カテゴリ:国際( 35 )

マリ共和国の首都バマコで開催された世界社会フォーラムに参加した
アフリカ日本協議会の茂住衛(もずみまもる)さんが
週刊『かけはし』(2006年4月3日号)のインタビューに答え、
モロッコによる西サハラ占領を批判した。
この中で茂住さんは、
モロッコによる西サハラ占領とイスラエルによるパレスチナ占領との類似性を指摘し、
西サハラ問題への国際的な注目を訴えた。

《週刊『かけはし』に掲載された茂住衛さんの西サハラ問題への言及要旨》
■アフリカ連合が承認する独立国・西サハラ
もともとスペインの植民地だった西サハラをスペインが放棄した時、
モロッコが西サハラを占領し、
またモーリタニアも西サハラの一部を自国の領土だとして占領しました。
その後モーリタニアが撤退したので、
現在西サハラは基本的にモロッコ軍の占領下にあります。
一方、AU(『今出川通信』注:=アフリカ連合)はOAU(『今出川通信』注:=アフリカ統一機構)の時代に
西サハラ(サハラ・アラブ民主共和国)を独立国として承認、
そのことに抗議してモロッコはOAUを脱退します。
つまり、現在のAU加盟53カ国の中にモロッコは含まれていません。

■モロッコ:西サハラ領内に長大な壁を建設
現在モロッコは、
西サハラ領内の砂漠の中に延々と長大な壁を作り、
監視所には軍が駐留。
西サハラの独立運動を主導しているポリサリオ解放戦線の支配地域もありますが、
多くの人びとはアルジェリアの難民キャンプに逃れています。
モロッコにとっては、
西サハラ領内に燐鉱石などの鉱物資源が豊富にあり、
さらに領海内の海洋資源(タコの漁場などがある)も収奪できるので、
西サハラの占領を止めようとはしません。

■西サハラの主権は国際的常識
(『今出川通信』注:世界社会フォーラムの)参加者にとっては、
西サハラが独立した国家主権を持つことは前提になっています。
AUも西サハラを主権国として認めているのですから。
日本で発行される世界地図には西サハラが表記されていないこともありますが、
欧州で発行されている地図であればちゃんと国名と国境線が描かれている。
そのことは、ある意味で国際的常識になっています。

■アフリカ最大の植民地問題、西サハラ
西サハラ問題は、
アフリカに残された植民地問題でも最大のものです。
しかも宗主国がアフリカの国だという非常に複雑な問題になっている。
さらにこの問題は、
宗教的な対立を背景にしたものであるとも言えません。
モロッコと同様に西サハラの住民の大部分はイスラム教徒で、
「サハラ・アラブ民主共和国」という国名からもわかるように、
自らがアラブ世界の一員であるという意識が強い。
1973年から独立運動を担っているポリサリオ解放戦線は、
西サハラ地域の旧来からのエスニックグループの連合が中心になっているようです。
さらにイスラム教徒であっても、
女性が先頭になってしゃべるというようなオープンスペースもあります。

■西サハラ問題に国際的な注目を
西サハラ問題は、
モロッコの占領地へのモロッコ人の入植やモロッコが長大な壁を建設、
さらにアルジェリアにおける難民キャンプの存在という現状からすると、
パレスチナ問題と類似した問題として捉えることができます。
また歴史的な経緯からすると、
独立を達成しましたが、
東チモール問題と重ね合わせてみることもできます。
ただしこの問題は、
パレスチナ問題と比べても、国際的に注目されているとは言えません。

(第2号)
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by imadegawatuusin | 2006-04-06 18:35 | 国際

フランスのシラク大統領が26日、
スイスで開かれている世界経済フォーラム(ダボス会議)で演説し、
発展途上国などでのエイズ対策の財源を国際的な規模で確保するため、
「国際連帯税」の創設を提唱した(読売新聞1月28日)。

記事によると「国際連帯税」とは、
国際金融市場での取引などにあたって一定の課徴金を徴収し、
エイズワクチンの開発や発展途上国での治療薬購入に充てようというものだそうだ。
『読売新聞』は「斬新なアイデア」と評価しているけれども、
これはまさしく、
国家・財界中心の世界経済フォーラムに対抗して
世界のNGO団体などが主催している世界社会フォーラムが
従来からずっと提案してきた「トービン税」そのものである。

