「ほっ」と。キャンペーン

自然と人間の無差別

本書・『唯物論哲学入門』の著者・森信成氏は、
原始人の考え方の特徴として、
「自然と人間との間に
 はっきりした区別をおいていない」ということを
挙げている。
「原始人は
 自然と自分とはまったく同じものだと考えています」
というのである。
これは一体どういうことなのだろうか。

よく、
近代は「人間中心の時代」と言われる。
「自然を尊重しながら生きてきた前近代の人々と比べ、
 近代人は自己中心的になり、
 平気で自然を破壊するようになった」
などと言われる。

だが、
本当に前近代の人々は
自然を自然そのものとして尊重していたのだろうか。
実はそうではないのである。
前近代の人々は、
ある意味では近代人以上に
人間を中心としてしか
物事を捉えることができなかったし、
そうした意味では極めて自己中心的な人々であった。

たとえば、
川が氾濫して洪水が起きるのは、
川の神が怒っているからだと考えた。
言うまでもなく、
川は怒ることもなければ喜ぶこともない。
川は感情も意思も持たない
単なる自然にすぎないのである。
川が氾濫したのも
大雨が降ったとかそれなりの理由があって
ただ起こったにすぎない。
だが、
前近代の人々はそうは考えない。
「私たちにこんなひどいことをするのは、
 きっと怒っているからに違いない」と、
極めて人間的なものの見方を
川という自然物にまで勝手に押し付ける。
そして、
お供え物をしたり、
場合によっては生けにえをささげたりして
「ご機嫌をとる」と、
川は元に戻るだろうと勝手に判断するのである。

だから、
前近代の人々が、
たとえば川にごみを捨てなかったのは、
川を川としてその自然を尊重していたからではない。
そうではなく、
そんなことをすれば「川の神が怒る」からと、
いわば川を人間として捉えた結果なのである。
前近代の人々は
自然を自然そのものとしてありのままに把握することが
できなかった。
そのために全てに対して
自分の尺度(人間中心のものの見方)を
当てはめることしかできなかったのだ。
これが、
「自然と人間との間に
 はっきりした区別をおいていない」ということ、
「原始人は
 自然と自分とはまったく同じものだと考えています」
ということの意味である。

「したがって、
 霊魂によって人間が活発に動くということになると、
 今度は、
 この考え方を自然にそのまま移していきます。
 そして、
 いろいろな自然の現象というものは、
 自然にそなわっている霊魂の作用であると
 考えるわけです」。

「山の神には、
 ちゃんと夫婦がいて、
 子供もいて、
 そして恋愛もしています。
 ……川の神であれば、
 川の神もちゃんと夫婦生活をして、
 ちゃんと子供もあるわけです」
というのはまさに、
人間中心のものの見方や生活の仕方を、
山や川にまでそのまま押し付けた結果に
すぎないのである。


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『社会民主党宣言』を読む
新しい社会主義像を求めて
小牧治『マルクス』について
レーニン「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」を読む

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by imadegawatuusin | 2011-10-22 19:49 | 弁証法的唯物論

S社と名古屋ふれあいユニオンとの間で
団体交渉が行われていた問題は、
10月14日に円満に解決いたしました。


【参考記事】
フタバ産業下請・S社の団交拒否に抗議!
フタバ産業下請・S社が団交応諾
S社と第1回団体交渉開催
S社から回答書


労働組合名古屋ふれあいユニオン
雇用形態や国籍に関わりなく、
愛知県下で働くすべての労働者が一人から加盟できる
地域労働組合(コミュニティユニオン)。
「コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク」加盟。
「コミュニティ・ユニオン東海ネットワーク」事務局団体。
日ごろから組合員の学習会や交流会などを
積極的に企画しながら活動している。
現在、組合員数約200名。
組合員は組合費月額1500円。
賛助会員(サポーター)は年会費5000円。
住所:〒460‐0024
 愛知県名古屋市中区正木4-8-8 メゾン金山303号室
    (JR・地下鉄・名鉄金山駅下車 名古屋ボストン美術館の向かい)
電話番号:052‐679‐3079(午前10時~午後6時)月~金
ファックス:052‐679‐3080
電子メール:fureai@abox.so-net.ne.jp
郵便振替 00800‐8‐126554
ホームページ
http://homepage3.nifty.com/fureai-union/

