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第1話 春の妖精
表題の「春の妖精」は
超人気アイドル・青野るり主演の
ドラマの題名なんですけど、
同時に、
彼女の歌うヒットソングの曲名でもあるわけですね。
ドラマの主題歌として作詞・作曲されたものなのか、
それとも歌のヒットに合わせてドラマが作られたのかは
わかりませんが。

お話は主人公である水城晶の友人の、
「おーい晶!
 きのーの『春の妖精』
 みたかー?」で始まります。
ちなみに、
ホームページ・「yuuの少女少年FANページ」を主宰するyuuさん
このシーンについて、
「それよりこの場面、掃除だと思うのだが晶は何にも持ってないんだよな~
 もしかしてサボりか?」
と鋭いツッコミを入れていますね(「感想 少女少年-MIZUKI-」)。
友人AやBでさえ、
モップぼうきを持っているというのに……。
(この二人は「持ってるだけ」かもしれませんが……)。

しかし初っ端(しょっぱな)から、
赤沢智恵子の「アイドル嫌い」ぶりは
ちょっと異常なものがあると思いませんか。
その語り口も、

「あーゆー人って、
 自分のこと
 かわいーとか
 おもってるっぽいし。
 TV(テレビ)では
 いー子ぶってても、
 ウラではゼッタイ、
 わがままで
 いー気になってるに
 決まってる!」

と、まるで特定の人物を
念頭に置いているかのような、
見てきたのかと思うほどに具体的。
何かアイドルに関して
過去にトラウマでもあるんでしょうか。

さて、
晶が家に帰るとお姉ちゃんの水城瞳が
大音響で歌を歌っています。
ここで瞳が
「外までまるぎこえ」の
「すっげー」音量で歌っていることを強調することで、
その後そのマイクをそのまま受け取った晶の歌声が
戸外まで筒抜けであったことに合理性を与え、
村崎ツトムを引き寄せるシーンを
自然な形で導き出しています。
(ま、姉の瞳の
 「いつもの
  アレ!
  るりちゃん!」の一言で、
 その音量のまま歌い出す晶も晶ですけど。
 しょっちゅう歌ってて
 すっかりクセになっちゃってるんでしょうか。
 だとするとかなりの末期症状……)。

ちなみに、
このときお姉ちゃんが歌ってる歌は
作者の やぶうち優さんが
代表作・『水色時代』のイメージソングとして作詞・作曲した
「勇気を出して」という曲だったりします
(ポニーキャニオン「水色時代/やぶうち優オリジナルアルバム」収録)。
自分で作詞作曲した曲だからか、
漫画でポニーキャニオン発売のCDから無断引用(?)しても、
JASRAC許諾番号は記載されていません(笑)。
(非常にテンポのいい曲で、
 お姉ちゃんがノリノリになって歌うのもわかります)。

肝のすわったことにやぶうち優さんは、
『分かったうえで』これをやっているんですよ。
それが証拠に、
『少女少年』第一期と同じ時期に
小学館の少女漫画雑誌である『ちゃお』で
やぶうち優さんが連載していた
『おちゃらかほい!』の中に、
主人公の早乙女茶織が
こんなことを言うシーンがあるんですね。
「知らないの!?
 まんがの中で
 歌をうたうと
 “使用料”
 払わなきゃ
 いけないのよ!」

さらにご丁寧なことに、
そのとき作中で歌われていた
「うれしいひなまつり」のJASRAC許諾番号を
枠線の外に明示して、
「ほら よく
 こーゆーとこに
 あるでしょ
 こーゆー
 数字のら列
 みたいなのが!

 これが
 “使用料払って
  ますよー”って
 しるしなの!!」

とまで言い切っているんです。

ということは、
「勇気を出して」に関しては
JASRAC許諾番号がない以上、
「使用料払ってません」ってことなんですね。

「使用料云々」の問題をわかった上で、
「自分で作詞作曲した歌の歌詞を
 使えばいい」っていう発想の転換ができるところが
やぶうち優さんのすごいところです。
(作品の中で白川みずきが歌う楽曲に関しても、
 既存の歌謡曲を使用するのでなく、
 やぶうち優さんが自ら作詞作曲を手がけているのも、
 実は同様の理由からだったのかもしれませんが、
 いずれにせよ、
 そのことによって作品の深みが増しているのは確かで、
 喜ばしいことだと思います)。

あ、あと、
白川みずきのロングヘアは
「お母さんのカツラ」だったんですね。
予告編では村崎ツトムが晶に対し、
「キミが
 美少女アイドル
 白川みずき
 だってことは
 キミと
 キミの家族と
 ボクだけの
 秘密だからね」と言っており、
晶の「お母さん」も
このことは当然知っていたわけですが、
この後 約1年間、
息子の女装のためにカツラを貸し続けた「お母さん」は、
いったいどんな気持ちで
「白川みずき」(自分のカツラをつけた息子)を
見ていたのでしょうか。

さて、それはともかく、
ここでいよいよ村崎さんが登場ですね!
晶のうたごえを聞きつけて、
家の中を覗き込み、
晶を見出したわけです。
一種、「運命の出会い」ですよね。

ルックスも
 まあまあだし、
 イケる…!」と踏んだ村崎さんな訳なんですが、
晶を口説くときには
「キミみたいなコを
 さがしてたんだよ!
 天使のような声!
 みずみずしい
 ルックス!」と、
ずいぶんと調子のいいことを言ってます。
声はともかく、
ルックスは「まあまあ」だったはずなんですけど……。
これもプロのスカウトの
テクニックでしょうか。
(ちなみに、
 「ルックス」というのは「顔かたち」のこと)。