報道によるとシラク大統領は、
「1日3兆ドルとされる国際金融取引の一部に最大0.01%課税するだけで、
 年間で100億ドル集めることができる」
と述べたという。

最大でも0・01パーセントの課税なので、
まっとうな設備投資や貿易などを行なっている企業には影響が少なく、
かつ、
分刻み・秒刻みで右から左へ投機を繰り返して「利ざや」を稼ぐ投機的な金融取引からは
(取引のたびごとに0・01パーセント徴収されるので)
しっかりと税金を取り立てることができる。
この構想はもともと、
ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの学者・ジェームズ=トービンが
投機目的の短期資金移動を抑止する目的で提唱したものだ。
そして、取り立てられた莫大なお金を、
世界の貧しい人々や環境対策のために使えば……。

この構想は特にここ数年間、
提唱者のトービンの名を冠して「トービン税」と呼ばれ、
世界の貧困や環境問題を解決する具体策として
脚光を浴びてきた。

僕はフランス・シラク大統領の「国際連帯税」構想を強く支持する。

シラク大統領は近く
国連や欧州連合(EU)などに「国際連帯税導入」を呼びかけるという。
ぜひ、実現させてほしい。
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by imadegawatuusin | 2005-01-28 18:30 | 国際

――災害の問題は政治の問題――

■被災国の債務帳消しなども検討を
フリーライターの永江朗さんは
新著『いまどきの新書』(原書房)の中で次のように述べている。

個人ではどうにもならないこともある。
たとえば、災害は不公平であるという現実だ。
貧しい人により過酷に襲いかかる。
貧しい人の住居は壊れやすく、
蓄えもないから、
災害後に立ち直るのにも苦労する。
こうした問題は、政治を変え、
世の中の仕組みを変えるしかない。
じつは災害の問題というのは、政治の問題なのだ。(137ページ)


「災害は、
 貧乏人にも金持ちにも平等にやってくる」などというのは
大嘘であると永江さんは言う。
昨年末にインドネシアのスマトラ島沖で起こった大地震と
それにともなう大津波の被害とを見るにつけ、
本当にそのとおりだと実感する。

マスメディアなどでは一般に、
タイのプーケットなどで先進国の旅行者がこうむった被害が
どうしても優先的に取り上げられてしまいがちだ。
これらの人々が受けた被害それ自体は、
もちろん悲劇であるに違いない。
だが、客観的に見て、
今回の災害で最も壊滅的な被害をこうむったのは、
スマトラ島北端のアチェ州やスリランカなどの方である。
ともに、
独立を求める反政府武装勢力と政府軍との間で内戦が続く地域である。
アチェ州は「自由アチェ運動」とインドネシア軍、
スリランカは「タミル・イーラム解放の虎」とスリランカ軍との内戦で、
国土がすっかり荒廃していた。
そんな所に、今回の津波が襲ってきたわけだ。

地震そのもの、津波そのものはまぎれもなく天災であろう。
しかし、
それがもたらしたこの人類史上最大規模の被害については、
一概に「天災」の一言で済ますことはできないものだ。

そもそも、今回の津波による被災地域には、
地震が起こってから津波が到達するまでに
かなりの時間的猶予があった地域が少なくない。
インド洋で津波を検知し、
ラジオやテレビで避難を呼びかけるシステムがあれば
多くの人命を救うことができたであろう。
日本やアメリカなどの豊かな国々には、
こうした早期警報システムが完備されている。
だが、インドネシアやスリランカといった貧しい国には、
そうしたシステムは いっさい構築されていなかったのだ。

アメリカの反戦団体・国際行動センター(IAC)は、
「地震や津波は天災ではあるが、
 征服戦争に何十億ドルも費やす決定をする一方で、
 人命を救う簡単な措置を無視するというのは天災ではない」という声明を発表している。
国際行動センターはこの中で、
1台25万ドルの津波計を
インド洋とインドネシア近海に合計2、3基設置しさえすれば
今回出てしまった犠牲の多くを防ぐことができたのに、
アメリカ政府は科学者たちの要望にもかかわらず予算を付けようとせず、
その一方では1日あたり15億ドルの軍事費を費やしていると指摘した。
それはおそらく、
予算を付けなかったアメリカ政府の高官が
個人的に冷酷な人物であった……などという問題ではないだろう。
これは単に、
彼らの優先的な経済的・政治的目標にそぐわないから
予算が付けられなかっただけなのだ。

