カテゴリ:政治( 89 )

――社会の連帯を柱とした社会保障――

社会民主主義は伝統的に、
「ゆりかごから墓場まで」のスローガンに
象徴されるように、
福祉と社会保障制度の充実を重視する。
日本の社会民主党もその例外ではない。
『社会民主党宣言』には、
「福祉と社会保障制度の充実は、
 誰もが安心して人生を送るために
 欠かすことのできない条件です」とある。

前項・「公平で持続的な税財政」で触れた、
「所得税・住民税の最高税率の引き上げや
 累進性の強化、
 企業に応分の社会的責任を求めた法人税の見直し」で
得られた税収をもとに、
社会福祉を拡充する。

「子供は社会で育てる」を基本に、
公的保育所・託児所などの拡充や
子ども手当の支給など、
子育て支援を充実させてその負担を軽減し、
子供を育てている人とそうでない人との間の
不公平感を無くすように努めていく。

医療においても年金においても
所得再分配機能の働きやすい税の比重を高め、
一律徴収を基本とする保険方式から
財源を税に移行させてゆくことが必要であろう。

ここで重要なのは、
こうした政策は単に「人道的」な観点からだけではなく、
産業構造の変革期における経済政策として
積極的に位置づけられるべきだということである。

『社会民主党宣言』には次のようにある。
「福祉への投資拡大で、
 老後や健康、子育てへの安心を確立するとともに、
 雇用創出や新規産業の育成など
 経済的な波及効果を実現します」。

実は社会福祉の分野は、
「需要は多いのに供給の少ない」
稀有な市場となっている。

待機児童は減らないというのに
保育所の数も保育士の数もまだまだ足りない。
少子高齢化時代を迎え、
介護労働者の増加が求められるが、
体を酷使する厳しい仕事であるにもかかわらず
賃金は決して高くなく、
離職者は後を絶たない。

こうした分野への思い切った公的投資は、
経済構造変革の大きなチャンスにもなる。
子供たちの未来をはぐくむ保育士や
老後の安心をサポートする介護・福祉労働者に、
その職務の重要性にふさわしい待遇を保障する。
そうすることでこうした分野を
「21世紀の成長産業」に転化させて
そこで「税金を払える労働者」を育て上げ、
次なる投資につなげてゆくという好循環を
生み出したい。

また、
社会のバリアフリー化の促進は、
単に障害者の社会参加の促進に役立つだけでなく、
高齢者や介護労働者の負担を
軽減することにもつながるのであるから、
少子高齢化を迎える日本の重点政策と位置付けて
大胆に取り組んでゆくことが必要である。


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by imadegawatuusin | 2011-06-09 20:34 | 政治

――公平で持続的な税財政――

「税制には富の偏在を防ぎ、
 負担能力のある人から社会の支えが必要な人へと
 所得を再分配させていく機能こそ必要です」と
『社会民主党宣言』はいう。
社民党は消費税の増税に批判的だが、
これは決して、
国家財政が厳しい中で
増税そのものに反対しているわけではない。
「逆進性の強い消費税を基幹税に位置づけて
 安易に税率を引き上げることは、
 低所得者層に一層の負担を強いるだけです」
とあるように、
金持ちを甘やかし貧乏人につらくあたる
消費税という税金の性格に反対しているのだ。

「消費税は貧乏人からも金持ちからも
 同じ税率を徴収するのだから
 平等ではないか」という人がいる。
だが、
考えてみてほしい。
たとえば年収200万円の私が
1日に牛乳を1パック飲むとする。
それに対して年収2000万円の金持ちは、
1日10パックの牛乳を飲んだりすることが
あるだろうか。
税率が平等だからといって、
10倍収入のある人間が
10倍の消費税を払うわけではないのである。
だから消費税は不公平税制だと批判されるのだ。

一方で社会民主主義は一般に
「高福祉・高負担」の社会を指向する。
大型開発事業の見直しや軍縮などの歳出削減に
取り組むべきことは言うまでもないが、
そうしたムダを削減した上での
必要政策実施の財源確保のための増税には、
社会民主主義者は決して躊躇するべきではない。

『社会民主党宣言』では、
「所得税・住民税の最高税率の引き上げや
 累進性の強化、
 企業に応分の社会的責任を求めた
 法人税の見直しに取り組みます」とされている。
非事業的相続財産やその他不労所得への課税強化、
環境税の導入、
国境を越えた国際通貨取引に
超低額の税金を課すことで
投機的な金融取引を規制する
国際連帯税の導入なども積極的にすすめたい。

現在は非課税とされている宗教法人にも、
政治団体やNGO団体と同様、
一定以上の収入を得た場合には
応分の負担を求めたいところだ。

また、
税に関する公平性・透明性を高めるための
納税者番号制の導入も、
積極的に検討されるべきである。


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by imadegawatuusin | 2011-06-06 20:25 | 政治

――生きがい、働きがいの持てる労働環境――

社会民主主義者は社会のあらゆる領域で
民主的運動の先頭に立って活動しなければならないが、
特にその中でも主軸となるのが
「社会の富の源泉」である
労働分野における取り組みである。

「働くことを望むすべての人々が完全雇用されること」を
『社会民主党宣言』は「社会の大きな目標」とする。
全ての経済政策は
この野心的な大目標に向けて立案され、
執行されなければならない。