あと、村崎さんが水城家の玄関チャイムを押すときの描写が
楽しいですね。
晶には
「アホみたいに
 鳴らしやがって」と さんざんな言われようですけど
(しかしそう思いつつ、
 このときの晶はそういう感情を一切表に出さないで、
 あくまで接客スマイルに徹してドアを開けていますね。
 この根性は芸能人向き)、
「ピンポン
 ピンポ
 ピンポ
 ピポ
 ピポ
 ピポ
 ピポ」と、
鳴らすたびにだんだんチャイムを押す「間」が短くなっていくあたりに、
彼のすっかり高ぶった精神状態を
感じることができますね。

さて、問題は村崎さんです。
玄関から出てきたばかりの女装晶に
いきなり腕をつかんで
「キミ!
 アイドルに
 ならないかい」とくるんですから、
お姉ちゃんに
「きゃーっ
 ストーカーよ
 ストーカー!」って騒がれるのも当たり前。
「ま…ま、
 まってくれ!
 アヤシイ者じゃ
 ないんだ…!」と大慌ての村崎さんですけど、
十分アヤシイ。
『少女少年IV-TSUGUMI-』なんかを見ても、
この人、「理想のアイドル」を捕まえるためには
ストーカーまがいの行為も平気でするようなところが
ありますね。
(いつか本当に逮捕されるんでは……)。
その後、
「キミをぜひ
 スカウト
 したい」と言ってるときにも、
また気安く「女の子」の肩に手を……。

で、
その後の「ずる…」ってカツラを取るシーンは、
描写が妙にリアルです。
確かに、
カツラを取るときって、
こんな風になりますね。

ちなみに村崎さん、
このときは
「オレ
 男なん
 だけど…」と言われて大ショックを受けて、
相当迷ったみたいですけど、
そのうち『少女少年IV-TSUGUMI-』ぐらいになってくると
達観して、性別なんか全然気にしなくなってくる。
人間、「慣れ」とは恐ろしいもんであります。
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やぶうち優『少女少年』第一期各話解説(第2話)
やぶうち優『少女少年』第一期各話解説(第3話)
やぶうち優『少女少年』第一期各話解説(第4話)
やぶうち優『少女少年』第一期各話解説(第5話)
やぶうち優『少女少年』第一期各話解説(第6話)
やぶうち優『少女少年』第一期各話解説(第7話)
やぶうち優『少女少年』第一期各話解説(第8話)
やぶうち優『少女少年』第一期各話解説(第9話)
やぶうち優『少女少年』第一期各話解説(第10話)
やぶうち優『少女少年』第一期各話解説(第11話)
やぶうち優『少女少年』第一期各話解説(第12話)


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by imadegawatuusin | 2006-08-30 20:03

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第2話 天使の予感
表題の「天使の予感」は、
白川みずきのデビューシングルの
曲名です。
「女の子はみんな 天使になれる」っていう、あれですね。

「すごいアイドルを出さないと、
 給料が出ない」という村崎さんですが、
そもそもこの事務所、
村崎さんのほかに社員なんて雇ってましたっけ?
それとも他の所属芸能人への給料?
いずれにせよ見たことがありませんよね。

しかし村崎さん、
最初の口説き文句が
「るりちゃんに
 会えるのに…」ですか!?
さすがスカウトのプロですね。
相手のどこに訴えればスカウトが成功するかが
やっぱりわかるんでしょうか。
晶の場合、
それが「るりちゃん」だったわけですね。
晶がるりの「春の妖精」を歌ってたところに着目したんでしょうけど、
ナイスな誘い文句です。
案の定、晶は食いついてきました。

このことはファンの間では意外と軽視されてますけど、
晶にとって「るりちゃん」っていうのは
すっごく大きな存在なんです。
智恵子に対する思いとは
ちょっと違ったかもしれないけど……。

どうしても少女漫画だから
「恋愛」にウェートが置かれてしまい、
智恵子の存在だけが
クローズアップされてしまいがちなんですが、
少女少年としての「みずき」を生み出したのは
まぎれもなく「るりちゃん」だったんですね。

「晶・モ~ソ~モ~ド」では随分と不埒なことを考えてる
晶ですけど、
そのあと 晶が「生るり」に初遭遇したシーンなんか、
憧れのるりちゃんに初めて会ったっていうのに、
あまりのかわいらしさにビックリして
声も出ないんですよ。
ただ「あ…」とか声を漏らすだけで。
意外に純なところがあるんです。

むしろ村崎さんなんかの方が、
「(酒井注:るりちゃんは)大先輩なんだから
 こっちが先に
 あいさつしなきゃあ!」とか
もうあたふたしてますけど、
実際、礼儀作法とか しきたりとか、
そういうのが異様に厳しい世界だったりするんでしょうかね。
芸能界って。

ちなみに、
このときるりの後ろにいるのが、
るりのマネージャー役を兼ねている
「るりママ」。
何やら手帳を見ていますけど、
るりのスケジュールが
びっしり書き込まれているんでしょうねー。

んでまぁ、
ドラマの撮影です。
村崎さんはみずきに、
「今日は
 エキストラの
 ちょい役だけど、
 キミを
 認めてもらう
 チャンスだから
 しっかりやって
 くれよ!」
と言っています。
(「エキストラ」というのは、
 「臨時雇いの俳優」という意味)。

ところで、
後に村崎さんも認めてますけど、
晶には全く演技力がないんです。
(その演技力のない晶が、
 どうして女の子として「少女少年」を演じきったのかっていうのは、
 この作品のちょっとしたテーマなんですけどね。
 詳しくは、
 「演技のできない晶に、なぜ『少女少年』が務まったのか」
 参照のこと)。

