■『恋愛方向』には進まない画期的な「女装女子寮モノ」 
全寮制の女子校で、
同室になったルームメイトが実は男の子だった……
という設定は、
そう珍しいものではない。

古くは『聖ルームメイト』があるし、
近年では
『Wジュリエット』・『きらきら迷宮』・『天使じゃない!』といった作品が
思い浮かぶ。

ただ本書は、
同じ部屋で暮らすことになった少年と少女との関係が
必ずしも『恋愛』という方向には向かわないという点で、
従来の作品とは明らかに一線を画している。

■「ラブコメ」のキャッチコピーは詐欺である
ブックカバーの作品紹介には
「秘密の女子寮ラブコメディ」とあるが、
編集者の手によってなるこの手のキャッチコピーを鵜呑みにすると
大変危険だ。
はっきり言って詐欺に等しい。
本書・『君とひみつの花園』に
「ラブコメ」的な要素は
はなはだ稀薄であると言わざるをえない。

本作のヒロインである綾瀬ナツは、
「武道バカな兄ちゃんたちに育てられて」きたためか(本書33ページ)、
いわゆる「女の子らしさ」にやや欠ける点がある。
ところが、というべきか、
だからこそ、というべきか、
ナツはいわゆる「女の子らしさ」に過大なまでの憧れを抱いている。
この全寮制の女子中学にも
「女の子らしくなるため」にわざわざ転入してきたのである(本書11ページ)。

だから、彼女が「運命の出会い」と呼んではばからない
ルームメイトの女装少年・紺野藤緒との出会いも、
決していわゆる「王子様との出会い」ではない。
「女らしくなって男の子にモテたい」と願う彼女にとって、
紺野藤緒はいわば理想の「姫」だったのだ(本書12~13ページ)。

ナツからみる藤緒は、
あるときは「理想」であり(本書13ページ)、
あるときは「師匠」であり(本書35ページ)、
あるときは「嫉妬の対象」であったりする(本書40ページ)。

そして最終的には、
「男モテ」を目指すナツにとっての「ライバル」として(本書138ページ)、
そして何より彼女の1番の親友として(140ページ)、
二人はいい感じの友情を育んでゆく。

■演技を演技と感じさせない演技力
穏やかで優しくおしとやかで、そして何よりかわいらしい藤緒は
(ナツはこれを「空気がある」あるいは「女子力が高い」と呼ぶが)、
年ごろの男たちの憧れの的だ。
(本書138ページには、
 藤緒は「外にでれば必ずナンパされる」とまである)。

しかしこの、いかにも「女の子」な藤緒の人格は、
実は意図的に「つくって」いるもの、
つまり演じられたものである。
しかし彼の「女の子」としてのしぐさや行動は、
全くそれを感じさせることがない。

おそらく藤緒は、
今まで漫画界で描かれてきた女装少年の中でも、
最も演技力の高い男の子の一人であろう。
何しろ彼は、
ナツと二人きりでいるときを除いて、
まったくと言っていいほど「素」の自分を見せようとしない。
その演技が、
痛々しいまでに徹底している。
完璧なのだ。
一言で言えば、
「演技を演技と感じさせない演技力」を
彼は持ち合わせている。
それは読者をしてときに、
どのシーンが演技でどのシーンが「素」なのか
わからなくさせてしまうほどなのだ。

■漫画界でも稀有な自然な女装ぶり
実に当然のことながら、
女装少年には演技派が多い。
本来男の子であるものが、
女の子としてやっているのだから当然だ。

しかし彼の「女の子」ぶりは、
桁違いに自然なのである。
もしかすると「女の子」は演技、という方が嘘で、
実は『ストップ!!ひばりくん!』のひばりくんや
『女のコで正解!』の由紀ちゃん、
『少女少年~GO!GO!ICHIGO』の苺くんのような、
「体は男、心は女」というタイプの性同一性障害者なのでは……と
ふと思えてしまうことがあるほどだ。

だが、
ひばりくん・由紀ちゃん・苺くん……といったタイプのキャラクターたちは、
自分が「女の子扱い」されたとき、
やたらと 喜んだり はしゃいだりして浮かれてしまう傾向がある。
(『ストップ!!ひばりくん!』アニメ版の主題歌の一節に
 「男か女かなんて
  どうでもいいこと」というフレーズがあったけれど、
 あの歌を作詞した人は明らかに作品を誤解していたと僕は思う。
 ひばりくんにとっては、「男か女か」ということこそが最も重要な関心事であり、
 その一点に命を懸けていると言っても過言ではない。
 それと比べればその他のことこそ、
 ひばりくんにとっては全く
 「どうでもいいこと」だったのである)。