職場においては働く人々の団結の先頭に立ち、
「労働条件の向上を実現」することも
社会民主主義者の大きな任務だ。
全国各地にある
個人加盟制の地域労組や産別労組などと連携しながら
全ての労働者に労働組合への参加を呼びかけ、
日本全国すべての職場に労働組合を打ち立てる。
そしてそうした労働組合を通じて
現場で働く労働者の要求を
経営者に突きつけて実現を図り、
働く者の信頼を勝ち取ることが大切である。

そうした地道な活動を通じて労働者は、
職場における力量を一歩一歩強めてゆき、
そうした中で、
労働者が職場の主導権を握ってゆく展望が開かれる。
職場闘争の究極の目的は企業の民主化、
つまり、
それまでは株主主権・事業主主権であった
株式会社などの企業体を、
代表者や役員を従業員による選挙で選び、
労働者自身が職場を民主的に運営する
労働者協同組合に転換し、
職場において労働者主権を完全に確立することにある。
しかしこうしたことは一足飛びに実現するものではない。
日々の地道な労働組合活動を通じて
職場において働く者の実力を強化し、
労働者が掌握する領域を徐々に拡大してゆくことなしに、
ある日突然 実現することは困難である。

また党自身も、
議会活動や政治活動を通じて
労働時間規制の強化や
労働者保護の立場に立った
労働者派遣法の抜本改正、
きちんと働けば生活できる
全国一律最低賃金制度の確立、
各地方議会における公契約条例の成立などを
強力に推し進めてゆかなければならない。
労働が「社会の富の源泉」である以上、
まっとうな雇用こそが
社会福祉の原点であり、
貧困のない安定した社会の基盤であることは
間違いない。


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by imadegawatuusin | 2011-06-05 20:09 | 政治

――社会的な規制による公正な市場経済――

さまざまな社会主義思想の中での
社会民主主義の特徴の一つが、
社会における市場経済の役割を
正当に評価するという点である。

『社会民主党宣言』には次のようにある。

「生産・交換・分配の手段として市場の機能を認めつつ、
 それを万能として、
 すべてを競争の結果に委ねて、
 資産や所得の格差を放置する立場には立ちません。
 生活条件の向上と自然環境との共生を
 経済活動の主眼におき、
 公正な交換や取引き、分配が行なわれるよう
 市場の民主化や監視、規制に取り組みます」。

社会民主主義は
旧ソ連のような統制的・指令的な中央計画経済を
良しとせず、
各企業体独自の判断による
自由な経済活動を原則的に承認する。
大手と中小、元請けと下請けといった
力関係に格差のある取引に対しても
民主的な規制や監視
(独禁法・下請二法の徹底や、
 中小企業の協同組合への組織化の推進、
 中小企業協同組合による
 取引先企業への団体交渉権の確立など)を徹底し、
市場における真に自由な取引きを実現させる。

その一方で、
労働者や消費者などの人命や安全・健康、
環境などを護り、
搾取を防止するためには、
必要な規制を行なうことを躊躇しない。
市場において真に公平・公正な競争を守るために、
天下り規制の強化なども必要であろう。

やみくもな資本増殖自体に価値を見出す株式会社を、
働く人々が
自らの雇用と生活を維持・発展させる手段としての
労働者協同組合に転換し、
そうした企業体が
社会に悪影響を与える経済活動を行なう場合は
民主的な手段をもって公正な規制を適用する。

要するに、
あくまで
「生活条件の向上と自然環境との共生を
 経済活動の主眼にお」く社会を目指すのだ。

必要な規制が徹底されれば、
一般産業においては各企業体は
働く人々を主権者とし、
社長や役員を従業員の民主的な選挙によって選出する
労働者協同組合にすればよく、
あえて国有化などを強行する必要はない。
だが、
福祉や医療といった命にかかわる領域や、
教育のような未来をつむぐ分野においては、
労働者よりも
むしろ利用者の方を主権者とすることが望ましい。
こうした産業に限っては、
消費生活協同組合や公営企業・国営企業といった
経営形態が望ましいのではないだろうか。
『社会民主主義宣言』に、
「福祉や医療、教育など人々が
 共同で社会生活を営む分野で
 公共サービスの役割を重視し、
 その機能を充実させます」とあるのは
そういう意味である。

そうした、
営利至上の株式会社中心の資本主義社会から、
労働者主権の労働者協同組合を中心とする経済に
転換するためには、
各企業において労働者の力を強め、
経営者・株主の横暴を規制する
労働組合運動の発展が不可欠である。

社会民主党は
個人加盟制の地域労働組合や
産業別労働組合運動の先頭に立って
全ての職場に労働組合を建設しなければならない。
そして、
ゆくゆくはそれらの職場で
労働者主権を実現することを展望しつつ、
地道な労働者救済・労働条件の向上を
労働組合を通じて実現し、
労働組合への信頼感を
各職場において確立することが大切だ。


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by imadegawatuusin | 2011-06-04 19:43 | 政治

――私たちの社会民主主義とは――

ここではまず、
社会民主党の自己規定がある。
「私たちは、
 社会民主主義の理念に基づく政策の実現を目指し、
 経済・社会の中心を担う働く人々や
 生活者の立場から
 社会の民主的な改革に取り組み、
 すべての人々に門戸を開いた政党です」。

