「ほっ」と。キャンペーン

――ふれあいユニオンKさん、正社員への道切り開く!――

■ユニオン、直接雇用へ交渉申し入れ
トヨタグループの鋼材メーカーである愛知製鋼及び
愛知製鋼の連結子会社であるアイチセラテック、
そして愛知製鋼に対して違法派遣を行なっていた
愛知県東海市に本社を置く
人材派遣会社「セキ」(代表取締役:白男川徳一)に対し、
愛知労働局が2月9日午前、
労働者派遣法違反で
文書指導の交付を行なっていたことが
関係者の証言で明らかになった。
 
これによると愛知労働局は、
愛知製鋼が労働者派遣法上の期間制限を越えて
名古屋ふれあいユニオン組合員・Kさん(40代男性)を
受け入れていたと認定して
正常化を指導。
正常化にあたっては
直接雇用が望ましいとの指導が行なわれたという。

また、
愛知製鋼の連結子会社である
アイチセラテックに対しても、
過去においてセキとアイチセラテックとの間で、
Kさんについて、
一定時期、職業安定法第44条に反する
違法な労働者供給であったとの指摘が
文書にてなされたという。

Kさんと名古屋ふれあいユニオンは
昨年3月12日、
愛知労働局に対し、
愛知製鋼にKさんを直接雇用することを
勧告するよう申告を行なっていた。
申告書によるとKさんは2004年5月には
すでに別の「下請け企業」を通じて
愛知製鋼に勤務。
その企業がセキと交替するにあたっては、
愛知製鋼の作業長から
引き続き働いてほしいと要請され、
セキとの間で口頭で雇用契約を締結。
この際Kさんは、
履歴書を持参して愛知製鋼の担当者の面接を受け、
安全教育を受けた上で、
2004年9月、
愛知製鋼の決定に基づき採用されたという。

名目上は、
愛知製鋼鍛造工場の業務の一部を
アイチセラテックが請け負い、
アイチセラテックの業務をセキが請け負うという
二重の請負契約が締結されていたというが、
実際にはKさんは愛知製鋼社員の指揮命令の下で
働いてきたそうだ。

Kさんは2005年5月頃、
それまでの「4鍛工場」から
「5鍛工場」に移動となった。
以来 今日まで一貫して、
5鍛工場で鉄鋼の粗地仕上げの工程に
従事し続け、
その期間は
労働者派遣法上の制限期間である3年を
すでに超過していることが明らかだった。

「派遣先」が
期間制限を越えて受け入れていた「派遣労働者」に対し、
労働者派遣法に従って、
直接雇用の申込みの勧告を行なう場合は、
厚生労働省の作成した
労働者派遣事業関係業務取扱要領によれば、
「指導又は助言、勧告」すべき内容として
「期間の定めなき雇用」と定められており
(『労働者派遣事業関係業務取扱要領』
 「第9 派遣先の講ずべき措置等」
 4派遣受入期間の制限の適切な運用
 (7)-ロ 248ページ)、
勧告書の書式例にも
「期間の定めなく雇用するよう」
明記している
(労働者派遣事業関係業務取扱要領250ページ)。

また、
「申込み義務に係る派遣労働者の労働条件は、
 ……派遣先と派遣労働者との間で、
 派遣就業中の労働条件や、
 その業務に従事している派遣先の労働者の
 労働条件等を総合的に勘案して
 決定されることが求められ」ている
(『労働者派遣事業関係業務取扱要領』
 「第9 派遣先の講ずべき措置等」
 5派遣労働者への雇用契約の申込み義務
 (1)-ニ 251ページ)。
Kさんはセキにおいては
期間の定めのない労働者であるとされてきた。
また、
Kさんが従事している業務においては
愛知製鋼の従業員には期間従業員はおらず、
正社員のみであるという。

よって、
Kさんを組織する
愛知県の個人加盟制労働組合
名古屋ふれあいユニオンは
トヨタグループの鋼材メーカーである
愛知製鋼に対し、
Kさんの直接・正規雇用を求めて25日、
交渉の申し入れを行なった。

現在 愛知製鋼では、
かつて「請負」とされてきた企業との取引が
次々と「派遣」に切り替えられ、
続々と派遣切りが行なわれている。
かつては「長く使い続けられるように」請負とされ、
今は「切りやすいように」派遣とされて切られていることは
明白である。
(「請負」の場合、
 一工程をまるまる外注しなければならないため、
 「その業務に少しずつ社員を入れていく」ことが
 難しい。
 「派遣」だと、
 少しずつ派遣社員を減らしながら、
 そこに社員を入れていき、
 仕事を覚え終わった時点で全て社員に入れ替える、
 ということが可能である)。

こうした「派遣」や「請負」といった
不安定な雇用形態に立たされてきた労働者が、
働く者の団結の力で
直接・正規雇用への扉を切り開いた意義は計り知れない。
名古屋ふれあいユニオンは
Kさんの直接・正規雇用の実現のため、
全力で愛知製鋼との初交渉に臨む決意だ。
『インターネット新聞JANJAN』2月25日から加筆転載)


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職場の理不尽を許さない、強く優しい地域労組の建設を!
愛知県下の未組織労働者は名古屋ふれあいユニオンに結集し、
全ての職場に人権労働運動の灯をともそう!



労働組合名古屋ふれあいユニオン
雇用形態や国籍に関わりなく、
愛知県下で働くすべての労働者が一人から加盟できる
地域労働組合(コミュニティユニオン)。
コミュニティユニオン全国ネットワーク
コミュニティユニオン東海ネットワークにも参加。
今年3月に開かれた第10回定期大会では、
連合産別・全国ユニオンへの加盟について討議するとする活動方針を採択。
日ごろから組合員の学習会や交流会・相談会などを
積極的に企画しながら活動している。
現在、組合員数約200名。
組合員は組合費月額1500円。
賛助会員(サポーター)は年会費5000円。
住所:〒460‐0024
    愛知県名古屋市中区正木4-8-8 メゾン金山711号室
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by imadegawatuusin | 2009-02-25 05:36 | 労働運動

――湯浅誠さん、「『No!』と言える労働者をつくろう!」――

製造業における相次ぐ「派遣切り」に抗議するため、
2月22日、
名古屋市東区のテレピアホールで
「愛知派遣切り抗議大集会」が開催された。
集会には市民など525人が詰めかけ、
「派遣切り」にあった当事者からの訴えや
年越し派遣村村長の湯浅誠さんの講演に
耳を傾けたあと、
労働者派遣法の抜本改正などを求める決議を
採択。
名古屋駅前トヨタ・ミッドランドスクエアに向けて
2.8キロをデモ行進した。