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by imadegawatuusin | 2011-10-20 23:37 | 労働運動

――「社会変革は労働者階級の歴史的使命」――
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■高木団長「行動に立ち上がれば社会変えられる」

東海労働弁護団は
10月15日に名古屋市中区の栄ガスビルで
第52回総会を開催した。

総会の冒頭、
高木輝雄団長があいさつに立ち、
「今日の我が国の雇用・労使関係の実情を見るとき、
 使用者の得手勝手な、
 ご都合主義的なやり方には腹が立つ。
 彼らは労働者を利益を出す道具としか見ておらず、
 都合が悪くなれば切り捨てる。
 派遣法を一貫して拡張してきた
 国の姿勢も同罪だ」と指摘した。

その上で高木団長は、
「このような社会を変えて行くための原動力は
 労働者の団結の力だ。
 その課題は
 労働者階級に与えられた歴史的な使命だ」と強調し、
「その労働者と共に歩むのが労働弁護団の役割だ。
 9月19日には
 東京・明治公園で6万人が集まった
 脱原発集会があった。
 ウォール街の大抗議行動も世界的に注目されている。
 行動に立ち上がってこそ社会は変えられる。
 みなさんの奮闘を期待する」と
あいさつを締めくくった。

その後、
東海労働弁護団の樽井直樹事務局長が活動報告。
「2008年のリーマンショック以降の派遣切りが、
 最も猖獗を極めたのが
 愛知・岐阜・三重の東海三県だった。
 震災後も
 非正規雇用労働者へのしわ寄せは繰り返されている。
 この地域で労働問題に取り組む
 東海労働弁護団の役割は大きい」と語った。

■「格差は作られたものだった」

その後会場では、
「総会記念企画」として
朝日新聞元編集委員の竹信三恵子さんによる
「雇用劣化不況と震災」と題する講演があった。

竹信さんは、
「日本では、
 再分配後の格差是正ができていない。
 本来、
 年金や社会保険・雇用保険といったものは、
 弱者を支える所得再配分のための制度だが、
 非正規雇用労働者はこうした制度に
 そもそも入れてもらえないことが多い」と
問題を提起した。

「女性の社会進出が進んだと言っても、
 出産を機に6割の女性が退職している。
 しかもその8割近くが
 家事・育児と仕事の両立の困難さを理由に
 『自発的に』辞めていることが特徴的だ」
という竹信さんは、
こうした女性を
非正規・パート労働者として使うことで、
日本から
「税金の払える労働者」が少なくされていったこと、
以前は70パーセント台であった
所得税の富裕層へ最高税率が
現在は30パーセント台にまで
切り下げられていることを指摘し、
「格差は作られたものだった」と強調した。

その上で3月11日の東日本大震災以来、
日本では権利主張をしにくい風潮が蔓延する中、
使用者側は
便乗とも思えるさらなる規制緩和をもくろんでいると
警告。
例えば震災を受けて経団連は、
「専門職として立場が強い」ということで
特別に
一定の期間を過ぎても
派遣先が直接雇用の申込みをしなくてもよい
「専門26業種」の労働者に、
専門外の仕事をさせられるように
規制緩和しろと政府への要望書で要求しているという。
一体どこが震災に関係するのかといえば、
「震災の影響で典型的な専門業務がなくなった」
というのであるから酷い話だ。

そうした話の後 竹信さんは、
「ホワイトカラーエグゼンプション」の導入が
もくろまれた際、
労働側が「残業代ゼロ法」と名付けて
これを葬り去ったことを例に取り、
「言葉をとりかえす」ことの重要性を強調。
朝日新聞の元編集委員としての経験も元に、
「新聞は確かに収入の半分を広告費に依存しているが、
 そのもう半分は購読料に依存している。
 読者の声は実際に、
 新聞の記事に影響を与える力を持っている」と言い、
運動側のメディアへの働きかけの重要性も強調した。