まず、社会民主党である以上、
「社会民主主義の理念に基づく
 政策の実現を目指」すことが
第一に掲げられるのは当然のことだ。
問題はその手段である。
社会民主党はその政策の実現にあたって、
「経済・社会の中心を担う働く人々や生活者の立場」に
立脚すると言うのである。

今の資本主義社会では、
職場において汗を流して
実際に社会を動かしている労働者でなく、
そうした労働者を雇って働かせている経営者が
強い力を握っている。
従業員100人の企業では、
経営者より労働者の方が圧倒的に数は多い。
だが、
労働者が個々に分断された状況では、
一人一人の労働者と比べて
経営者の立場は圧倒的に強い。
社会的にも経済的にも、
圧倒的多数の労働者は
圧倒的少数の経営者に対し、
圧倒的に従属的な立場に置かれている。

政権を担い、
全生活者の命と暮らしを保障することを目指す立場からは、
「生活者の立場」に立つべきことは当然のことだ。
だが、
そうした生活者の中でも特に、
「経済・社会の中心を担う働く人々」の立場から
改革に取り組むと特筆されていることは
注目に値する。

個々に分断されていることで、
本来の力を出し切れていない労働者にこそ、
現状を変革する力が秘められている。
そうした労働者が団結すれば、
「社会の民主的な改革」を推進する
最も大きな原動力となる。
『社会民主党宣言』はそうした確信に貫かれている。

そして最後に、
「すべての人々に門戸を開いた政党」との
自己定義がある。

社会民主党は日本共産党などと違い、
入党にあたっての国籍条項がない。
日本に現実に生活の基盤を置き、
日本の統治下にある一定年齢以上のすべての市民に
その門戸は開かれている。
これが社会民主党の特徴である。

そして『社会民主党宣言』は、
「日本における社会民主主義の理念として
 『平和・自由・平等・共生』を揚げ」る。
ここで、
「『日本における』社会民主主義の理念」と
わざわざ断っていることに注目したい。

社会民主主義は国際的な政治的潮流である。
だが、
日本にある社会民主主義政党であるという意味での
特殊性を免れるわけではない。
ここでは、
「平和・自由・平等・共生」のうち、
特に「平和」の理念について、
日本の社会民主主義政党として
独自の位置づけを図ろうとしている。

他の理念については、
「人々が自らの目標を定め、実現していく自由」とか、
「一切の差別を否定し、
 すべての人々に社会参加の機会と権利を保障する
 平等」とか、
「人間が人間らしく生きることを社会全体で支え、
 アジアや世界の人々との共存、
 自然環境との調和を目指す共生」と、
地域性を越えた、
普遍的な位置づけがされている。
それに対して「平和」については、
「アジア諸国を侵略・植民地支配した
 加害者としての歴史、
 そして人類初の原子爆弾による
 被爆国としての歴史を踏まえた時、
 あらゆる権利の実現に際し、
 その前提に位置づけるべき平和」と、
この日本という国にある政党としての自覚が
みなぎっている。

世界的に言えば、
社会民主主義政党は
必ずしも平和主義に重点を置いた政党ばかりではない。
イギリス労働党のブレア政権が、
イラク戦争の際に対イラク先制攻撃に
アメリカとともに真っ先に参戦したことは
記憶に新しい。

だが、
そうした世界の社会民主主義の潮流の中に、
日本という国にある社会民主主義政党として、
「平和」の理念を高く掲げて登場しようというのが
日本の社会民主党である。
社会民主党はこの「平和」に加え、
「自由」・「平等」・「共生」の
「4つの理念を具体化する政策の実現に
 全力を挙げます」という。

そして『社会民主党宣言』は、
日本における社会民主主義の定義について、
次のように明記する。
「私たちは、
 社会のあらゆる領域で民主主義を拡大し、
 『平和・自由・平等・共生』という理念を具体化する
 不断の改革運動を
 社会民主主義と位置づけます」。

社会民主主義の根本理念は
「社会のあらゆる領域で」の
「民主主義の拡大」に他ならない。
政治はもちろん、
経済・経営などの領域にも
民衆の自由=自己決定を拡大しようとする運動が
社会民主主義なのだ。
そして社会民主主義は、
遠い未来のどこかにあるものではない。
「こうしたことが実現すれば社会民主主義の完成」
という完成図もない。
社会民主主義は、
社会のあらゆる領域で
民主主義を常に拡大し続けようという、
この現在の現実から出発する
「不断の改革運動」そのものなのである。


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by imadegawatuusin | 2011-06-03 19:21 | 政治

――道理のない「内閣不信任決議」を見過ごすな――

■民主党内の進歩勢力と足並みをそろえよう
自民・公明・たちあがれ日本の3党が提出した
菅内閣への不信任案をめぐり、
政局の混乱が続いている。
不信任案には反対すると見られていた社民党が
ここに来て、
「国民を置き去りにして
 政争をやっている場合ではないが、
 かといって菅政権にも問題がある」などとして
採決を棄権する方向だという。

