――愛知県労働委員会で斡旋成立――

■「たとえ家を失うことになっても闘える」
派遣先・トヨタ車体での、
契約更新拒絶に端を発する日研総業労働争議は、
11月30日、
愛知県労働委員会〔注1〕の斡旋によって
円満に解決をむかえることができました。

斡旋結果に関しましては守秘義務が課せられており、
本争議に ご注目くださいました多くの方々に
残念ながらご報告申し上げることができないことを
心からお詫びいたしますと ともに、
「たとえ路頭に迷ってもあきらめない」の一念で、
ユニオンの力を最後まで信じて頑張り抜いてきたことが
今回の円満解決に結びついたものと
確信しております。
個人の力では絶対になしえないことが
労働者の団結によって可能となるという実例を示せたことを
何よりも嬉しく思っています。
名古屋ふれあいユニオンの友好団体である
東海労働弁護団の「派遣・請負研究会」の弁護士さん達の支援を受け、
「これでダメなら裁判」という強い姿勢で
労働委員会斡旋に臨むことができたのも
功を奏したと思われます。

「たとえ家を失っても闘える」・
「たとえ路頭に迷っても決して諦めることはない」。
今回の争議で私がえた何よりも大切な教訓は
これであります。

現在私は、
当時収容されていたホームレス一時保護所から
ホームレス自立支援施設に移送され、
グッドウィルで日雇い派遣をやっています。
失業保険を使い、
4月から開講される職業訓練校に
入学しようと考えています。
(それまでに、
 職業訓練とは別に
 ホームレス向けの技能講習として、
 玉掛けやクレーンなどの資格も習得する予定です)。
「失業」・「ホームレス」というと
一般にマイナスのイメージしかないと思いますが、
失業しなければできないこと(失業保険で職業訓練)、
ホームレスにならなければできないこと(無料技能講習)」も
間違いなく存在します。
「今の自分にしかできないこと」を徹底的に追究し、
この経験をプラスの方向に生かしてゆきたいと考えています。

今回の件では、
本当に多くの方々の様々な形でのご支援・ご注目を受け、
今日の結果にたどり着くことができました。
その全ての皆様に心からのお礼を申し上げますとともに、
「受けた支援は支援で返す」の精神で、
今後とも名古屋ふれあいユニオンの活動に携わり、
この愛知県に、
「職場の理不尽を許さない、
 強く優しい地域労組」の建設を目指して
微力を傾注してゆくつもりです。
みなさま、本当にありがとうございました!

〔注1〕愛知県労働委員会の日研総業争議あっせん員は、
労働者委員が内堀良雄UIゼンセン同盟愛知県支部支部長、
使用者委員が柴山忠範愛知県経営者協会日本経団連愛知支部)事務局長、
公益委員が浦部和子弁護士でした。
本当に、ありがとうございました。



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職場の理不尽を許さない、強く優しい地域労組の建設を!
愛知県下の未組織労働者は名古屋ふれあいユニオンに結集し、
愛知県に人権労働運動の灯をともそう!



労働組合名古屋ふれあいユニオン
雇用形態や国籍に関わりなく、
愛知県下で働くすべての労働者が一人から加盟できる
地域労働組合(コミュニティユニオン)。
コミュニティユニオン全国ネットワーク
コミュニティユニオン東海ネットワークにも参加。
今年3月に開かれた第9回定期大会では、
連合産別・全国ユニオンへの加盟について討議するとする活動方針を採択。
日ごろから組合員の学習会や交流会・相談会などを
積極的に企画しながら活動している。
現在、組合員数約200名。
組合員は組合費月額1500円。
賛助会員(サポーター)は年会費5000円。
住所:〒460‐0024
    名古屋市中区正木4-8-8 メゾン金山711号室
    (JR・地下鉄・名鉄金山駅下車 名古屋ボストン美術館の向かい)
電話番号:052‐679‐3079(午前10時~午後6時)月~金
ファックス:052‐679‐3080
電子メール:fureai@abox.so-net.ne.jp
郵便振替 00800‐8‐126554
ホームページ
http://homepage3.nifty.com/fureai-union/
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by imadegawatuusin | 2007-01-06 18:17 | 労働運動

