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書評:『若おかみは小学生!』(令丈ヒロ子)

――ウリ坊の関西弁――
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関西弁が自然な作品に接すると、
それだけで作品世界が信頼できるような気がする。
反対に、
登場人物が「けったい」な関西弁を話す作品は
それだけでうさんくさい。

本書『若おかみは小学生!』に登場する
主人公・おっこのパートナーキャラクターである
「ユーレイ」のウリ坊は、
関西弁がとても自然だ。
もちろん、
作者の令丈ヒロ子さんが
大阪市生まれの生粋の関西人で、
同じ大阪市生まれの僕と
フィーリングが合うだけかもしれないが。

どうも世の中には
「吉本くさい」関西弁とでもいうようなものが
ずいぶんと幅をきかせているようで、
関西弁だというだけで
「そういうもの」を期待される風潮がある。

とはいえ吉本新喜劇だって
それほど大昔からあるわけではないし、
大阪人の会話がすべて
ボケとツッコミで成り立っているわけでもない。
そんな会話は疲れるし、
少なくとも僕は、
そんな会話にはついていける自信がない。

その点 本書のウリ坊の言葉は
どこか人を安心させるものがある。
ウリ坊はどちらかというと
かなり「チョケた」ところのあるユーレイで、
決して上品な性格ではないが、
言葉遣いでウケを狙おうというような
あざとさがない。

こういう大阪弁の書ける作家さんが
どんどん減っているんじゃないかと
最近僕は思っているのだが、
どうだろう。

そういえば、
いま名古屋市に住む僕の周りには、
市長である河村たかしの名古屋弁が
ウソくさいという人が結構いる。
大阪出身の僕なんかには
さっぱりよくわからないけど、
「関西弁の吉本化現象」と
何か通底するものがあるのかもしれない。
「書評:『若おかみは小学生!Part2』(令丈ヒロ子)」に進む→


【参考記事】
書評:『若おかみは小学生!Part2』(令丈ヒロ子)
書評:『若おかみは小学生!Part3』(令丈ヒロ子)

by imadegawatuusin | 2010-10-17 23:29 | 文芸
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