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両足切断を「バージョンアップ」のチャンスに

――「ハンディキャップ」の概念覆す最新技術――

■災い転じて福となす
9月7日の朝日新聞「GLOBE」に、
人間の可能性というものについて
非常に考えさせる記事が載っていた。
少し長いが引用する。

新しい未来の形として、
ヒトのもつ様々な能力を、
最新の技術で拡張する
(アップグレードする)試みも
始まっている。
06年に
(筆者注:マサチューセッツ工科大学メディアラボの)
研究所長に就任した
フランク・モスが音頭をとる
「ヒューマン2.0」である。
研究の先頭に立つのは、
登山家としても知られるヒュー・ヘア。
事故で両足を切断したヘア教授は、
自らも用いるコンピュータ制御の義足に、
様々な機能を追加し、
人間の運動能力を向上させる研究を
続けている……。

両足切断という「ハンディキャップ」を乗り越え、
再度登山に挑戦する彼は、
岩場の状況に応じて
義足の「プラグイン」モジュールをつけ替え、
普通の人間では登板不可能な場所をも
克服できる。
最新技術を活用することで
「障害」「ハンディキャップ」という概念をなくし、
「アップグレード」のチャンスに変える。
それが彼のビジョンである。
開発した義足は、
イラクで負傷した米傷病兵や、
地雷で足を失った人々の新しい「足」として
活用されている。
(石井裕「メディアラボから未来を発信」、朝日新聞「GLOBE」9月7日)


わが国にも昔から
「災い転じて福となす」ということわざがあるが、
これはすごい。
両足切断という人生最大級の「災い」も、
最新技術で自らのバージョンアップのチャンスに
変えてしまう。
「元に回復させる」という通念を突き破り、
両足切断というピンチを「利用」して、
普通の人間では到達できない領域にまで
自らの足を高めようというのである。

ピンチはチャンスに変えられる。
名古屋ふれあいユニオンのような
一人から入れる労働組合に相談にくる人は
多くは「ピンチ」を抱えた人だ。
クビを切られた、
パワハラを受けた、
住むところもなくなった……。
一般的にいえば、
それは「ピンチ」に他ならない。
けれど「ピンチ」をきっかけに
労働組合の門をたたいた人は、
それを「チャンス」に変えるカギをも
手にしていると思いたい。

派遣切りをきっかけに違法派遣の実態を告発、
これまでピンハネしてきた派遣会社を抜きにして
直接雇用を勝ち取って、
クビきりを跳ね返すだけでなく
時給アップまで勝ち取った労働者もいる。
働く者の団結体に出会えたことで、
本当に、
今まで不可能であったことが可能になることが
あるのである。
要はどれほど逆境にあっても
「ピンチをチャンスに」の心意気が
大切なのではないだろうか。

労組から交渉を申し入れられた企業の側にも
それはいえる。

ある日突然、
聞いたこともないような労働組合が
交渉を申し入れてくる。
経営者としては、
あまり面白い話でないというのが
正直なところだと思う。

パワハラの実態を暴露され、
頭を下げる羽目になる。
場合によっては慰謝料も
払わせられるかもしれない……。

しかし、
これも ものは考えようだ。
会社に労組が存在するということは、
一つのチェック機能が
社内に働くということでもある。

パワハラが隠蔽されているような職場では、
たとえ問題自体は公然化していなくても、
やはり職場の雰囲気はよくないものだ。
職場がすさめば
従業員もいい仕事はできない。
一人一人の従業員が
その力を十全に発揮できない職場になっていく。
それは、
企業にとっても長い目で見れば
実は大きなマイナスなのだ。

労組とともにウミを出し切り、
職場を改善してゆくならば、
その恩恵は必ず企業自身に帰ってくる。

労働者も企業も、
労組との出会いは決して「望ましい」ものでは
ないことが多い。
けれどその出会いを、
自らの「バージョンアップ」に結びつける
積極性が求められているのではないだろうか。
by imadegawatuusin | 2009-09-08 23:47 | その他
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