【関連記事】
東海労働弁護団第48回総会報告
東海労働弁護団、第51回総会を開催

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by imadegawatuusin | 2011-10-19 20:20 | 労働運動

――海外での無権利許せば資本の海外流出止まらず――

■なぜ、国際連帯か

10月9日に
フィリピントヨタ労組のウェニー副委員長と、
フィリピントヨタ社の現役労働者で労組職場委員の
ロウエルさんが来日した。
2人は9日には、
名古屋駅前のトヨタ自動車国際拠点・
ミッドランドスクエア前で、
フィリピンにおけるトヨタの労働組合つぶしを
鋭く告発。
翌10日には愛知県豊田市にある
トヨタ自動車本社に申し入れを行ない、
組合員・237名の解雇撤回と団体交渉の開催とを
強く求めた。

フィリピントヨタ社では2000年に、
フィリピントヨタ労組が従業員選挙で
過半数の支持を獲得して
会社との団体交渉権を獲得した。
しかしフィリピントヨタ社側は団体交渉の開催を拒否し、
これまでに237名の組合員を解雇するなど
組合つぶしを行なっている。

私はミッドランドスクエア前と
トヨタ本社前行動に参加し、
日本の労働者・労働組合が、
海外の日系企業における労働組合運動に
連帯する重要性を強調した。

私たち日本の労働者が労働組合運動を行なうと、
企業側からはよく、
「そんなことを言うなら
 生産を海外にシフトする」という脅しがかけられる。
なぜ会社側は海外に移転するというのだろうか。
話は簡単だ。
海外の方が人件費が安く、
労働法制も甘いのでやりたい放題ができるからである。

日本では
たった一人でも労組に入れば
団体交渉が開けるというのに、
フィリピンでは従業員過半数の支持を集めても
企業は団交を開かない。
こんなデタラメがまかり通れば、
資本が海外に流出するのは当たり前である。

フィリピンでは
労働者が労働組合を結成すると解雇され、
甚だしくはフィリピン矢崎総業労組の委員長のように
暗殺されてしまうことさえある。
このようにして海外、
特にアジアの労働者たちの賃金水準は
低く押さえつけられているのである。

日本ではとうてい許されない違法・無法・低賃金が
大手を振ってまかり通るなら、
会社側にとってはこれほどおいしいことはない。
企業はなだれをうつように海外移転してしまうだろう。
日本の労働者は賃金が高い、
日本の労働者は権利主張することが法で守られていて
面倒くさいということになるだろう。
水は低きに流れるのである。

では、
そうさせないために日本の私たちは
何をすればいいのか。
労働者は今、
世界的市場で低賃金競争・無権利競争を強いられている。
だったら私たち労働者は、
国際的に団結し、
特にアジアにおける労働者の低賃金・無権利状態を
許さない闘いに連帯しなくてはならない。

海外の労働組合にがんばってもらい、
日本で許されない低賃金・労働者の無権利状態は
海外でも許されないという当たり前の状態を
実現しなくてはならない。

低賃金や労働者の無権利状態を求めて
海外に逃げだそうとしても、
そんな逃げ場はないのだと
企業側に思い知らせてやらなければならない。

それこそが、
私たちが安心して権利主張する環境と
自らの雇用を守る闘いに
実に直結しているのである。

フィリピントヨタ社の労働組合つぶしを許すな!
トヨタは237名の組合員解雇を撤回し、
フィリピントヨタ労組と団体交渉を行なえ!


【関連記事】
「オールトヨタは一つ」
フィリピントヨタ労組連帯行動
フィリピン労組支援者:名古屋モーターショーで宣伝
NFU:今年もフィリピントヨタ労組キャンペーンに参加
フィリピントヨタ労組を支援する愛知の会第5回総会
フィリピントヨタ労組エド=クベロ委員長と交流
フィリピントヨタ労組連帯、トヨタ本社前行動
フィリピントヨタ労組、今年も来日