■おすすめ先行文献
yuu氏「望月マユカ編~ライバルのあなた~」
「yuuの少女少年ファンページ」を運営するyuuさんによる
『少女少年II』のサイドストーリー。
原作を知る人間なら思わずニヤリとしてしまうような箇所が盛りだくさんで、
オタク心を大いにくすぐられる力作。
こういう楽しみこそ、
まさにパロディーの醍醐味というものである。
また、そうした部分を抜きにしても、
お話として とてもいい雰囲気で、
後味のよい作品に仕上がっている。
(僕は特に、
 作品の最後にある
 「マユカはほんの少しだけ、一葵に近づいた」という部分にぐっときた。
 これは、直接的にはマユカの「行動」についての記述なのだが
 〔つまり、文字通りマユカが一葵の側に寄ったということ〕、
 同時に精神的な意味でも
 マユカが「ほんの少しだけ、一葵に近づいた」ことが感じ取れる。
 負けず嫌いでプライドが高く、
 「自分から誰かに歩み寄る」ということがいかにも苦手そうな彼女が、
 あえて自分から一葵の側に近づいたという意味は
 非常に大きい。
 もちろんそれは、
 「ほんの少しだけ」だったのだから、
 周りのみんなも、
 当の一葵も多分気づきはしなかっただろうが、
 マユカ本人は自分がやったことを当然知っているわけで、
 そういう意味では「小さな一歩だけど大きな一歩」を踏み出したわけだ。
 ここから、彼女にとっての
 「新しい
  ドラマが
  始まる」〔本書207ページ〕のだろうという予感を抱かせる)。

89氏「もらう人」
「少女少年応援室」「SS保管庫」「頂き物」コーナー)に収録されている、
『少女少年II』のサイドストーリー。
地の文もなく、登場人物紹介もない。
にもかかわらず、
どのせりふを誰が言っているのかは、
原作を知る人間には一目瞭然。
数人の登場人物が二言三言会話を交わすだけの
極めて短い超掌編作品なのだが、
これほどまでに登場人物たちの心情が
読む者の胸に迫ってくるのはどうしてだろう。
「料理上手」という一葵の特性も最大限に生かした
珠玉の一品。


《戻る》
やぶうち優『少女少年II―KAZUKI―』解説(その1)
やぶうち優『少女少年II―KAZUKI―』解説(その2)
やぶうち優『少女少年II―KAZUKI―』解説(その3)
やぶうち優『少女少年II―KAZUKI―』解説(その4)

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やぶうち優「少女少年 0話」解説

「マンガ・アニメに女装少年」 『朝日新聞』が報道


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【本日の読了】
やぶうち優『少女少年II―KAZUKI―』(小学館てんとう虫コミックススペシャル)評価:5



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by imadegawatuusin | 2007-01-04 15:49 | 漫画・アニメ

―― 一葵は晶と同い年!? ――

一般には、
『少女少年』第一期は1997年度、
『少女少年II』は翌年・1998年度を舞台にしていると
考えられている。

第一期の舞台が1997年度であることは、
主人公のみずきが出演していた音楽番組が
「ヒットパレード’97」であることや(『少女少年』50ページ)、
第一期が
小学館の学習雑誌・『小学六年生』に連載されたのが
1997年度であったことから明らかである。

そして『少女少年II』であるが、
『少女少年』第一期の最後に、
晶と別れた村崎ツトムが、
一葵と思われる少年に、
「キミ
 キミ!
 そう
 キミ!
 アイドルに
 なる気
 ないかい!?」
と問いかけているシーンがある。
実際の『少女少年II』におけるセリフとは
やや違っているものの、
この呼びかけを
最初一葵が自分に向けられたものと思わなかったため、
もう一度繰り返したのが
『少女少年II』の冒頭なのだと考えると
いいかもしれない。

したがって『少女少年II』は
『少女少年』第一期の翌年度、
つまり1998年度の話であると考えるのが
自然なのである。
(『少女少年II』が『小学六年生』に連載されたのも
 1998年度のことである)。

そして、
『少女少年II』には物語の最後に、
翌年の「4月」に一葵たちが中学生になったことを
示唆するシーンがあること(『少女少年II』207ページ)、
連載された雑誌が
『小学六年生』であったことを考えても、
物語における一葵の学年は
基本的に小学6年生であったと考えるのが自然であろう。