勝手に「失敗した」と判断して演技をやめたみずきに、
「…ったく、
 今日が初めてのトーシロに
 判断なんか
 できるわけ
 ねーんだから…。」
「エキストラごときに
 何度もリテイク
 やってらんねー
 っつーの。」と
スタッフたちから口々に
非難の言葉が飛び交います。
(このとき、
 「ぐっ」と拳を握りしめたみずきを、
 るりは見逃していません)。

スタッフの心ない言葉が胸に突き刺さったのでしょうか。
晶はすっかり落ち込んじゃいまして、
ものすごく足取りが重くなっちゃいます。
ありますよね。
ショックを受けたり落ち込んだりしたときって、
もう何も手に付かなくなって、
歩くこともできずにその場に立ちつくしたりすることとか。

晶が撮影現場から楽屋に戻るまでに、
青野るりの方は歌番組のリハーサルを一つ済まして、
そんでもって先に楽屋に帰っています。
(しかもこのときの青野るりって、
 38度の熱があるんですよ!
 青野るりの方も、
 まさかみずきが館内にまだ残っているなんて
 思わなかったんでしょうね。
 もうさっさと帰っちゃったと思って油断して、
 それで一人で泣いていたら、
 みずきが帰ってきちゃったわけです)。

ちなみに、
楽屋に貼り付けてある
使用者一覧には、
「青野るり様」や「白川みずき」の他に、
「河合優子」・「高幡多可子」・「北野深雪」
などの名前がありますが、
これらは『少女少年』と並ぶ
やぶうち優さんの代表作・『水色時代』の
主要登場人物たちです。
スーパーアイドルの青野るり『様』以外は
みんな「様」が省略されて「〃」の扱い。
えげつない世界です。

さて、
これは「yuuの少女少年FANページ」のyuuさんが
指摘してることですけど、
「みずきが『ど・・・、どしたの!?』とか言いながらるりちゃんに向かって手をるりちゃんの方にやったとき
るりちゃんは少しガードしてるんですね」
(「感想 少女少年-MIZUKI-」)。
自分のおでこを庇うような感じで。
後で るりは自分に熱があることを
「みんな…、
 知ってる」って言ってますけど、
みんな知ってることだったけど、
みずきにだけは知られたくなかったって
ことなんでしょうか。
「この時、るりちゃんは自分の手で涙を拭いているが、どうせ後で泣いちゃうんだよな~」
っていうyuuさんのコメントには
何か感じさせるものがあります(「感想 少女少年-MIZUKI-」)。

るりはみずきの手を「ぎゅっ」と両手で握り締め、
「がんばってね」と励ましの言葉を送ります。
ついさっきまで
「やめよーとかおもっ」てたみずきでしたが、
こんなるりの一言で
「…うん!
 がんばるよ
 るりちゃん」と
たちまち元気を取り戻しちゃうんですね。
「わ~い
 手ぇ
 にぎっちゃった~」と、
「にへ~」としちゃって嬉しそうです。

そして、
るりはまた母親に呼ばれて次の仕事へ……。
楽屋を出て、
「ぱた ぱた ぱた ぱた」と走る様子を示す「ぱた」の字が、
だんだん小さくなってゆくことで、
足音が遠ざかってゆく さまが示されます。

で、油断した晶は、
「それにしても
 あっちーな、
 カツラは…」ということで、
ここでカツラを脱いでしまう。
そこに、忘れ物に気づいたるりが
楽屋に戻って来ちゃうんですね。
後の少女少年たちと比べても、
晶には明らかに警戒心が欠如してます。
ドラマの収録会場から楽屋に戻るまで、
晶を随分と長い時間ほったらかしにしてることといい、
村崎さんももうちょっとちゃんと
フォローすればいいのに……。
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by imadegawatuusin | 2006-08-30 14:42 | 漫画・アニメ

■なぜタビタを「ドルカス」(かもしか)と訳して呼ぶのか
本書においては、
「YHWH」(ヤハウェ,エホバ)は神の固有名詞であり、
「主」(=「ご主人様」)などという称号、
つまり普通名詞で訳すべきではないと主張されている。
この意見には僕も全く同感だ。
詩編83編19節(ものみの塔の「新世界訳」では18節)や
列王記上18章21節を見ても、
通常「主」と訳されているこの言葉は、
明らかに神の固有の名を指していることがわかる。
それが固有名詞である以上、
「主」(つまり「ご主人様」)などと「翻訳」してしまうことは好ましくなく、
原音に添った形で表記するべきであると僕も思う。

しかし、
「エホバ」については非常に強く主張するこの極めてまっとうな主張を、
タビタという女性に関しては全く貫こうとしないのは
一体どうしたことなのか。

本書69ページの挿絵の説明の中に、
「使徒ペテロはドルカスという
 クリスチャンの女性を
 復活させた」という一文がある。
しかし、
彼女の名前は「タビタ」であり、
「ドルカス」とは、
この「タビタ」という名前の意味を
あえて「使徒言行録」の書かれた言語であるギリシア語に訳せば
「ドルカス」(つまり「かもしか」)であると
聖書には書かれてあるにすぎない。

「新共同訳」の「使徒言行録」9章36節は、
この部分を次のように翻訳している。

ヤッファにタビタ
――訳して言えばドルカス、すなわち「かもしか」――
と呼ばれる婦人の弟子がいた。


この場合、
「エホバ」における原則を準用するならば、
彼女の名は明らかに「タビタ」である。
現に使徒ペトロも彼女を復活させるとき、
「タビタ、起きなさい」と言っている(使徒言行録9章40節)。