ところが藤緒には『それすらない』。
彼はごくごく自然に、「女の子」ができてしまうのだ。

たとえば街を歩いていて、
男の子にナンパされたとする。
そんなとき、
彼は一切 迷惑そうなそぶりを見せたりしない。
だからといってわざとらしく、
「キャーッ、うれしーっ!」などと言って はしゃいだり、
やたら気合を入れてニマッと笑顔を作ったりはしない。
「お茶しよーよ」と誘われれば
「用事があるので…」とさりげなく
(だが決して冷たく突き放す感じではなく)断り、
「メルアド教えてよ」と言われれば
「家 厳しくて持ってないんです…」と、
さらりとかわしてしまうのだ(本書25ページ)。
(いまどき「家 厳しくて……」などというセリフを、
 「ぶりっ子してる感じ」を一切感じさせずに
 ごく自然に言える彼は本当にすごい。
 漫画界でも稀有な存在だと僕は思う)。

そして注目すべきは、
そんなときの彼の表情なのである。
にこやかに、穏やかに、おしとやかに、
彼はこうしたナンパに対応する。
明るすぎることもなければ暗すぎもせず、
気合いを入れすぎた感じもしない。
とにかく思いっきり「自然」なのだ。
彼が実は異性愛者の男の子なのだと知っている読者から見てさえも、
全く違和感を感じさせることがない。

男子校に呼ばれてアイドルと化し、
「藤緒さまーっ」・「すげーかわいいっすっ」・
「生で見たの初めてだよぉ」・「だいすきです! マジですっ」
などと騒がれたときも、
嫌がるそぶりもみせず、
だからといって過度に面白がったりもせず、
本当に穏やかに にこっとほほ笑むことができる(本書75ページ)。

下級生の女の子たちがクリスマスツリーの飾り付けに苦労しているのを見れば
そっと花を添えてツリーを鮮やか飾ってみせたり(本書59ページ)、
捨て犬が雨で濡れていればそっと笠を差し出したりする(本書81ページ)……、
そんな「演技」ができてしまう人なのだ。

■最後まで「女装の真の理由」を知らされない主人公
僕は最初に、
「女装女子寮モノ」の先行作品として、
『聖ルームメイト』・『Wジュリエット』・『きらきら迷宮』・『天使じゃない!』の
4つを挙げた。
これらの4作ではいずれも、
作品開始早々に少年の女装は主人公にバレ、
その時点で少年は主人公に、
「自分はなぜ女装しなければならないのか」を
説明することになっている。
この作品でも、
第1話の前半で藤緒の女装はナツにバレる。
そしてその際、
藤緒はナツに、女装の理由を次のように説明するのだ。
「家が代々 歌舞伎を生業としてんだっ
 で ここで『女』を学びながら
 高校卒業まで『女』を演じ通すって
 一石二鳥な修行してんだよ…!!」(本書19ページ)

この説明は確かに『嘘ではない』。
だが、実のところ、
「なぜここまでしなければならないのか」という、
ある意味では一番肝心の部分について、
藤緒は意図的に伏せている。

その『真の理由』は読者には徐々に明らかにされてゆくのであるが、
ナツがそれを聞くことはない。

だから結局ナツは、
藤緒の女装の『真の理由』を知ることはない。
最初の時点で知らされないというだけでなく、
作品の最後まで知らされないのだ。
『真の理由』は藤緒の胸の内にのみ秘められている。

そしてこれが、
藤緒の類まれに見る「完璧な演技」を支える動機となっている。
この点が、
本作・『君とひみつの花園』を
従来の作品とは一味違った作品に
仕上げていると言えるだろう。
ともすればワンパターンに流れがちな「女装女子寮モノ」というジャンルに
新たな可能性を感じさせた作品だ。

■「ラブリーデイズ」 作者の『ララ』初掲載作品
なお本書には「君とひみつの花園」のほかにもう一作、
「ラブリーデイズ」という短編が収録されている。
本書の作者・林みかせさんが
少女漫画雑誌『ララ』の本誌に
「初めて……載せてもらえた作品」ということだ(本書155ページ)。

主人公は文学少女の樋口伽乃。
弓道場が舞台の恋愛小説を読んで、
その凛とした空気と淡い恋の世界から気持ちが抜けきれないまま
つい学校の弓道場に足を運んでしまう。
そして、そこで彼女は出会ったのだ。
小説の少年の雰囲気と重なる、
彼の弓を引く凛とした姿に。

