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『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その14

死への恐怖

「死」というものに対する恐れが
宗教を作り出したのではないかという考え方がある。
だとすると、
いかに科学が発達して民衆の知的水準が向上しても、
どれほど社会の隅々まで民主主義が徹底されても、
人々は永遠に宗教を求め続ける心理から
脱却できないということになってしまう。

本書・『唯物論哲学入門』は、
一般に「死への恐怖」と言われるものは
本当に「死そのもの」に対する恐怖なのかと問いかける。

たとえば、
自殺しようとする人がいて、
マンションの屋上に上り、
地面を見下ろして恐怖し、
自殺するのをやめたとする。
これは、
死ぬのが怖かったのであろうか。
そうではない。
怖いのは
「落ちること」・「地面にぶつかること」・
「痛いこと」であって、
「死ぬこと」そのものではないのである。

以前の項目でも触れたが、
ギリシアやインドでは
「生まれ変わること」はつらいことだと考えられていた。
当時はそれほど、
生きることはつらいことであったのだ。
そんなギリシアやインドでも宗教はあったわけである。

医療水準が相当向上した現代でも、
死に際して苦しみや痛みをともなわないことは
まだまだ まれだ。
そしてさらに、
社会的な責任のあるポジションにいたり、
家族を養ったりしている立場の人は、
自分が死ぬと困る人が出るわけだから、
死ぬのを嫌がる。
これは、
「死そのもの」を恐怖するのとは
次元の違う社会的な悩みである。

「死そのもの」より、
それに付随するものこそが苦しみの本質であり、
宗教の原因となっていると本書は見るわけである。


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by imadegawatuusin | 2011-12-17 16:51 | 弁証法的唯物論