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名探偵コナン『漆黒の追跡者』を見て

■「どうせ死刑」発言がえぐり出した真実
『名探偵コナン』映画第13作・
『漆黒の追跡者』のあるシーンに、
筆者は非常な衝撃を受けた。
今まで『名探偵コナン』という作品が、
決して触れることのなかった
センシティブな問題に切り込むセリフがあったからだ。

「どうせ僕は死刑だから……」。
これは、
本作の中で自首を勧める
主人公・コナンに対し、
「犯人」がつぶやいた言葉である。
この発言は、
『名探偵コナン』という作品史上、
ちょっとした事件だったと筆者は思う。

コナンは、
「犯人の命」を大切にする探偵として
知られている。
それこそ、
命をかけても、
最後の最後まで
犯人の命を守り抜こうとする。
決して自ら暴き出した犯人を
自殺に追い込むようなことはしない。
「犯人を推理で
 追い詰めて、
 みすみす自殺
 させちまう
 探偵は…
 殺人者と
 かわんねーよ…」(『名探偵コナン』単行本16巻FILE.3)。
この工藤新一=江戸川コナンの言葉こそが、
『名探偵コナン』という作品の
不動のポリシーを示している。

必死になって犯人の命を救い、
生きて法の裁きに引き渡したところで、
通常、
『名探偵コナン』という作品は終わる。
『名探偵コナン』という作品は、
「その後」については描かない。
これは、
たいていの「推理アニメ」・「推理ドラマ」に
共通する「お約束」である。
犯人が逮捕され、
事件がすべて解決すれば
「めでたし、めでたし」というわけだ。

しかし、
「その後」には
『名探偵コナン』の描かない
冷徹な現実が待っている。
『名探偵コナン』で描かれる事件の多くは
殺人。
それも、
トリックを弄して捜査権力に挑戦する
超絶計画殺人である。
連続殺人も少なくない。

ということは、だ。
コナンが命がけで助けた犯人は、
その少なからぬ部分が、
最終的には国家によって、
やはり命を絶たれる運命にある、
ということだ。

もちろん、
別にそれが悪い、
ということが言いたいのではない。
筆者は別に死刑廃止論者ではない。
悪いことをすれば死刑になる。
それ自体は、当然のこと、ではある。

だが、
「コナンがその命を守ろうとした犯人は、
 結局国家によって殺される」という現実から、
『コナン』という作品は
これまでどこか目を背けてきた部分が
なかっただろうか。

その現実に、
今回の映画・『漆黒の追跡者』は一瞬、
ほんの一瞬だが触れたのである。
自殺はいけない、
自首をしろというコナンに、
「どうせ僕は死刑だから……」とつぶやいた
その一言に、
筆者は今回の映画スタッフの
勇気と誠実さを見た。
それは、
決して目を背けてはならない「真実」が、
その言葉の中に含まれていると
筆者は思うからである。
(インターネット新聞JANJAN4月24日
 掲載記事に加筆掲載)


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第1位『天国へのカウントダウン』
第2位『14番目の標的』
第3位『瞳の中の暗殺者』

《参考お薦めサイト》
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「名探偵コナン『14番目の標的』について」
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「名探偵コナン『天国へのカウントダウン』について」
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名探偵コナン『水平線上の陰謀』について


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by imadegawatuusin | 2009-04-24 19:32 | 漫画・アニメ