つまり、
晶は1997年度に小学6年生、
一葵は1998年度に小学6年生だったというのが
最も自然な読み取りなのだ。

ところがである。
これと矛盾する記述が作品中にあるのである。

それは、村崎ツトムに提出した「申込書」に記載した、
一葵の生年月日である。
ここで一葵は自分の生年月日を、
「(19)86年3月10日」としているのである
(『少女少年II』29ページ)。

一葵が1986年3月10日生まれなら、
1985年度生まれということになる
(年度は4月で変わるため)。
もしそうであれば、
一葵は『少女少年』第一期の晶と
同い年ということになってしまう。
通常は、
1997年度に小学6年生、
1998年度には中学1年生となるはずだからである。

一葵はこの「申込書」を書くにあたって
「3回も
 みなおした」と証言している。
自分の生年月日を書き間違えたとは考えにくい。
この矛盾はどう考えればいいのだろうか。

これを考えるヒントが
『少女少年II』の198ページにある。
ここで、
誘拐から解放され、
正体が発覚した一葵のことが、
新聞に「実力派! 星河かずき(12)」と
報道されているのである。

誘拐事件があったのは
クリスマスイブ(12月24日)の前日、
つまり12月23日であるとされている(『少女少年II』173ページ)。
新聞報道は、
誘拐事件の後に、
「その後、
 東京に戻ってから
 正式な記者会見が開かれて、
 『大空遥に
  かくし子発覚』と
 『星河かずき
  実は男』の話題で、
 家に帰る
 ひまもなく、
 数日が過ぎて
 いった」という一葵のモノローグと、
「だけど
 その間……」という、
続くコマにある一葵のモノローグの間に
挟まれる形で登場する(『少女少年II』198ページ)。

つまり、
誘拐からの解放翌日から「数日」の「間」、
12月24日から数日の間に
報道されたものであるということである。

もしも一葵が3月生まれなのだとしたら、
普通はここは「星河かずき(11)」と
なっていなければならない。
しかし、
物語中の12月の時点で、
一葵は12歳になってしまっているのである。

だとすると一葵は、
通常より一年遅れで
学校に通っているとしか考えられない。

3月10日生まれというのは、
考えてみればかなりの「遅生まれ」である。
あと二十数日遅く生まれていれば
次年度生となる狭間の生まれであるからだ。
複雑な家庭の事情もある一葵のことだ。
学校への入学が一年遅れたのだとしても、
考えられないことではない。

そう言えば、
大空遥は自身の妊娠を一切世間に知られることなく
極秘のうちに一葵を出産したらしい(『少女少年II』25ページ)。
だとすると一葵は、
大空遥があまりお腹が大きくならないうちに生まれた、言い換えれば相当の未熟児だったのではないか。
実際の誕生日は3月10日でも、
本来は4月以降に
生まれるはずだった子どもであったとしても
おかしくはない。

また一葵には
小さいころから夢遊病の気があったようであり、
これについては今も完全には直っていない(『少女少年II』68ページ)。
こうした一葵の「発達の遅れ」も、
就学猶予が認められれた一つの要因である可能性がある。

では、
物語の冒頭で一葵が村崎ツトムに提出した「申込書」で
「年齢」が「11歳」(『少女少年II』29ページ)、
オーディションに提出されたものでは
「満11歳」となっていたこと(『少女少年II』38ページ)
についてはどう説明するのか。

この「申込書」を書いたとき、
一葵はまだ小学5年生だったと考えるのは
どうだろう。
よくよく考えてみれば、
1997年度を舞台とする『少女少年』第一期の最後に
一葵が登場することも示唆的である。

白川みずきは1997年のクリスマスシーズンと(『少女少年』158ページ)、
1998年の正月(『少女少年』172ページ)との間に
引退している。
引退が「紅白歌合戦」の前であることからも(『少女少年』161ページ)、
1997年の12月後半のことであろう。

それから1998年の4月までには
3ヶ月あまりの時間がある。
村崎ツトムが一葵と出会ったのも、
申込書を提出したのも、
この1998年1月から3月9日までの間だったのだと
考えれば、
一葵が一年遅れて入学しているにもかかわらず、
このとき年齢が11歳であったことの説明がつく。