菅首相は、
不信任案が可決されれば
衆議院を解散する意向だという(朝日新聞6月2日)。
一刻の政治猶予も許されない震災下の状況で、
国会解散にもつながりかねない
内閣不信任を行なうというのであれば、
よほどの理由が必要であろう。
しかしこれまでの経過を見る限り、
自民党や たちあがれ日本といった保守勢力主導の、
民主党内の内紛につけ込んでの
党利党略であるようにしか見えない。

社民党には、
このような保守勢力の側からの不信任決議には
きっぱりと反対してもらいたい。
「菅政権にも問題がある」ことなどは、
県外・国外移転の公約をかなぐり捨てて
米軍普天間基地の辺野古移設を容認したときから
分かり切っていることである。
しかし、
いま菅内閣を引きずりおろして
後がまに座ろうとしている自民党の谷垣氏などが、
こうした問題について菅内閣と違う姿勢を取るとは
到底思えない。
むしろ、
「連合」など労働者勢力の支援を受けている
市民運動出身の菅首相より、
さらに対米追従・大企業優先の路線に
舞い戻るであろうことは目に見えている。

「棄権」ならば政治責任を負わないと考えているならば
大間違いである。
民主党内部でも、
この不信任案に呼応する動きを見せているのは
小沢氏周辺の保守勢力であり、
旧社会党グループや旧民社党グループなどの
労働者勢力は
不信任案反対で足並みをそろえている。
そのような中で、
内閣不信任後の見通しも描けないまま
保守勢力主導による不信任決議を黙って見過ごすならば、
結果的に政治を大きく後退させることになるだろう。
民主党が分解し、
政界再編があった場合も、
社民党が不信任案可決を見過ごしたとなれば、
民主党内の革新・進歩勢力と手を結ぶことが
難しくなる。

以上の理由で私は、
一人の社民党員として、
保守勢力主導の道理のない内閣不信任案には
きっぱりと反対することを
社民党・共産党などの革新勢力や
民主党内の良識ある議員に呼び掛けたい。
(JanJan Blog 6月2日から加筆転載)


【参考記事】
「菅よりまし」な選択肢はないが

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by imadegawatuusin | 2011-06-02 10:57 | 政治

――格差のない平和な社会を目指して――

「私たちは、
 現在そして未来に夢と希望が持てる社会を
 実現するため、
 働く人々や弱い立場に置かれた人々と
 ともにありたい」。
『社会民主党宣言』はこのような一文から始まる。

公正や平等を志向する社会民主主義の政党が、
「弱い立場に置かれた人々とともにありたい」
と考えるはある意味当然である。
注目すべきは、
そうした「弱い立場に置かれた人々」一般とは区別して、
特に「働く人々……とともにありたい」と
明記されている点である。

『共産党宣言』の昔から、
「働くものは儲けない、
 儲けるものは働かない」などと言われてきた〔注1〕。
マルクスの盟友であったエンゲルスも、
「貧しく、かつ労働する階級は、
 常に存在した。
 また労働する階級は、
 たいてい貧しかった」と言っている〔注2〕。

ならばなぜ「働く人々」を、
障害者や少数民族や性的マイノリティー……といった
「弱い立場に置かれた人々」一般とは別格に、
真っ先に「ともにありたい」対象として挙げるのか。
それは、
「働く人々」は単に弱い立場に置かれている
救済されるべき人々ではないからである。

人間は働くことでしか
富や価値を生み出せない。
社会を動かし発展させる原動力は
「労働」にこそある。
職場生産点において汗を流して労働し、
社会を実際に動かしている労働者こそは、
政治を動かし歴史をつくる力を持った存在なのだ。

働く人々はこの社会における多数派である。
本質的に少数者である経営者層は、
働く人々が団結することを何よりも恐れている。
だからこそ、
『社会民主党宣言』は、
実際に世の中を動かし、
変える力を秘めた働く人々とその運動に、
社会変革の原動力を求めるのである。

また、
社民党というと「護憲の党」というイメージが強いが、
党の綱領であるこの『社会民主党宣言』は、
厳密な意味での「護憲」にとらわれない
幅の広さを持っている。

『社会民主党宣言』第1章では、
「私たちは目指します。
 憲法の理念が実現された社会を」と書かれているが、
現行憲法を一字一句全条項を護るとは
この『宣言』のどこにも書かれていない。
『社会民主党宣言』で実現すべきとされているのは
あくまで、
主権在民や基本的人権の尊重・平和主義といった
「憲法の理念」に他ならなず、
個々の条文の文言を守れとは書かれていないのである。

だから、
筆者のように
「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し……」などと
同性同士の結婚を否定する憲法第24条は
改正すべきだと考える「改憲論者」も
堂々と社会民主党に入党できる。
筆者の場合、
文面上は「改憲論者」ということになるだろう。
だが、
同性婚の実現は
憲法の基本的な理念である「法の下の平等」を押し広げ、
さらに深める方向での改正に他ならない。
ならば、
筆者の主張する憲法第24条の改正は
「憲法の理念」を実現する取り組みに
他ならないのであるから、
社民党の綱領である『社会民主党宣言』とは
何ら矛盾するところがないのである。

社民党の党是は、
狭い意味での「護憲」ではない。
党綱領の『社会民主党宣言』に示された
社会民主主義の理念こそが、
社会民主党が党是とすべきものなのである。

〔注1〕マルクス・エンゲルス『共産党宣言』大内兵衛・向坂逸郎訳、岩波文庫68ページ
〔注2〕エンゲルス「共産主義の諸原理」マルクス/エンゲルス『共産党宣言/共産主義の諸原理』服部文男訳、新日本出版社113ページ


