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トヨタ系「愛知製鋼」下請、従業員ら地位保全請求

――名古屋ふれあいユニオン組合員、偽装請負の実態を告発――

■「偽装請負隠しで解雇は無効」
トヨタグループ13社の一つ、愛知製鋼(旧豊田製鋼)の
孫請け会社「三築」(代表取締役:大久保文和)の従業員2名が28日、
「正当な理由なく解雇された」として、
従業員としての地位保全と賃金分の支払いとを求める仮処分を
名古屋地裁に申請した。
申請したのは「三築」従業員の追川良二さん(47)とAさん(28)。
二人や他の「三築」の従業員、
そして「三築」下請けの十数社の従業員計約200名の大半が、
トヨタ系企業・愛知製鋼の工場で、
愛知製鋼従業員の指揮命令を受けて働く「偽装請負」の状態にあり、
「こうした違法行為をごまかすために、
 実態を熟知する2人を不当に解雇した」と主張している(中日新聞朝日新聞5月29日)。

三築は「朝日新聞」の取材に対し、
「現段階ではコメントは差し控える」と回答。
愛知製鋼とアイチセラテック(「三築」の直接の請負主に当たる愛知製鋼グループ企業)は、
「偽装請負の状態はない」とコメントしている〔注1〕。

2名は他の「三築」従業員やその下請けの従業員らと共に
愛知県の個人加盟制労働組合「名古屋ふれあいユニオン」に加盟。
雇用の確保や職場環境の改善などを訴えてゆく構えである。

〔注1〕「偽装請負の状態はない」という、
愛知製鋼とアイチセラテックのコメントについて本人たちに聞いたところ、
「こんなん、
 服の汚れてへん奴(筆者注:=現場を知らない人間)が
 電話の前で言うてるだけや。
 現場を見たら一発でわかる」と一蹴した。
「現場第一主義」はトヨタ生産方式の基本中の基本の「はず」だが……。


以下は、
名古屋ふれあいユニオン機関紙・『NFU ふれあい通信90号』に掲載された
本件に関する記事である。


愛知製鋼の下請企業で解雇事件発生!

東海市に本社のある
トヨタグループ企業「愛知製鋼」で働く下請労働者たちに、
大きな雇用問題が発生している。
その雇用関係は複雑で
「偽装請負」契約そのものであり、
労働条件も極めて劣悪である。

今回、
愛知製鋼の二次下請「有限会社三築」に所属する2名の労働者が
解雇された。
名古屋地方裁判所に地位保全の仮処分申立を行うと共に、
今後予想される事態に備え、
愛知製鋼などに対し
交渉を申し入れていく予定だ。

■愛知製鋼下請企業再編の動きの中で解雇が発生
2名の勤める三築は、
愛知県東海市に本社のある
鋼材メーカー「愛知製鋼株式会社」の下請企業「アイチセラテック株式会社」と
業務請負契約を締結し、
愛知製鋼の工場内に従業員を就労させている企業であり、
愛知製鋼の「孫請け」にあたる。
従業員は30数名。
一方で三築は
アイチセラテックからの依頼を、
10数社の企業に請け負わせている。
【愛知製鋼――アイチセラテック――三築――10数社の下請け企業】
この契約関係は長年続いてきた。
今年に入り、
アイチセラテックが三築との契約を打ち切り
下請け企業の再編を行う動きが表面化し、
三築と10数社の下請企業で働く労働者約200名の雇用がどうなるか
不安に思った労働者の有志がユニオンに相談に来た。

相談によれば、
契約打ち切りの動きのなかで、
三築の社長が下請けの社長とトラブルになったことがきっかけで、
愛知製鋼から「立ち入り禁止」になり、
自分の職場での影響力を保つために課長職3名を解雇する動きがある、
とのこと。
そしてその予想通り、
会社は3名の課長に対し解雇を通告してきた。

■ユニオン、解雇撤回を申し入れ
解雇通告を受けた3名の課長のうち2名がユニオンに加入し、
すぐに会社に対し解雇撤回に向けた交渉の申し入れを行い、
5月2日に第1回団体交渉が行われ、
会社は解雇理由を以下のように回答した。

1.9月30日にアイチセラテックとの取引が終了することにより、
  会社を廃業する。
2.廃業に向け業務を縮小する必要がある。
3.現場の労働者を解雇すると仕事が止まるので、
  管理者である課長3名を解雇することにした。

これに対し組合は、
今回の解雇は整理解雇の用件
(解雇の必要性・緊急性、解雇回避の努力、人選基準、労働者との協議等)が
全く考慮されずに行われた不当解雇であり、
直ちに解雇を撤回し、
両氏を職場に戻すよう会社に求めた。

交渉と同時に、
2名の地位保全と賃金の支払いを求める仮処分裁判の手続きを進めている。

■事件の背景に大掛かりな偽装請負が
2名が解雇された背景として、
愛知製鋼における偽装請負・実質派遣労働の実態がある。

三築及びその下請け10数社で働く労働者は200人にのぼるが、
その大半が労働契約上の雇用主から指揮命令を受けて働くのではなく、
愛知製鋼の従業員から指揮命令を受けて働いている。
すなわち、
アイチセラテック、三築、下請け10数社は
いずれも業務請負業の形式を取りながら
労働者を派遣するだけの「偽装請負」を行っている訳で、
職業安定法で禁止された労働者供給事業を行っている。
この間全国で問題になっている偽装請負が
トヨタの有力なグループ企業「愛知製鋼」で大々的に行われているのだ。

一般に、
違法な労働者供給事業においては
事業者が最大限の利益を得るため、労働者の諸権利を大きく侵害する。
アイチセラテック、三築、下請け10数社においても、
社会保険未加入、労災隠し、雇用契約書がない、などの
労基法に反する労務管理に加え、
不明朗な会計処理や、
企業間の癒着などが従業員の知るところとなり、
一部の従業員が行政に違反申告するなど、
職場改善に向けた取り組みが行われていた。

その結果、
行政機関の指導もあり、
業務請負料金の積算方法を
労働者の工数から業務量に変更することにより
「業務請負」の体裁を整えると共に、
下請けの再編の動きになったと考えられる。

今回、アイチセラテックが
9月30日で三築との契約を打ち切るとしたことはその一環であり、
200名に及ぶ労働者の雇用が不安にさらされることになった。
長年偽装請負を行ってきたのは各企業、
特に愛知製鋼とアイチセラテックに重大な責任があり、
再編の犠牲をこれらの労働者に負わせることがあってはならない。
今回の解雇は、
単に三築の経営者の雇用責任を放棄した無責任な対応であるばかりではなく、
愛知製鋼・アイチセラテックと共同して行ってきた偽装請負契約に対する
誤った対応である。

■すべての労働者の雇用を守るために
2名に対する解雇がなんら合理的理由のないものであることは
火を見るより明らかであり、
解雇撤回・職場復帰させるべきだ。
しかし両氏が職場に復帰しても、
アイチセラテックからの一方的な取引終了により、
三築の他の従業員と共に雇用を失う危険性がある。
これまで三築経営者と合意の上
重層的な偽装請負を行ってきた愛知製鋼及びアイチセラテックは、
200名に及ぶ下請け労働者の雇用に
責任ある対応をとることが不可欠である。

今後ユニオンは、
すべての下請け労働者の雇用が保障された問題の解決に向けて、
愛知製鋼・アイチセラテック・三築等との交渉に
取り組んでいきたい。

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by imadegawatuusin | 2007-05-29 22:44 | 労働運動
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