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ホンダ下請・ムサシ鉄工の「騙し討ち解雇」糾弾!

――正社員になった者を「雇止め」!?――

■武蔵精密系企業の詐欺的な手口
2007年9月、
ホンダ車などの金属部品下請けメーカー・武蔵精密系の
ムサシ鉄工(代表取締役社長:松井繁裕)から、
一人の日系ブラジル人青年・平良マルセロさんが、
「雇用契約の更新はできません」と
「雇止め」の通告を受けた。
平良マルセロさんは、
わが名古屋ふれあいユニオンの副委員長である
平良マルコスさんの弟であり、
名古屋ふれあいユニオンの組合員でもある。

この知らせを聞いたとき、
ユニオンの一同は驚いた。
というのもマルセロさんは、
以前は人材派遣会社・「ラポールサービス」から
ムサシ鉄工に派遣されていた派遣社員だったのであるが、
名古屋ふれあいユニオンの働きかけに基づく労働局の指導などもあり、
終身雇用の正社員として
ムサシ鉄工に直接雇用されたはずだったからだ。

当時の弁護士からのメールにも次のようにある。

労働局に初めて派遣法に基づく直接雇用の申告書を持っていった事件で、
正社員になったぞ!
という宣伝をしましょう。
社員になったという宣伝はして
どんどん新しい希望者を労働組合に組織したいですね。


マルセロさんの事例はいわば、
ユニオンの力で派遣労働者から正社員にキャリアアップした
非常に輝かしい先例であり、
僕たち名古屋ふれあいユニオンにとって一種の希望の星でもあった。
マルセロさんに続いて労働運動の力で、
今、非常に不安定な雇用状態に置かれている非正規雇用労働者の
雇用の安定と地位向上を勝ち取ること、
今後次々と第2・第3のマルセロさんを生み出していくことが、
僕たちの目標となっていたところだ。

その、期間の定めのない正社員となったマルセロさんが、
どうして「雇用契約の更新はできません」と
「雇止め」の通告をされなければならないのか。

■一度正社員になった者に有期雇用契約を結ばせる!
話を聞いてみるとこういうことだ。

マルセロさんは昨年10月20日に、
ムサシ鉄工の松井社長から「労働条件通知書」を受け取った。
松井社長は
「よく見てもし良かったら、
 この同じ条件で雇用契約書を作りますから」と言ったという。
マルセロさんはこれを持って帰り、
兄であり、労働組合の役員でもある
平良マルコスさんに見せた。
そこにははっきりと「Nao determinado」(期間の定めなし)と書いてあり、
マルコスさんは弁護士にこれをファックスし、
みんなで「Nao determinado」だということを確認した。
(この文章は今でも弁護士事務所に残っている)。

上に引用した「正社員になったぞ!」という弁護士の喜びのメールも、
このときのものだ。
マルコスさんも弁護士も、
良かった良かったと喜んだので、
マルセロさんは翌日 松井社長に、
「この労働条件は、私が欲しいものです」と伝えた。
松井社長も「わかりました」と答えたという。
こうして平良マルセロさんは派遣労働者から正社員になった、
はずだったのだ。
少なくとも、兄のマルコスさんも、ユニオンも、
弁護士たちも、
つい先日までそう認識していた。

ところがである。

マルセロさんがムサシ鉄工の正社員として働き初めて10日ほど後、
松井社長が突然一枚の紙を持ってきて、
マルセロさんに見せ、
「見てっ。
 これ書いて!」と言ったという。
(このときは社長だけで、通訳は同席せず)。
マルセロさんは「これ書いて!」と言われたので、
よくわからないまま「住所」欄に住所を、
「名前」欄に名前を、
そして「電話番号」欄に携帯電話の電話番号を書いてしまった。
これが何と、
雇用期間の限られた、
有期雇用の期間雇用契約書だったのである。

こんなやり方があるだろうか。

ちなみにマルセロさんはその後何度も、
最初に社長が約束した雇用契約書がもらえない(と思っていた)ので、
「ムサシ鉄工の『ハンコ』ついた雇用契約書はいつ持ってきますか」
などと松井社長に質問しているが、
そのたびに松井社長は
「ああそうですね……」とか
「ああはい!」などとごまかし続けてきたという。

■会社側、弁護士を呼んで団交拒否・退席
この問題で名古屋ふれあいユニオンは、
11月6日、ムサシ鉄工と団体交渉を行なう、
はずだった。
当日ユニオンからは、
浅野文秀委員長と、
マルセロさんの兄もである平良マルコス副委員長、
運営委員のAさんと、
当該労働者の平良マルセロさんが会場に向かった。
ところが。
ここに会社側代理人として出席した
柴田法律特許事務所の柴田肇〔注1〕という弁護士が、
平良マルコス副委員長と運営委員のAさんが
「委任状」を持っていないので交渉を拒否すると言い出し、
他の会社側交渉員もこれに追随、
団体交渉を求めるユニオンを後目に
会場から総退席してしまったのだ。