どうして「エホバ」は「エホバ」であるのに、
「タビタ」を「ドルカス」(=「かもしか」)などと「訳して」書くのか。
言語間の発音体系の違いによって
多少読み方が変わることがあっても、
固有名詞は恣意的に「訳す」べきではない。
聖書においては最初に「タビタ」という固有名詞を挙げた上で、
その意味をギリシア語で説明するものとして
「ドルカス」(つまり「かもしか」)という言葉が出てくるのであるが、
本書は「タビタ」という彼女の固有の名を全く挙げないまま、
いきなり彼女の名としてギリシア語の「ドルカス」を用いている。
これは極めて不適切であり、
「エホバ」という固有名詞に対する本書の徹底した姿勢と照らせ合わせたとき、
はなはだ一貫性に欠く態度であると思わざるを得ない。

《戻る》
『聖書の教え』(ものみの塔)を批判する(その1)
『聖書の教え』(ものみの塔)を批判する(その2)
『聖書の教え』(ものみの塔)を批判する(その3)
『聖書の教え』(ものみの塔)を批判する(その4)
『聖書の教え』(ものみの塔)を批判する(その5)
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『聖書の教え』(ものみの塔)を批判する(その7)
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『聖書の教え』(ものみの塔)を批判する(その10)
『聖書の教え』(ものみの塔)を批判する(その11)
『聖書の教え』(ものみの塔)を批判する(その12)
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by imadegawatuusin | 2006-08-26 23:37 | キリスト教

今日の言葉

【今日の言葉】
人間の五感は思考と同じく,
すべて脳の働きと結び付いています。
人が死ぬと,
脳は働かなくなります。
人間の記憶,感情,五感などが
脳とは別個に,不可解な方法で機能することはありません。(ものみの塔『聖書の教え』58ページ)
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by imadegawatuusin | 2006-08-25 13:24 | 雑記帳

←「やぶうち優『少女少年』第一期解説(その6)」に戻る

■おすすめ文献
wikipedia「少女少年」
『少女少年』第一期についての詳細な解説がある。

くすだ氏「水色進化論 番外編 少女少年」
やぶうちっく研究の第一人者・くすださんによる
『少女少年』第一期評。
「やぶうち先生へのファンレター」という形をとる。
『少女少年』第一期のヒロイン・赤沢智恵子は、
「水色時代のヒロシくん家が引っ越した後に、
 ……(その家に)引っ越してき」たのだという
驚異的な発見を披露している。

yuu氏黒木紗夜華編~アクトレス~」
「yuuの少女少年ファンページ」を運営するyuuさんによる
『少女少年』第一期のサイドストーリー。
舞台は『少女少年』第一期の20年後。
大女優となった黒木紗夜香を描く。
黒木紗夜香の「不器用なプライドの高さ」とでもいうべきものが、
ものすごくうまく描かれており、
酒井徹イチ押しの一作だ。
なお作者のyuuさんによると、
本作に登場する「黒木紗夜香のマネージャー」は、
「紗夜香のマネージャーになってから3年目の
 紗夜香とたいして年齢がかわらないという設定」とのこと。
どうやら、
白川みずきのことを逆恨みしてその正体をバラした
「あいつ」ではないようだ。
(どうでもいいことではあるが、
 「タレントは
  知らなくて
  いーこと」である「役を取った取られた」の楽屋裏まで明かしてしまい[本書85ページ]、
 紗夜香の嫉妬心をあおりたてたのも「あいつ」であった。
 作品には顔こそ出さないが、
 当時の紗夜香のマネージャーは、
 かなり問題の多い人物であったのではないかと思えてならない。
 よく考えてみると、
 紗夜香の白川みずきに対するイヤガラセの数々も、
 つまるところこのマネージャーに
 そそのかされてやっていた部分が大きいわけだ。
 そして、
 当の紗夜香本人が止めるのも聞かず、
 「白川みずき=男」情報をリークしてしまった。
 こいつの「白川みずき」追い落としにかける執念には
 ただ事でないものが感じられる。
 みずき本人に恨みがあったのか、
 あるいはマネージャー・村崎ツトムに恨みがあったのか。
 後者の場合、
 同業者ゆえの、あるいは若かりしころからの因縁があるのか……
 などなどと勘ぐりたくなってくるほどである)。
「やぶうち優『少女少年』第一期各話解説」に進む→


やぶうち優『少女少年』
評価:5(超おすすめ)



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やぶうち優『少女少年』第一期解説(その1)
やぶうち優『少女少年』第一期解説(その2)
やぶうち優『少女少年』第一期解説(その3)
やぶうち優『少女少年』第一期解説(その4)
やぶうち優『少女少年』第一期解説(その5)
やぶうち優『少女少年』第一期解説(その6)

《進む》
やぶうち優『少女少年』第一期各話解説


参考お勧め記事
やぶうち優『少女少年II―KAZUKI―』解説
やぶうち優『少女少年II』各話解説

やぶうち優「少女少年 0話」解説

「マンガ・アニメに女装少年」 『朝日新聞』が報道

《酒井徹お薦めの女装漫画》
1.やぶうち優『少女少年』シリーズ(Ⅰ~Ⅶ)、小学館てんとう虫コミックススペシャル
2.吉住渉『ミントな僕ら』全6巻、集英社リボンマスコットコミックス
3.志村貴子『放浪息子』エンターブレイン
4.なるもみずほ『少年ヴィーナス』全4巻、角川書店あすかコミックス
5.松本トモキ『プラナス・ガール』ガンガンコミックスJOKER

