死の積極的意味
「死」というものに 積極的な意味を見出すかどうかという問題は 一種の人生論であろう。 その意味でこの章は、 唯物論の基本とはあまり関係がないと私は思う。 ただ、 考えるべきことは多い章かもしれない。 言うまでもなく、 すべての人生には時間的に限りがある。 いいとか悪いとかいうことではなく、 事実としてそうなのだから、 どちらがいいとか悪いとか言うこと自体、 前提を欠く議論だと思う。 私たちは 『いつか死ぬこの人生』しか生きられないのであって、 永遠に生きられる方がいい人生だとか、 死のある人生の方がいい人生だとか考えた末、 選り好んだ選択として 死のある人生を選ぶことはできないのである。 だから、 どちらがいいとか悪いとか、 そんな議論には意味がないと思うのである〔注1〕。 ありもしない妄想と現実とを 引き比べたりはしない方がいい。 事実は事実として淡々と受け入れ、 それを前提に生きるしかない。 それこそが唯物論的態度であろう。 精神修養団体・「実践倫理宏正会」の上廣榮治氏は、 「この世のすべては 大自然から生み出されたものですから、 それらはまた、 いつかはそこへ帰ることが自然の定めであり、 すじみちです。 私たち人間も同じことで、 この世に生まれ出たものは、 再び大自然の中へ帰る運命にあります。 その間には少しの不自然も超自然もなく、 また、 神秘、不可思議もありません」と 明確に述べている〔注2〕。 むしろ考えるべきことがあるとすれば、 この章の後半にある、 「個人的に長生きするということは 価値があるのかどうか」ということの方であろう。 こちらは、 安楽死とか尊厳死とか、 場合によっては自殺の問題を考える場合にも 意味のある問いだと思う。 しかしこの問いだって、 『どんな状態で』長生きするのかという問題と 切り離して考えることは本当はできない。 それを抜きにして言うならば、 「若死にするよりは長生きした方がいい」と 多くの人は答えるのではないか。 「人生五十年」だった戦国時代よりは 今の方がいいに決まっているし、 幼児死亡率がやたら高い国よりは 今の日本の方がいいに決まっている。 「長生きするということは価値があるのかどうか」 というようなことが問題になるのはむしろ、 「自分としては生きているのが苦痛な状態で ただ生き続けることに意味があるのか」 というような場合であろう。 しかしこれも、 結局は人生観の問題であって、 唯物論の問題ではないと私は思う。 〔注1〕なお本書では、 【戻る】 『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その1 『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その2 『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その3 『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その4 『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その5 『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その6 『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その7 『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その8 『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その9 『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その10 『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その11 『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その12 『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その13 『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その14 【進む】 『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その16 『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その17 『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その18 【参考記事】 『社会民主党宣言』を読む 新しい社会主義像を求めて 小牧治『マルクス』について レーニン「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」を読む
by imadegawatuusin
| 2011-12-18 16:48
| 弁証法的唯物論
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自己紹介と連絡先
名前:酒井徹(さかいとおる)
生まれた日:昭和58(西暦1983)年8月22日 世わい:42歳 住みか:〒460-0021 日本国愛知県名古屋市中区平和一丁目3番24号 スフジビル406号 電話番号:070-4531-5528 電子郵便宛先:sakaitooru19830822@gmail.com カテゴリ
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