また、アメリカが主導する
経済の新自由主義的グローバル化は、
いまや世界の富のほとんどをアメリカを筆頭とする先進国資本に集中させ、
発展途上国の対外債務を膨らませ続けてきた。
国際通貨基金や世界銀行は、
そうした国に資金を供給する見返りとしてその国の政府に、
福祉や保険に回す予算をカットするように指導してきた。
今、そうした政策がのツケが、
いよいよ貧しい地域に住む人々に襲い掛かろうとしているのである。
日本・アメリカをはじめとする先進国は、
単に被災地への一時的な救援のみにとどまらず、
こうした構造そのものを変えてゆくため、
被災国に貸し付けた債務の帳消しをも検討してほしい。

繰り返し言うが、今回の津波の問題は「政治の問題」、
特に僕たち先進国に住む人間の問題なのだ。
永江さんの言うように、
「こうした問題は、政治を変え、
 世の中の仕組みを変えるしかない」のである。
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by imadegawatuusin | 2005-01-10 17:01 | 国際

よど号問題と拉致問題

元赤軍派議長・塩見孝也氏の
「よど号グループよ、拉致問題の真実を語れ!」というインタビューが、
10月7日に発売された月刊『創』11月号に掲載された。
この号には鈴木先生の
「どうする!『よど号』」という文章も載っており、
読み比べてみるとなかなか腑に落ちるものがある。

塩見氏のインタビューの中で注目すべき部分は、
やはり「『拉致』問題についてのある種の確信」という章だろう。
これによると塩見氏は「95~96年頃」、
「石岡さんら」についてよど号グループに訊いたそうだ。
「オルグしようとしたけど、手に負えなくなった」というのが
よど号グループの返事だったという。
手に負えなくなって労働党が出てきた結果
「手の届かないところに行った」とよど号グループは言ったという。
塩見氏はこの会話について、
「もちろん、連れて来たというのを前提にしての話」だったとしている。
しかし、
2000年の訪朝の際に訪朝団のメンバーが訊いたときには、
「その男性を連れてきてはいない」という説明に変わっていたそうだ。

これは非常に重要な証言であると僕は思う。
なぜなら、
塩見氏は
よど号グループに対立しようとしている人物ではないからだ。
そのことは、
このインタビューの中でも再三にわたって強調されている。

今後、
僕の発言が
「よど号」グループの裁判に使われる可能性もあることは念頭に置き、
注意していかなければならない


真実をはっきりさせながら
相対的に独自なスタンスを保って、
同志的友人の立場、
人道の立場というか、
そういうことから救援を継続する。
それが僕と彼らの関係だ。
「救援しながら真相を!」という潮流を創出する
正しい対応だと思う


彼らがすすんで人民が亡くなることに手を貸したわけではない


マスコミが僕と小西らとの対立を煽るのに
巻き込まれたくなかった


権力に結託した反「よど号」の立場に立つのではなく、
第三の立場で、
一定の距離を置きながら救援するというのが僕らの立場だ


僕はどこまでも救援する


要するに塩見氏は、
『よど号の人たちとはこれからも友人であり続けたいし、
 そうあり続けるためにも本当のことを話してほしい』
という立場であると僕は理解した。
この点は、
よど号グループを厳しく批判している高沢皓司さんや
八尾恵さんとは大きく違う。
そうした立場の塩見氏が、
『よど号グループも
 一時は石岡さんらを連れてきたことを認めていた』というような嘘を
敢えてついているとは考えにくい。
だから僕は、
塩見氏のこの証言にかなりの信憑性を感じる。
よど号グループが拉致
(あるいは、最大限にひいき目に見ても
 石岡さんらの帰国妨害)にかかわったことは
まず間違いないと感じられた。
別に僕は、
塩見氏の言うことは正しいとか、
塩見氏は信用できる人物だとか言っているわけではない。
ただ合理的に考えて、
塩見氏が嘘をついている可能性は
極めて低いと感じられるだけだ。