幼馴染が止めるのも聞かず、
彼女はさっそく弓道部に入部した……。

「ラブコメ」という言葉を使うのであれば、
むしろこちらの作品こそがその言葉にふさわしいのではないだろうか。
さわやかな青春ラブコメ物語である。

酒井徹お薦めの女装漫画》
1.やぶうち優『少女少年』シリーズ(Ⅰ~Ⅶ)、小学館てんとう虫コミックススペシャル
2.吉住渉『ミントな僕ら』全6巻、集英社リボンマスコットコミックス
3.志村貴子『放浪息子』エンターブレイン
4.なるもみずほ『少年ヴィーナス』全4巻、角川書店あすかコミックス
5.松本トモキ『プラナス・ガール』ガンガンコミックスJOKER

女装漫画に関する関連記事
「マンガ・アニメに女装少年」 『朝日新聞』が報道
やぶうち優『少女少年』第一期解説
やぶうち優『少女少年II―KAZUKI―』解説
『アイドルマスター Neue Green』(黒瀬浩介)について
片山こずえ『女のコで正解!』について
筒井旭『CHERRY』について
篠塚ひろむ『ちぇんじ!』について
富所和子『ないしょのココナッツ』について
水内繭子『恋する子どもたち』について
『かしまし』漫画版について


【本日の読了】
林みかせ『君とひみつの花園』白泉社花とゆめコミックス(評価:3)
<p><br>
<hr>
..... Ads by Excite 広告 .....

[PR]
by imadegawatuusin | 2006-06-30 17:20 | 漫画・アニメ

――労働者にも不誠実対応か――

■シンドラーエレベーターは交渉から逃げるな!
エレベーターの死亡事故で問題となっている
シンドラーエレベータ(東京都江東区)が組合との団体交渉を拒否したとして、
同社の従業員2人が加盟する東京・中部地域労働者組合が26日、
東京都労働委員会に不当労働行為の救済申し立てを行なったと
共同通信が伝えた↓。
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=soci&NWID=2006062601001291

記事によると組合側は、
(1)エレベーター保守会社とシンドラー社との統合プロジェクトから組合員を排除している
(2)死亡事故などにおける会社側の対応は、従業員に精神的・肉体的負担を与えた
(3)組合員の業績手当が最初の提示通り支払われていない-などとして、
9日に団体交渉を予定していたということだ。

しかし会社側は、
「団交の議題にならない」などとしてこれを拒否。
組合側は
「業務上の深刻な問題について、
 労働組合への説明責任を放棄しており絶対許されない」として、
交渉に応じた上、
本社入り口に謝罪文を掲示するよう求めているということである。

(1)が事実であれば明確な不当労働行為であるし、
(3)はどう見ても、
労働組合と会社との団体交渉において話し合われるべき事柄である。
そしてなにより(2)は、
シンドラー社のお粗末な事故対応への怒りが
当然 現場の労働者へと向けられる中、
これを「団交の議題にならない」などという会社側の言い分は
あまりにも非常識と言うほかない。
現場で批判の矢面に立たされる末端の労働者にとって、
今回の事故に対する会社側の対応は実に切実な関心事項であり、
会社側との話し合いの席においてこの問題を差し置いて
別の議題を話し合うなどまったく考えられない話である。

■団体交渉に応じることは経営者側の最低の責務
そもそも団体交渉権は、
憲法や労働組合法で保障された労働者の権利の
基本中の基本である。
労働者の側が話し合いを求めてきたら
きちんと話し合いに応じなさいという
ごくごく当たり前のお話だ。

労働組合と団体交渉を行なうことは、
経営者としての最低限の義務なのである。
自分たちの主張に本当に自信があるのなら、
きちんと交渉の場を設けた上で、
組合側の主張をはねつければいい。
ただそれだけの お話なのだ。

それを、
現場の労働者たちにとって実に切実な問題を
「団交の議題にならない」などと言って交渉のテーブルにも載せず、
話し合いから一方的に逃走するとはいったいどういう了見なのか。

シンドラーエレベーターは直ちに労働組合に対する不誠実対応を謝罪し、
交渉に応じるべきである。
[PR]
by imadegawatuusin | 2006-06-26 21:31 | 労働運動