市民団体フィリピントヨタ労組を支援する会
住所:〒237-0063 神奈川県横須賀市追浜東町3-63-901
TEL / FAX: 046-866-4930
電子メール:protest-toyota@list.jca.apc.org
ホームページ:http://www.green.dti.ne.jp/protest_toyota/
年会費
 個人: 一口 5000円
 団体: 原則として二口 10000円
(会費は、フィリピンに送金され、
 現地の裁判闘争費用、保釈金、
 組合事務所の経費、組合の行動費等に使われます)。
郵便振替口座: 00290-7-60036
加入者名: 「フィリピントヨタ労組を支援する会」

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by imadegawatuusin | 2011-10-13 21:04 | 労働運動

観念論の起源=アニミズム

本書・『唯物論哲学入門』では観念論の起源を、
「原始人の世界観を支配していたアニミズムに
 求めることができ」るとする。
これはおそらく そうなのであろう。
「アニミズム」というのは
「物活論」と訳されるそうだが、
ありとあらゆるものに魂が宿っていると考える
精霊崇拝のような考え方である。

ただし、
これ以降の著者・森信成氏の考えはかなりあやしい。
「原始人は、
 人間というものはかならず死ぬものだということを
 知らなかった」とか、
「眠って夢を見たり、
 気絶したりすることと、
 死ぬこととの区別がつか」なかったというのは、
あくまで「説明のための説明」として
聞き流しておいた方がいい。

たしかに、
まだ猿からほとんど分かれ出ていなかった段階の
猿人などの場合、
「死」という概念がうまくとらえられなかったり、
眠ったり気絶することと
死ぬこととの区別が
うまくつけられなかったということはありうる。
しかし、
そうした段階では
アニミズムすら満足に成立しないのではないか
(猿や犬や猫にはおそらくアニミズム文化はない)。

老衰で死ぬ前に
事故や病気で死んでしまうことが多かったので、
「事故や病気にあわなくても寿命というものがある」
という考えが乏しかったということは
あるかもしれない。
しかし、
「原始の生活」で
「死ぬということがそう起こ」らなかったとは
到底考えられないし
(むしろ死に直面することは
 現代よりも多かったのでは?)、
「だから、
 眠っていることや気絶することと、
 死ぬことの区別がついていません」などと言われても
論旨不明だ。

ただ、
「肉体と離れた霊魂」という概念の起源を、
人間の見る夢に求めた説明は注目に値するだろう。

「われわれが目覚めていて、動いている時は、
 霊魂はわれわれの体内にいる。
 しかし、
 眠っていて、じっとしている時は
 霊魂はあちこちと遊びに行くというように
 考えたのです。
 そこで、
 われわれが身体を元気に動かしたり、
 活発に活動したりするのは
 霊魂のせいであるというように考えていき、
 そこから霊魂に対する信仰が生じたわけです」〔注1〕。

今でも漫画などで、
登場人物が気絶したことを描写するときは、
目が白目をむいて、
口から もやもやっと煙のようなものが
出て行くように描かれる。
これはおそらく、
体から魂が抜け出したから
気絶してるんだという捉え方のなごりであろう。

興味深いことに、
著者である森氏は
こうしたアニミズム観念を
一概にバカげたものとして一笑に付したりは
していない。
「こういうことは
 原始人の場合には
 非常に真剣に考えられていたのであって、
 これらは霊魂と身体の関係を説明する
 一つの仮説だったのです」。

ちょっと見ただけだと非科学の塊のような
アニミズムであるが、
こうした考え方の発生には
それなりの歴史的必然性が
あったのだということである。
少なくとも、
「死」とか「霊魂と身体」といった概念を持たない
猿の場合、
そもそもアニミズムすら生まれえない。
「死」とか「霊魂と身体」といった概念を
持ってしまった人間が、
何とかそれを統一的・体系的な世界観の中に
合理的に位置づけようとしたときに、
それは生まれるべくして生まれた仮説だったのだ。

