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橋爪大三郎『世界がわかる宗教学社会学入門』を読む

社会学者・橋爪大三郎さんの
『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)は、
世界の主要宗教の「何が焦点なのか」が
とてもコンパクトに解説されている良い本である。

ところがこの本の「講義10」、
「尊王攘夷とはなにか」で
何度読んでもよくわからない部分が私にはあった。
橋爪さんに
何とかその意味をお教えいただけないかと思い、
メールで質問をしたところ、
秘書の方から返事があり、
疑問に思っていたことが氷解した。

私がわからなかったのは、
文庫本265ページにある次の部分である。

ヨーロッパでは、
封建領主が実際に土地を所有していて、
子孫がそれを相続する。
相続のたびに国境線を
引きなおさなければならない。
そんな時代が長く続きました。
しかし日本の領主制は、
刀狩と兵農分離を通じて領主権が名目化し、
官僚制化した。
戦国から江戸にかけて、
そうした大きな変化が起こりました。
禄高は、
名目的なもので、
実際の所領と関係がない。
したがって、
相続の問題は起こらない。


「封建領主が実際に土地を所有していて、
 子孫がそれを相続する」
ヨーロッパの領主制と、
「刀狩と兵農分離を通じて領主権が名目化し、
 官僚制化した」日本の領主制とが
ここでは比較されている。

まず、浅学にして日本の領主制が、
「刀狩と兵農分離を通じて領主権が名目化」したという
ところからして
私にはよくわからなかったのだ。

あと、
「封建領主が実際に土地を所有していて、
 子孫がそれを相続する」のは
日本もヨーロッパも同じだったように
私には思えたのであるが、
それがどうして
刀狩・兵農分離のなかったヨーロッパに限って
「相続のたびに国境線を
 引きなおさなければならない」
ことになるのだろうか。

また、
日本の幕藩体制の下での
「禄高は、
 名目的なもので、
 実際の所領と関係がな」かったことは
私も聞いたことはあったが、
しかし
「実際の所領」は厳然として
存在したのではないかと思った。
(「加賀藩百万石」の「百万石」は
 名目的なもので、
 実際の収入を表すものではなかっただろうが、
 加賀が前田家の所領であった事実は
 動かないと思ったのだ)。

だからそのことが、
「したがって、
 相続の問題は起こらない」
ということになぜつながるのかもよくわからなかった。

橋爪さんの大学研究室に
メールで質問をしたところ、
研究室秘書のKさんから
以下のご返事をいただくことができた。

酒井様のご質問につきまして、
私が調べました結果、
「大名は家臣団を従えて、
知行○○○石を与えている。
が、
知行地(所領)は名目であって、
知行米を与えるのみである。
これは家臣が領主でなく
棒給生活者であることを
意味している。」
ということだと御理解下さい。


なるほど。
ここでいわれている「封建領主」とは、
大名のことではなく、
大名家に使える武士たちが
日本では封建領主から棒給生活者に
なったのだということを意味していたわけだ。


【さらに読むべき本】
「宗教」というものを
大づかみに理解するのに適した
優れた本としては他に、
架神恭介・辰巳一世
『完全教祖マニュアル』がある。
また、本書ではあまり触れられていない
江戸期以降の日本の新興宗教の概要を大づかみするためには、
島田裕巳『日本の10大新宗教』がおすすめ。


橋爪大三郎『世界がわかる宗教学社会学入門』
評価:4(おすすめ)



【参考記事】
書評:世界がわかる宗教社会学入門(橋爪大三郎)

書評:『完全教祖マニュアル』(架神恭介・辰巳一世)

by imadegawatuusin | 2010-07-12 17:25 | 宗教
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