集会ではまず、
実行委員長を務める
宇都宮健児弁護士(反貧困ネットワーク)が
挨拶に立った。

■宇都宮健児弁護士の発言
「私も派遣村の名誉村長を務めたが、
 年越し派遣村に日本社会は衝撃を受けた。
 派遣切りのヒドさを浮き彫りにした。
 今まで、『もう日本に貧困はない』などと言われていたが、
 貧困の実態が明らかになった。
 派遣切りは単に職を無くすというだけの問題ではない。
 寮や社宅に入っている人は、
 たちまち野宿に追い込まれ、
 生存の危機にさらされる。
 これは単なる労働問題ではない。
 人権問題である。
 派遣村505人の村民の中には、
 静岡から歩いてきた人もいた。
 自殺を図って警察に連れられてきた人もいた。
 全国からカンパや食料も寄せられて、
 『もう一度生きてみよう』という希望が生まれた。
 助け合い・連帯の精神がここにある。
 派遣村の実態は
 労働者派遣制度の実態そのものである。
 今の労働者派遣制度は、
 いざとなったら簡単に
 モノのようにクビを切るための制度だ。
 抜本的に改められなければならない。
 けれど、
 法律が変わるのを待っていては、
 いま困窮している人を救えない。
 不当な解雇はやめさせなければならない。
 いま派遣切りしている企業の多くは、
 これまで大変な利益を上げてきた。
 内部留保をため込んでいる。
 いまだに株主配当を続けていたりする。
 定額給付金というようなことも言われているが、
 派遣切り対策、
 貧困者の対策へと
 重点的に振り向けられなければならない。
 労働運動と市民運動が結合すれば
 大きな力になるということを
 派遣村は示した。
 愛知は厚生労働省によると、
 派遣切りで職を失う人がダントツの第1位だという。
 派遣切りに負けない、
 大きな力をつけていこう!」

■当事者から発言が続々
次に、
派遣切りにあった当事者からの発言が続く。
「妻と一緒に住み込み派遣で働いていた。 
 子供が生まれて5ヶ月で派遣切りにあった。
 次の日から面接を繰り返したが、
 1名の募集に対して30名来るというのが当たり前。
 雇用促進住宅に入ろうとしたけど、
 入居時に10万円いると聞いて
 諦めざるを得なかった」とか、
「仕事帰りに、作業着を着たままの状態で
 いきなり解雇予告をされた。
 3日で退寮しろと言われ、
 とっさに、
 『仕事がなくなるなら次の仕事を見つけなきゃ!』
 ということしか頭に浮かばなかった。
 解雇そのものの正当性になど
 考えが及ばなかった。
 後に、自分の解雇そのものが不当であったことを
 知ったときはショックだった。
 解雇を予告されてから、
 ユニオンに相談して、
 団体交渉の申し入れをするまでに
 20日もかかってしまった。
 とんでもない遠回りをしてしまった。
 余裕、特に時間的余裕の大切さを
 痛感させられた。
 『3日以内退寮、補償はなし』、
 それを当たり前だと受け入れてしまった自分が
 いま考えれば恐ろしい」などの
生々しい体験談が相次いだ。

■光精工外国人「期間工」からも発言
トヨタ自動車下請の光精工
外国人「期間工」のリーダー・大成アレサンドロさんも
発言に立った。
光精工は過去長年にわたって偽装請負を続けてきたが、
労働局の指導により大成さんら「請負工」を直接雇用。
ところが、そのわずか6ヶ月後に
再び派遣労働者に戻そうとした。
大成さんらは個人加盟制労働組合ユニオンみえに結集し、
「グルーポ光」を結成。
3度にわたるストライキの先頭に立って闘い、
直接雇用の維持を勝ち取った。
その矢先の「期間工切り」である。
「光精工はいままで嘘ばかりついてきた。
 けれど私たちは絶対に負けない。
 必ず勝ちます!」と大成さんは
525人参加者の前で宣言した。

■筆者は「組合の闘い方」を報告
筆者も「組合の闘い方」として
発言の機会を得た。
「労働相談を受けていると、
 はっきり言ってひどい話が多い。
 いきなり『明日から来なくていい』と言われたり、
 『3日以内に寮を出ていけ』と言われたというような話は
 決して特殊事例ではない。
 企業のやり方がおかしいのは明らか。
 法律にも反している。
 でも、そんな法律云々以前の話として、
 『今日寝るところがない』、
 『お金がもう50円しかない』といわれたら、
 平日なら『中村区役所に
 藤井さんという人がいますから……』と、
 こんな不細工なことしか言えない。
 でも、
 労働者のクビを切ったのは国でも県でも市でもなく、
 中村区役所でもない。
 いままで非正規雇用労働者を
 安く使ってしこたまもうけてきた企業に
 きっちりと責任を取らせなければならない。
 労働組合は働く者の団結の力で
 経営者の横暴を規制し、
 労働者の要求を実現する組織だ。
 究極的には法律さえも関係ない。
 働く人の団結があれば、
 労働組合は何でもできる。
 トヨタ労組を見ればいい。
 今年も賃上げを要求する。
 赤字経営の中、
 賃上げをしなければならない『法的根拠』なんか
 どこにもない。
 給料なんか最低賃金さえ払っていれば
 『合法』である。
 それでも労働組合は『賃上げしろ!』と言っていい。
 嫌ならストライキだぞ! と
 経営者と堂々と渡り合っていい。
 派遣社員も、非正規社員も同じだ。
 労働組合に入れば、
 堂々と『クビ切るな!』『責任を取れ』と言える。
 要は道理が通っていれば、
 大義があるなら労働組合は闘える。
 私自身も2年前、
 派遣切りにあった。
 期間満了の雇い止めだった。
 派遣先が180人人員削減するからと、
 更新が1回もないままにクビにされた。
 法律だけでいうならば、
 こんなのは到底勝てない。
 でも、本当にこれでいいのか。
 いままで6ヶ月間まじめに働いてきた労働者が
 何の補償もなく切り捨てられていいのか。
 労働組合は立ち上がって闘った。
 法律なんか関係ない。
 おかしいもんはおかしい。
 そして私は勝った。
 派遣会社は一定の、
 いや『一定以上』の補償を私にすることになった。
 アパートの敷金・礼金も確保して、
 職業訓練も受けることができた。
 労働組合・ユニオンは
 職場の理不尽を許さない。
 全ての職場で労働組合に結集して、
 クビ切り攻撃から身を守ろう!」
筆者は参加者に呼びかけた。