よど号グループにはただちに帰国してもらいたい。
帰国して、
日本できちんと裁きを受けてほしいと思う。
主張があるのなら、
そこで堂々と述べてほしい。
今や日本では「拉致国家」・「テロ国家」としか見られていない北朝鮮から
「無実」を叫んでも説得力がない。
百歩譲って彼らが拉致事件に無関係だとしても、
何の罪もない人民を人質にとって
飛行機を乗っ取った犯罪者である点には
全く疑う余地はない。
外国政府の庇護の下に
このまま処罰を免れ続けることは
やはり許されないのではないかと思うのだ。

よど号事件の実行犯は、
全員・即時・無条件で帰国し、
日本において法の裁きを受けるべきである。
日本政府は拉致被害者らの即時帰国と合わせて、
よど号メンバーの引渡しも
北朝鮮政府に強く求めていかなければならないだろう。

……、とここまで書いてきたところで
ニュースが入ってきた。
拉致被害者の帰国が実現する見通しになったらしい。
つい1ヶ月前までは、
このような事態になるだろうとは夢にも思っていなかった。
 
僕は最初、小泉総理が訪朝すると聞いたとき、
こんなのは総理が得意としている
パフォーマンスに過ぎないと決め付けていた。
田中外相更迭問題以来落ち込み気味の支持率を挽回させるため、
訪朝という派手なパフォーマンスで
注目を引こうと考えているのだろう。
しょせんは儀礼的な訪問であり、
名刺交換でもしただけで帰ってくるのだ。
独裁国家の北朝鮮が自分たちの「非」を認めるわけがないし、
大体「拉致事件」なるものにしても、
あやしいものではないか。
朝鮮語と日本語の両方を話せる在日朝鮮人だっているし、
そもそも北朝鮮には多くの「日本人妻」だっているというのに、
朝鮮語も理解できない日本の若者を拉致して北朝鮮へ連れて行き、
朝鮮人への日本語の教育係にするなどということは
あるわけがない。
日朝国交正常化交渉は、
朝鮮半島を植民地として我が国が支配した歴史の清算から
始めるべきである。
まずは自らの過去の国家犯罪を真剣に反省し、
謝罪しない限り、
我が国は北朝鮮を追及するにたる道義性を持つことは出来ない……。

小泉総理の訪朝を聞いたときの第一印象は、
ざっとこんなものであった。
北朝鮮による拉致の事実が明らかになった今、
僕は真剣に自己批判する必要があると思う。
おそらく、
僕のような立場の人間が日朝国交正常化交渉に当たっていれば、
拉致事件は永遠に解決されることはなかっただろう。
「拉致問題の解決なくして
 日朝国交正常化はありえない」と主張し続けた小泉首相のやり方が
北朝鮮に拉致の事実を認めさせ、
被害者らの帰国を勝ち取ったのだと思う。
僕は小泉政権を支持したことは一度もないし、
今後も支持することはないと思うが、
やはり、
たとえ相手が自民党政権の首相であっても、
いいことはいいと言いたいと思う。
もちろん、
不手際もあっただろう。
いろいろと不満な点がないわけではない。
また、
事態は現在も進行中なので
今の段階で評価を決めるのは早すぎるかもしれない。
けれど、
冷静に考えて、
これは日本外交の勝利だったと僕は思う。
小泉首相はもちろんのこと、
拉致問題の解決のために力を尽くされてきた外交官の方々に
僕は本当に感謝申し上げたい。

それにひるがえって僕はどうだ。
北朝鮮による拉致なんて本当かどうか疑わしいだなんて、
ろくに調べもしないで決め付けていた。

いや、もっと言えば、
拉致事件そのものに対する責任だってあるような気もする。
今になって調べて見ると、
どうやら日本人が次々と拉致される以前には、
韓国の沿岸で拉致事件が頻繁に発生していたそうなのだ。
しかし、
韓国政府は沿岸の警備を強化し、
拉致事件の防止に努めた。
工作員の侵入や韓国人の拉致が困難になった北朝鮮は、
沿岸警備の手薄な日本を狙うようになり、
「日本人へのなりすまし」などの手段を使って
韓国侵入を試みるようになったといわれている。
だとすれば、
拉致事件の原因は
(もちろん第一義的には北朝鮮政府による
 人権無視の国家政策にあるのだが)、
沿岸警備の強化を怠った
日本の警備体制にあったといわざるを得ない。
では当時
(もっとも、僕はまだ生まれてないけど)、
もしも次のように問われたら
僕はどうしていただろう。
「最近、日本の沿岸で
 不審な行動をとる勢力があるようなので、
 海上警備体制を強化したいと思います。
 いかがでしょうか」。
おそらく僕は
「絶対反対」と答えていたに違いない。
「警備強化は軍事大国への道だ」とか何とか理屈をつけて。