そうした意味ではアニミズムも、
原始人の
この段階におけるギリギリの「科学的」苦闘が
生み出したものだったと見ることができる。

〔注1〕岸本英夫編『世界の宗教』では
この点について、
次のように解説している。
「睡眠中に
 自分がどこかへ出かける夢を見たとすると,
 第2の自分が自由に身体をはなれて活動すると
 解釈した。
 また他人の死に際して,
 死体が変形していくのは,
 かれを生かしていたものが
 肉体を脱出したためと考えた。
 そこに霊魂観念の起源がある……。
 ……夢と死が,
 少なくとも
 霊魂観念を強化するものであることは,
 事実によって裏付けることができる」
(同書19ページ)。



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『社会民主党宣言』を読む
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by imadegawatuusin | 2011-10-13 07:24 | 弁証法的唯物論

――震災で東北での開催断念、熊本で開催――
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一人から入れる地域労働組合・
「コミュニティ・ユニオン」の全国交流集会が
10月1日と2日の2日間、
熊本県阿蘇市で開催された。
この集会は、
「コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク」が
毎年開催しているもので、
今年は全国80団体から320人が参加した。

今年の全国交流集会は本来、
山形県米沢市での開催が予定されていた。
しかし、
東日本大震災の影響で開催が困難となり、
急きょ熊本で開催されることとなった。

■実行委員長「災害に強い、連帯社会を」

1日目の全体会ではまず、
集会実行委員長を務めた
連合熊本ユニオンの上田淳執行委員長が
あいさつに立った。
上田実行委員長は、
「今回の震災ではサプライチェーンが寸断され、
 日本経済に大きな影響を与えた。
 ジャストインタイムなど、
 効率性だけを追及してきたシステムが
 問い直されている」と述べ、
「自然災害に強い、
 一人一人が大切にされる連帯社会をつくっていこう」
と訴えた。

■ユニオン全国代表「労働者が引くだけじゃイカン」

続いて、
コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク共同代表の
小野博文大分ふれあいユニオン副委員長もあいさつした。

「本来は米沢での開催の予定だったが、
 地震という天災も福島での人災もあり、
 東北での結集ができなかった。
 このような中で熊本のユニオンの人たちには、
 震災の発生から半年の準備期間しかないのに
 急きょ火中の栗を拾っていただいた。
 その心意気に連帯の拍手を送ろう」。
小野代表がこのように呼びかけると、
会場からは大きな拍手がわき起こった。

その上で小野代表は、
「ここで労働者が引くだけじゃイカン。
 震災を機に、
 労働行政の貧困さも明らかになった。
 東北の仲間は仙台で労働相談ホットラインを開設し、
 闘いの拠点をつくる粘り強い取り組みをやっている」
と述べた。
そして、
「遠路はるばる参加費を払い、
 交通費を払って集まったのだから、
 交流を深め、
 経験を交流し、
 もとを取って帰っていただきたい」と
参加者らに呼びかけた。

■連合「派遣法改正、何としてでも」

日本最大の労働組合中央組織・「連合」からも、
非正規労働センター総合労働局長の
山根木晴久氏のあいさつがあった。
山根木氏はまず、
「連合は昨日東京で、
 『ディーセントワーク世界行動デーinTOKYO』を
 開催した。
 これは、
 国際労働組合総連合の仲間たちが、
 人間らしい働き甲斐のある仕事を求めて
 世界一斉に行なったものだ」と
連合の取り組みを紹介した。

「非正規労働者はいまや約4割。
 年収200万円以下のワーキングプアが
 問題になっている。
 いつの間にこんな日本になってしまったのか。
 国連のILO(国際労働機関)は
 有名なフィラデルフィア宣言で、
 『労働は商品ではない』と言っている。
 しかし今、
 底辺への競争が世界中で起きており、
 企業の激しい生き残り競争の中で、
 労働は単なるコスト、
 人間は商品になってしまっている。
 最近では雇用関係すらなくなって、
 個人委託・業務請負という名の
 実質的な労働者が増えている。
 こうした流れを軌道修正するために、
 連合は組織を挙げて取り組んでいる」。
山根木局長はこのように述べた上で、
「今では、
 連合組合員の1割以上が非正規雇用の仲間たちだ。
 ワークルールが大切だ。
 労働者派遣法の改正は、
 一体いつになったら成立してもらえるのか。
 秋の臨時国会で何としてでも成立させていきたい」と、
労働者派遣法の改正実現に
全力を尽くす決意を表明した。 