■中村区役所支援者「派遣寮借り上げを」
その後、中村区役所で
押し寄せる住居喪失者のために奮闘している
名古屋生活保障支援実行委員会の藤井克彦さんが
報告。
「中村区役所では現在のところ、
 私たちの活動もあっておおむね生活保護申請などが
 受理されているが、
 他の自治体などでは不当な対応がまかり通っている。
 中村区役所の職員も疲労が極限まで達しており、
 現場では言い合いをしながらも、
 『お互い大変ですなぁ』というような
 奇妙な連帯感のようなものまで芽生えている。
 全ての自治体事務所で不当な対応を
 やめさせなければならない。
 家がないひとが急増している一方で、
 三河地域の派遣会社が借り上げていたアパートなどは
 ガラガラに空いている。
 住居喪失者を収容する施設がないというのなら、
 こういったアパートを借り上げて利用するしか
 方法はない」と訴えた。

■湯浅誠さん「貧困スパイラルに歯止めを」
休憩をはさんで、
年越し派遣村村長を務めた湯浅誠さんが
「年越し派遣村から見た日本社会」と題して
講演した。
湯浅さんは、
日本では「失業」と「生活保護」との間にある
「失業保険」や「緊急小口貸付」といった
数少ないセーフティネットが適正に機能していない結果、
たちまち「生活保護しか方法がない」という状態に
追い込まれると指摘した。
「派遣という制度のもとで、
 労働者はモノのように切り捨てられると
 よく言われる。
 しかし、ここで忘れられがちなのだが、
 労働者は人間である以上、
 『それでも生きていく』ということだ。
 切り捨てられ、セーフティネットもなければ
 もはや選択の余地はない。
 彼らは命をつなぐために
 自らの労働条件を極限まで切り下げ、
 雇用保険も社会保険もない、
 寮費を引かれればほとんど手元に残らないような仕事に
 就くことを余儀なくされていく。
 次の給料日まで資金が続かないため、
 日払いの仕事しか選べない。
 いきおい、『どんな仕事でもいいから』と
 いうことになる。
 彼らは自分の生活を守るため、
 命をつなぐためにこういった行動を取っているだけなのだが、
 全体を見ればこういう行動が労働市場を破壊する。
 『どんな労働条件でも働く人』が大量にいれば、
 『嫌なら変わりはいくらでもいる』ということになり、
 いま働いている人の労働条件も
 ガンガン切り下げられていく。
 『No!』と言えない労働者がどんどん作られていく。
 日雇い派遣といった制度は、
 労働市場が破壊された結果でもあるが、
 それがまた労働市場破壊の原因となっている。
 この貧困スパイラルに
 どこかで歯止めをかけなければならない」と
湯浅さんはいった。
そして、年越し派遣村について、
「年越し派遣村は単なる救済運動ではない。
 どこまでも自らの労働条件を
 切り下げていかなければならない労働者に、
 『貧困すべりだい』からはい上がる階段を付け、
 『No!と言える労働者』を作り出して
 健全な労働市場再び回復するための運動だ」
とした上で、
「当面の暮らしを立てる見込みがあれば、
 雇用保険も社会保険もない日払いの仕事に
 就かなくてもいい。
 出てきた仕事を
 『本当にこれで暮らしていけるのか』と
 吟味することが出来るようになる。
 そうしなければ、
 悪質な雇用が消えることはない。
 労働市場が破壊されて、
 みんながみんなの労働条件を切り下げ合って、
 喜ぶ労働者は一人もいない」と訴えた。

■地域で、全国で、「派遣村」に続け!
湯浅さんの講演の後、
東京・日比谷公園に続き「派遣村」を計画する
全国の取り組みが報告された。
大阪から、仙台から、
そして地元愛知・豊田市からも報告があった。
愛知県においては豊田を中心とした三河地域で
主に派遣切りが行なわれていることから、
三河地域での運動の重要性が強調された。

集会は最後に、
「製造業大企業等による解雇・雇い止めに抗議し、
 政治・行政に対して法的責任、政治的責任を果たすことを求める決議」
を採択。
派遣先企業も雇用責任を果たすべきことや
労働者派遣法の抜本的改正、
緊急宿泊施設のある自治体に対応を押し付けないことなどを
訴えた。

集会参加者はその後、
「派遣社員を寮から追い出すな!」
「行政は臨時宿泊所を用意しろ!」
「外国人だって生きたいぞ!」
「労働者派遣法は抜本改正しろ!」などと
シュプレヒコールを行ないながら、
テレピアホールから2.8キロ離れた
名古屋駅前トヨタ・ミッドランドスクエアにデモ行進した。
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by imadegawatuusin | 2009-02-22 23:34 | 労働運動

――「みんなの願いを立法へ」 坂さん出馬会見――

■社民党東海唯一の比例単独立候補者
社会民主党愛知県連合は19日、
次期衆議院選挙の比例東海の単独候補者として
名古屋ふれあいユニオン元運営委員長の坂喜代子さんを
擁立すると発表した。
坂さんは愛知県名古屋市の県政記者クラブで記者会見を行ない、
「非正規労働者の代表として選挙に挑戦し、
 現場の声を法律に反映させたい」と意気込みを語った
中日新聞2月20日)。

社会民主党は、
すでに愛知1区での出馬を表明している
平山良平候補を比例区東海ブロックの1位候補としているが、
坂さんは、比例区単独の立候補であり、
比例区での名簿順位は平山さんに次いで2位。
ただし平山さんは重複立候補者であるため、
現行の公職選挙法では、
選挙区の方で全体の10パーセントの得票を得ないと
比例区での復活当選の権利を喪失することになっている。

坂喜代子さんは同日、
自らのホームページを立ちあげたことも明らかにした。


坂喜代子
http://ban.toyoake.org/


【参考記事】
社民党:比例東海に坂喜代子さん擁立
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by imadegawatuusin | 2009-02-20 21:46 | 政治

――「住居喪失でも生活保護の申請可能」――

■「住み込み派遣」での住宅喪失が続出!
現在名古屋地域では、
期間従業員・派遣・構内請負等の
雇用形態で働く非正規雇用労働者に対して
猛烈な「派遣切り」・「非正規切り」の嵐が
吹き荒れている。
製造業に多く見られる
仕事と寮がセットになった
「住み込み派遣」の労働者たちは、
クビ切りと同時に住まいも失い、
路上にたたき出されようとしている。