ではまとめよう。
村崎ツトムが一葵と出会ったり、
一葵が村崎に「申込書」を提出した
『少女少年II』第1話・「運命の決断」は、
1998年の1月から3月9日までの間
(おそらく、3月1日から9日の間)で、
一葵が小学5年生で、
3月10日に12歳の誕生日を迎える前の話。
このとき、一
葵は11歳だったので、
「申込書」にはそのように書かれている。

「砂の嵐」のオーディションが行なわれたのは
1998年の「4」月であるが(『少女少年II』23ページ)、
申込書を記入した時点が3月9日以前であれば、
そこに年齢が「満11歳」と書かれていても
不自然ではない。

つまり一葵は、
『少女少年II』の第1話と第2話との間に
誕生日・3月10日を迎えて12歳になり、
4月を迎えて6年生になっている。
第2話・「とまどい」以降は一葵12歳、
小学6年生のときの話ということになる。

なお、
「申込書」の提出以前の段階で、
一葵の父・星河鉄郎が一葵に対し、
「一葵…。
 おまえももう
 6年生だし……」と発言している場面があるが(『少女少年II』24ページ)、
これはおそらく、
1998年3月の時点で、
「お前ももうすぐ6年生だ」・
「お前もあと1ヶ月もしないうちにもう6年生だ」
というような意味合いでの発言か、
あるいは
小学校への入学が1年遅れていることを意識して、
「お前も本当ならもう6年生だ」と言うような意味で
理解するとよいのではないか。

なお、
『少女少年II』の第1話・「運命の決断」の部分が
一葵が小学5年生時代の3月上旬であると考えることには
別の合理性もある。
それは、
この第1話が掲載された
1998年4月号の『小学六年生』は、
実は3月上旬(正確には3月3日)に
発売されているということである。

つまり、
雑誌掲載時に
リアルタイムでこの物語を読んでいた読者も、
第1話の時点では小学5年生だったのだ。
4月号掲載の一葵が小学5年生で、
5月号掲載以降の一葵が小学6年生であるとすれば、
作品の主人公と読者とが完全に同期していたことになる。


《戻る》
やぶうち優『少女少年II―KAZUKI―』解説(その1)
やぶうち優『少女少年II―KAZUKI―』解説(その2)
やぶうち優『少女少年II―KAZUKI―』解説(その3)

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やぶうち優『少女少年II―KAZUKI―』解説(その5)

やぶうち優『少女少年II』各話解説


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by imadegawatuusin | 2007-01-03 11:37 | 漫画・アニメ

――「少女少年活動=役者としての実力証明」という新視点――

■役者としての「すごさ」は物語そのものに語らせる
漫画という媒体は原則的に、
静止した絵(コマ)の連続とセリフ(および擬音など)とによって成り立っている。
「動き」や「音」は直接的には表現できず、
あくまでコマの連続とセリフ・擬音などから
読者が想像して補うしかない。

このような表現手段の宿命ともいえるのが、
「動きや音にかかわる『すごさ』を
 いかに説得力を持って描けるか」という課題である。

やぶうち優さんの『少女少年』シリーズでは、
女の子に扮した男の子たちが
歌手・子役・モデル・声優などの各種芸能に挑戦する。
「モデル」だけは別として、
その他の「歌手」・「子役」・「声優」などについては、
読者は彼らの「すごさ」を
作品そのものから体感することは不可能だ。

そこで通常は、
「歌を聴いた人が感動のあまり涙する」、
「サイン会に大勢のファンが押しかけ社会現象になる」、
「その実力を『その道のプロ』(大物プロデューサーなど)から大絶賛される」
などの「目に見える」方法によって
二次元芸能人はその「すごさ」を読者の前に「証明」することになるのだが、
言うまでもなくこれらは、
小手先めいた安易な方法であり、
お世辞にも上等なやり方ではない。

その漫画の作者であれば、
歌を聴いた人に涙を流させたり、
サイン会にファンを押しかけさせたり、
大物プロデューサーに絶賛させたりするのは簡単なのだ。

例えて言うなら、
漫画やドラマで「世界一の美人」を表現するには至難のわざを要するところを、
小説だから本文の中に、
「彼女は世界一の美人だ」と一言書いただけで
済ませてしまえという態度に似ている。