――「聞いちゃった」一転 犯意認める――

■「利益目的で買い増し」
証券取引法違反で逮捕された
村上ファンド元代表の村上世彰容疑者が東京地検特捜部の調べに対し、
「インサイダー情報を聞いて、
 自分たちもニッポン放送株を買い増して、 
 最終的にはライブドアに売りつけてもうけようと思った」などと
供述していたことが明らかになった(読売新聞6月23日)。
村上容疑者はこれまで、
逮捕前の記者会見でも、
「宮内さん(筆者注:=ライブドア元最高財務責任者)が
 『やれいけ、それいけ、ニッポン放送だ』というのを聞いちゃった。
 (インサイダー情報との)感覚はなかった」などと
説明していた(毎日新聞6月23日)。

■日銀総裁の村上F投資 オリックスが窓口
また、
日本の金融政策を取り仕切る日銀の福井総裁が
この村上ファンドに1000万円を投資し、
2003年の日銀総裁就任時にも清算せず、
総額1473万円の利益をあげていた問題で、
この投資契約はオリックスが村上ファンドへの投資の窓口となって
福井氏とオリックスとの間で結ばれたものであったことが
明らかになった(毎日新聞6月23日)。
オリックスは1999年の村上ファンドの設立にあたって、
「会社の作り方も知らなかった」村上容疑者に
「うちの休眠会社を使ったらどうですか」と教え、
村上ファンドの中核会社出資金の45パーセントを負担、
決算の連結対象として
その業績をオリックス本体の決算に反映させていたほか(読売新聞2005年11月9日)、
取締役を派遣するなど、
「村上容疑者の“後ろ盾”ともみられてきた」(読売新聞6月23日)存在であった。
今回の件で、
資金集めにおいてもオリックスと村上ファンドが一体となっていた実態が
改めて浮き彫りにされた。

オリックスの宮内会長は
1998年に政府の規制緩和委員会の委員長に就任して以来、
現在の規制改革・民間開放推進会議議長まで、
一貫して政府の規制緩和の旗振り役を務めてきた。
6月23日の『読売新聞』によると、
「宮内さんは規制改革で秩序を壊し、
 自分のビジネスに結びつける」との声があがっていたという。
実際、
特定少数の投資家から非公募形式で資金を集める
村上ファンドのような「私募ファンド」の設立は、
宮内氏が委員長を務めていた政府の規制緩和委員会の提言に基づき、
1998年12月に施行された金融システム改革関連法で
解禁されたものだったのだ。

オリックスの宮内会長がが旗振り役を務めた金融規制緩和策があってこそ、
村上ファンドは誕生したといえるだろう。
その村上ファンドが、
実はオリックスの「子会社」とでも言うべき存在だったのである。
事の利害関係者を
一国の政策立案の中心人物として起用し続けてきた政府の責任が
問われてしかるべきである。
自分たちで法律を作り、あるいは変えて、
自分たちが儲けを手にする……、
このようないわば「インサイダー政治」に
今こそ終止符を打つべきときだ。

■「日銀総裁は資産公開」のルールを
この問題で衆議院財務金融委員会は22日、
日銀の福井総裁に対し、
総裁就任時から2005年末までの給与以外の所得と、
投資信託や預貯金などの金融資産の公開を求めることに決めたという(読売新聞6月23日)。
日銀総裁はその一挙手一投足が市場に大きな影響を与える存在であり、
また
一般人には手にできないさまざまな未公表情報を入手しうる立場にある。
政府閣僚には定期的な資産公開が義務付けられているが、
日銀総裁もその職責の重さを考えれば、
「何か問題が起こってから資産公開」というのではなく、
日銀総裁に就任した時点で資産はきちんと公開し、
その後も定期的に国会に報告するなどして
透明性を確保するシステム作りが不可欠だ。

そもそも、
「通貨の番人」と呼ばれる日銀総裁には、
高度の信頼性と中立性とが求められる。
特定投資家や特定企業と利害を共にすることは望ましくない。
日銀総裁への就任時点で、
特定企業の株式保有や特定ファンドへの投資を停止する、
厳正なルール作りが必要であろう。

《参考サイト》
村上ファンド:背後にオリックス
[PR]
by imadegawatuusin | 2006-06-23 17:24 | 経済

――背景に政治家の安易な祝電乱発――

■安倍氏事務所:「担当者に注意」
統一教会系の団体が5月に福岡市内で開催した集会に、
安倍官房長官の地元事務所が官房長官の肩書で
祝電を送付していたことが19日、確認された(朝日新聞6月20日)。
安倍氏の事務所は、
「誤解を招きかねない対応であるので、
 担当者にはよく注意した」とコメントしている。

