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白取春彦『仏教「超」入門』について(その9)

■「南無」(~に帰依する)をブッダはどう見るだろう 
日本は仏教国だ、と一般には言われている。
事実、日本人の大部分が「仏教徒」として、
その(「家」が)所属する寺院に登録されている。

しかし白取春彦さんは本書・『仏教「超」入門』の中で、
「日本が本当に仏教国であるかどうか、
 疑わし」いと言っている。
そして、
「もし仮に仏教国だとしよう。
 では、
 ブッダの教えた仏教を信じているのだろうか。

 ブッダがここにきたら、
 ためらいもなく『日本は仏教国だ』と言う確率は
 どのくらいあるものだろうか」と問いかけるのだ(本書182ページ)。

確かに、
「南無妙法蓮華経」と唱えることで
即身成仏が実現するとか、
「南無阿弥陀仏」と唱えれば
極楽往生間違いなしだとかいった類の、
我が国の「仏教」の主流派である
「南無」(~に帰依する)の信仰をブッダが知れば、
おそらく即座に、
「それは自分の教えとは異なるものだ」と言うだろう。

あらかじめ「阿弥陀仏」とか「妙法蓮華経」といった絶対的なものを設定し、
それへの帰依を説く「南無」の考え方は、
絶対的なものの存在やそれへの執着を否定する
ブッダの教えからは明らかに逸脱している。

日本の仏教徒の大半は、
「南無阿弥陀仏」の浄土宗系(真宗系を含む)か、
「南無妙法蓮華経」の日蓮宗系(霊友会などの新興教団を含む)で
占められている。
僕はいま、
日本人の大部分を敵に回す発言をしてしまったのかもしれない。
ただ、
本来の仏教の立場に立てば、
やはり以上のように言わざるを得ないのである。

ブッダは
「あの世」より「この世」、
「超越性」より「現実性」、
「神秘性」より「合理性」を重視した。

このような教えは、
あるいは宗教ではないと言われるかもしれない。
それならそれで構わないのではないかと僕は思う。

インド仏教復興の祖であるB=R=アンベードカルは、
その著書・『ブッダとそのダンマ』(光文社新書)の中で
次のように述べている。

ブッダがダンマと呼ぶものは
宗教とは根本的に異っている。
彼のダンマは
ヨーロッパ神学者が宗教と呼ぶものと似てはいるが、
類似性よりむしろ相違性のほうが遥かに大きい。
このためブッダのダンマを宗教と認めないヨーロッパ神学者も
かなりいる。
が、
このことで悔やむことは何もない。
悔やむのは彼らのほうであり
ブッダのダンマにはいささかの瑕(きず)もつかない。
むしろそれは
何が宗教に欠けているかを示しているといえる。(第4部第1章-2)



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by imadegawatuusin | 2007-12-02 16:23 | 仏教
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