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片山こずえ『信じる者は救われる!』について

僕は占いが嫌いである。
カレンダー一つ買うときも、
「三隣亡」(さんりんぼう)とか「大安」・「仏滅」……といった記載が
入っていないものを買うようにしている。
「こういう胡散臭いものは掲載しない」という、
信念のあるカレンダー屋さんを応援したいからである。

ところが実に困ったことに、
少女漫画雑誌を買うと、
大抵「星占い」の記事がついているのだ。
僕の出した金の何パーセントかが、
この記事の原稿料に化けるのかと思うと
本当に腹が立ってくる!

……という、占い嫌いの言いがかりだと思って、
以下の書評をお読みいただければ幸いである。

■「占い論」の建前と現実
僕は、本書の著者・片山こずえさんの大ファンであるが、
唯一この『信じる者は救われる!』というお話だけは
どうしても好きになれなくて困っている。
それは別に、
本作の男主人公・霧島麻苑が占い師だから、という
単純な理由ではない。

結局のところ、
僕のこの違和感は、
男主人公である霧島麻苑という人間の、
占いに対する見解と態度との間に
ある種の「偽善」が感じられてならないことに由来する。

彼はあるときは占いについて、

自分の人生は
自分で作って
いくものだから
あくまで 占いは
そのためのキーワードとして
受けとめればいい(本書30ページ)


と、一見もっともらしいことを言う。
しかし一方では、
「相性占い」を頼んだ主人公・空美に対し、

だめだ…
相性 最悪
やめなさい

この悪さは
並じゃない
ひどい……(本書12ページ)


と、
ずいぶんなことを言ったりしている。
これはどう見ても、
「占いは……キーワード」論を超えた、
他人の人生への介入行為と受けとめざるを得ない。

これが、
彼が すでに この時点で空美のことが好きだったから
他の男とくっつけたくなかったとか、
相手の男の悪いうわさを聞いていたとか
それ相応の理由があってのことなら話は別だが、
少なくとも作品を素直に読む限り
そうした事情は見当たらない。

僕はどちらかというと
霧島麻苑などよりも、
第2話の敵役として登場する
神城翔宇の方に好感を持つ。
話の流れでずいぶんと損な役回りを演じているが、
読者の間からも
「かわいそおって声が ちらほら」あるとのことである(本書91ページ)。

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【本日の読了】
片山こずえ『信じる者は救われる!』集英社マーガレットコミックス(評価:2)
by imadegawatuusin | 2006-04-29 14:58 | 漫画・アニメ
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