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『社会民主党宣言』を読む(第3章-13)
『社会民主党宣言』を読む(第4章)

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by imadegawatuusin | 2011-06-01 19:11 | 政治

――社会民主党がつくろうとしている社会――

日本の社会民主党が党の綱領的文書としている
『社会民主党宣言』のパンフレットの冒頭で、
「社民党がつくろうとしている社会」について
福島みずほ党首は、
「排除ではなく、全員参加型社会です」と規定している。
「一握りの人ではなく、
 みんなで参加し、
 また決定していくことの方が、
 社会が安定し、
 活力が生まれ、
 公正な社会をつくっていくことができます」と
いうのである。

「だからこそ、
 人権や民主主義の考え方の延長に
 『共に生きられる社会』である
 社会民主主義の社会があるのです」。
福島党首はそのようにいう。

つまり、
社会民主主義というのは
何か特殊な主義主張を
どこかから持って来ようというものではない。
いまや政治においては国際的な常識となっている
「人権」や「民主主義」といったものを、
社会のあらゆる領域において
徹底させてゆこうというものにすぎない。

国会や地方議会はもちろん、
職場や町内会なども民主的に運営される
全員参加型の民主的な社会
(直接民主制か間接民主制かは
 単位の規模などにもよろうが)。
そうした中で
お互いの人権が徹底的に尊重され合う社会。
それが社会民主主義の社会である。
「社会民主主義の社会」は
「人権や民主主義の考え方の延長に」あるものなのだ。

だからこそ、
いま、
自分が暮らしているこの社会で、
経営者の横暴に対して従業員の団結で立ち向かい、
働く者の意思が反映される
民主的な職場をつくろうと
労働組合運動に取り組むことも、
不当な差別を許さず
人権擁護のために地域で地道に活動することも、
命や暮らしを守るために
環境運動や平和運動を進めることも、
すべて社会民主主義社会の実現のために
欠かすことのできない活動である。
むしろ、
こうした諸活動の成果が勝ち取られたその先にこそ、
社会民主主義の社会は実現すると
言い換えることもできるだろうか。

現行の社会体制において、
特に民主主義が欠如しているのは「職場」であろう。
国政や地方政治の領域は、
曲がりなりにも日本においては
民主主義が実現している。
議員や首長は住民自らが選出でき、
それがおかしいと思えば
次の選挙で落選させることも可能である。

ところが、
職場においては民主主義が全くない。
生産現場で汗を流し、
職場を実際に動かしている労働者には、
会社の運営や役員選出に
何の権限も与えられていない。
株式会社においては社長を決めるのは株主であり、
しかも「1人1票制」ではない。
100万円分の株を買った人間は100万円分、
1000万円分の株を買った人間には
1000万円分の発言権・投票権があり、
圧倒的に金持ち優位の制度である。
そして労働者には、
どれほど一生懸命働いて会社の経営に貢献しても、
1票分の発言権も与えられない
(上場会社なら「給料で株を買う」という方法はあるが、
 「1人1票」の民主制度でないことには
 変わりがない)。

社会主義とは主に、
政治に民主主義が実現してなお
非民主的な運営が続いている
こうした経済・経営の領域にも
民主主義を拡大・徹底させる運動である。
政治を勤労大衆の手に取り戻すことはもちろん、
職場の管理・運営権も
そこで働く労働者自身の手に
おさめなければならない。

社長は従業員の選挙で選ぼう! 
上司も社長が決めるのでなく、
各部署で民主的に選出しよう! 
こうして、
職場を動かす労働者自身が会社の主人公となり、
会社を本当の意味で「自分たちのもの」にしてゆこう!
これが、
私の考える社会民主主義である。

社会民主主義は
極めて理性的・合理的・実践的な性格を持つ
体系的な思想であり、
全世界的に一大潮流をなしている。
マルクス・エンゲルス・ベルンシュタインをはじめとする
進歩的思想家の伝統を引き継ぎ、
旧ソ連に代表される
強権的・非民主的な共産主義や、
統制的・指令的な「国家による経済一元化」には
批判的な立場を貫いてきた歴史を持つ。
国際的には
「社会主義インターナショナル」という組織に
代表されている。

ここではこの社会主義インターナショナルの
日本唯一の加盟政党である社会民主党の
綱領的文書・『社会民主党宣言』を通じて、
社会民主主義の基礎を学んでゆきたい。


【テキスト本文】
『社会民主党宣言』本文

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by imadegawatuusin | 2011-05-31 18:50 | 政治

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生産そのものはますます社会的になっていき、
――いく十万、いく百万の労働者が
  計画的な経済有機体に結びつけられてゆく――、
しかし、
共同労働の生産物は、
ひと握りの資本家たちによって着服されている。……/
資本主義体制は
労働者の資本への隷属を増大させながら、
結合された労働の偉大な力をつくりだす。〔注1〕


■一番最初に取り組む「古典必読文献」
その昔、
日本共産党には「独習指定文献」といって、
「共産党員たる者このくらいは読まなきゃ」という
必読書リストが存在した。

