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『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その4

観念論の起源=アニミズム

本書・『唯物論哲学入門』では観念論の起源を、
「原始人の世界観を支配していたアニミズムに
 求めることができ」るとする。
これはおそらく そうなのであろう。
「アニミズム」というのは
「物活論」と訳されるそうだが、
ありとあらゆるものに魂が宿っていると考える
精霊崇拝のような考え方である。

ただし、
これ以降の著者・森信成氏の考えはかなりあやしい。
「原始人は、
 人間というものはかならず死ぬものだということを
 知らなかった」とか、
「眠って夢を見たり、
 気絶したりすることと、
 死ぬこととの区別がつか」なかったというのは、
あくまで「説明のための説明」として
聞き流しておいた方がいい。

たしかに、
まだ猿からほとんど分かれ出ていなかった段階の
猿人などの場合、
「死」という概念がうまくとらえられなかったり、
眠ったり気絶することと
死ぬこととの区別が
うまくつけられなかったということはありうる。
しかし、
そうした段階では
アニミズムすら満足に成立しないのではないか
(猿や犬や猫にはおそらくアニミズム文化はない)。

老衰で死ぬ前に
事故や病気で死んでしまうことが多かったので、
「事故や病気にあわなくても寿命というものがある」
という考えが乏しかったということは
あるかもしれない。
しかし、
「原始の生活」で
「死ぬということがそう起こ」らなかったとは
到底考えられないし
(むしろ死に直面することは
 現代よりも多かったのでは?)、
「だから、
 眠っていることや気絶することと、
 死ぬことの区別がついていません」などと言われても
論旨不明だ。

ただ、
「肉体と離れた霊魂」という概念の起源を、
人間の見る夢に求めた説明は注目に値するだろう。

「われわれが目覚めていて、動いている時は、
 霊魂はわれわれの体内にいる。
 しかし、
 眠っていて、じっとしている時は
 霊魂はあちこちと遊びに行くというように
 考えたのです。
 そこで、
 われわれが身体を元気に動かしたり、
 活発に活動したりするのは
 霊魂のせいであるというように考えていき、
 そこから霊魂に対する信仰が生じたわけです」〔注1〕。

今でも漫画などで、
登場人物が気絶したことを描写するときは、
目が白目をむいて、
口から もやもやっと煙のようなものが
出て行くように描かれる。
これはおそらく、
体から魂が抜け出したから
気絶してるんだという捉え方のなごりであろう。

興味深いことに、
著者である森氏は
こうしたアニミズム観念を
一概にバカげたものとして一笑に付したりは
していない。
「こういうことは
 原始人の場合には
 非常に真剣に考えられていたのであって、
 これらは霊魂と身体の関係を説明する
 一つの仮説だったのです」。

ちょっと見ただけだと非科学の塊のような
アニミズムであるが、
こうした考え方の発生には
それなりの歴史的必然性が
あったのだということである。
少なくとも、
「死」とか「霊魂と身体」といった概念を持たない
猿の場合、
そもそもアニミズムすら生まれえない。
「死」とか「霊魂と身体」といった概念を
持ってしまった人間が、
何とかそれを統一的・体系的な世界観の中に
合理的に位置づけようとしたときに、
それは生まれるべくして生まれた仮説だったのだ。

そうした意味ではアニミズムも、
原始人の
この段階におけるギリギリの「科学的」苦闘が
生み出したものだったと見ることができる。

〔注1〕岸本英夫編『世界の宗教』では
この点について、
次のように解説している。
「睡眠中に
 自分がどこかへ出かける夢を見たとすると,
 第2の自分が自由に身体をはなれて活動すると
 解釈した。
 また他人の死に際して,
 死体が変形していくのは,
 かれを生かしていたものが
 肉体を脱出したためと考えた。
 そこに霊魂観念の起源がある……。
 ……夢と死が,
 少なくとも
 霊魂観念を強化するものであることは,
 事実によって裏付けることができる」
(同書19ページ)。



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by imadegawatuusin | 2011-10-13 07:24 | 弁証法的唯物論