女装漫画に関する関連記事
『アイドルマスター Neue Green』(黒瀬浩介)について
片山こずえ『女のコで正解!』について
筒井旭『CHERRY』について
篠塚ひろむ『ちぇんじ!』について
林みかせ『君とひみつの花園』について
富所和子『ないしょのココナッツ』について
水内繭子『恋する子どもたち』について
『かしまし』漫画版について

【本日の読了】
やぶうち優『少女少年』(小学館てんとう虫コミックススペシャル)評価:5



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by imadegawatuusin | 2006-08-23 13:55 | 漫画・アニメ

■「新しい地」とは「社会」のことか?
本書33ページには次のように書いてある。

聖書は次のことを保障しています。
「神の約束によってわたしたちの待ち望んでいる
 新しい天と新しい地があります。
 そこには義が宿ります」。(ペテロ第二3:13。イザヤ65:17)
聖書に出てくる「地」は,
地上に住む人々を指すことがあります。(創世記11:1)
ですから,
義の「新しい地」とは,
神の是認を受ける人々で成る社会のことです。(本書3章15節)


これは非常に変な理屈である。
「聖書に出てくる『地』は,
 地上に住む人々を指すことがあ」るからといって、
どうして「ペトロの手紙 二」にある「義の『新しい地』」を、
「神の是認を受ける人々で成る社会のこと」と
断言できてしまうのだろうか。
「~は,~を指すことがあ」るというのは、
「そうでないこともある」ということを
大前提とした ものの言い方のはずである。

本書で引用されている「ペトロの手紙 二」3章13節の前節である
12節には次のように述べられている。

神の日の来るのを待ち望み、
また、
それが来るのを早めるようにすべきです。
その日、
天は焼け崩れ、
自然界の諸要素は燃え尽き、
熔け去ることでしょう。(「ペトロの手紙 二」3章12節)


また、
本書で参照するように言われている「イザヤ書」65章17節には、
「見よ、
 わたしは新しい天と新しい地を創造する」とあるし、
詩編46章7節にも、
「神が御声を出されると、地は溶け去る」とある。

「ヨハネの黙示録」21章1節には、
「わたしはまた、
 新しい天と新しい地を見た。
 最初の天と最初の地は去っていき、
 もはや海もなくなった」と書いてある。
「新しい地」が神によって「創造」されたものであり、
「自然界の諸要素」が「燃え尽き、
熔け去」った後にやって来て、
そこには「もはや海もな」いというのである。
そうであればやはり、
ここでいう「新しい地」とは神によって新たに創造された、
文字通りの意味での「地」を意味していると
考える方が自然ではないか。

「創世記」11章1節のように、
全地が「同じ言葉を使って、
同じように話していた」とあるのであれば、
「地」が「言葉を使っ」たり「話し」たりするわけがないのであるから、
ここでいう「地」とは
「地上に住む人々を指」していると解釈するのが妥当である。
しかし、
「自然界の諸要素」が「燃え尽き、
熔け去」った後にやって来る、
神によって「創造」された「新しい地」というものを、
わざわざ
「神の是認を受ける人々で成る社会のこと」と解釈しなければならない必然性は
どこにあるのか。
僕には全くわからない。

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『聖書の教え』(ものみの塔)を批判する(その1)
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by imadegawatuusin | 2006-08-22 14:59 | キリスト教

――『ライバルはキュートBoy』の原点――

■『らんま1/2』に着想を得た「男女入れ替わり」物
本作『ないしょのココナッツ』は、
『ライバルはキュートBoy』で有名な富所和子さんの
原点とも言うべき作品である。
富所さんの代表作である『ライバルはキュートBoy』は、
女装好きの可愛い弟と、
そんな弟に反発と劣等感との入り混じった複雑な感情を抱える姉とを描いた
いわゆる「女装漫画」であるが、
この『ないしょのココナッツ』は「男女入れ替わり」物である。

小学3年生の内木香子(通称:ココ)と、
同級生の山口夏樹(通称:ナッツ)には、
「2人だけのヒミツ」がある。
それは、
どちらか一方が くしゃみをすると
二人の「たましい」が入れ替わり、
キスをすると元に戻る、というものだ。

この設定はどうやら、
高橋留美子さんの代表作、
『らんま1/2』から着想を得たものであるらしい。
(『らんま1/2』の主人公である早乙女乱馬は、
 「水をかぶると女になって、
  お湯をかぶると男に戻る」という体質の持ち主である。
 本書69ページには、
 山口夏樹〔=ナッツ〕の部屋に
 『らんま1/2』のポスターが貼られているのが見て取れるし、
 本書20ページには早乙女乱馬の父親・早乙女玄馬らしきパンダが
 さりげなく登場したりしている)。

■後の空也くんを思わせるナッツ
優れたファッションセンスの持ち主で、
「さわやかで、活動的な服」を好む山口夏樹(=ナッツ)は(本書49ページ)、
香子(=ココ)と入れ替わった時も、
彼女のタンスの中の服を勝手にコーディネートしてみたりして、
けっこう「女の子生活」を楽しんでいるような部分さえある。
挙句の果てにはナッツに乗り移っているココに向かって、
「おまえ、センス
 悪いなー。
 いい服がなくて
 くろうしたぜ」とまで言い出す始末である(24ページ)。
「かわいくなった」と男の子たちにちやほやされても、
「ぼくって
 男でも女でも
 モテちゃうん
 だな~~」と、
かなり嬉しそうである(本書25ページ)。
このあたり、
明らかに『ライバルはキュートBoy』の空也くんを
思わせるものがある。