訳のわからない話である。
運営委員長である浅野文秀が、
こちらが副委員長である平良マルコスであり、
こちらが運営委員のAであると言っているのだ。
組合の名刺も持っている。
なぜその上「委任状」なるものを提出しなければならないのか。

そう言うと柴田弁護士は
「私は会社から委任状をもらっている」と胸を張ったという。
しかし、
柴田氏が会社からの委任状を持っているのは
実に当たり前のことである。
柴田氏はムサシ鉄工の社員ではない。
社員ではない人間が会社側の交渉者として、
会社と労働組合の団体交渉に出てくる以上、
委任状が必要なのは当然だ。

それに対して平良マルコス副委員長もA運営委員も、
名古屋ふれあいユニオンの組合員であり、役員である。
交渉の当事者である名古屋ふれあいユニオンを代表して、
団体交渉に出席するのだ。
この団体交渉は、
企業であるムサシ鉄工と
労働組合・名古屋ふれあいユニオンとの間で、
組合員である平良マルセロさんの処遇を巡って行なわれるもので、
マルコスさんやAさんは
決して「マルセロさんの代理人」として交渉に出席するわけではない。

組合役員に対して「委任状」の提出を要求するというのは、
労働組合を、
会社から事案の委任を受けた弁護士か何かと同様の、
「マルセロさんの代理人」だと勘違いしているのではないかと
思わざるをえない。

もし僕たちが、
組合外部の弁護士なり何なりを連れてきたというのであれば、
当然委任状の提示が必要だ。
しかし、
労働組合の副委員長や運営委員が
氏名や立場を明らかにして出席しようとしているのに、
「委任状」の提出を求めるというのは、
いったい何を勘違いしているのか。

勘違いといえば、
そもそもこの団体交渉の性格からして、
会社側は何か勘違いをしているのではないかと思えてならない。
「委任状」の提出を求める姿勢にも表れているのは、
労働組合が交渉を求めてきたから、
『会社が』団体交渉を『開いてやる』という姿勢である。
考え違いも甚だしい。

はっきり言えば僕たちは、
すでにマルセロさんの件で弁護士も選任し、
訴訟に向けて準備を始めている。
だが、なぜマルセロさんを雇止めにしなければならないのか、
マルセロさんはいまだにその正当な理由を
きちんと聞かされていないのだ。
だから、泥棒にも三分の理ということわざもあることだし、
相手側の言い分を一切聞かないままに裁判を起こすというのも
考えものだということで、
僕たちはムサシ鉄工に最後の弁明の場を与えるべく
団体交渉の場を「設定してあげた」のだ。
それをムサシ鉄工は、
「委任状」がないだのなんだのと言ったあげく
団体交渉の会場から自ら退席してしまった。
結構だ。
「最後の弁明の機会」を放棄したのはムサシ鉄工の側である。
こちらは粛々と訴訟の準備を進めるまでだ。
どちらの言い分が道理が通っており、
どちらが道理にもとることをやっているのか、
誰の目にも明らかではないか。

武蔵精密系企業・ムサシ鉄工の不当労働行為を許すな!
僕たちはムサシ鉄工のこうした実態を
裁判を通じて満天下に知らしめ、
大衆的裁判闘争をもって必ずや勝利を勝ち取るだろう!
〔注1〕本件で団体交渉を求めるふれあいユニオンに対し、
団体交渉を拒否して会社側交渉員総退席の音頭を取った
柴田肇弁護士が、
何と豊橋市の人権擁護委員(!)を務めていることが判明した↓。
http://www.city.toyohashi.aichi.jp/fukusi/jinken.html
世も末である。
人権擁護委員は各市町村町が法務大臣に推薦し、
法務大臣が任命する役職だ。
組合内では柴田弁護士の団交拒否の姿勢に怒り、
「弁護士会への懲戒請求」を求める声もあるほどなのだ。
個人的には僕は、
依頼人の利益のためには、
ときには詭弁を弄し、
理屈では勝てそうにないということであれば
重箱の隅をつつくような難癖をつけて
交渉そのものを回避するというようなことも、
弁護士を単に収入を得るためだけの職業と割り切るならば、
あり得るかなとも思っている。
だが、少なくともそのようなスタンスの弁護士に、
「人権」などという言葉を語ってほしくはないものだ。



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by imadegawatuusin | 2007-11-09 12:08 | 労働運動
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