■この集会は「合同結婚式」を兼ねていた?
この集会では、
統一教会が「真のお母様」と規定する教祖夫人や
その四男が基調講演を行ない、
「合同結婚式」がとりおこなわれたと
光文社が発行する写真週刊誌『FLASH』(7月4日号)は報じている。
また統一教会が発行する『中和新聞』(6月1日)には、
この集会で教祖夫人と四男との「お二人が主礼として
聖水儀式、聖婚問答、祝祷、聖婚宣布を行われ、
参加者を祝福してくださ」ったと報じられている↓。
http://www.kogensha.com/products/magazines/C681.htm
統一教会側は、
「大会の中に『国際合同結婚式』というプログラムは行われておりません」、
「祝福式は『健全な家庭を築く決意』を
 様々な文化、思想、宗教背景の方々が参加し行われるものであり、
 特定の宗教団体の儀式ではありません」などと主張している↓。
http://www.iifwp-jp.org/inform.html

だが、
「教祖夫人と四男との『お二人が主礼として
 聖水儀式、聖婚問答、祝祷、聖婚宣布を行』」なったこの式典は、
参加カップルが「聖なる婚姻関係」に入ったことを宣言し、
祝福する目的で行なわれた
一種の「婚姻儀礼」であったことは間違いない。
たとえ「合同結婚式」という名称ではなかったのだとしても、
外部の人間から見れば、
この「祝福式」なるものは
「合同結婚式」変種とでもいうべき意味合いを持った儀式であったと
言わざるを得ない〔注1〕。

大体この統一教会(正式名称:世界基督教統一神霊協会)という団体は、
「基督教」を僭称しながら
インチキな霊感商法で壷や仏像(!)などを法外な高額で売りつけるといった
犯罪的なやり方で資金集めを繰り返してきた
実にデタラメな集団なのだ。
このような犯罪集団と事実上 表裏一体の関係にある集会を「祝」うのは、
どうひいき目に考えても、
見識のある政治家のすることとは言えないだろう。

■よく知らない政治家の「祝電」・「弔電」の披露は止めよう
このような問題が起こる背景には、
政治家が売名や支持者対策を目的として、
有権者の結婚式や葬式に
「祝電」や「弔電」を乱発する日本の風潮が存在する。
その意味で、
今回はたまたま安倍氏が問題となったが、
ある意味ではこれは、
「祝電」や「弔電」を乱発している日本の政治家 誰もに
降りかかりうる問題であると言えなくはない。

またさらに元をたどれば、
政治家から「祝電」や「弔電」が届けられることで、
自らの冠婚葬祭に「箔」が付くなどと考える
日本の有権者の権威主義的な傾向にも
問題があると言わざるをえない。

大体 僕は、
冠婚葬祭における「祝電披露」・「弔電披露」なるものには
大いに疑問を感じている。
そもそも式典の出席者はみな、
それぞれ多忙な生活の中でスケジュールを調整し、
わざわざ式場まで足を運んでいるのである。
そのような出席者を差し置いて、
式典に出席もしなかった人間の名前をわざわざ読み上げるのは、
実際に出席した人々に対してずいぶんと失礼な話ではないだろうか。

それも、
当事者の本当に親しい友人や恩師が、
例えば病気のためにどうしても出席できないとかいう場合に
それを読み上げるとでもいうのであれば話は別だが、
結婚式や葬式を開くと、
(そもそもそれをどこで聞きつけたのか知らないが)
ほとんど面識のない、名前ぐらいしか知らない政治家から
祝電や弔電が送りつけられてきたり、
秘書が押しかけてきたりするのである。

はっきり言ってこのようなものを、
わざわざ式典で紹介してやる必要はない。
有権者の側がありがたがって紹介したりしてやるから、
政治家の側はバカバカしい売名行為を繰り返し、
本来 国政や地方自治の政策立案に携わって
国民・市民に奉仕するべき政治家秘書が
アホらしい「結婚式回り」や「葬式回り」に
忙殺されることになるのである。

そこで僕は提案する。
結婚式や葬式で、
よく知らない政治家の「祝電」・「弔電」を披露するのは
そろそろやめにしようではないか。
僕たち有権者一人ひとりが「祝電」・「弔電」の披露を止めれば、
政治家の側も無駄なことに金を使うことはなくなる。
やがてこうした風習自体が
廃れてゆくことになるだろう。

〔注1〕統一教会の公式教義では、
信者は清く「純潔」を保ち、
再臨のメシアである文鮮明氏の指名した相手と「聖なる婚姻」を結ぶことにより、
その身を清く保ったまま無原罪の子供を生むことができるとされている。