「警備強化」とか「安全保障」とかいうものには
片っ端から反対するのが「平和主義者の証」だと思うような傾向が
僕にはある。
というか、
左がかった人間の多くが
こういう傾向にあるような気がする。
今回の事件では、
僕も含めたそうした傾向の人間全員に、
いわば「不作為責任」とでも言うべき責任が
あるような気がしてならないのである。
いくら平和主義者だからといって、
たとえば海上パトロールの回数を多くしたり、
巡視艇を増やしたりすることにまで
「軍事大国への道」というようなレッテルを貼らなくても
よかったのではないか。
こうした態度が北朝鮮工作員の我が国への進入を招き、
結果として在日朝鮮人などへの嫌がらせをはじめとする
排外主義的行動を煽ってしまったのではないだろうか。
僕は今、そんなことを考えている。

自分がこんな文章を書いてしまっていることに
自分でも驚いている。
普段の僕では絶対にこんなことは書かない。
自分で言うのもなんだが、
僕はかなり教条主義的な人間だ。
「国民の生命と安全を護るために
 沿岸警備体制を強化するべきだった」なんて、
自分で書いておきながら、
読んでみるとなんだか腹が立つ。
でも、思い切って書いてみることにした。
自分で自分を自己規制してしまわずに、
思っていることをどんどん書いていける人間になっていきたい。
自分を思想で縛らずに、
思想をどんどんうち捨てて、
新しい自分を創っていきたい。
たとえば、鈴木先生のように。
そのために僕は
ここでこうして文章を書かせていただいているのだから。

さて、さっきちょっと話に出たので、
最後に在日朝鮮人への嫌がらせについて触れておきたい。
お決まりのパターンと言うか予想通りと言うか、
朝鮮学校の生徒に嫌がらせをする人間がやっぱりいた。
ちょっと目新しいのでは、
在日朝鮮人のボクシング選手の掲示板が
荒らされたとかいう話もあった。
北朝鮮による拉致と、
子供たちと、
ボクシング選手との間にどういう関係があるというのか。
「北朝鮮は悪いことをしたのだから、
 朝鮮人はこのぐらいの仕打ちを受けて当然だ」というのは、
「日本は朝鮮に悪いことをしたのだから、
 日本人は北朝鮮に拉致されたって当然だ」と言うに等しい
むちゃくちゃな論理である。

大体、朝鮮人を攻撃することで
北朝鮮に何らかのダメージを与えられるとでも
思っているのだろうか。
そうだとすれば、
それは北朝鮮に対する過大評価である。
北朝鮮は、
自国内に住んでいる国民のことさえ考えようとはしない。
何万人が餓死しようとも、
独裁政権を維持することだけを考えている。
そんな国家が、
日本に住んでいる同胞が嫌がらせを受けたことで
心を痛めたりするとは思えない。
朝鮮人を痛めつけても北朝鮮は何の痛みも感じない。
北朝鮮とはそもそもそういう国なのだ。

だから、
拉致事件についての怒りの矛先はまっすぐに
独裁政権の指導部に向けられなければならない。
在日朝鮮人に対する嫌がらせがあれば、
北朝鮮はそれを根拠に日本社会の差別性を批判するだろう。
在日朝鮮人への嫌がらせは、
我が国を非難する口実を北朝鮮に与えている。
我が国の立場を弱め、
北朝鮮の立場を強めることになるだろう。
これから本格的な日朝交渉が始まろうとする今、
在日朝鮮人への嫌がらせは明らかに利敵行為なのである。
もし
在日朝鮮人への嫌がらせを行なったあなたが愛国者であるならば
(多分そんなことはないと僕は思うけど)、
ぜひともただちにやめていただきたいものである。
『鈴木邦男をぶっ飛ばせ!』「酒井徹の今週の裏主張」No.8より転載)
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by imadegawatuusin | 2002-10-14 19:35 | 国際