最初は
マルクス・エンゲルス・レーニンらの著作が
リストにはズラリと並んでいた。
だが、
いつしかそうした「古典」は減ってゆく。
宮本顕治元議長・不破哲三前議長・志位和夫委員長ら
「党指導者」の著作が
幅をきかせるようになっていったのだ。
特に「初級課程」では
(必読書リストにもランク分けがある!)、
暴力革命を鼓舞するのでケシカランということなのか、
マルクス・エンゲルスの『共産党宣言』までもが
削除されてしまう。

そんな中、
最後の最後まで独習指定文献に残り続け、
かつ初級課程の文献として
古典の中で一番最初に読むようにと指導されていたのが
レーニンの
「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」である。
つまりこの論文は、
日本共産党作成の独習指定文献表に従って学習を進める
模範的な日本共産党員が
最初に出会うマルクス・エンゲルス・レーニンの
古典文献ということになる。

もちろん、
この論文が独習指定文献に残り続けたことには
それなりの理由がある。
まず、
暴力革命を呼びかけるなどの不穏当な部分が無く、
「議会における多数派獲得による平和革命」を目指す
今の日本共産党の路線と相性がいい。
この「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」は
もともと
『プロスヴェーシチェーニエ』(「啓蒙」の意)という
「ボリシェビキ(評者注:=後のロシア共産党)の
 合法的な月刊機関誌で、
 社会・文化雑誌であ」った雑誌の
「マルクス死後三〇年記念号」に
発表されたものという〔注2〕。
「合法的な月刊機関誌」とはすなわち、
当局も検閲済みの
「オモテ」の出版社から出た雑誌であるということだ。
「初心者」に読ませても
変な暴力思想にかぶれさせる心配がない。

おまけにこの論文は
ページにしてわずか11ページである。
「初級」学習者にとって「短い」ということは
何にもまさる美点であって、
これなら30分もあれば最後まで読了できる。

この「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」を
手始めとして、
初級・中級・上級……とランクアップし、
最後はマルクスの『資本論』が読破できれば
マルクス主義の「免許皆伝」、というのが
日本共産党の模範的党員養成カリキュラムだった。

■マルクス主義の「スゴさ」を力説
しかし、
人間とは弱いもので、
こういう「系統的な独習」というものは
えてして「三日坊主」に終わることになる。
挫折しては
「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」に、
また挫折しては
「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」に
戻って学習のやり直し……という人も
珍しくない。
つまり、
計画性と根性の欠如した、
あまり模範的でない党員は、
生涯に何度もこの論文を
読み返すことになってしまう。
資本論など一度も読んだことがないくせに、
「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」だけは
何べんも読んだという
不思議な「マルクス主義者」がここに生まれる。
生半可な「共産党員」ほど、
この論文の印象が頭に焼き付き、
こびりついて離れなくなるのである。

では、
この論文には何が書かれているのか。
一言で言えば、
それは「マルクス主義はスゴイ!」ということである。
この論文の中でレーニンは次のように言っている。

マルクスの学説は正しいから、
全能である。
その学説は完全で均整がとれており、
どのような迷信とも、
どのような反動とも、
またブルジョア的抑圧のどのような擁護とも
妥協できない、
全一的な世界観を提供している。
それは、
人類が一九世紀にドイツ哲学、
イギリス経済学、
フランス社会主義という形でつくりだした最良のものの
正統な継承者である。〔注3〕


それはすごい。
「マルクスの学説は正しいから、
 全能である」というのである。
要するに、
「マルクスはスゴイからスゴイ」と
言っているだけなのであるが、
これを何十ぺんも読む人間には、
中身はよく分からないが
ただ「スゴイ」という印象だけが残る。

この論文を収録している
新日本出版社(日本共産党系の出版社)の
『マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分/カール・マルクス ほか』
(「科学的社会主義の古典選書」シリーズ)の
「解説」では、
「この論文は、
序論と三つの節から成っていますが、
序論が大切です」と書かれている(232ページ)。
その、
一番大切な「序論」の結論部分、
一番サビの部分にあたるのが、
上であげた
「マルクスの学説は正しいから、
全能である」云々の部分なのだ。

「解説」はさらに、
「序論につづく三つの節も、
 “唯物論とは”とか“労働価値説とは”とかの
 入門的説明をしているわけではなく、
 哲学、経済学、社会主義理論のそれぞれについて、
 科学的社会主義の理論が、
 それ以前の人類の
 価値ある知識の継承と発展であることを
 示しています」とする(232ページ)。
マルクス主義学習の初心者に対して、
「“唯物論とは”とか“労働価値説とは”とかの
 入門的説明を」せず、
とにかくマルクス主義はスゴイぞ! ということを
ビシッと最初にたたき込んでおくという
論文なのである。

■「20世紀の妙法蓮華経」!?
「この調子の古典はどこかで読んだことがある」と
常々思っていたのであるところ、
最近、
大乗仏教の経典・「妙法蓮華経」(いわゆる「法華経」)が
こんな感じだったと気がついた。
よく「南無妙法蓮華経」とかやっている、
あれである。

法華経は古来、
「諸経の王」と呼ばれてきた。
とにかくスゴいお経だという。
実際に読んでみたら、
たしかに「スゴい」。
全編、
「法華経はスゴい」という自画自賛と、
そのためのたとえ話ばかりなのだ。

