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愛知製鋼下請・三築:裁判所に「準備書面」を提出

――あまりの支離滅裂ぶりに唖然――

■違法派遣を居直り、開き直る
愛知製鋼下請企業・有限会社三築を相手取り、
名古屋ふれあいユニオン知多分会組合員4人が
解雇無効などを求めている裁判で、
11月27日、
第3回公判が開かれ、
三築側の「準備書面」が示された。

この中で三築側は、
「代表者の大久保文和が
 平成13年に労働者派遣事業を目的に
 創業した会社である」と自らを称し、
その証拠として有限会社三築の
「履歴事項全部証明書」を
「乙第1号証」として裁判所に提出した。
しかし、
「乙第1号証」の「履歴事項全部証明書」を見る限り、
平成13年創業当初の三築の事業目的は
「1、溶鉱炉の取り鍋の煉瓦張り替え作業」・
「2、鍛造品の熱処理加工ならびに積み込み作業」・
「3、前各号に付帯する一切の業務」とされているのみであり、
当初から労働者派遣事業を目的としていたとの記述は
どこにもない。
これでは、
平成13年の創業当初は
三築が「労働者派遣事業を目的に創業した会社」ではなかったことを
逆に立証するだけである。
(しかしいくら何でも、
 「これが証拠だ」と言われてそれを見れば、
 逆に「そうではなかった」ことが立証されてしまうというのでは、
 お粗末さにもほどがある。
 三築側弁護士の吉住健一郎氏は、
 よほどの やっつけ仕事で「準備書面」を書いたのではないか。
 職務にかける真摯さに疑問を抱かせるものがある。
 こちら側が心配してあげることではないのかもしれないが)。

そもそも、
製造業への労働者派遣が解禁されたのは
平成16年だったのであり、
それ以前は製造業への労働者派遣は禁止されていた。
にもかかわらず三築は、
上記「準備書面」において、
次のように主張しているのである。

(被告代表者)大久保は、
従前、
訴外有限会社三栄築炉の従業員として、
同訴外会社の取引先である愛知製鋼に出入りしていたところ、
愛知製鋼の関係者より、
同社工場に労働者を派遣する事業を
始めたらどうかとの話が持ち込まれたことから、
平成13年4月20日付で、
専ら、愛知製鋼工場に労働者を派遣することを目的に
被告(酒井注:=三築)を設立した次第である。
つまり、被告は、
愛知製鋼工場に労働者を派遣することを
唯一の目的に設立された会社であり、
現に、
被告は創業以来、
愛知製鋼の元請(原文ママ。「下請」の誤りか)である
アイチセラテック株式会社(以下アイセラという)を通じて
同工場に労働者を派遣し、
それ以外の派遣先は全くなかった


先にも述べたとおり、
製造業への労働者派遣が解禁されたのは
平成16年だったのであり、
それ以前は製造業への労働者派遣は
禁止されていた。
仮に上記の三築の主張が正しければ、
それは、
平成19年10月16日付で三築から提出された「答弁書」の中で
三築側が「否認」している違法な労働者派遣の事実、
すなわち偽装請負の事実を
逆に立証するものとなる。
三築は
トヨタグループの特殊鋼メーカー・愛知製鋼側から
違法な労働者派遣を持ちかけられ、
これに従ったことを自ら認めているのである。

「乙第1号証」の「履歴事項全部証明書」によれば、
三築が
「労働者派遣事業法に基づく一般労働者派遣事業」や
「労働者派遣事業法に基づく特定労働者派遣事業」を
目的とするようになったのは、
創業3年後の平成16年12月6日に
なってからのことである。
しかしその後も、
実際には三築と
愛知製鋼あるいはアイチセラテックとの間で
労働者派遣事業法に基づく労働者派遣契約が
締結されることはなく、
相も変わらず三築は
「請負」の形態を取りつつ実際には
労働者派遣事業を行なっていた。
それは、
三築が今回提出した「準備書面」において自ら、

4月12日、
アイセラから、
被告(酒井注:=三築)には愛知製鋼の請負業者としての
適格を欠くと判断されて、
アイセラとの業務請負契約が
同年9月末日で期間満了することをもって、
その後は、被告とは同契約を更新しないとの
取引打ち切りの通告を受けた


と主張していることからも明らかである。
このことも、
知多分会の4人が主張し、三築側が否認している、
三築による違法な労働者派遣の事実、
すなわち「偽装請負」の事実を立証するものである。
さらに三築は、
「準備書面の中で」自らを、
「平成13年4月20日付で、
 『専ら、愛知製鋼工場に労働者を派遣することを目的に』
 被告を設立した」と称している。
平成16年以前は
そもそも製造業への労働者派遣が
禁止されていたのであるから論外としても、
平成16年以降の製造業への労働者派遣解禁後も、
労働者派遣法は、
「専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供する」、
いわゆる専ら派遣を禁止している(労働者派遣法第7条)。
「専ら派遣」の認定基準として具体的には、
「派遣先拡大の為の営業(広告宣伝)活動を
 正当な理由無く行なっていない場合」が挙げられるが、
三築自らが
「専ら、愛知製鋼工場に労働者を派遣することを目的に
 ……設立した次第である」と自認し、
「愛知製鋼工場に労働者を派遣することを
 唯一の目的に設立された会社であり、
 現に、被告(酒井注:=三築)は創業以来、
 愛知製鋼の元請(原文ママ。「下請」の誤りか)である
 アイチセラテック株式会社……を通じて
 同工場に労働者を派遣し、
 それ以外の派遣先は全くなかった」と居直り、
挙げ句の果てには、
「したがって、
 被告(酒井注:=三築)が平成19年4月12日、
 アイセラから、
 業務請負契約の期間が満了する同年9月末日をもって
 その契約をすべて打ち切ると通告された以上、
 被告には他に労働者を派遣する取引先もなく、
 かつ、
 新たに労働者を派遣することができる新規の取引先を
 獲得する方策もなかった」と開き直るに至っては、
まさしく違法な労働者派遣業者のあり方、
すなわち
「派遣先拡大の為の営業(広告宣伝)活動を
 正当な理由無く行なっていない」「専ら派遣」のあり方を
体現するものでしかない。

