「ただの人間には興味ありません。 これはあまりにも有名な、 本作ヒロイン・涼宮ハルヒ初登場時のセリフである。 そして彼女は、 その言葉を具現してゆくかのように、 自らの結成した学校当局非公認集団・ 「世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団」(略称:SOS団)に、 「宇宙人」・長門有希、「未来人」・朝比奈みくる、「超能力者」・古泉一樹を 引きずり込んでゆく。 そして、 彼らと同様にヒロイン・涼宮ハルヒによって このSOS団に引きずり込まれたのが、 本作主人公・キョンなのであった。 「超能力者」・古泉一樹は キョンに対してこう言っている。 「あなたについてはいろいろ調べさせてもらいました。 キョンは、 ハルヒが「興味」を持たないはずの 「ただの人間」だと言うのである。 キョンは自問する。 「なぜ、俺なのだ? 「なぜ、俺なのだ?」との問いに対し、 理由はいくつか挙げられよう。 一つは、 後に単行本第4巻『涼宮ハルヒの消失』で明らかになった通り、 実はキョンが、 中学生時代のハルヒと出会い、 彼女のその後に大きな影響を与えた、 「世界を大いに盛り上げるためのジョン・スミス」であるという 点である(谷川流『涼宮ハルヒの消失』181ページ)。 実際 涼宮ハルヒは、 すでに1巻本書の時点でキョンに対し、 「あたし、あんたとどこかで会ったことがある? ずっと前に」と問いかけており(本書29ページ)、 「ジョン・スミス」のエピソードに向けての伏線は すでに張られていたことになる。 だが。 少なくとも表面上は、 ハルヒはこの事実に気付いていない。 SOS団団員として、 誰よりも先にキョンを引き入れた理由としては やや弱い。 涼宮ハルヒがキョンに対して恋愛感情を抱いていることを 理由に挙げる向きもあろう。 しかし、 ハルヒがキョンに そうした感情の片鱗ともいうべきものを見せ始めるのは、 SOS団 結団後の「第一回不思議探索パトロール」の際。 市内探索のためにグループを2つに分けることになり、 「ハルヒ・長門・古泉」組と「キョン・みくる」組に分かれたときの 以下の記述が最初である。 「ふむ、この組み合わせね……」 そもそも、 案外 嫉妬深い涼宮ハルヒが(本書212、259~260、267~276ページ)、 朝比奈みくるを部室に連れてきた際、 彼女の胸をもみまくり、 キョンにまで「あんたも触ってみる?」と持ちかけたり(本書61~62ページ)、 メイド姿にさせた際には 「あんたも一緒に みくるちゃんにエッチぃことしようよ」と 誘ってみたりしていることからも(本書132ページ)、 涼宮ハルヒがSOS団 結団を思い立った当初から キョンに恋愛感情を抱いていたとは考えにくい。 ここで注目すべき点は、 本書第7章で涼宮ハルヒが 「現実世界に愛想を尽かして 新しい世界を創造することに決めた」ときのことである(本書274ページ)。 その際、 「こちら(筆者注:=元)の世界から 唯一、涼宮さんが共にいたいと思った」のがキョンであった(本書275ページ)。 キョンは、 「俺は戻りたい」、 「連中ともう一度会いたい」、 「元の世界のあいつらに、 俺は会いたいんだよ」と主張する(本書283~284ページ)。 それに対して、 ハルヒが「怒りと悲哀が混じった微妙な表情」で言ったのが、 次のセリフだ。 「あんたは、 言うまでもなく、 そこまでの作品展開の中で、 キョンがハルヒに対してそのような主張をした事実は 全くない。 確かにキョンは『心の中で』 こんな思いを抱いては いた。 俺だってハルヒの意見に否やはない。 だが、少なくともキョンは ハルヒの前ではそうした思いを押し隠し、 ことさらに「常識人」として振舞おうとする。 ある意味では、 「言動こそエキセントリックですが、 その実、まともな思考形態を持つ 一般的な人種」である涼宮ハルヒと 好一対の存在と言えなくもない。 ともあれ、キョンは涼宮ハルヒに対して、 「つまんない世界」、 「特別なことが何も起こらない、普通の世界」への不満を はっきりした形で明言したことは一度もなかった。 にもかかわらず涼宮ハルヒが、 キョンは「つまんない世界にうんざりして」いる、 「もっと面白いことが起きて欲しいと思」っていると、 それを当然の前提とした上で、 キョンを「新しい世界」へと引き込んだのだという点を 見逃してはならない。 ハルヒにとって (たとえ口には出さずとも)、 「心の底から宇宙人や未来人や幽霊や妖怪や超能力や 悪の組織が目の前にふらりと出てきてくれることを 望んでいた」キョンは(本書5~6ページ)、 「特別なことが何も起こらない」、 「つまんない世界」の中でただ一人、 同じ思いを共有できると確信できる「同志」であったのだ。 (だからこそ、 その確信が「裏切られた」際のハルヒのショックは 大きかったわけだが)。 本作冒頭の 「サンタクロースをいつまで信じていたかなんてことは たわいもない世間話にもならないくらいの どうでもいいような話だが……」という あまりにも有名なプロローグは、 別に言葉の面白さだけを目的に 伊達や酔狂で掲載されているわけではない。 このプロローグの部分こそ、 キョンがハルヒと心の底で共有する「非日常へのあこがれ」をつづる、 いわば一見正反対に見える二人をつなぐ役割を果たす 非常に重要な部分だったのだ〔注1〕。 〔注1〕本作 随一の見せ場の一つに、《進む》 谷川流「涼宮ハルヒの退屈」について ツガノガク「ノウイング・ミー、ノウイング・ユー」解説 谷川流「笹の葉ラプソディ」について 谷川流「ミステリックサイン」について 【参考記事】 『涼宮ハルヒ』シリーズと『なぞの転校生』 ..... Ads by Excite 広告 .....
by imadegawatuusin
| 2008-02-16 22:39
| 文芸
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名前:酒井徹
生まれた日:昭和58(西暦1983)年8月22日 世わい:40歳 住みか:〒454-0013 日本国愛知県名古屋市中川区八熊一丁目12番6号 明治第4ビルディング205号 電話番号:070-4531-5528 電子郵件宛先:sakaitooru19830822@gmail.com ミニブログ(微網誌):https://twitter.com/SAKAI_Tooru カテゴリ
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