そして山根木氏は、
「今回の震災では、
 連合は自衛隊に次ぐ、
 民間最大の救援隊を被災地に送った。
 一人一人の力はちっぽけだが、
 全国の仲間の力が結集すれば大きな力になることが
 示された」と述べ、
労働者の全国的な連帯の重要性を強調。
コミュニティ・ユニオンの全国交流集会の意義に
理解を示した。

■社民党「労働法制強化、格差是正に全力」

政党からは社会民主党の福島みずほ党首が
あいさつした。

「施政方針演説で野田総理は、
 分厚い中間層の重要性を強調したが、
 格差是正・貧困是正という言葉はなかった。
 非正規雇用が約4割、
 年収200万円以下のワーキングプア、
 これこそが最大の問題だ。
 労働者派遣法の改正を何としてでも
 成立させていきたい。
 国会の中で労働法制を強化し、
 格差是正を実現するため、
 社民党は渾身の力を込めてがんばっていく。
 一緒にがんばっていきましょう!」。
福島党首はこのように述べ、
格差是正に向けてユニオンとの共闘を訴えた。

■民主・工藤代議士「派遣法改正、働きかける」

続いて政権政党・民主党からも
工藤ひとみ衆議院議員のあいさつがあった。
工藤議員は、
「派遣法については、
 1年半以上たなざらしになっている。
 由々しきことだと思っている。
 政府に対しても、
 新しく厚生労働大臣となった小宮山さんに対しても、
 派遣法の改正を強く働きかけていきたい」と
決意を述べた。

■阿蘇市長「一人を大切にするユニオン、すばらしい」

地元・阿蘇市の佐藤義興市長からもあいさつがあった。
佐藤市長はまず、
「震災後の雇用問題や非正規、
 パートとか派遣とかの問題が
 クローズアップされている」と述べたあと、
「一番大切なのは人である。
 人があってこそ国がある。
 経済優先でものが論じられるのは残念だ」との認識を
示した。
「一人でも入ることができる。
 こんなすばらしい組合はない。
 一人一人を大切にする
 コミュニティ・ユニオンの集会が
 実りあるものになることを祈念している。
 2日間、
 真剣な討議を行なってほしい」。
佐藤市長はこのようにユニオンの意義を強調し、
集会を激励した。  

■岡本事務局長「一人の問題をみんなの課題に」

全国交流集会の開催にともなって、
コミュニティ・ユニオン全国ネットワークの
第23回全国総会も開催された。
総会では岡本哲文全国ネット事務局長が
活動報告と来年度の活動方針案の提起を行なった。

岡本事務局長は、
仙台市で「東日本大震災労働ホットライン」を
開催したことや、
昨年12月に厚労省交渉を行なったことなどを報告した。
その上で岡本事務局長は、
来年度の活動方針を提起した。
「とにかく、
 労働者派遣法の改正が焦眉の課題。
 さらに、
 有期雇用規制の法制化や、
 パート労働法の見直し、
 職場のいじめ・嫌がらせ予防のための
 ガイドラインの作成などの課題がある。
 全国ネットはついに、
 75団体2万人の組織となった。
 今後も、
 一人の問題をみんなの課題として取り組み、
 社会的労働運動を展開しよう」。
活動報告と活動方針は拍手で採択された。

人事では、
名古屋ふれあいユニオンの浅野文秀事務局長が
全国ネットの運営委員に再任された。

■講師「日本では原発の労災認定が難しい」
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続いて関西労働者安全センター事務局長の
西野方庸(まさのぶ)氏による、
「震災の労災補償――被爆問題のこれから」と題する
記念講演が始まった。

西野氏は、
原発被爆労働者の支援をきっかけに、
学生時代から労働安全衛生運動に取り組んできた。

西野氏は福島第一原発における被爆労働の問題について、
「放射能の人体への影響の中で、
 白血病やがんの発病は『確率的影響』。
 つまり、
 ある一定量以上になればなるとか、
 それ以下ならならないというような
 確定的なことが言えない。
 ただ、
 浴びた放射線量が上がれば
 発病の確率も上がるとしか言えない」と述べ、
過去に原発関連で
白血病で労災認定された労働者の中には、
累積被ばく線量が129.8ミリシーベルトという人から
わずか5.2ミリシーベルトの人までいる実例を
紹介した。