厚生労働省は
雇用促進住宅の活用を発表したが、
従前所得要件があり
全ての住居喪失者が入居できるわけではなく、
入居にあたって
2ヶ月分の家賃を前納しなければならない上に、
即日・即時入所できる体制にも
なっていない。
また、
申込みをしてもすでにほとんど空きがなく、
絶対数の不足は明らかである。

さらに、
これまで低賃金で劣悪な労働条件の下で就労し、
名古屋地域経済の下支えをしていた
外国人労働者のほとんどが、
こうした不安定な雇用形態で働くことを
余儀なくされてきたことも見逃すことはできない。

外国人労働者はいったん仕事と住居を失うと、
言葉が弱い・顔が違う・保証人がいない等の理由で、
誰かが力を貸さない限り
住居を見つけることは困難である。

外国人コミュニティでは
すでに「デカセギ」の時代は終わり、
子供が日本で生まれ、
日本の学校に通い、
母国語の読み書きもできないなど、
もはや母国に帰ることもままならない、
生活基盤をこの国に置いている人たちがたくさんいる。

愛知県は昨年12月25日、
県営住宅を70戸用意したが、
外国人向けメディアに情報を流さなかった。
案内文も日本語表記のみなのであるが、
問い合わせると、
「外国人にも平等に提供している」と答えるのである。
年末の解雇者は、
愛知県下では
日本人と外国人とがほぼ同数であったと言われているが、
この時点での応募者の多くは
結局日本人だった。
これがどうして「平等」なのか。

以上のような現状を踏まえ、
愛知県の個人加盟制労働組合・
名古屋ふれあいユニオンは、
非正規等労働者の住居喪失問題などに関する申し入れを
1月21日、名古屋市に行ない、
2月4日、
松原武久市長名でその回答を得た。
要請内容と名古屋市によるその回答とは
以下の通りである。


1.旧船見寮の再開放や
公園等へのシェルターの設置、
非正規労働者等の退去などによって空いている
民間アパート・社員寮の借り上げなどによって、
仕事と住居を失った、
または失う見込みの非正規等の労働者のために、
即日・即時利用できる緊急一時宿泊施設を、
大幅に増設してください。


《名古屋市》
住居と仕事を求めて区役所に相談にみえる方が
急増していますが、
本市では自立支援センターや緊急宿泊援護事業など
既存のホームレス施策を活用して
対応を図っています。
そうした中で、
緊急措置として、
1月5日(月)にはカプセルホテルを借り上げて
対応を行うとともに、
6日(火)からは民間の元社員寮を緊急に借り上げて、
住居のない方の宿泊場所の確保をしてきました。
こうしたことへの対応は、
一自治体では対応可能な限界を超えており、
本来、
国の責任において打開が図られるべき
性格のものと考え、
1月上旬に国及び県に対して
緊急要望を行ったところです。
本市としてこれからも
既存の施策を最大限活用することで
できる限りの対応をしていきますので
ご理解いただきたいと存じます。


2.上記施策の実施までの間、
自治体窓口に来た所持金の少ない住居喪失者に対し
収容施設が用意できない場合は、
緊急の措置として
近隣の低額宿泊所への宿泊代と
最低限の食事代等を補助する施策
(愛知県の「簡易宿泊施設提供事業」のような施策)を
実施してください。


《名古屋市》
愛知県の
「簡易宿泊施設提供事業」は、
県内の町村の都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を
故なく起居の場として、日常生活を営んでいる
生活困窮者等に対し、
一時的な宿泊場所の提供等を行う事業であり、
本市の緊急宿泊援護事業と類似した事業です。
従いまして、引き続き、
本市では自立支援センターや緊急宿泊援護事業など
既存のホームレス施策を活用して
対応を図っていきたいと考えています。


3.居宅生活が可能と認められる住居喪失者で
要件を満たす者については、
すでに住居を失っている場合でも、
現在いる場所(公園など)を住所欄に記入することで
生活保護の申請を受け付け、
生活保護の実施要領
(厚生労働省社会・援護局保護課長通知第7の30-6)にある
「敷金支給」を実施して、
できるだけ速やかに居宅保護を行なうようにしてください。


《名古屋市》
生活保護申請者に対しては、
生活保護法に基づき、
資産調査、能力活用、扶養義務調査、
他法他施策の活用を踏まえた上で、
必要な方に対して生活保護の適用を行っています。
住居を失っている方が生活にお困りの場合、
その現在地を所管する福祉事務所で
生活保護の申請ができます。
なお、
保護開始時において安定した住居のない要保護者が
住宅の確保に際し、
敷金等を必要とする場合、
福祉事務所が居宅生活ができると認めた方については、
敷金等の支給を行っています。


4.市内に事業所を置く派遣元事業主に対して、
労働契約法の遵守と安定的な雇用の確保を要請し、
国の支援制度
(「雇用調整助成金」や「離職者住居支援給付金」)の
説明を行なって、
雇用の継続が困難になったときにおいても
労働者の住居喪失が起こらないようにするよう、
強く指導してください。


《名古屋市》
労働法令の遵守や指導などは、
監督指導権を持つ国が
基本的に実施するものと考えます。
愛知労働局では、
愛知県との連名で
愛知県内の派遣元事業主(約6600事業所)に対し、
雇用の維持・確保要請をしております。
本市においても、
「労働情報なごや」に
雇用の維持・安定の依頼を掲載するとともに
雇用調整助成金等の紹介をしております。
また国の各種支援制度について、
ホームページなどで紹介しております。


5.以上の施策は
1年以上の適正な在留資格を持つ
全ての外国人労働者に対しても、
国籍により差別することなく
平等に実施してください。
また、
こうした非正規等労働者の
住居喪失問題などに関する施策の情報を、
市政記者クラブ加盟のメディアだけでなく、
インターナショナルプレスジャパン〔注1〕
(ポルトガル語・スペイン語・タガログ語新聞を発行、
 東京都大田区山王2-5-13大森北口ビル5F、
 TEL : 03-3774-4400、FAX : 03-3774-4091)など
外国人向けメディアにも
積極的に各国語に訳して発信し、
民族・国籍による情報格差を埋めていただけるよう、
お願い申し上げます。

〔注1〕インターナショナルプレスジャパンは現在、
東京都港区南麻布2-1-9に移転した。
電話番号は03-5420-4581、
FAX番号は03-5420-4543である。