しかしこの教義は、
「純潔」な青年や乙女たちには魅力的なものだが、
「すでに純潔でなくなってしまった」既婚者たちには
非常に厳しい内容である。

統一教会の教えにめぐり合う前に「純潔」を汚してしまった人は、
一体どうすればいいのだろうか。
どんなに統一教会に帰依しても救われることはないのだろうか。

ところがそれは、大丈夫なのだ。
安倍晋三先生も祝電を送った
「天宙平和連合」の大会に参加して、
「真のお母様」から「聖水儀式、聖婚問答、祝祷、聖婚宣布」を受けると、
あら不思議、
たちまち合同結婚をした「純潔」な人々と同様の
聖なる婚姻関係の仲間入りを果たすことができるのだ。
(何か堕落期のローマカトリックがやった「免罪符」販売を思い起こさせるが)。

言ってみれば今回日本で開かれた「祝福式」なるものは、
統一教会の教えに出会う前に「不純な」結婚をしてしまった人たちのための、
「合同結婚式やり直し大会」とでも言うべきものだったのである。
統一教会側が
「参加者はすでに結婚したカップル、またはその家族であ」った等と反論しているのは、
実はこういうことなのだ。
[PR]
by imadegawatuusin | 2006-06-20 13:49 | 暮らし家庭

――『女のコで正解!』の有紀ちゃんの妹が大活躍!――

■男装の麗人・「諒様」の乙女チックストーリー
演劇部のトップ男役・佐々宮諒(♀)がいま一番ほしいものは
「彼氏」。
しかし、数年前まで女子高だった桜(さくら)高校は
もともと男子の比率が低く、
演劇部には男子は一人もいない。

そして何より「諒さま」は、
女子の間では大人気だが、
男子からは今ひとつ受けが悪いのだ。

そんなある日、
「諒さま人気」をやっかんだ男子たちに絡まれていたところを
助けてくれた剣上由良人(ゆらと)に
諒は一目ぼれしてしまう。

■「王子様」を演じる女のコの苦しみ
「ボディーガード」として諒に付き添うことになった由良人は、
あるとき諒にこう言った。

あんたってさ
ポスターから思ってたイメージと
まったく違うよな

なんか
えんれ――普通だったわ…(本書52ページ)


諒は、
女の子たちの前では「夢を壊さない様」、
「王子様」を演じている。
本当の自分は、
普通すぎるぐらい平凡な女の子に過ぎないというのに、
「ついクセになっちゃって」、
「王子様」が止められない。

この物語は、
そんな「王子様」・佐々宮諒と、
もう一人、
彼女に憧れる堤みかよ の二人の思いを軸に進行する。

■重なり合い、かつ離れ合う、みかよと諒の「本当の思い」
堤みかよ は片山こずえさんの最高傑作・『女のコで正解!』に登場する
堤有紀生こと「有紀ちゃん」の妹である(本書147ページ)。

みかよは、
桜高校にたくさんいる、
「諒さまファン」の一人であった。
他のファンたちと同じように、
「諒さま」の周りを毎日のように取り囲み、
彼女の反応に一喜一憂する毎日だ。

けれど、
彼女の思いは他の女子たちとは
実は少し違っていた。

みかよは諒に恋していた。
それも、
「王子様」の諒ではなく、
女の子としての諒のことを。

僕がこの作品で一番ぐっときたのは、
本書60ページの みかよの台詞。
しつこく自分に言い寄る男子に、
みかよが目をキッと見開いて、
「好きな人が
 いますから」と言ったシーンである。

この言葉をみかよは、
おそらく ものすごい決意をもって口にしたはずだと僕は思う。
普段は「おバカな女の子」で通っているみかよが、
この台詞を言ったときだけは、
ものすごく真剣で、強いまなざしをしていることに
読者は気付くはずである。

だが、みかよがありったけの勇気を込めて発した言葉を、
相手の男子は、
ほとんど本気で取り合おうとはしなかった。

「あ――?
 またそれかよっ

 佐々宮なんか
 女じゃね――かよ」

「あぶね――
 みかよちゃーん」などと、
偏見丸出しの無神経な言葉で
彼女の告白を軽くいなそうとしたのである(本書60ページ)。

言うまでもなく、
自分と付き合ってくれと言い寄ってきた男子に対して言った、
みかよのここでの「好き」という言葉は、
「諒さまファン」の女の子たちの間でいつもみかよが言っている「好き」とは、
まったく重みが異なることは明らかだ。