そして西野氏は、
「イギリスでは
 原発放射線での労災は100例ほどあるのと比べ、
 日本の10例は少ない」と
日本の労災認定の少なさを指摘した。
ここには日本の労災認定システムの問題点があるといい、
「放射線を浴びた人の白血病や肺がんは、
 普通の人がなる白血病や肺がんと
 症状自体は何ら違いがない。
 普通の白血病やがんなのか、
 原発の放射線による白血病やがんなのかの見分けが
 つかないため、
 なかなか労災認定されにくい」と解説した。

■ユニオンみえ、シャープ下請企業で170人組織

その後、
あかしユニオン・ユニオンみえ・連合熊本ユニオンの
3労組から特別報告があった。
このうちユニオンみえは、
シャープ下請企業の請負会社(従業員約300人)において、
フィリピン人労働者約170人の組合加入を
実現したというものである。
ユニオンみえの広岡法浄書記長は、
「この間、
 多くの外国人労働者の組織化を進めてきたが、
 職場で安定した組織をつくることが
 難しかった」と述べ、
組織化成功の意義を強調。
全国の仲間に対し、
さらなる支援と注目とを要請した。

■「有期雇用の悲しさ、社会化を」

2日目の10月2日には、
11の分科会に分かれての経験交流や意見交換が
行なわれた。
このうち「派遣・有期雇用」を扱う第3分科会では、
前日に
シャープ下請におけるフィリピン人組織化を報告した
ユニオンみえの広岡書記長が座長を務め、
闘争経過を詳細に語った。

この会社では、
労働者の雇用は1ヶ月更新。
雇用契約書には、
有給休暇を取らせないことや、
社会保険に加入しないことが堂々と歌われていた。
そして、
会社の指定するアパートに
今年10月末日までに転居しなければ
労働者は解雇されるなどと書かれていたのである。

こうした報告を受けて弁護士の中野麻美さんは、
「有期雇用を通じて
 労働者への支配が貫かれる構図が明確だ」と指摘した。

「『有期だからいつでも切れるんだ。
 だからいうことを聞け』という形で、
 労働者が人格的にも使用者に従属させられてゆく。
 非常に強力な支配・従属関係を実現する手段として
 有期雇用が使われている」というのである。

「労働者が生きるためには雇用が必要だ。
 だから労働者は、
 たとえ有給休暇は権利だといわれても、
 次の更新が気になって使うべきものも使えない。
 有給休暇を取ったがために
 雇用が切られるようなものは本来の雇用ではない。
 有期の定めを置くことによって
 違法が合法化されている」という中野弁護士は、
「『有期雇用だから』という悲しみや苦しみを
 一つ一つ取り出して、
 社会的に明らかにしてゆく。
 それをもって、
 有期雇用規制の改革を方向付けてゆくことが
 大切だ」と、
有期雇用規制の実現に向けた
ユニオンの活動の重要性を強調した。

■「来年、京都で待ってます」
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分科会が終わると再び全参加者が集まり、
全体集会が開催された。

全体集会では、
来年の全国交流集会を開催する京都から
きょうとユニオンの玉井均執行委員長が決意表明。
「労働者が本当に働きやすい社会をつくる契機にしたい。
 来年、京都で待ってます」と、
参加者に京都での再開を呼びかけた。

そして集会は、
労働者派遣法改正の実現や
正当な理由のない有期雇用の規制、
最低賃金の即時1000円以上への引き上げなどを求める
特別決議を採択。

最後に、
コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク共同代表の、
原田優子札幌地域労組執行委員長が
閉会の挨拶に立った。
原田代表は、
「全国から闘いの工夫・成果を携えて結集された方々の
 発表や交流の中で、
 私たちユニオンの組織、
 そして一人一人の組合員が、
 人間らしく働きたい・生きたいという思いを
 確認し合えた」と集会の意義を確認し、
「来年はまた京都でみなさんとお会いできるのを
 楽しみにしている」と述べて
全国交流集会を締めくくった。