なるほど、
たしかに法華経が「スゴい」ということはよくわかった。
では、
その法華経は一体何を教えていて、
私たちは何を信じればいいというのか。
そこのところが法華経を読んでも、
さっぱり分からないのである。
江戸時代の国学者・平田篤胤は
「法華経というのは
 この薬は凄いと書いた効能書きだけで、
 薬の入っていない薬箱のようだ」と評したという〔注4〕。

また先日亡くなった宗教社会学者の小室直樹氏も、
「仏教にしても最もカルト的な法華経の系列が
 いまの日本では一番活発であろう。/
 どこがどうカルトかというと、
 法華経に含まれている根本の協議である。
 法華経を信じれば何でもできる、
 どんな奇跡でも起きる。という考え方は、
 カルト以外の何ものでもあるまい」と指摘している〔注5〕。

私はどうもこのレーニンの
「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」を
読むと、
こうした「法華経」を連想せずには
いられないのである。

■マルクス主義学習の見取り図として
ただしこの論文は、
マルクス主義の構成要素を
「哲学」・「経済学」・「社会主義」の三つの要素に分解し、
マルクス主義を学習するうえでの指針というか、
見取り図的な役割を果たしてくれる文献であるのも
また事実である。
解説の小林榮三氏は、
「科学的社会主義が、
 哲学、経済学、社会主義理論の三つの構成部分からなり、
 そして、それぞれが
 ドイツの古典哲学、イギリスの古典経済学、
 フランスの社会主義思想を
 三つの源泉としているという、明確な規定で
 科学的社会主義の体系と特徴を定式化したのは、
 レーニンのこの論文が最初です」と
この論文の意義を説明している(232ページ)。
その意味でもこの論文は、
やはりマルクス主義学習を志す者が
最初に手にすることになる論文なのだろう。

なお先の解説は、
この論文について、
「マルクス主義は『訂正』が必要だという
 修正主義の議論が横行するなかで、
 科学的社会主義が
 不断に進歩し発展する科学としての生命力を
 もつことを明らかにするというところに、
 レーニンがこの論文を書いた目的があると
 いえるでしょう」と書いて
文章を締めくくっている(233ページ)。
本当に「科学的社会主義が
不断に進歩し発展する科学」であるならば、
当然多くの人々の検証にさらされ、
絶えざる「『訂正』が必要」となるのではないだろうかと
思ってしまうのは私だけなのだろうか。

〔注1〕レーニン、高橋勝之・大沼作人訳「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」、『マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分/カール・マルクス ほか』13ページ、新日本出版社「科学的社会主義の古典選書」シリーズ
〔注2〕小林榮三「解説」、レーニン、高橋勝之・大沼作人訳『マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分/カール・マルクス ほか』232ページ、新日本出版社「科学的社会主義の古典選書」シリーズ
〔注3〕レーニン、高橋勝之・大沼作人訳「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」、『マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分/カール・マルクス ほか』8ページ、新日本出版社「科学的社会主義の古典選書」シリーズ
〔注4〕小室直樹『日本人のための宗教原論』303ページ、徳間書店
〔注5〕小室直樹『日本人のための宗教原論』390ページ、徳間書店

レーニン「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」
評価:3(普通)


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by imadegawatuusin | 2010-10-05 09:56 | 政治

――『民主主義的社会主義運動 綱領・規約』を読む――

本書は、
旧親ソ派の流れを汲むある左翼党派の
結成宣言や綱領・規約を収録したパンフレットである。
この党派は2000年に、
ソ連崩壊の総括の上に自らの組織を一たん解散した上で、
新しい社会主義像を提示して現在の組織を再結成した。
本書の中で示されるソ連崩壊の総括、
そして目指すべき社会像としての
「民主主義的社会主義」は、
私たち社会民主主義者にとっても
示唆に富んだ内容を含んでいる。

私たち社会民主主義者は、
資本主義社会の中からの
漸進的な社会主義への移行を主張する。
しかし、
昔と違って今の社会民主主義政党は、
産業の国有化などの政策は
それが必要な場合を除いて主張しないし、
また、
経済における市場の機能も評価しており、
中央集権的な計画経済を良しとしない。
産業の国有化も計画経済も否定し、
市場を認める私たち社会民主主義者は、
では一体、
今の資本主義社会の中から
どのような社会主義を目指してゆけばいいのだろうか。

そのことを考える上で本書が有益なのは、
本書もまた、
産業の国有化を
社会主義社会建設における必須のものとは考えておらず、
経済における市場の機能を認めているからである。
本書は、
社会主義とは
社会のあらゆる領域における民主主義の徹底、
とりわけ経済の領域における
民主主義の徹底であると主張する。

はやい話が職場において
労働者主権を実現するということだ。
各部署の上長はもちろん、
社長や役員も従業員による民主的な選挙によって選出し、
会社の運営方針も
従業員による討議・多数決で民主的に決定する……。
そんな、
労働者自らが共同で生産手段を所有し、
経営を含めて協同労働に従事する
労働者協同組合(ワーカーズコープ)のような
企業形態もまた、
「生産手段の社会化」の一形態と考えられ、
社会主義社会の重要な要素とされている。