だが、彼はそのみかよの「好き」という言葉を、
「またそれかよっ」という形でしか
理解することができなかった。
そんな男子に対して発したみかよの言葉、
「女の人だったら
 いけないんですか?
 諒センパイを好きでいちゃ
 いけないんですか?
 あなた達なんかより
 ずっと素敵で優しくって
 最高の人なんだから――――」という彼女の切り返しは
非常にかっこよく、胸を打つ(本書61ページ)。

だが、みかよは自らの発したこの言葉に、
自ら復讐される結果となる。

それは、
剣上由良人に想いを寄せる佐々宮諒に、
彼女のファンたちの鬱憤が爆発したときのことである。
彼女たちにとって佐々宮諒は、
あくまで「王子様」だった。
同い年の男子に思いを寄せる「女の子」であってはならなかった。

剣上由良人と付き合っているという噂は本当なのかと詰め寄る
彼女のファンたちの声についに耐え切れなくなった諒は、
涙を流しながらこう言った。

あたしが……
誰か好きだと…
ヘンかなぁ?

ドキドキしてっ
嬉しくなってっ
普通に片思いしてちゃ……
いけなかったの?(本書74~75ページ)


その言葉を、
彼女に想いを寄せるみかよは
廊下でたまたま聞いてしまう。

『誰かを好きだと変なのか』、
『ドキドキしたり嬉しくなったりして、
 普通に片思いするのはそんなにいけないことなのか』……。

それはまさしく、
みかよが男子たちに訴えたことだった。
だが、
その、自らが何よりも訴えたかったその言葉によって、
みかよは、
自分の諒に寄せる思いは報われないものであるということを
決定的に思い知らされることとなるのである。

そして、
諒の言ったことが
まさしくみかよが訴えたかったことそのものであっただけに、
みかよは、
諒の思いを受け入れるしかなくなってしまう。
諒の涙の訴えを耳にしてしまったときの みかよの表情は、
ただただもの悲しく、切ないものだ。

結局みかよは諒の恋を
応援する道を選ぶことになる。
みかよは諒に、
「みかよは……
 男の人みたいとかっ
 中性的だからとかで
 諒センパイを好きなんじゃ
 ないんですからっ」
「センパイが
 みんなの王子様でいられるのは――――
 ほんとは 一番女らしくて
 女のコの気持ちが
 一番よくわかってるからなんだもん」と告げた後、
「剣上さんだって
 きっとわかってくれます
 ……
 だから――――」と、
思わず涙を流しながら諒を励ましてしまうのだ(本書80~81ページ)。

■「彼女の恋人」
本書にもう1作収録されている「お姫様にしてね」は、
「王子様を落とせ」の後日談である。
諒に想いを寄せていたみかよと、
諒の恋人となった剣上由良人の親友である
中山を中心に描かれる。

中山は桜高校の写真部部長。
口癖は、「脱ぎたくなったらぜひ俺に撮らして」。
挨拶代わりにこれを言う。
(「王子様を落とせ」の主要登場人物は、
 佐々宮諒、剣上由良人、堤みかよ、そして演劇部部長のレイ子……と、
 男女を問わず全員「脱いでくれ」と中山に声をかけられた経験がある)。
ちなみにモットーは、
「芸術家は美しー物を愛す」とのこと。
なお、佐々宮諒と剣上由良人との出会いに
一役買ったのも中山だった。

そんな中山が、
「お姫様にしてね」のなかで、
みかよの友人たちにこのように評されている。
「中山がさー
 諒ちゃんに剣上くん引き合わせたのって
 意外じゃなかった?」
「あたし中山って
 諒ちゃん好きだと
 思ってたのよね――」
「あ…
 ソレ あたしも思った事ある」
「案外 好きだったから
 諒クンが剣上くんに片思いしてたのに
 気づいてしまった…とか?」
「え―――っっ
 それって切な――いっっ」
「マッキーの歌みた――い
 『彼女の恋人~っっ』」(本書150ページ)
……。

でもこの話、
これまたみかよ自身の話でもあるわけである。
みかよは諒が好きだった。
その思いは周囲には受け入れられにくいものであったが、
そうであるがゆえに、
諒が周りには受け入れられにくい自らの想いを吐露したとき、
みかよは真っ先に受け入れざるをえなかったのだ。

このように本作では、
ある登場人物の心情の描写がされているとき、
それと同時にその心情の中に、
全く別の登場人物の心情が含みこまれ、
重層的な心情描写がなされる点に特色がある。
『女のコで正解!』と並ぶ、
片山こずえ作品の傑作中の傑作のひとつである。


