。
学習会では最後に、
労職研の杉浦代表の呼びかけで
「TMCのベトナム人実習生6人の裁判闘争を支える会」が結成され、
会への参加が呼びかけられた。
連絡は
名古屋労災職業病研究会(電話・FAX:052‐838‐7420、メール:roushokuken@be.to)まで。


【参考資料】
「TMCのベトナム人実習生6人の裁判闘争を支える会」を
結成しました。(2007年2月18日)
・・・・・多くの方々のご参加をお願いいたします!!・・・・・


(有)ティエムシー(愛知県豊田市渡刈町3‐138‐1、森平勝取締役会長、以下TMCという)で働く
ベトナム人女性実習生6人は、
2003年から2004年にかけて来日し、
トヨタ社のヘッドレストやアームレストの縫製の仕事をしてきました。

しかしTMCでは、
初年度の研修期間から、
本来は禁じられている残業が常態化し、
同時にパスポートや預金通帳の取り上げなどの人権侵害も
行われてきました。
また、
作業中の彼女らのトイレ時間をはかり、
罰金と称して1分当たり15円を賃金から一方的に控除したのでした。
その他にも、
携帯電話の所持を禁止したうえで、
会社の電話を使用すると1回につき1万円、
就業後の掃除を忘れた場合は1回につき2,000円を、
やはり罰金として徴収していたのです。

これらTMCの横暴に対して彼女らが抗議すると、
森平会長の息子は彼女らを自動車で追い回し、
その中の一人が転んでケガをするという事態も起きました。
セクシャルハラスメントの言動なども
日常的に行われていました。

TMCの基本給は愛知県の地域別最低賃金688円を下回っていたため、
彼女らは豊田労働基準監督署に申告し、
同監督署は、一次受け入れ機関である
豊田技術交流事業協同組合(愛知県豊田市中町中前43-1、伊藤和彦理事長、以下協同組合という)傘下22社に対して、
総額5,000万円(約200人分)を支払うよう
是正指導を行いました。

ところがこれを逆恨みしたTMC経営陣は、
彼女らの技能実習契約更新に当たり、
彼女らの実質的「収入」の引き下げをねらい、
それまでの日給月給制から完全時給制への改悪を強要し、
彼女らが契約更新を留保するや、
「即刻ベトナムに帰れ」と罵倒したのでした。

TMCや協同組合に対して、
これまでの人権侵害や労働法令違反について、
謝罪と補償を求めました。
しかし
TMC、協同組合の姿勢は極めて不誠実であり、
6人は訴訟提起を決心しました。

わたしたちはここに、
「TMCのベトナム人実習生6人の裁判闘争を支える会」結成ならびに
同会への参加を呼びかけます。

世界企業トヨタの製造現場で行われている人権侵害、労働法令違反を許さず、
彼女らの権利救済のため、
皆さんのご支援を心からお願い申し上げます。
ご賛同頂いた方には
裁判闘争の予定や経過を随時、ご報告致します。
現在、
裁判を維持するための諸費用が全くありません。
彼女たちの裁判を支えるために、
是非下記までカンパをお願い致します。

郵便講座番号:00870-5-205553
口座名称:TMCのベトナム人実習生6人の裁判闘争を支える会

2007年3月7日
「TMCのベトナム人実習生6人の裁判闘争を支える会」
呼びかけ人  名古屋労災職業病研究会 代表 杉浦 裕
(名古屋市昭和区山手通5-33 杉浦医院4F)


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