同時多発テロ事件が去年アメリカで起きてから
ついに一年が経過した。
死後の世界も天国も信じることのできない僕には、
この残虐な無差別テロで亡くなった人々の
「冥福」(=冥界での幸福)を祈ることは出来ない。
しかし、
これを機会に改めて同時多発テロ事件について
考えを深めることが、
この大きすぎる犠牲を今後の世界に生かしてゆくことのできる
唯一の方法であると考えて、
この文章を書くことにした。

たしかに世界貿易センタービルは、
世界の発展途上国に飢えと貧困を押し付ける
グローバリズムの象徴的存在であった。
しかし、
9月11日のあの瞬間にそこにいたのは、
私利私欲のために
世界経済を混乱に陥れる金融投機家だけではなかった。
ビルの食堂労働者・清掃作業員、
そしてビルの中で行なわれていた建設工事に従事していた
建設作業員をはじめとする大勢の労働者たちが
日々の暮らしの糧を得るためにそこで働いていたのである。
その中には、
世界の飢餓や貧困と闘うために
反グローバリズム運動に参加していた
アメリカ労働総同盟産別会議の組合員も
千人以上いた。
彼らは当時、
国際通貨基金や世界銀行の総会にデモ行進をかけるために
数百台のバスを手配し、
イスラム世界をはじめとする発展途上国に対する債務の帳消しや
投機的金融取引への課税を求める闘いに
合流しようとしていたのである。
そうした人々までもが無差別に同時多発テロ事件で殺されたのだ。
そして、
たとえ殺されたのが
独占資本家としてグローバリズムの一翼をになう人物であったとしても、
高級軍人としてアメリカ覇権主義の一翼をになう人物であったとしても、
非武装の状態にいるときにいきなり命を奪うという
非人道的な行為が正当化されるはずがないことはいうまでもない。
何より、
世界貿易センタービルを破壊するために用いられた手段そのものが、
民間航空機を乗っ取り、
乗客もろともビルに突入・自爆するという
残虐極まりないものであったのである。

もちろん、
たび重なる国連決議を無視して占領地に居座り、
パレスチナ人を殺害するイスラエルに対して
莫大な軍事・経済援助を行なってきたのはアメリカだ。
しかし同時多発テロは、
このような事態を解決するどころか、
アメリカの世論をかえって危険な方向へと押しやってしまった。

大統領選挙での勝利すら疑わしく、
正当性が疑問視されていたブッシュ大統領の支持率は、
テロ事件の影響で大幅にはね上がった。
同時多発テロは、
京都議定書への調印拒否などで
ますます自国優先主義的な傾向を強めていたブッシュ大統領のもとに、
アメリカ国民を団結させてしまったのである。
犯行声明などの形で自分たちの政治的主張を明らかにすることすらせず、
やるだけやってだんまりを決め込んだこのようなテロを、
いかなる意味でも僕は容認しない。

アメリカ政府はこのテロを、
イスラム原理主義勢力・アルカイダの指導者である
オサマ=ビンラディン氏の仕業であると決め付けた。
そして、
彼が住んでいるとされたアフガニスタンを事実上支配していた
タリバン政権に対し、
彼を無条件で引き渡せと要求した。
さらに、
それが実現されないと見るやいなや、
アフガニスタンにおいて空爆攻撃を行なったのである。

たしかに、
「同時多発テロ事件で多くの人が殺されたのだ。
 タリバン政権が犯人を引き渡さない以上、
 空爆攻撃もやむをえない」との意見も分からないではない。
また、
タリバン政権は同性愛者を、
「同性愛者である」というたったそれだけの理由で処刑していた。
「女性に教育を受けさせる必要はない」などということを公然と主張し、
職場からも女性を閉め出していた。
はっきり言って、
とんでもない非民主的政権であったことは事実だ。

けれど空爆攻撃は、
最大限の外交努力を積み重ねた上で、
それでもどうしようもない場合の最後の手段であるべきだ。
報復攻撃で真っ先に犠牲になるのは
アフガニスタンの一般庶民なのだから。
犯人や首謀者だけを殺す爆弾などというものは
どこにもないのである。
しかし、
最大限の外交努力をアメリカが行なったとは、
どうしても僕には思えない。

タリバン側は空爆開始直前まで、
曲がりなりにも「対話による解決」を呼びかけてきた。
しかしアメリカは、
「話し合いの余地はない」などとして、
対話のテーブルに着こうとすらしなかった。

