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『唯物論哲学入門』(森信成)を読む・その18

哲学の始祖ターレス

原始の人々は、
自然を自然として見ることができず、
川が氾濫したら川の神が怒ったのだとか、
山が噴火すれば山の神が怒っているとか、
そういった人間的なものの見方を
自然に対して押し付けることしかできなかった。
いわば、
ものの見方・とらえ方が極めて人間中心的で、
主観的だった。

「自然と人間の関係について、
 自然を自然として
 客観的に人間から区別してみるというのは、
 非常に後の時代の観念であり、
 この観念に始めて到達したのは、
 二五〇〇~二六〇〇年前である」と
本書・『唯物論哲学入門』は述べている。

ここで紹介されるのは、
古代ギリシャのターレスという哲学者である。
世界で「最初の哲学者といわれてい」る彼は、
「全ての根源は水である」と主張した。
そして、
「その水のいろいろなあらわれ方が
 宇宙の変化にほかならない、というように
 説明し」たのである。

現代の科学水準や物理知識から言えば、
いうまでもなく事実としては間違っている。
本書の著者・森信成氏も、
「この説明の内容そのものは、
 ……非常に幼稚なものですから、
 たいしたことはない」と言っている。

しかし、
ターレスの
「世界というものの『とらえ方』・『説明の仕方』」の
革新性を捉えなければ、
なぜこの人物が「哲学の始祖」とされているのかが
わからない。

「ここで非常に重要なことは、
 彼が、
 宇宙の根源が物質的な水であるとし、
 しかも、
 この宇宙を自然の法則にもとづけて
 説明しようとしたことです。
 つまり、
 それまでは、
 天地の変化や運動を説明するのに、
 すべて神話によって、
 それらが神の創造、
 または、
 神の作用によって起こったとか、
 あるいは、
 占星術のようなもので説明していました。
 これに対して、
 このターレスが初めて自然を自然として、
 自然から説明する態度をとったのです」。
これが、
このターレスの画期的な点である。

そして本書は、
ここに哲学の歴史が始まったとする見方を承認して
次のように言う。
「彼は、
 宇宙の神話的解釈であるとか、
 占星術的な説明ではなく、
 自然を自然としてそれ自身から説明しました。
 ここから哲学が発生したのです」。


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【参考記事】

『社会民主党宣言』を読む
新しい社会主義像を求めて
小牧治『マルクス』について
レーニン「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」を読む

by imadegawatuusin | 2011-12-22 17:35 | 弁証法的唯物論
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