この党派がこうした見解に立つに至ったのは、
旧ソ連をはじめとする「社会主義国」崩壊を
次のように総括したからに他ならない。

社会主義世界体制崩壊の原因は、
非民主主義的政治制度と
それと表裏一体の
統制的指令的経済制度であった。
労働者はこのような制度の下で、
自主的、創造的意欲を失い、
帝国主義との軍事、経済競争の中で、
旧来の社会主義は崩壊したのである。
(本書2ページ)


この党派は旧ソ連派の流れを汲むにもかかわらず、
旧ソ連をはじめとする
「社会主義国」の政治・経済制度を
次のように痛烈に批判する。

解体した社会主義国では、
生産手段の国有化イコール社会主義と
とらえらえていた。
しかし、
党官僚支配の国有企業は、
搾取自体は存在しなかったものの
生産者たる労働者による意思決定が
なされなかった。
(本書8ページ)


ソ連邦政治制度においては、
労働者・国民は実質的に一切の発言権を持たず、
共産党政治局を中心とした党官僚がすべてを決定し、
政府、議会はその決定を追認するにすぎなかった。
共産党内においては
反対意見は組織的・行政的に排除され、
実質的討議はなされず形式的満場一致で終わり、
党内民主主義の根本である思想闘争の権利は
保障されなかった。
このような非民主主義的政治制度が
帝国主義の包囲下ということで正当化された。

また、
このような非民主主義的政治制度の下で、
国有化企業は労働者から自主性、創造性を奪った。

統制的指令的経済制度の下、
企業の生産活動の全てが
国家の丸がかえのもとでなされ、
労働者がどのような質の製品を作ろうと、
どのように生産性をあげようとも
労働者の待遇に無関係なシステムの下、
労働者は自主的・創造的意欲を失ったのである。

ソ連邦をはじめとする社会主義国においては、
資本主義的私有制度が廃棄され、
搾取制度が廃止された。
しかし、
労働者が自主的に意思決定できるシステムでは
なかった。
崩壊した社会主義は、
資本主義を否定したが、
生産手段の真の意味での社会的所有を
実現していなかったのである。
この弱点が、
帝国主義との軍事・経済競争の中で、
社会主義世界体制を崩壊させたのである。
(本書5ページ)


こうした総括のもとに、
本書が提言するのは次のような社会像だ。

つくられるべき民主主義的社会主義においては、
生産者たる労働者が生産手段を所有すると同時に、
企業の管理・運営に責任をもつことでなければならない。
協同組合、国有企業、公営企業、など
生産手段の所有形態は様々あるが、
労働者の意思決定が貫かれているか否かが
社会的所有の核心なのである。
この徹底した社会的所有の下で、
商品価格、数量は中央計画ではなく、
市場によって決定されることとなる。
もちろん、
市場経済ですべてが決定されるのではなく、
教育、福祉、医療などは
政府が責任を持つ分野である。
また、
金融市場、労働市場に対する民主的規制も
強化されなければならない。
(本書8ページ)


こうした社会を実現するためにはどうすればいいのか。

社会主義実現のためには、
議会多数派形成を通じた
立法による多国籍独占資本の規制、
労働運動による職場からの資本への規制、
地域住民による自治体の民主的変革が必要である。
つくられるべき社会主義は、
議会多数派の形成によって
一挙に達成されるものではない。
グローバル資本主義への規制を強めるとともに、
資本主義の下で
社会主義の準備を進めていかなければならない。
協同組合建設、地域の民主的変革、
職場の民主的変革を通じて、
社会主義社会を準備していくのである。
(本書9ページ)


普通選挙に基づく議会制度や言論の自由・結社の自由が
一定実現している地域においては暴力革命を排し、
不断の社会革新が積み重ねられるべきであるとするのが
私たち社会民主主義者の基本的な考えだ。
本書の路線は
社会主義を目指す手段の点でも
私たちの参考となる。

そして本書ではとりわけ、
労働者協同組合の建設に、
社会主義社会実現における
特別の役割が与えられている点が
注目に値する。

失業に対して積極的に雇用をつくりだす立場から、
協同組合を建設することが必要である。
また、
生産手段の所有者が同時に労働者である協同組合は、
将来の民主主義的社会主義の準備の一環として
位置づけなければならない。
(本書11ページ)


本書は高らかに宣言する。

民主主義的社会主義は
長期かつ世界的変革過程だということである。

……しかもこの過程は
一国的な変革過程ではなく、
世界的な変革過程でなければならない。
グローバル資本主義を規制していくのは
全世界の労働者・人民の課題である。

……多国籍独占資本のグローバル資本主義に
反対する人々、
首切りを許さず労働者の権利を擁護する人々、
あらゆる人権侵害を許さず
平等を実現しようとする人々、
環境破壊に反対する人々、
これらの民主主義的勢力が統一して闘うならば、
民主主義的社会主義は実現しうる。
(本書9ページ)


旧ソ連派の構造改革路線である
この「民主主義的社会主義」と、
私たちの社会民主主義が「統一して闘う」ことが
可能かどうか、
それは双方の現場での実践にかかっている。
JanJan blog 8月17日から加筆転載)

『民主主義的社会主義運動 綱領・規約』
評価:4(良い)


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by imadegawatuusin | 2010-08-17 10:33 | 政治