《名古屋市》
名古屋国際センターを通じて、
通常業務として、
情報提供・相談業務を行っているところです。
昨年の10月以降の
労働・雇用関係の相談件数の増加を受けまして、
12月21日(日)には、
「外国人緊急無料相談会」を実施致しました。
また、
2月7日(土)にも無料生活相談会を実施致します。
こうした相談会のちらしをはじめとする
外国人住民への重要な案内は、
各区役所、国際関係団体や外国人コミュニティを通じて
配布する一方、
市内の領事館や海外メディアを通じた
情報提供にも努めているところです。
また、
2月3日に、
名古屋市と愛知・三重・岐阜・静岡・長野・群馬・滋賀の各県で
構成する多文化共生推進協議会より、
今回の「派遣や請負の形態で就労する
外国人労働者に対する極めて深刻な影響」への
迅速かつ的確な対応が急務であるとして、
国(内閣府・総務省・文部科学省・厚生労働省)に対し
「多文化共生社会の推進に関する緊急要望」行動を実施し、
外国人メディアとの連携を図り、
外国人にも的確に情報が届くよう要望を行ったところです。


6.多言語での情報発信・相談窓口の充実のため、
さしあたってポルトガル語・スペイン語通訳を増員し、
現在「派遣切り」・「非正規切り」等により失職している
南米系労働者を積極的に採用することで、
労働者のための雇用創出を
名古屋市自らから率先して行なってください。


《名古屋市》
本市では、
雇用情勢の急激な悪化に伴い、
離職を余儀なくされた方を対象に、
緊急雇用対策として
臨時的任用職員150人を募集しています。
現在、
6人の外国人の方の採用が決まっています。
「JANJAN」2月11日号
 「住居喪失問題で名古屋市長がユニオンに回答」から転載)


次は2月22日「愛知派遣切り抗議大集会」(午後1時~)
テレピアホールで集会後、ミッドランドスクエアへデモ!
(地下鉄栄駅4番出口徒歩7分)



労働組合名古屋ふれあいユニオン
雇用形態や国籍に関わりなく、
愛知県下で働くすべての労働者が一人から加盟できる
地域労働組合(コミュニティユニオン)。
コミュニティユニオン全国ネットワーク
コミュニティユニオン東海ネットワークにも参加。
今年3月に開かれた第10回定期大会では、
連合産別・全国ユニオンへの加盟について討議するとする活動方針を採択。
日ごろから組合員の学習会や交流会・相談会などを
積極的に企画しながら活動している。
現在、組合員数約200名。
組合員は組合費月額1500円。
賛助会員(サポーター)は年会費5000円。
住所:〒460‐0024
    愛知県名古屋市中区正木4-8-8 メゾン金山711号室
    (JR・地下鉄・名鉄金山駅下車 名古屋ボストン美術館の向かい)
電話番号:052‐679‐3079(午前10時~午後6時)月~金
ファックス:052‐679‐3080
電子メール:fureai@abox.so-net.ne.jp
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by imadegawatuusin | 2009-02-11 22:13 | 労働運動

「マリオ」と「マリア」

「オ」で終わたら男、
「ア」で終わたら女ね。
ボク、「アントニオ」、男ね。
「アントニア」なら、女ね。
「マリオ」、男ね。
「マリア」、女ね。
(日系ブラジル人・アントニオさんの言葉)


ブラジル人と話していると、
時々ハッとさせられるような発見を
することがある。
「マリオ」と「マリア」が同系列の名前だなんて、
これを聞くまで全く考えたこともなかった。
(「アントニオ」と「アントニア」なら
 すぐに気がつくのに……。
 某テレビゲームの影響か)。

日本語の名前でも、
動詞を名前にする場合、
歩(あゆむ)なら男、
歩(あゆみ)なら女。
光(ひかる)なら男、
光(ひかり)なら女、
薫(かおる)なら男、
薫(かおり)なら女、と、
一定の傾向性はあるように思う。

終止形なら男で、
連用形なら女
(もしかすると「動詞なら男、
 それが名詞化すると女」かもしれない)。
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by imadegawatuusin | 2009-02-08 15:42 | その他

←「その1に戻る」

――皆が共有する感覚を理解できぬ絶望――

■「空腹という感覚がわからない」
太宰治の代表作・『人間失格』において、
主人公・大庭葉蔵(おおばようぞう)は、
「自分は、空腹という事を
 知りませんでした」と告白している。
「それは、
 自分が衣食住に
 困らない家に育ったという意味ではなく、
 ……自分には『空腹』という感覚は
 どんなものだか、
 さっぱりわからなかったのです」というのである
(太宰治『人間失格』新潮文庫10ページ)。

この記述は、
これまで多くの読者を困惑させてきた。
本稿「その1」で論じたように、
太宰治の『人間失格』は鏡であり、
多くの読者が主人公に
自分の姿を見出す仕掛けになっている。
『人間失格』を読んで、
「この主人公は自分だ!」と言い出す読者が
あとを絶たない。

しかし、
『人間失格』に自分を見出す読者たちにとって、
「自分は、空腹という事を
 知りませんでした」というのは、
最大の「つまずき所」であるようだ。
古くは太宰治の実の娘である太田治子が
この記述に違和感を表明している。
また最近では、
人気ライトノベル・『“文学少女”と死にたがりの道化』で、
「文学少女」こと天野遠子が
「“人間失格”って、
 ひとつだけ、
 ど~しても理解できないことが
 あるのよねぇ」
「“空腹という感覚がどんなものだか
  さっぱりわからないのです”ってとこ。
 そこだけは、
 う~~~~んと頑張って
 一生懸命想像しても、
 これっぽっちもわからないのよね……」
(野村美月『“文学少女”と死にたがりの道化』106~107ページ)
と言っている。

「空腹」と言う感覚がわからない読者は
まずいない。
読者は『人間失格』を読むと無意識のうちに
主人公・大庭葉蔵に自分をなぞらえようとするのだが、
そうなるとやはり、
「『空腹』という感覚は
 どんなものだか、
 さっぱりわからな」いという部分が
共感の「邪魔」になってくるのである。

太田治子は、
この
「『空腹』という感覚は
 どんなものだか、
 さっぱりわからな」いという部分について、
「読んでいて、
 だんだんと腹が立ってきました」とまで言っている
(太田治子「鑑賞――父親というもの」太宰治『人間失格』集英社文庫191ページ)。

太田は、
「大庭葉蔵、それがすなわち作者(筆者注:=太宰治)」
と規定した上で、
「太宰は、
 ……本当にそんなに
 食べることに関心がなかったのだろうか、
 どうしても信じられない」、
「今までに空腹をおぼえたことがないという言葉も、
 いとも大げさな強がりのように思われてくる」と言うのである
(前掲書191~192ページ)。