【参考記事】
第19回コミュニティ・ユニオン全国交流集会(奈良)
コミュニティ・ユニオン全国交流集会in千葉
第21回コミュニティ・ユニオン全国交流集会
「コミュニティユニオン全国交流集会 霧島」に365人


労働組合名古屋ふれあいユニオン
雇用形態や国籍に関わりなく、
愛知県下で働くすべての労働者が一人から加盟できる
地域労働組合(コミュニティユニオン)。
「コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク」加盟。
「コミュニティ・ユニオン東海ネットワーク」事務局団体。
日ごろから組合員の学習会や交流会などを
積極的に企画しながら活動している。
現在、組合員数約200名。
組合員は組合費月額1500円。
賛助会員(サポーター)は年会費5000円。
住所:〒460‐0024
 愛知県名古屋市中区正木4-8-8 メゾン金山303号室
    (JR・地下鉄・名鉄金山駅下車 名古屋ボストン美術館の向かい)
電話番号:052‐679‐3079(午前10時~午後6時)月~金
ファックス:052‐679‐3080
電子メール:fureai@abox.so-net.ne.jp
郵便振替 00800‐8‐126554
ホームページ
http://homepage3.nifty.com/fureai-union/

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by imadegawatuusin | 2011-10-08 21:34 | 労働運動

エンゲルスの説明

本書・『唯物論哲学入門』の著者・森信成氏は
観念論の起源について、
まずエンゲルスの書いた『フォイエルバッハ論』から
引用をする。

エンゲルスは哲学の根本問題を、
「思考と存在との関係の問題である」と規定する。
哲学史はつまるところ、
この問題への解答をめぐって
論争を繰り広げてきた歴史であるとみるわけである。
そしてその論争をエンゲルスは、
人間の無知を基盤とする観念論が少しずつ、
合理的・科学的な唯物論によって
覆されてゆく過程であると理解した。

原始時代には「思考と存在との関係の問題」は、
「魂と肉体」の関係の問題としてあらわれたと
エンゲルスは言う。
肉体の実体験とは関係なしに見る「夢」の存在から、
人は肉体とは別に「魂」というものの存在を想定した。
そして、
肉体とは別物である魂は
人(=肉体)が死んだ後も不滅であると
思うに至ったというのである。

ところがエンゲルスはここで、
非常に興味深いことを言っている。
「このこと(筆者注:=魂の不死という観念)は、
 人類の発展のこの段階では、
 人々には慰めとは思われず、
 さからいがたい運命と思われ、
 ギリシャ人においてみられるように、
 しばしば積極的な不幸と思われていた」。

ここではギリシャ人と書かれているが、
古代インド人などもほぼ同じような感覚を持っていた。
古代インド人は生まれ変わりを信じた。
だがそれは、
死後の世界への希望を語る物語ではない。
この苦しい人生からは
肉体が死んでも逃れることはできないのだという
究極の絶望の物語であったのだ。
「人類の発展のこの段階」において、
生きるということがいかに苦しいことであったかが
よくわかる。

またエンゲルスのこの書きぶりからは、
マルクス主義者が宗教を、
いかなる場合にも人生の苦しみから目を逸らすための
「民衆のアヘン」とばかり
見ていたわけではないという意外な事実が
明らかになる。

この場合、
魂の不滅(宗教)を信じることは、
それを信じないことよりも
はるかに苦しいこと・つらいことであり、
人々にとって何の慰めにもなることではなかった。

エンゲルスはこの記述の後、
「一般に人々が
 個人の魂の不死という
 退屈な想像を持つようになったのは、
 宗教的な慰めの要求からではなく、
 同じく一般的な無知のために、
 一度認めた魂というものを、
 肉体の死後どう取り扱ったらいいか
 当惑した結果である」と書いている。

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by imadegawatuusin | 2011-10-08 17:47 | 弁証法的唯物論