『ことわざの知恵』を読む(その2)

昨日の記事に続き、
『ことわざの知恵』(岩波新書)を取り上げたい。

この本の11ページに「盗人の昼寝」ということわざが登場する。
僕にとって非常になじみのあることわざである。
小さいころ、『いろはカルタ』に夢中になっていた時があった。
「ぬ、盗人の昼寝」はちょっと間抜けそうな泥棒の顔が特徴的で、
僕の「得意フダ」だったのだ。

だが、このことわざの意味については、
僕はまったく知らなかった。
「盗人の昼寝」について、
この本には次のように書かれている。

盗人はふつう、
まっとうな人々が寝ている夜に「仕事」をするから、
人々が働いている昼間は反対に寝ているだろう(中略)。
(中略)短縮される以前の形は、
「盗人の昼寝も当てがある」というもの。
何をするにも理由があるというたとえ。
どうやらこの盗人は、
今夜の仕事先のめどをつけた上で、
昼寝をしているようである。


へー、そうだったのかと初めて納得がいった。

「楽しくてためになる」などと言って「いろはカルタ」を売り込んでいる企業もあるようだ。
しかし、これははっきり言って嘘だと思う。
僕は確かに「盗人の昼寝」ということわざは覚えたけれど、
その意味についてなんて、考えたこともなかった。
ただ、「盗人の昼寝」という言葉とそのフダの絵柄を覚えて、
ちょっとカルタ取りに強くなったというだけだ。

そういえば今、妹が百人一首に凝っている。
学校で百人一首大会があるらしく、
ライバルでもいるのか、やたら張り切って家でも練習しているのだ。
上の句を数文字聞いただけで
下の句だけが書かれたカルタを取ってしまうのだから、
すごいもんだと思う。
思うのだが……、
多分、妹は百人一首の個々の和歌の意味は
全然わかっていないと思う。
「カルタ取り」の腕はめきめき上がっているようではあるが、
あまり勉強になっているように見えないのは気のせいだろうか。

もっとも、これはうちの妹に限ったことでもないらしい。
今年の百人一首クイーン・楠木早紀さんは、
史上最年少、初の中学生クイーンということもあって注目を集めたが、
どうやら彼女も和歌の意味はあまりわかっていないらしい。
1月15日の朝日新聞「ひと」欄の記事によると、
「成績が上がる」と言われて百人一首をはじめたにもかかわらず、
「古文が苦手で、歌はよく意味がわからない」ということなのだ。
(もっとも、
 「歌の意味も少しずつ勉強しようかな」とも発言しているが)。

多分、競技としての百人一首は、
文学としての百人一首とはまったく別物の「スポーツ」なのだ。
「畳の上の格闘技」などとも呼ばれており、
突き指ぐらいは当たり前、
骨折だって珍しいことではないという。

そういえば、百人一首のクイーン戦に出場する選手って、
絶対に羽織袴の姿だけど、
あれって「ああいう格好をしなきゃいけない」っていう規則とかがあるんだろうか。
「スポーツ」・「格闘技」なのだと割り切れば、
あんな動きづらそうな格好ではなくて
ジャージなんかを着た方が絶対に有利だと思うのだが……。

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by imadegawatuusin | 2005-01-30 17:51 | 日本語論