はっきり言おう。
この読みは作品の主題そのものを破壊する、
誤ったものである。
「空腹」という、
みんなが共有する感覚を
自分ひとりだけが理解できないという絶望、
これこそは、
主人公の
「自分には、
 人間の営みというものが
 未だに何もわかっていない、
 ……自分の幸福の観念と、
 世のすべての人たちの幸福の観念とが、
 まるで食いちがっているような不安」の象徴なのであり
(太宰治『人間失格』新潮文庫12ページ)、
それを、
「いとも大げさな強がり」としか理解できない読解は
決定的に貧しいと思う。

具体的に反論していこう。
太田治子は、
主人公の
「自分には『空腹』という感覚は
 どんなものだか、
 さっぱりわからなかった」という告白を
「いとも大げさな強がり」とみなす根拠として、
次の2つを挙げている。

1.主人公のモデルである父・太宰治が、
  「ウナギが大好物で、
   お酒を飲みながらいつもペロリと
   平らげていたということ」
  (傍証として、
   その太宰の娘である自分が
   「大食漢」であること)。
2.主人公・大庭葉蔵が、
  銀座裏の屋台の寿司屋の鮨のまずさに文句を言っており、
  「おいしいものが好きだった」こと
(太田治子「鑑賞――父親というもの」太宰治『人間失格』集英社文庫191~192ページ)。

しかし、これは両方とも筋違いな指摘である。

まず「1」についてだが、
『人間失格』の主人公・大庭葉蔵と
そのモデルである作者・太宰治とは、
まったくの同一人物ではない。
太田治子は『人間失格』を読んで、
「その男、大庭葉蔵、
 それがすなわち作者なのだと、
 読み始めてすぐに中学生の私はわかりました」
と書くけれども(前掲書188ページ)、
そんな単純な話ではないはずだ。
太田治子は太宰治を幼いころは
「太宰ちゃま」と呼び、
「童話の主人公のように……考え」ていたというが(前掲書189ページ)、
太宰治は間違いなくこの現実世界に生の痕跡を残した人間であり、
それに対して大庭葉蔵は、
その太宰治が自らの芸術世界を表現するために生み出した
キャラクターである。

現実の太宰治がいかに大食漢であったのか、
赤の他人である私には知るよしもない。
しかし、たとえそうであったとしても、
太宰治と大庭葉蔵とは別物である。
作品の中で大庭葉蔵は
「『空腹』という感覚は
 どんなものだか、
 さっぱりわからなかった」と書いてある以上、
よほどの根拠がない限り、
基本的には「そういうもの」として
作品を読むべきではないか。
先に述べたようにこの
「『空腹』という感覚は
 どんなものだか、
 さっぱりわからな」いという主人公の設定は、
「みんなが共有する感覚を
 自分ひとりだけが理解できない絶望」という、
本書のテーマと密接に関係しているからである。

ところが、
その「よほどの根拠」として太田が挙げるのは、
主人公が鮨のまずさにケチをつけているという、
その一点のみなのである。

まずいものをまずいと言ったということが、
主人公も空腹の感覚を覚えていた証拠だというのは、
正直言って理解しがたい。
主人公は「『空腹』という感覚」が
「わからなかった」と言っているのだ。
決して「うまい・まずい」の区別が付かなかったとは
言っていない。
実際、主人公・大庭葉蔵は、
例の
「自分には『空腹』という感覚は
 どんなものだか、
 さっぱりわからなかった」という告白に続けて、
「自分だって、それは勿論、大いにものを食べますが、
 しかし、
 空腹感から、ものを食べた記憶は、
 ほとんどありません。
 めずらしいと思われたものを食べます。
 豪華と思われたものを食べます」
と はっきりと述べている(太宰治『人間失格』新潮文庫10~11ページ)。

「めずらしいと思われたもの」や
「豪華と思われたものを食べ」ることは好きだったのだ。
だとすれば、
まずい鮨をまずいと言うのも当然であろう。

ちなみに、
先に太田治子と並んで挙げた
『“文学少女”と死にたがりの道化』の天野遠子は、
この部分がちょうど、
『人間失格』の大庭葉蔵と正反対に、
逆転したようなキャラクター造形がなされている。
彼女はいつも
「おなかすいたー」と駄々をこねる、
はらぺこ大食漢の少女である。
だが、その一方で、
「食べ物の味がわからない」という
味覚障害者としても描かれている。
彼女は何を食べても「無機物のようにしか」感じない。
空腹を覚えるということと、
味がわかるということは
まったく別の概念なのである。

■「小説を読むと心が豊かになる」は本当か?
問題は、
なぜ作品にはっきりと書かれていることまでを
曲解し、
「いとも大げさな強がり」などと結論付けてしまうようなことが
起こるのか、ということだ。
しかも、
太宰治の実の娘であり、
自らも作家である太田治子ともあろう人が
どうして……。

やはり、前回「その1」で論じたように、
多くの人は主人公に自分自身を見出し、
共感しながら読む中で、
主人公の「自分とは異なる部分」が見えなくなってしまう構造が
あるのではないか。

太田治子は中学生のとき、
『人間失格』「第一の手記」の中の、
「幼い時分、
 夏に、浴衣の下に赤いセーターを着て
 廊下を歩き、
 家中の者を笑わせたというエピソード」を読んで、
「三歳の終わりの頃、
 私も似たようなことをし」たと思い当たったという。
太田治子は、
「まさしくそれは、
 『人間失格』に繰り返し出てくる
 『お道化』だった」と振り返り、
「父と私は似ている――そうわかった」というのである
(太田治子「鑑賞――父親というもの」太宰治『人間失格』集英社文庫190ページ)。

『人間失格』の主人公と自分とを重ね合わせて共感し、
そのことで救いを得たものは、
主人公と自分の「似ていない部分」が見えなくなる。
「『空腹』という感覚は
 どんなものだか、
 さっぱりわからなかった」という、
「大食漢」である自分とは
どう考えても重ね合わせ得ない部分については、
「いとも大げさな強がり」と強引に結論付けて
目をそらしてしまうという構造が垣間見える。

