人気ブログランキング | 話題のタグを見る

愛知県における日系ブラジル人の組織化

――民族・国籍の違いを超え、労働組合に結集!――

■ふれあいユニオン副委員長・マルコスさんの大奮闘
愛知県の個人加盟制労働組合・名古屋ふれあいユニオンでは、
現在、
副委員長の
平良マルコス(本名:ダ=ローシャ=アントニオ=マルコス)さんの奮闘により、
愛知県内全域から多くの日系ブラジル人が
続々とユニオンに加盟している。

以下は、名古屋ふれあいユニオンの浅野文秀委員長
「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」に送った原稿である。
この間の、
日系ブラジル人の間での組織拡大のいきさつが
わかりやすくまとめられているため、
委員長の厚意により ここに転載することにした。

民族・国籍・雇用形態の違いを超えて労働者の団結を打ち固め、
愛知に、人権労働運動の灯をともそう!
職場の理不尽を許さない、
強くやさしい地域労組を建設しよう!


愛知県における日系ブラジル人の組織化
名古屋ふれあいユニオン 運営委員長 浅野 文秀

現在日本に滞在する日系ブラジル人は約30万人、
愛知県は5万5千人と全国で最も多い。
中でも、
豊田市、豊橋市、岡崎市の三市で3万8千人を超える日系ブラジル人が滞在し、
地元の企業で働いている。

私たち名古屋ふれあいユニオンは、
1999年の結成以来、
誰でも一人でも入れる地域労働組合として活動してきたが、
一昨年2005年までは外国人組合員の参加は数えるほどであった。
しかしその年、
豊橋市に在住する日系ブラジル人、
ダ ローシャ アントニオ マルコス氏(通称マルコス)が
組合に参加したことをきっかけに、
事態は一変した。

マルコス氏は当時、
派遣会社ラポールサービスで通訳として働いていた。
しかし会社が社会保険に入れてくれないので、
豊橋市に国民健康保険の加入を求めたところ、
会社勤めであるので認められない、と言われ、
昔大阪で知り合った村田浩治弁護士に相談し
豊橋市役所と交渉し問題を解決した。
その際同弁護士が今後のためにも、と
労働組合への参加を勧めたことで、
当ユニオンに参加することになった。

ユニオンに参加後、
マルコス氏は職場の派遣社員にユニオンへの参加を呼びかけ、
十数名が参加した段階で、
派遣会社に待遇改善を求める団体交渉を開催し、
有給休暇の取得などが認められた。
すると2006年6月、
会社は
マルコス氏が有給休暇の取得方法について上司と対立した際に
「バカヤロー、俺は子供ではないんです」と発言したことを理由に、
突然解雇通告を行った。
組合とマルコス氏はただちに上記の村田弁護士と
名古屋の弁護士2名に弁護団を組んでもらい、
「地位保全の仮処分」を名古屋地方裁判所に申立てた。
そのことが「外国人が労働組合を組織して解雇された」事件として
新聞各紙(ブラジル人向けの新聞にも)に取り上げられることになり、
その後愛知県内の多くのブラジル人から相談が来るようになった。

マルコス氏は上記の地位保全裁判に3ヶ月で勝利し、
解雇無効の本裁判も今年5月勝利判決を受けた。
そして解雇通告により職場を離れて以降、
精力的に地域の日系ブラジル人の労働相談に応じることとなり、
1年間で100名を越す勢いで日系ブラジル人をユニオンに迎え入れ、
今年9月末現在、
140名を越える日系ブラジル人組合員が当ユニオンに参加し、
日々労働問題について交渉に取り組んでいる。
交渉の課題で最も多いのが、
解雇または雇い止め。
そして労災問題である。

私たちの取り組んできた範囲では、
日系ブラジル人の労働条件のうち、
賃金については日本人と大きな差はない。
工場で働く男性労働者で、時給1200円から1300円、
残業や夜勤を多くやるので、
月額30万円を超える労働者も少なくない。
ただし、
ほとんどが「派遣」もしくは「業務請負」で働いており、
期間の定めのある雇用(3ヶ月とか6ヶ月)のため、
「期間満了」で雇い止めになるケースが非常に多い。
丁度、この間日本の労働市場で増加している
日本人の非正規雇用労働者と同様である。

労災問題は深刻だ。
安全装置の不整備に加え、
日本語による簡単な仕事の指示だけで、
十分な安全教育、作業指導が行われないために、
仕事初日で重大事故に遭う労働者も多い。

最近当ユニオンが取り組んでいるのは、
派遣先への直接雇用要求だ。
労働者派遣法の製造業への解禁により、
かえってこれまで放置されていた
業務請負という名の偽装派遣の違法性が浮き彫りになり、
長い間派遣で働いてきた外国人労働者についても、
派遣先で直接雇用するよう求める機会が増えた。
要件を満たした労働者については、
労働局を通じて派遣先への直接雇用の行政指導を行うよう働きかけ、
これまでマルコス氏の職場など、
数件であるが実現してきた。

日系ブラジル人の加入は、
豊橋から岡崎、名古屋周辺と広がり、
今後は豊田地域からの参加も予想される。
また最近は
ペルー人、フィリピン人など
他の国の日系人の相談も増えてきている。
結成から最初の6年間の活動とは様変わりした現状に対応できるように、
ユニオンの体制も整備していきたいと思う。

PS. 
日系ブラジル人の働く職場で、
最近中国人やベトナム人の研修生実習生が導入されるケースを良く聞く。
外国人研修生実習生についても
ここ愛知県は全国有数に地域になってきた。
「より安い労働力」として
最低賃金以下で働かされている彼らの問題への取り組みは
今後の当ユニオンの課題だ。


【関連記事】
派遣会社の労組役員解雇は無効:名古屋地裁 認定
「派遣で勤続9年」労働者の直接・正規雇用を!
トヨタ下請・ティムス本社前抗議行動に参加
ホンダ下請・ムサシ鉄工の「騙し討ち解雇」糾弾!
名高裁:「派遣先の受入拒否、解雇理由とならず」

【お勧め参考記事】
同胞の雇用守ります《外国人労働者を助けるマルコスさん》


職場の理不尽を許さない、強く優しい地域労組の建設を!
愛知県下の未組織労働者は名古屋ふれあいユニオンに結集しよう!



労働組合名古屋ふれあいユニオン
雇用形態や国籍に関わりなく、
愛知県下で働くすべての労働者が一人から加盟できる
地域労働組合(コミュニティユニオン)。
コミュニティユニオン全国ネットワーク
コミュニティユニオン東海ネットワークにも参加。
今年3月に開かれた第9回定期大会では、
連合産別・全国ユニオンへの加盟について討議するとする活動方針を採択。
日ごろから組合員の学習会や交流会・相談会などを
積極的に企画しながら活動している。
現在、組合員数約200名。
組合員は組合費月額1500円。
賛助会員(サポーター)は年会費5000円。
住所:〒460‐0024
    名古屋市中区正木4-8-8 メゾン金山711号室
    (JR・地下鉄・名鉄金山駅下車 名古屋ボストン美術館の向かい)
電話番号:052‐679‐3079(午前10時~午後6時)月~金
ファックス:052‐679‐3080
電子メール:fureai@abox.so-net.ne.jp
郵便振替 00800‐8‐126554
ホームページ
http://homepage3.nifty.com/fureai-union/
by imadegawatuusin | 2007-10-17 12:42 | 労働運動
<< 「派遣で勤続9年」労働者の直接... 東海労働弁護団第48回総会報告 >>