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JR事故1年

――本学:学友3名死亡――

■「冥福」を祈ることはできないけれど
昨年4月25日に発生したJR宝塚線脱線事故(「尼崎事故」)から
今日で1年が経過した。
この事故で本学は、
社会学部1年生の榊原怜子さん・
文学部1年生の仙木敦子さん・
法学部2年生の長浜彩恵さんという3人の学友を失った。

霊魂の不滅も死後の世界も信じることのできない僕は、
3人の「冥福」(=冥界での幸福)を祈ることはできない。
しかし、
このような悲しみ・苦しみ、そして痛みを2度と繰り返さないために、
今 生きている僕たちができることを懸命に考え、
そして今後も絶えず訴え続けることは可能である。

■事故の原因とその背景
事故の直接の原因は、
どうやら死亡した運転手の速度超過にあったようだ。
しかしそもそも、
なぜ運転手が無謀な速度超過をするに至ったのか、
さらに言えば、
なぜこのような速度超過がまかり通ってしまったのかを問題としなければ、
同様の事故は形を変えて
何度でも再発するだろう。

JR西日本は民営化以来 増収のため、
増発とスピードアップを重ねてきた。
今回の事故後ようやく改定されたとはいえ、
JR西日本の旧「経営理念」は、
「基幹事業としての鉄道の活性化」や「繁栄」は謳うが、
人命を預かる交通事業の本懐とも言うべき安全性に一言も触れないという
実にえげつない内容だった。

「イジメ・見せしめ・嫌がらせ」と恐れられた
屈辱的な「日勤教育」のあり方が、
運転手にどのような影響を与えたのかも
考えなければならないだろう。

■運転手個人に責任を帰するのは簡単。だが…
今回の事故を、
運転手個人の資質や心構えに帰することは簡単だ。
だが、
人間は必ず失敗を犯すのだということを大前提とし、
2重3重の処置を施すことで、
「1人の失敗」が大事故に直結することはなくなってゆく。
例えば、
列車の速度を常にチェックし、スピードオーバーしてもブレーキをかける
ATS-P型などのバックアップシステムを
積極的に導入する。
あるいは、
必要人員の配置によるダブルチェック体制を確立する。
無論、
このような直接儲けにはつながらない「安全への投資」に対しては、
人命を預かる公共輸送機関にふさわしい、
国による一定の財政支援がなされなければならない。

■僕たち1人1人に問われていること
今回の事故の責任が、
JR西日本という一民間企業に頭を下げさせ
溜飲を下げるということのみに終わってはならない。
究極的に言えば今回の事故は、
「より速く・定刻通りに」という面のみを求めてきた、
僕たち一般利用者のあり方にも反省を迫るものなのだ。

中曽根内閣から現在の小泉内閣にいたる「構造改革」路線の下で、
さまざまな規制が緩和されてきた。
鉄道事業もまた、例外ではない。
しかし、
鉄道における安全問題は多数の人命に関わるものであり、
市場原理に安易に委ねることは許されない。
今回の事故は
僕たち国民一人一人の生き方と、
国家そのもののあり方とに突きつけられた
鋭く重い疑問符なのだ。

榊原さん・仙木さん・長浜さんはもういない。
けれど、
僕たちはまだ生きている。
だからこそ、
僕たちにはまだ、
「出来ること」がたくさんあるのだ。

僕たちは生きる。
生きて、世の中を変革する。
二度と尼崎事故を繰り返すな!

《第6号》
by imadegawatuusin | 2006-04-25 03:17
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