またアメリカは、
「オサマ=ビンラディン氏を引き渡せ」と言いながら、
彼が事件の犯人である証拠さえタリバン側には開示しなかった
(タリバン政権が崩壊した後になって、
 オサマ=ビンラディン氏が
 同時多発テロへの関与を認めるような発言をしている
 ビデオテープが公開されはしたが、
 そのテープが収録されたのは
 アメリカが空爆攻撃を開始した後のことであったとされている)。
「自国に滞在する人間を
 証拠もなしに外国に引き渡すことはできない」というのは、
自称「主権国家」のタリバンにとっては当然の論理であった。
オサマ=ビンラディン氏の引き渡しを
話し合いによって実現するつもりがあるのなら、
アメリカは対話のテーブルに着き、
彼が犯人である証拠をタリバン側に突きつけるべきであったのだ。

以上の手続きを経ないままに空爆攻撃に踏み切ったアメリカが
「最大限の外交努力」を行なったとは言いがたい。
だから僕は、
アメリカによるアフガニスタンでの空爆攻撃に反対した。
その判断は、
今でも間違ってはいなかったと信じている。
このような論理がまかり通れば、
アメリカは自分の攻撃したい国を
いつでも攻撃することが許されることになってしまう。
極端な話、
「この事件の犯人は日本に住む○○という人物だ。
 証拠を示すことはできないが、
 とにかく彼が犯人なのだ。
 彼を無条件で引き渡せ。
 言うことを聞かなければ日本を空爆する」などとして、
日本に空爆攻撃を行なうことも可能だったのである。

アメリカは一方的に世界の警察官となり、
なおかつ裁判官と死刑執行人の権限をも兼ね備え、
世界中に自分たちの決定を押し付けようとしている。
そして、
この「法廷」では弁護人はおろか、
第三者的な傍聴人の存在すら許されない。
「敵か味方か」・「中立はありえない」などという二分法をもって
世界各国を恫喝し、
自分たちへの同調を強制しようとするからだ。
一方でアメリカは、
国際刑事裁判所問題でも明らかになったように
自分自身を国際法の上に置き、
自らを国際的司法権の及ばない位置に据えようとしている。
その最も顕著な例が
このアフガニスタンにおける空爆攻撃だったのだ。

さて、
今回の卑劣なテロ事件には、
いまだに解決への希望が見えないパレスチナ問題や、
経済のグローバル化の進展によってますます拡大する
南北格差が背景にあると言われている。
それはおそらく事実だと思う。

そもそもイスラエルは、
国連決議224号や338号によって、
東エルサレムやガザ地区をはじめとする占領地から
撤退することが決められている。
パレスチナ紛争の原因は、
こうした国連決議を30年以上にわたって無視し続け、
いまだにパレスチナの独立を認めようとしないイスラエルの側にある。
そして、
そうした事態を事実上容認し、
支援してきたのがアメリカだ。
パレスチナ人のキャンプや町は、
今もアメリカからイスラエルに供給された
F16戦闘機や戦闘ヘリコプターによって
粉々に破壊されている。
このようなイスラエルやアメリカの態度が、
パレスチナの人々を絶望的な自爆テロへと
駆り立てているのである。

もちろん僕は、
パレスチナ人による民間人を標的にした自爆テロにも
賛成しない。
このようなテロは
イスラエル人とパレスチナ人の間の憎しみを深め、
隔たりを大きくするものでしかない。
イスラエル軍に侵略・再占領の口実を与えるだけであり、
パレスチナ問題の解決には寄与しない。
しかし、
こうした自爆テロを批判する前に、
まずはイスラエルの側から、
不法な暴力で作られた入植地を撤去し、
国連決議に従ってすべての占領地から撤退し、
パレスチナ国家の樹立を承認するべきなのである。

しかしアメリカはイスラエルに甘い。
アメリカは、
クウェートを侵略したイラクに対しては直ちに軍事攻撃を開始し、
十数万とも言われるイラクの人々を殺害した。
そして、
イラク市民の生活を支えてきた電力や水力のシステムを破壊した。
撤退後も、
国連の数字によっても毎月約5000人の子供が死亡するほどの
厳しい経済封鎖を科しているにもかかわらず
(この毎月の犠牲者数は、
 同時多発テロの犠牲者数を上回る)、
パレスチナを30年以上占領し続けるイスラエルに対しては、
軍事攻撃どころか経済制裁すら行なおうとはしない。