■ココの「悲観的現実思考」は野花ちゃんに継承!?
運動神経が良くて、
「男でも女でも
 モテちゃう」ナッツに対し、
一方のココの方は対照的に
男になっても女になってもパッとしない。
ナッツの場合、
たとえ女の子と体が入れ替わってしまっても、
それはそれで
「わりと
 のってきた」りするのに対し(本書24ページ)、
ココの場合、
「一生このまま
 だったら
 どうしよう~」などと終始 悲観的思考である(本書39ページ)。

そして、そんな悲観的な思考の中にも、
「もしほんとに
 一生このままだったら、
 ナッツはわたしを
 おムコにもらって
 くれるかしら…」などと、
小学3年生のくせに妙に現実的なことが
真っ先に頭に浮かんでしまうあたり(本書39ページ)、
『ライバルはキュートBoy』の野花ちゃんを思わせるキャラクターではある。

富所さんの代表作である
『ライバルはキュートBoy』の成立背景を考える上でも、
その「原点」とも言うべき本作の理解は欠かせない。

《次に読むべき本》
本書『ないしょのココナッツ』を読んで気に入った人には、
富所和子さんの最高傑作・『ライバルはキュートBoy』1~4巻(小学館ちゃおコミックス)を
ぜひとも強くお薦めしたい。
間違いなく楽しめる作品だ。

《そのうち読むべき本》
いわゆる「男女入れ替わり物」としては、
志村貴子さんの『放浪息子』(エンターブレイン)が最高傑作だと僕は思う。
女の子になりたい男の子と、
男の子になりたい女の子、
「思春期一歩手前」の子供たちの、
ほほえましくも真剣で、
そしてほのかに もの悲しい日常生活が描写された傑作だ。
また、
『放浪息子』がどこまでも「日常生活」に基盤をおき、
子供たちの人間関係を主とする「小さな世界」にリアリティーを見出すのに対し、
平安時代の王宮を舞台にした波乱万丈の「男女入れ替わり」を描いた
山内直実『ざ・ちぇんじ!』(白泉社文庫)もおもしろい。
姉と弟との入れ替わり、
最後まで先を読ませないサスペンス、
そして巧みな伏線の張り方は読むものを真に圧倒する。

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【本日の読了】
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by imadegawatuusin | 2006-08-20 14:56 | 漫画・アニメ

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――「少女漫画世界」への絶好の入門書――

■僕を「新しい世界」へと導いた珠玉の作品
『少女少年』第一期は僕にとって、
非常に思い入れの深い作品だ。
この作品との出会いが、
その後の僕を大きく規定したと言っても過言ではない。

僕は中学3年生のとき、
とある書店で
やぶうち優さんの『少女少年』(第一期)を手に取った。
実はそのとき、
僕は大きな勘違いをしていた。
というのもこの本が、
「少女漫画」コーナーや「児童漫画」コーナーにではなく、
「ボーイズラブ漫画」コーナーに置かれていたため、
僕はてっきりこの本を、
ボーイズラブ漫画であると思い込んで買ったのだ。

もしもあの時この本が、
きちんと「少女漫画」コーナーに置かれていれば、
僕は一生この本を手にすることはなかったかもしれない。
そしてそもそも、
「少女漫画」というものに触れることすらなく
人生を歩んでいたかもしれないのである。

当時の僕は、
「少女漫画」というものに全く興味も感心もなかった。
小学校の高学年になった頃から「ボーイズラブ漫画」が大好きだったが、
一般的な少女漫画は
『ちびまる子ちゃん』しか読んだことがないというありさまだった。
(まぁ、女の兄弟がいない男子には、
 そういう人が少なくないのではないかと思う)。

だから僕は、
やぶうち優さんの『少女少年』(第一期)を読んで
初めて本格的な「少女漫画」に出会ったのである。
これを読んだときの驚きと感動とを、
僕はいまだに忘れることができない。

『少女少年』(第一期)をはじめとする
やぶうち優さんの『少女少年』シリーズは、
小学館の学習雑誌・『小学六年生』や『小学五年生』に
掲載されてきた作品である。
つまり、『りぼん』や『ちゃお』といった
『少女漫画専門誌』に掲載された少女漫画と違い、
最初から「男の子も読む」ということを
当然の前提とした少女漫画であるという点に特徴がある。
なかでもこの『少女少年』第一期は、
シリーズ全作品の中でもあまり「アク」が強くない。
それまで「少女漫画」というものに全く親しみを持たなかった僕を
瞬く間に とりこにしてしまった背景には、
こうしたことがあったのではないか。

「少女漫画なんて読んだこともない」という人にこそ、
僕は本書を薦めたい。
単に超一級の作品であるというだけではなく、
「少女漫画」というジャンルそのものへの入門書として、
強く推薦できる作品なのだ。
「やぶうち優『少女少年』第一期解説(その7)」へ進む→

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やぶうち優『少女少年』第一期解説(その1)
やぶうち優『少女少年』第一期解説(その2)
やぶうち優『少女少年』第一期解説(その3)
やぶうち優『少女少年』第一期解説(その4)
やぶうち優『少女少年』第一期解説(その5)

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やぶうち優『少女少年』第一期解説(その7)
やぶうち優『少女少年』第一期各話解説


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by imadegawatuusin | 2006-08-19 16:44 | 漫画・アニメ

