■不安でも、「するべきこと」をすればよい
白取春彦さんは本書・『仏教「超」入門』の中で、 「悟っても煩悩は依然として生まれてくる」と指摘する。 だが、悟れば、 「その煩悩に煩わされないようになる」というのだ(本書111~112ページ)。 このことを説明するために、 白取さんはこんな例を出す。 たとえば、 悟りを得るとは、 人間が生きていく中で生まれてしまう煩悩を 「全て消し去ってしまう」というよりも、 「それに煩わされなくなる」というほうに近い。 白取さんはそう言っている。 こうした考え方は、 現代の精神療法の一つである森田療法に 非常に似ている〔注1〕。 森田療法では、 精神病の原因は「不安」そのものではなく、 「不安に『とらわれること』」にあると考える。 だからとにかく、 「やるべきことをやる」ことが求められる。 「煩悩があるから、不安があるから、 やるべきことに手がつかない」ではなく、 「煩悩があっても、不安があっても、 とにかくやるべきことに手をつけろ」と教える。 「煩悩や不安を持つ自分」を受け入れた上で、 それらに煩わされず生きてゆくことに重点を置くのである。 そのために、 目の前にある一事に徹底して専念させる。 「不安で、やるべきことに手がつかなかった人間」から 「不安でも、やるべきことはきちんとやる人間、 やろうとする人間」に変わることで、 自分だけでなく、 自分と周囲との関係も変わりはじめる。 ブッダの考えたとおり、 世界は「空」であり、絶対のものではない。 自分が変われば、世界も徐々に変わってゆく。 まず自らの行ないを変えてみることが 世界に対して良い関係(=縁起)をつくりだし、 世界をよりよい方向に革命する。 「自己革命が世界革命の原点となる」とはこういうことを言うのである。 こうして現実が変わってくると、 いつしか心の中に根強くあった不安の方が 薄らいでくる。 ブッダの考えたとおり、 人間は縁起、つまり 周囲との関係の中で「つくられる」存在であるからだ。 こうなると、 今度は革命された世界の側が 自分自身を良い方向へと向かわせてくれる。 いわば世界革命が自己革命を推進する方向へと向かうのだ。 ……と、口でいうのは簡単だが、 実際にやってみるとこれがなかなかうまくいかない。 けれど白取さんは本書の中で、 だからといって嘆く必要はない、 まずは自分から『変わろうとすること自体』が大切なのだと 教えてくれる。 「自分ではそういうふうに努力しているつもりなんだけど、 〔注1〕前回著書を引用した精神科医のなだいなださんも、 仏教と森田療法の類似性を 次のように指摘している。 真理とは、 ブッダの布教活動を 「集団精神療法」と見ると、 在家信者は通院でときどき精神療法を受ける 比較的軽症の患者、 出家信者は入院して集団生活の中で精神療法を受ける 比較的重症の患者であったということになろうか。 こう考えると、 従来 当然とされてきた、 「出家信者が宗教的権威を持って主導権を握り、 在家信者を従えていく」という構図も 根本的に見直さなければならなくなってくるかもしれない。 《戻る》 「白取春彦『仏教「超」入門』について(その1)」 「白取春彦『仏教「超」入門』について(その2)」 「白取春彦『仏教「超」入門』について(その3)」 「白取春彦『仏教「超」入門』について(その4)」 「白取春彦『仏教「超」入門』について(その5)」 「白取春彦『仏教「超」入門』について(その6)」 《進む》 「白取春彦『仏教「超」入門』について(その8)」 「白取春彦『仏教「超」入門』について(その9)」 「白取春彦『仏教「超」入門』について(その10)」 「白取春彦『仏教「超」入門』について(その11)」 「白取春彦『仏教「超」入門』について (補章1)」 「白取春彦『仏教「超」入門』について (補章2)」
by imadegawatuusin
| 2007-11-30 16:07
| 仏教
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名前:酒井=徹
生まれた日:昭和58(西暦1983)年8月22日 世わい:39歳 住みか:〒454-0013 日本国愛知県名古屋市中川区八熊一丁目12番6号 明治第4ビルディング205号 電話番号:070-4531-5528 電子郵件宛先:sakaitooru19830822@gmail.com つぶやき網誌:https://twitter.com/SAKAI_Tooru カテゴリ
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