そして、
アメリカが主導する経済のグローバル化は、
世界の富のほとんどを
アメリカを筆頭とする先進国に集中させ、
発展途上国の対外債務を急激に膨張させている。
国際通貨基金や世界銀行は、
そうした国に資金を供給する見返りとして
その国の政府に医療や自国産業への補助金のカット、
そして多国籍企業の進出を容易にするための規制緩和を強制し、
発展途上国の民衆の生活を窮地に追いやっている。

こうして、
アメリカのパレスチナ政策や経済のグローバル化は、
イスラム諸国の民衆の間に反米感情を植えつける土壌を広げている。
こうした「テロの土壌」に目を向け、
解決への努力を行なわない限り、
アメリカに対する自爆テロの志願者が絶えることはないだろう。
そのことを忘れ、
軍事攻撃によってテロを根絶しようとすると、
イスラム諸国の反米感情にますます火をつけるだけである。

そして今アメリカは、
大量破壊兵器を開発していることを理由に
イラクへの先制攻撃に踏み切ろうとしている。
しかし、
少し考えれば分かることだが、
世界最大の大量破壊兵器保有国はアメリカなのである。
世界で最初に核兵器を作ったのもアメリカであるし、
使用したのもアメリカだ。
そして、
今までに蓄積した膨大なデータを基にして、
今も核爆発をともなわない核実験・「未臨界核実験」を続けているのも
アメリカだ。

そもそも、
イラン・イスラム革命の拡大を恐れるあまり、
フセイン政権を増長させたのはアメリカだ。
イラン・イラク戦争中の1988年に
フセイン政権がハラブジャ事件を起こしたときも
アメリカは、イランへの対抗上、
フセイン政権との友好関係を保つため、
事実上これを黙認したのである。
このとき、
フセイン政権の使用した化学兵器によって
5000人とも言われるクルド人が虐殺されていたにもかかわらず
(子供や老人も含めて村ごと皆殺し、といった状況だった)、
アメリカはこれを見殺しにしたのである。
それが、
今頃になってクルド人たちに、
フセイン政権打倒の反乱を起こして親米政権を作るように
話を持ちかけている。

イラク民衆の間に民主主義思想を広めることによってではなく、
外国勢力による軍事介入によって
フセイン政権を打倒しようとするこのやり方は、
まさしくテロそのものである。
リビアの最高指導者・カダフィ大佐は8月31日、
次のように述べている。
「イラクが攻撃されて体制が崩壊すれば、
 イスラム世界が西洋に脅かされているというビンラディンの説が
 正しかったことになってしまう」。
イラクへの先制軍事攻撃は、
イスラム原理主義者たちにテロの大義名分を
与えることになるだろう。
また、
逆説的な話だが、
こうしたアメリカの態度こそが、
「アメリカは、
 我が国への軍事侵略を公然と主張している。
 世界一の軍事大国であるアメリカに対抗するには、
 核兵器を保有するしかない」と、
大量破壊兵器開発を正当化する口実を
イラクに与えているのである。

フセイン独裁政権の打倒は、
イラク民衆の主体的な意志に基づく行動によって
なされるべきだ。
アメリカの軍事先制攻撃は
明らかに「国家の自衛権」を逸脱した介入攻撃であり、
許されるべきではない。
これがもし、
国連決議も取らないアメリカの単独攻撃となった場合は
なおさらである。
アメリカは、
イラクの体制をその一存で決定する権利を
持っているわけではないのだから。

また、イラクの側も、
大量破壊兵器を持っていないと言うのなら、
国連による査察を無条件で受け入れることを
ただちに表明してほしい。
「無条件での受け入れ」には
たしかに理不尽な部分も多いのかもしれないが、
イラクの側も、
多くの民衆を巻き添えにする戦争を回避するために、
最大限の努力をしてほしい。

僕は、
同時多発テロ事件から1年を迎えるにあたって、
改めてテロリズムに反対することを表明し、
合わせて、
アメリカによる戦争政策にも反対する。
『鈴木邦男をぶっ飛ばせ!』「酒井徹の今週の裏主張」No.4より転載)
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by imadegawatuusin | 2002-09-15 18:44 | 国際