そんな安易なやり方で実力を「証明」されたとしても、
読者は説得力を感じない。
漫画であれ、小説であれ、
その表現方法によっては直接描ききれない部分の「すごさ」は、
物語(ストーリー)そのものに語らせてこそ
初めて説得力を持つものなのだ。

前書きが長くなった。
本題に入ろう。

『少女少年』第一期において白川みずきの歌唱力は、
赤沢智恵子の心と行動とに及ぼした影響力の強さによって証明される。

漫画は音を出すことができない。
だから僕たちは、
白川みずきがどんな声で どんな歌を歌ったのか、
それは想像するほかない。

けれど僕たちは、
白川みずきの歌のすごさを知っている。
それは決して、
白川みずきの歌唱力が芸能プロに認められたからでも、
サイン会に大勢のファンを動員したからでもない。
白川みずきの歌声が、
アイドル嫌いの一人の少女の心を解きほぐし、
共鳴し、
彼女をして自分の好きな男の子に、
素直な気持ちを伝えさせたということを
僕らは知っているからだ。

単にファンに「感動した」・「すばらしい」と言わせるだけにとどまらず、
それを聴いた者の心を実際に変え、
行動を変えたという点にこそ、
白川みずきのすごさがある。
これこそが、
白川みずきが「物語(ストーリー)に語らせた実力」なのだ。

そして やぶうち優さんは、
『少女少年II』においても、
主人公・星河一葵の実力を物語そのものに語らせている。

もちろん、
一葵の「実力の証明」としては、
前述の「小手先めいた手法」も使われてはいる。

一葵は芸能プロドューサーに「天性の才能」を認めさせ(本書101、206ページ)、
「めったに
 ほめないことで
 有名」な監督に
「最高の
 ほめ言葉」をかけられ(本書140ページ)、
多くのファンを獲得する(本書142ページ)。

しかし、
役者としての一葵の実力を最も説得力を持って証明するのは、
大空遥がマスコミ記者を前に語ったあの言葉、
「みなさんも
 一葵の実力は
 よくご存知
 でしょう。
 だって一葵は
 この半年間、
 りっぱに“女”を
 演じきったじゃ
 ないですか」である(本書196ページ)。
大空遥はこう語る。

みなさんの中で、
一葵が男だと
気づいた方は
いらっしゃいますか?
……
おわかり
いただけた
でしょう?
一葵の実力は
だれもが認める
ところなのです。(本書197ページ)


そう。
『少女少年』というこの物語の構造そのものが、
星河一葵の最大の実力証明だったと言ったのだ。

■江戸の仇は長崎で! 大空遥、12年越しの「タブーとの闘い」
考えてみれば、
これは驚くべき発想の転換、
大どんでん返しである。
僕たち読者はこのページに たどり着くまで、
「男だってことが
 バレた時点で、
 ギョーカイ
 永久追放」(本書55、83ページ)という「芸能界の常識」に
完全に支配されてきた。
男であるにもかかわらず女として芸能界で暮らしてきたという経歴は、
どう考えても隠すべき、マイナスのものとしか
捉えられない状態だ。

ところが大空遥は、
星河一葵の少女少年としての生活を、
「りっぱに“女”を
 演じきった」と臆することなく言ってのけ、
役者としてむしろプラスの事柄、評価の対象であると
堂々と再規定したのだ。
たいした役者である。
(もちろん、大空遥は「たいした役者」なのであるが)。

僕たちは、
初代少女少年である白川みずきが
どのようにして芸能界から追放されたかを知っている。
本当の性別を暴かれた彼は、
多くのファンの罵声を浴びながら
華やかな舞台からあっけなく退場していった。

だからこそ、
「男だってことが
 バレた時点で、
 ギョーカイ
 永久追放」という村崎ツトムの言葉には
重いリアリティーがあったのだ。

そしてそれは、
「女優の妊娠は致命傷になりかねないスキャンダル」という、
当時の「芸能界の常識」にあらがえず、
愛する我が子を手放さざるを得なかった12年前の彼女の姿に
どこか重なって見えるのである(本書25ページ)。