――この巧みさはただごとではない――

■鮮やかな構成力に圧倒
世の中には、本当に舌を巻くほど、
「うまいなぁ……!」と驚かされる作品がある。
『ザ花とゆめ』(2006年9月25日)に掲載された
水森暦「舞われ 風車」などは、まさにそうした作品だ。

暁吉(あきよし)は去年、
交通事故で幼馴染の浜中満(みつ)を亡くした。
家が隣同士で同い年だった彼女は、
小学校の頃から毎日 暁吉の家に迎えに来て、
一緒に登校するのが習慣だった。
クラスメートからも
「ぜってー満は
 (おまえのことを)好きなんだって!」
と指摘された暁吉は、
いつしか満のことを意識するようになっていた。
だがある日、満が暁吉のことを
「弟みたいなもん」と言っているところを聞いてしまう。

そして次の日、
いつもの通り家に迎えにやって来た満に対し、
暁吉は言ってしまったのだ。

もう
迎えにくんの
やめろ


毎日毎日
うざいんだよっ


それを聞いた彼女は、
何も言わずに学校に向かった。
そして、その登校途中、
彼女は事故に遭って亡くなったのだ。

物語はその1年後、
秋吉が『あるところ』から帰宅すると、
どういうわけか家に満が
「一周忌だから」と言って「帰ってき」ていたところからはじまる。

小学生時代のある思い出と、
事故のあった中学生時代、
そして、高校生となった今の暁吉の記憶と想いとが、
満の存在を軸に想起され、
風車のように回りだす。

44ページの作品世界の中で、
読み進めるたびに
一つ、また一つと新たな視点・真相が提供され続け、
「何があったのか」が徐々に明らかにされてゆく手法は、
読んでいて本当に鮮やかだ。
そして最終的に、
全ての事象が「風車の思い出」を中心に位置付けられたとき、
読者は作者の構成力の見事さに
ただただ圧倒されるばかりである。
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by imadegawatuusin | 2006-08-18 15:44 | 漫画・アニメ

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■演技のできない晶に、なぜ「少女少年」が務まったのか
言うまでもなく本作主人公・水城晶は
スーパーアイドル・青野るりの大ファンである
やぶうち優『少女少年』17~18、30~31、154~155ページ)。
晶は、
カラオケの収録曲リストである「歌本」を見なくても、
青野るりの歌う大ヒットソング・『春の妖精』の歌番号を暗記しており、
何も見ずにこの曲を
カラオケから選曲することが可能である。

姉の水城瞳に、
「ほらっ、
 あんたも
 歌いなよ!
 いつもの
 アレ!
 るりちゃん!」と言われた途端、
晶は即座にカラオケに歌番号を入力して、
「春の妖精」を歌い出す。
歌い出すと その仕草も、
やや内股ぎみの「女の子っぽい」ものとなり、
彼がすっかり
大好きな「るりちゃん」になりきってしまっている様子が
うかがえる(本書20~21ページ)。

その後、姉の瞳に無理矢理 女装させられ
猛反発していた際にも、
「春の妖精」のメロディーが流れてくると
「体が勝手に
 曲に反応して
 歌ってしまう」ほどの重症だ(本書21~23ページ)。

「いつもの
 アレ!
 るりちゃん!」という言葉だけで
二人の間で話が通じてしまっているあたり、
晶が しょっちゅう姉と二人で
この種の「るりちゃんごっこ」に興じていたらしいことが
推察される〔注1〕。
〔注1〕晶は姉以外のクラスメートの前でも
しばしば この種の「るりちゃんごっこ」を
やっていたふしがある。
修学旅行に行った際、
晶はクラスメートから
「カラオケ
 やんねーの
 かな
 カラオケ」とからかわれて
「ばーか」と かわしている(本書96ページ)。
普通の「カラオケ」であれば別に、
クラスメートがからかうような口調で
「カラオケ
 やんねーの
 かな
 カラオケ」などとちゃかす必要はないし、
「ばーか」と かわす必要もない。
言うまでもなくここでいう「カラオケ」とは、
晶が得意とする「るりちゃんの物まね」のことであり、
それをやると みずき=晶のカラクリが
バレてしまうおそれがあったからこそ、
晶は「ばーか」と かわしたのだ。


本作の最も根本的な謎に、
マネージャーである村崎ツトムをして
「ドラマなんて
 全っ然
 向いてない」とまで言わしめるほど
演技力のかけらもない水城晶が(本書32~34、46ページ)、
どうして「少女少年」として
女の子アイドルを演じることができたのか、
という問題がある。

僕はここに、
「『白川みずき』とは水城晶の
 壮大な 『るりちゃんごっこ』だった」という仮説を
提起してみたいと思う。
はっきり言おう。
演技力の全くない水城晶が
「白川みずき」を演じることができたのは、
それが得意の「るりちゃんごっこ」に
他ならなかったからなのだ。

■「白川みずき」は晶の「るりちゃんごっこ」の産物だった
正直、白川みずきと青野るりは
あまり似ていないと思う人もいるだろう。
ただ、
白川みずきの出現に青野るりの事務所では、
「るりのライバル
 登場か!?」と さざめき立ったというし(本書38ページ)、
黒木紗夜香も白川みずきを評して
「第二のるり
 だかなんだか
 しらないけど
 しょせん二番煎じ」と言っている(本書51ページ)。

ものまねタレントはしばしば、
「本人より本人らしく」その人間を演じることが可能である。
その本人に特徴的なちょっとした癖や仕草を
ぐっと強調して「より本物らしく」演じることができる。