三築は、
「労働者派遣事業を目的に創業」された会社であれば
当然にも行なうべき
「派遣先拡大の為の営業(広告宣伝)活動」を行なわず、
「専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供」する
違法な派遣事業を続けてきた。
そして、
この期に及んでなお
「派遣先拡大の為の営業(広告宣伝)活動」を
行なおうとの姿勢を見せず、
自らを「愛知製鋼工場に労働者を派遣することを
唯一の目的に設立された会社」と称して、
「使用者による十分な解雇回避努力」を
あらかじめ放棄するかのごとき対応を取っている。

三築自身によって提出された
「乙第1号証」の「履歴事項全部証明書」を見ても、
有限会社三築の事業は労働者派遣事業には限定されておらず、
むしろ本業は
「溶鉱炉取り鍋の煉瓦張り替え作業」や
「鍛造品の熱処理加工並びに積み込み作業」であることは
明らかである。
(そもそも三築の前身が
 「有限会社三栄築炉」なのだ)。

また、
労働者派遣事業の派遣先が
愛知製鋼あるいはアイチセラテックに
限定されているわけではないことは言うまでもない。
三築は、
知多分会4人の訴状にある、
「極めて潤沢な資産を有し、
 経営余力を有する被告会社なのであるから、
 同業他社に従業員を派遣したり、
 同業他社に請負契約の締結を働きかけるなど
 自ら経営の継続を模索する道はある」との主張に対し、
平成19年10月16日「答弁書」や
平成19年11月22日の「準備書面(1)」の中でも、
ただ一言「否認する」と言うだけで、
何ら有効な反論をしていない。
三築は自ら、
「愛知製鋼工場に労働者を派遣することを
 唯一の目的に設立された会社」という、
そもそも違法なあり方を大前提としたままで、
整理解雇要件の最も重要な要件である
「使用者による十分な解雇回避努力」を放棄し、
労働者の首を切ろうというのである。

判例法理は、
その整理解雇が
「客観的に合理的な理由」を有するかどうかの
判断基準として、
以下の4つを挙げている。

1.「経営上の高度な必要性」
2.「解雇回避努力義務の履行」
3.「被解雇者選定の合理性」
4.「手続の妥当性」

だが、
今回の有限会社三築における労働者解雇は、
上記の通り使用者側が「解雇回避努力義務の履行」しておらず、
「2」の要件に欠ける他、
このうちの「1」・「4」の要件も満たしていない。

「1」の「経営上の高度な必要性」とは、
労働者の解雇という手段を取らなければ、
企業の維持・存続ができないほどの
さしせまった必要性があるかどうかという点である。

解雇された知多分会4人の側は、
三築の今年3月時点の決算報告書や
その後の取引状況などの詳細な分析を元に、
会社は「極めて潤沢な資産を有し、
経営余力を有する」と主張しているのに対し、
三築側はただ一言「否認する」と言うだけで、
何ら有効な反論を行ない得ない状況にある。
これでは到底、
「経営上の高度な必要性」は認められない。

また「4」の「手続きの妥当性」についてであるが、
これは具体的には
当該労働者や労働組合と
事前に協議を尽くしたかどうかいうことである。

だが
会社側は一方的に「自主廃業」を宣言するのみで、
現時点での財務状況の開示すら
「当社にとって資産表は
 経営上公にすることができません」などとして、
被解雇者にも労働組合にも開示することを拒否。
その一方では「廃業」直前まで3人の役員たちが
実に年間6千万円にも上る
多額の役員報酬を受け取り続けるなど、
解雇について当該労働者や労働組合の納得を得るべく
具体的な努力を行なったとは
到底言い難い対応に終始した。
(そもそも、
 今から廃業しようという会社が
 「経営上公にすることができません」というのは、
 そもそも日本語として意味がわからないが)。

これは、
整理解雇にあたっての
「客観的に合理的な理由」の有無の判断基準として、
具体的には使用者側の「解雇回避努力義務の履行」、
「経営上の高度な必要性」、
「手続の妥当性」を含む4要件を要求する判例法理
(あさひ保育園事件・最高裁昭和58年10月27日判決など)にもとり、
「社会通念上相当であると認められない」ので、
当然にも解雇権濫用に当たり無効である
(労働基準法第18条の2)(民法第1条3項)。


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職場の理不尽を許さない、強く優しい地域労組の建設を!
愛知県下の未組織労働者は名古屋ふれあいユニオンに結集しよう!



労働組合名古屋ふれあいユニオン
雇用形態や国籍に関わりなく、
愛知県下で働くすべての労働者が一人から加盟できる
地域労働組合(コミュニティユニオン)。
コミュニティユニオン全国ネットワーク
コミュニティユニオン東海ネットワークにも参加。
今年3月に開かれた第9回定期大会では、
連合産別・全国ユニオンへの加盟について討議するとする活動方針を採択。
日ごろから組合員の学習会や交流会・相談会などを
積極的に企画しながら活動している。
現在、組合員数約200名。
組合員は組合費月額1500円。
賛助会員(サポーター)は年会費5000円。
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