12年前、「芸能界の常識」の前になす すべのなかった遥。
そしてそのことが今回の事態を引き起こしたのだとすれば、
彼女は、
今度こそは負けるわけにはいかなかったはずである。

「江戸の仇は長崎で」。
少し違うかもしれないが、
僕はそんなことわざを思い出す。

12年前は
「致命傷に
 なりかねない
 スキャンダル」であった女優の妊娠も、
「今はもうそんな
 ことはない」(本書25ページ)。
ならば、
「星河かずきは男であった」ということも、
決して絶対的なマイナス要因ではないはずだ。
遥には、
そんな確信があったに違いない。

彼女は、
12年のときを経て、
形を変えて再び目の前に立ちはだかった「芸能界の常識」に
ひるむことなく再戦を挑み、
そして今度は鮮やかな勝利を勝ち取った。
「かくし子発覚」は「感動の親子愛!!」に、
「大人気少女子役 実は男」は「実力派! 星河かずき(12)」に(本書194、198ページ)。
遥の一言は、
「芸能界の常識」を覆し、
芸能史の流れを大きく転換させたのだ。

その影響は、
その後の『少女少年』各作品にも著しい。
『少女少年V』の蒔田稔は、
男だということがバレた後も社会に温かく迎えられたし、
『少女少年IV』の白原允などは
最初から「女装アイドル」として売り出すことも提案された。
『少女少年VII』の「万丈千明」などに至っては、
いずれ男として再登録する日のことを見越し、
芸名を付ける段階からして
「男女どちらでも使えるものを」との配慮がなされたほどなのである。
(身体的な性別が判明した後も
 クラスメートが章姫いちごを「女の子」として受け入れ続けてきた
 『少女少年~GO!GO!ICHIGO』なども、
 この流れの延長線上に位置づけられるかもしれない)。

いまや『少女少年』の世界では、
「男だってことが
 バレた時点で、
 ギョーカイ
 永久追放」などということは
「今はもうそんな
 ことはないが、
 当時は……」という枕詞を付けて語られる
昔話に他ならない〔注1〕。
けれどそれは、
決して
「世の中の流れが変わったから自然にそうなった」
というものではない。
そこには、
かつて自らも「芸能界の常識」に押しつぶされた経験を持つ、
一人の女性の闘いがあった。
かつて「芸能界の常識」に押しつぶされた一人の女性が、
「芸能界の常識」を見事に変えて見せた、
もうひとつのドラマがあったのだ。
〔注1〕ときどき『少女少年』について、
「毎回、『バレたらおわり』のドキドキ感が魅力」と評する人がいるが、
僕はこの考え方には賛同できない。
「バレたらおわり」の世界は、
(少なくとも『少女少年』の世界では)
この『少女少年II』の最終回ですでに終わっているのである。
その証拠に、
『少女少年IV』の允くんがスカウトされた際、
「それって、
 よくある『バレたらおわり』ってやつ!?」と質問したときに、
村崎ツトムははっきりと、
「そこら辺は心配ないよ!」と言明している。
(そのあと、
 「なんなら最初から
  男だって明かして
  "女装アイドル"として売り出してもいいし!」と
 話は続くのであるが……)。
これ以降の少女少年たちが「正体」を隠して女装するのは、
もはや社会的な理由からではなく、
もっと個人的な理由による。
男だということが「バレるかバレないか」は、
以後の作品においても依然重要性を持つものの、
それはあくまで個人的な人間関係の維持のためであり、
かつて『少女少年』第一期で晶が恐れていたような、
「詐欺」だの「変態」だのといったレッテルを貼りつけられて
社会全体から排斥されることを恐れる必要は
あまりなくなっているように見受けられる。
少なくとも、『少女少年II』以降の作品は、
「男だとバレる=業界永久追放」の図式がもはや崩壊した世界での物語だ、
ということは間違いない。



《戻る》
やぶうち優『少女少年II―KAZUKI―』解説(その1)
やぶうち優『少女少年II―KAZUKI―』解説(その2)

《進む》
やぶうち優『少女少年II―KAZUKI―』解説(その4)
やぶうち優『少女少年II―KAZUKI―』解説(その5)

やぶうち優『少女少年II』各話解説

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by imadegawatuusin | 2007-01-02 15:27 | 漫画・アニメ