作品当初、青野るりは自分を、
母親の「イミテーションパール」であると
感じていた。
るりの母は自分の夢を娘に託し、
娘をトップアイドルに育て上げることが
自分の才能の証明となると考えていた(本書35~38、44~45ページ)。
そのため この母親は、
娘の髪型にまで、
幼い頃の自分の髪型を強制し、
大人気アイドルとしての「青野るり」に、
結局アイドルとしては芸能界で生き残れなかった自分自身を
投影していたふしがある。
だからこそ、
「大人になれない
 子供達
 子供になれない
 (大人達)」をテーマにした『るり色時代』の収録に合わせ、
青野るりが最後に髪型を「イメチェン」したのが、
るりの、「母親のイミテーション」からの脱却、
アイドルとしての自立を示す
エピソードとなる訳なのだ(本書179ページ)。

本書の、
晶と二人きりのとき以外の「青野るり」はもちろん、
熱を出していて晶と会ったばかりの頃の「青野るり」もまた、
「本当の青野るり」とは かなり隔たった存在なのだと
考えなければならない。
実際、
アイドルとしての「白川みずき」を評して
赤沢智恵子の言った、
「すました顔して、
 図太い」というような言葉は、
「みずき」=晶の性格というよりも、
むしろ晶が影響を受けた
「青野るりの本性」と言った方が正しい(本書59~63ページ)。
白川みずきが「おちゃめ」な性格であるのも(本書62ページ)、
まさしく青野るりの本性が
「おちゃめ」であるからに他ならない(本書104ページ)。

青野るりが、
母親の期待に応えるために、
必死で
母の望むアイドル像(つまるところ若い頃の母親)を
演じていたとき、
晶も晶で、得意の「るりちゃんごっこ」を、
それも、「世間で流布されている るりちゃん像」ではなく、
晶自身が感じ取った「本当のるりちゃん」を
一生懸命「白川みずき」として演じていたのだ。

青野るりが「白川みずき」の中に
「フシギな魅力」・
「今までの
 女のコアイドル
 にはない
 フシギななにか」を見出したのは
偶然ではない(本書38、44ページ)。
青野るりが「白川みずき」の中に見たのは、
「母の望むアイドル像」を強制されていたために
充分に発揮することができないでいた、
自分自身の魅力だったのだ。
(水城晶に後に好意を抱く黒木紗夜香が、
 青野るりと違って「白川みずき」には
 特別何の魅力も見出さなかったのも、
 そこのところの違いが影響していると思われる)。

演技力皆無の水城晶が
アイドルとして一定の成功を収めることができたのは、
「憧れのアイドル」(本書155ページ)・青野るりの物まねに
熟達していたためである。
晶は、青野るり自身が気づかなかった彼女の魅力を、
母親の望むアイドル像(=若いころの母親)に縛られていたるりの
本当の魅力を、
「白川みずき」として表現したのだ。
「白川みずき」は水城晶の、
壮大な「るりちゃんごっこ」だったのだ。

■なぜるりはみずきに「嫉妬」したのか
以上の仮説を踏まえると、
アイドルなんか
「やりたくな」かったはずの青野るりが(本書37ページ)、
どうして白川みずきに対して
「嫉妬」心を抑えることができなかったのかが
理解できるようになってくる(本書114ページ)。

青野るりが「やりたくない」と思っていたのは、
実は「アイドル」そのものではなく、
「母が望むようなアイドル」だったのである。
「母が望むアイドル像」だけを
幼い頃から押しつけられてきた青野るりは、
当初、この二つの区別ができておらず、
自分はアイドルを「やりたくない」のだと
思い込んでいた。

ところが、
「私なんかいらなく
 なっちゃうくらい
 売れっ子になって」(本書44ページ)と期待した
白川みずきの活動は、
現に青野るりが演じている
「母親の望むアイドル」像とはあまり重ならず、
むしろ本来の青野るり自身の才能を
十全に表現するものとなっていった。

本来、白川みずきに
青野るりが期待していたのは、
自分以上に「母親の望むアイドル」像をやってのけ、
自分がその座から自由になる=「いらなく」なるということだった。
ところが白川みずきは、
青野るりの最も青野るりらしい部分を演じきり、
それが成功していってしまったのだ。

「それは本当は私がやるべき活動だった。
 そこは本当は私がいるべき場所だった」、
そして、
「それは私が、
 やりたいと思っていたことだった」。
「白川みずき」を見ていてるりは、
ついにそのことに気づいてしまったわけだ。
この思いが、
青野るりが白川みずきに
「嫉妬」を感じた原因の一つでは
なかったのだろうか。

青野るりは、
「普段の水城晶」を知ったころから、
この点に関してはかなり自覚的であったようだ。
実際、「学校での水城晶」を
「自分の前での白川みずき」と引き比べ、
「晶くん、
 私の前と
 全然かおが
 ちがってた」、
「生き生きしてて、
 すごく晶くん
 らしかった」と評している(156ページ)。

青野るりは、
「白川みずき」が何か(おそらく「自分=るり」)を、
演じていることに気づいていた。
そして、そんな「白川みずき」こそが、
実は「本当の自分」の写し絵であり、
自分が本当にやりたいこと、
自分が本当になりたいアイドル像であることに
気づかされてしまったのである。

そして、水城晶も、自分も、
誰かを「演じて」いるときではなく
本当に「自分らしく」活動しているときこそが
「生き生きして」いるのだということにも、
彼女は気づいたに違いない。

本作において青野るりに、
アイドルとしての自立と
「母親の呪縛」からの解放を促す
「触媒」の役割を果たしたのが、
「白川みずき」であり、水城晶だったのだ。
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by imadegawatuusin | 2006-08-09 19:55 | 漫画・アニメ