【次に読むべき本】
本書を気に入った人は、
何と言っても片山こずえさんの最高傑作・『女のコで正解!』
手を伸ばすべきである。
本作の堤みかよの姉にあたる、
「有紀ちゃん」が活躍する傑作だ。
本作と合わせて読むと作品理解がいっそう深まることだろう。

【そのうち読むべき本】
片山作品で他に特にお薦めなのは、
『MIDNIGHT MARIA』。
あと、「男装モノ」に興味をもたれた方には、
中条比紗也さんの『花ざかりの君たちへ』を推薦したい。

【関連記事】
「片山こずえ『X=LOVE』について」
「片山こずえ『信じる者は救われる!』について」
「片山こずえ『僕という名の罪と罰』について」
「片山こずえ『君だけを惑わせる』について」
「片山こずえ『女のコで正解!』について」
「片山こずえ『宝物は君のこと』について」

【本日の読了】
片山こずえ『王子様を落とせ』集英社マーガレットコミックス(評価:4)
[PR]
by imadegawatuusin | 2006-06-18 15:11 | 漫画・アニメ

――設立資金出資・役員派遣――

■村上F:前身はオリックス研修施設運営会社 
証券取引法違反の疑いで逮捕された村上世彰容疑者が
代表を務めていた「村上ファンド」が、
その設立当初から一貫して
大手リース会社・オリックスと密接な関係にあったことが
「しんぶん赤旗」(6月8日)にて報道された。

これによると
「村上ファンド」の中核企業・M&Aコンサルティング(M&A社)はもともと、
千葉県船橋市にあるオリックスグループの研修施設・
「セミナーハウス、クロスウェーブ」の運営を行なっていた会社で、
「クロス・ウェーブ株式会社」という商号だった。
役員には現オリックス副社長ら、
オリックスグループの役員がずらりと名をそろえていたという。

この「クロス・ウェーブ株式会社」は2000年1月に
商号を「エム・エイ・シー」(現M&A社)に変更し、
村上容疑者が代表取締役に就任、
村上ファンドの中核企業へと会社の面目を一新した。
現在、「セミナーハウス、クロスウェーブ」は、
オリックスグループのブルーウェーブという会社が運営しているという。

■オリックス:所在地提供・取締役派遣
村上容疑者が代表取締役に就任した後も、
「エム・エイ・シー」(現M&A社)は2000年12月までの約1年間、
本店所在地を「セミナーハウス、クロスウェーブ」に置き続けた。
そして、
M&A社の立ち上げにあたっては
オリックス社長室長(現「オリックス・クレジット」社長)が取締役として派遣され、
その後も先月16日まで3代にわたりオリックスから取締役が送り込まれてきた。

村上ファンドのもう一つの中核企業であり、
今回 問題となっているニッポン放送株のインサイダー取引を行なった
投資顧問会社「MACアセットマネジメント」にも、
オリックスは取締役を派遣していた。
オリックスは「MACアセットマネジメント」設立後まもなく、
現「オリックス・クレジット」社長を送り込み、
先月16日に3代目の役員が辞任するまで取締役を派遣し続けていた。

■村上Fはオリックスの出資で設立された
読売新聞(2005年11月9日)によると、
当時「MACアセットマネジメント」は
株式の45パーセントをオリックスに占められており、
決算の連結対象となる「持ち分法適用会社」として、
その業績はオリックスの決算に反映されていた。
ファンド設立時の「(元手となる)シード・マネーを出した」のも
オリックスであったとある。
村上ファンドは名実ともにオリックスの子会社だった。

オリックスは先月12日、
村上ファンドへの出資金の引き上げを表明し、
出向役員は先月16日に辞任した。
しかしこの間、
村上ファンドが一貫してオリックスと密接な関係にあったことはもはや疑いようがない。

「村上ファンド」は、
新聞広告などで不特定多数から投資を募る「公募ファンド」ではなく、
少数の投資家だけから資金を受けて運用する「私募ファンド」である。
この「私募ファンド」は、
1998年12月に施行された金融システム改革関連法で
設立できるようになったものである。

そして、
この「私募ファンド」の解禁を政府に提言したのが、
政府の規制緩和委員会であり、
その委員長を務めていたのがオリックス会長の宮内義彦氏なのである。
事の利害関係者をこのような役職につけてきた政府の責任は重大だ。

《第8号》

《参考サイト》
「村上容疑者:インサイダー目的を自供」
[PR]
by imadegawatuusin | 2006-06-08 10:38 | 経済