「小説を読むと心が豊かになる」とか、
「多面的なものの見方ができる人間になる」、
「世界が広がる」などという人がいる。
だが、はっきり言って私はあまり信用しない。
人は、どんなに奥深い小説を読んでも、
ただそれだけでは、
自分が理解する範囲でしか理解しないし、
共感できる部分にしか共感しようとはしないものだ。
世に、
文学作品とはまた別に文芸評論が求められる理由は
ここにある。
文学作品を通じて世界を広げ、
多様な感性を理解するには、
自分がただ読むだけでは感動できなかったこの場面が
なぜ感動的なのか、
自分がただ読むだけでは理解できなかった
登場人物の行動をどう理解すればいいのか、
わかりやすく、理詰めで語る文芸評論が
どうしても必要とされるのである。


【参考記事】
太宰治『人間失格』について(その1)

太宰治「葉」について
太宰治「思い出」について
太宰治「魚服記」について
太宰治「列車」について
太宰治「地球図」について
太宰治「猿ヶ島」について

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by imadegawatuusin | 2009-02-07 22:28 | 文芸

ブーム再来『人間失格』の魅力とは? 太宰治生誕百年に思う

太宰治の代表作・『人間失格』が、
角川映画が中心となって映画化されると報道された。
『人間失格』は最近、
野村美月の人気ライトノベル
『“文学少女”と死にたがりの道化』
作品のモチーフとなったことや、
集英社が
『DEATH NOTE(デスノート)』で知られる
漫画家・小畑健さんを文庫の表紙イラストに
起用したことなどもあり、
若い世代の間で再び読者が増えているらしい。
今年は太宰治生誕百周年。
『人間失格』の魅力について考えてみた。

■『人間失格』は「鏡」である
太宰治の『人間失格』は鏡である。
人はそこに「自分自身」を見ることができる。
逆に言うと人は、
『人間失格』の中の「自分にないもの」が
以外に見えなかったりもする。

『人間失格』を読んで、
「この主人公は絶対に発達障害者だ」と
言い切った人間がいる。
確かに医学的に見れば、
主人公・大庭葉蔵(おおばようぞう)には
「アスペルガー障害」とか「広汎性発達障害」とか、
関係性に関する適当な診断名を付けることは
それほど難しいことではないように思える。

しかし、
私にとって興味深かったのは
そんなことではない。
「主人公は絶対に発達障害者だ」と言った
その当人が、
まさに発達障害で苦しんでいる
当事者だったということだ。
なんのことはない。
「主人公=発達障害者」説は、
新手の
「太宰は、僕だ。いや、ぼくが太宰だ!」という「語り」
(島内景二「評伝 太宰治」『文豪ナビ太宰治』118ページ・新潮文庫)
に過ぎなかったということなのだ。

『人間失格』を、
「幼少期の性的虐待とそのトラウマを表現した小説だ」
と語った女性がいた。
私にはそういう認識がほとんどなかったので、
「えっ?」と思って改めて読み返してみると、
なるほど、
「第一の手記」に次のような記述がある。

その頃(筆者注:=子供の頃)、
既に自分は、
女中や下男から、
哀しい事を教えられ、
犯されていました。
幼少の者に対して、
そのような事を行うのは、
人間の行い得る犯罪の中で
最も醜悪で下等で、残酷な犯罪だと、
自分はいまでは思っています。
しかし、
自分は、忍びました。(『人間失格』22ページ・新潮文庫)


言われてみれば、
確かに重大な記述であろう。
幼い少年が、
女からも男からも性的虐待を受けて
何の影響も受けないということはなかろう。
が、
少なくとも私は、
それまで『人間失格』のこの記述を
軽く読み流してしまっていた。

では、
「『人間失格』は
 幼少期の性的虐待とそのトラウマを表現した小説だ」
と教えてくれた女性はどんな女性であったか。
実は、
職場での深刻なセクシャルハラスメントの
被害者だった
(幼少期に何があったかは知らないが)。
結局、
『人間失格』を語るということは、
自分自身を語ることに他ならないのではないか。

■そこに「あなた」が映し出される
主人公・大庭葉蔵と重ね合わせて見られる
太宰治の人生についても、
非合法共産主義運動からの「脱落」を
決定的な転機と見るか否かで
大論争があったという。
運動への「裏切り」の後ろめたさが
後の太宰を決定的に規定したという人もいた。
一方で、
太宰は時代の空気に流されて
たまたま共産主義運動に関わっただけで、
そのこと自体に大した意味はないという人もいた。

だが結局この論争も、
団塊世代の人たちが
自分の学生運動経験を
人生の中でどう位置づけているかということを、
太宰の名を借りて
表明し合っていたに過ぎなかったのではないだろうか。
『人間失格』=太宰治は鏡であり、
人はそこに、
各人各様の「自分自身」を見出すが、
「自分にないもの」は
いくら読んでもなかなか見えてこないのだ。

文芸評論家の奥野健男は、
「太宰治の文学は、
 どんな小説でも……
 潜在的二人称の文体で書かれている」と
評している(奥野健男「解説」『人間失格』157ページ・新潮文庫)。

小説の文体は大きく分けて、
主人公の主観から
「私は~した」と書く一人称文体と、
作者が「神の視点」から
「○○は~した」と書く三人称文体に分けられるが、
太宰の小説はそのいずれを取っていたとしても、
「潜在的二人称の文体」、
つまり作品は「あなた=読者」のことを
書いたものとなっているというのである。

「私。
 まるで『人間失格』の主人公に
 そっくりじゃないか」
(田口ランディ「私が読んだ太宰治」『文豪ナビ太宰治』109ページ・新潮文庫)
などと言い出す人間が多いわけである。

『エイジ』などの小説で知られる
作家の重松清は、
太宰治の作品には『ぼくたち』がいると書いている。
事態を的確に表現していると思うので、
少し長いが以下に引用してみたい。

「ぼくたち」の中に
「きみ」がぼんやりと立っていると、
いきなり向こうからダザイくんに
「おーい!」と声をかけられ、
振り向くと目が合って、
こっちこっち、と手招きされる。
まわりに「ぼくたち」はたくさんいるんだけど、
どうもダザイくんは、
「きみ」だけを見ているようだ。
「きみ」を指名して、
「早く来いよ!」と手招いているようなのだ。

オレのこと――?……

オレなのかな、
マジ、オレでいいのかな、と
最初は不安に駆られていても、
やはりダザイくんの視線は
まっすぐにこっちを向いているし、
確かにそう言われてみれば、
オレだよな、
やっぱここはオレだよな……
という気もしてきて、
ダザイくんに向かって
ふらふらと歩きだしてみると、
なんのことはない、
「ぼくたち」の他の連中もみんな、
自分と同じように
ふらふらと、引き寄せられるようにして、
ダザイくんに向かって
歩いているのである。
(重松清「ダザイくんの手招き」『文豪ナビ太宰治』72~73ページ・新潮文庫)


よって、
「『太宰治は私だ!』と告白する若者は、
 無数にいる。
 そういう彼/彼女らは個性的で、
 まさに千差万別。
 でも、
 みんなが口々に
 『太宰は、ぼくだ。いや、ぼくが太宰だ!』と
 叫んでいる。
 一人一人の読者に応じて、
 太宰が違う顔つきを見せているからだ」
(島内景二「評伝 太宰治」『文豪ナビ太宰治』117~118ページ・新潮文庫)。

どんな文学作品も
究極的にはそうなのかもしれないが、
太宰治、
とりわけ『人間失格』は
その傾向が強いように思われる。
読者は、
普通に作品を読むだけでは、
自分の共感できるところにしか共感しないし、
自分の理解できる理由にしか納得しようとはしない。
 
歌人の枡野浩一さんの短歌に、

●本当のことを話せと責められて君の都合で決まる本当


というものがあるが
(枡野浩一『ハッピーロンリーウォーリーソング』28ページ・角川文庫)、
本当にその通りだと思う。

主人公が
「人間、失格」」(太宰治『人間失格』147ページ・新潮文庫)に至った
根本的な「原因」を、
ある人は生まれもっての発達障害に、
ある人は幼少期の性的虐待のトラウマに、
ある人は非合法共産主義運動からの脱落に、
ある人は女を殺して自分だけ生き残った後ろめたさに……と
各人各様に見る。

作品の中で主人公・大庭葉蔵がわかりやすく、
「私がこうなった根本的な原因は……」と
語ってくれるわけではない以上、
答えは最終的に
読者一人一人の心の中にしかないと言うべきであろう。
「JanJan」2月6日号
 酒井徹「ブーム再来『人間失格』の魅力とは? 太宰治生誕百年に思う」
から転載)

太宰治『人間失格』について(その2)へ進む→


《参考サイト》
太宰治『人間失格』について(その2)

太宰治「葉」について
太宰治「思い出」について
太宰治「魚服記」について
太宰治「列車」について
太宰治「地球図」について
太宰治「猿ヶ島」について

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by imadegawatuusin | 2009-02-06 17:34 | 文芸

今、トヨタの足元で

――労働組合に結集し、闘う仲間の争議一覧――

●愛知製鋼(偽装「請負」・派遣先)/三築(偽装「請負」会社)
トヨタグループの鋼材メーカー・愛知製鋼
長年、偽装請負会社・三築(社長:大久保文和)から
違法な多重派遣を受けてきた。
しかし、
協力会社従業員の内部告発をきっかけに、
三築社長・大久保氏の労災隠しや脱税などが
明らかに。
三築従業員や協力社員らは
名古屋ふれあいユニオンに結集し、
知多分会を結成。
直前には役員が
年間7000万円もの役員報酬を受け取り、
1億8000万円もの資産がありながら
突如会社を解散して従業員全員のクビを切った
三築を相手に解雇無効の裁判を、
職場の労災・安全衛生問題に関して
「派遣労組に団体交渉権はない」と言い切る
愛知製鋼とは労働委員会闘争を闘っている。

●豊田スチールセンター
豊田スチールセンターは、
トヨタグループの総合商社・豊田通商の子会社。
トヨタ自動車出身の専務が
他の役員のメールを勝手に覗こうとしているのを
止めた女性従業員・Tさんを、
専務が「誰に向かって言っている」などとパワハラ。
その事実を訴えると、
会社はTさんの従来の職場を突然解散し、
別の部署に配転。
新しい業務について質問をしたところ、
「やりたくないならやらなくていい」などと言って
その後 一切仕事を与えなくなった。
また、
正社員であるTさんを
突如「契約社員」であると言い始めて
「雇い止め」を図る
(後に正社員であったことを認める)。
パワハラの調査委員会には、
「中立・公正」な外部調査委員として、
名古屋ふれあいユニオンに敵対する
上記 愛知製鋼の最高実力者・
柴田雄次会長(当時)を選任。
「調査委員会」は
『Tさんは専務には従うしかない』・
『会社に応じてくれないならクビにするしかない』
などというTさんへの説教会と化す。
Tさんは裁判に向け準備中。

●ツカモト(「実習」先)/加茂技術クリエイト協同組合(受入団体)
稲沢市のツカモト(社長:塚本寿男)は
トヨタ自動車2次下請。
地域最低賃金の時給714円で働く
ベトナム人「実習生」から
日本人の10倍の「家賃」を取り立てていた。
田んぼの中にある
築34年の2Kのアパート1室に
4人のベトナム人を押し込め、
一人から4万2652円を徴収
(一部屋約17万円!)。
日本人の場合は家賃は
一部屋1万7千円だった。
最低賃金を払っているように見せかけながら、
法外な家賃を取り立てることで、
実際には最低賃金を払わなかったのだ。
就労には
「ケイ・インターナショナルの山田浩二」なる
ブローカーが介在している。

●イナテック
幡豆町のイナテック(社長:稲垣良次)は
トヨタ自動車の下請け会社。
日系ブラジル人労働者・高江州ヨウジさんを
偽装請負期間も含め、
違法派遣で9年間も働かせてきた。
有休などの権利を一切知らされずに
働いてきたが、
ユニオンと出会って労働者の権利を知り、
労働組合活動を始めたとたん、
「駐車場の使い方が悪い」などとして
クビにされる。
高江州さんは派遣法上の上限(3年)を
はるかに超えて派遣状態で働いており、
直接雇用を求めて裁判闘争中だ。


職場の理不尽を許さない、強く優しい地域労組の建設を!
愛知県下の未組織労働者は名古屋ふれあいユニオンに結集し、
全ての職場に人権労働運動の灯をともそう!



労働組合名古屋ふれあいユニオン
雇用形態や国籍に関わりなく、
愛知県下で働くすべての労働者が一人から加盟できる
地域労働組合(コミュニティユニオン)。
コミュニティユニオン全国ネットワーク
コミュニティユニオン東海ネットワークにも参加。
今年3月に開かれた第10回定期大会では、
連合産別・全国ユニオンへの加盟について討議するとする活動方針を採択。
日ごろから組合員の学習会や交流会・相談会などを
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現在、組合員数約200名。
組合員は組合費月額1500円。
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by imadegawatuusin | 2009-02-05 19:25 | 労働運動