名古屋地裁:「違法告発で解雇」、派遣元に賠償命令

――報復解雇は「強度の反社会的行為」と断罪――

■TPSは問題の早期解決を!
職場における違法行為の実態を愛知労働局に申告したことで
不当に解雇されたとして、
名古屋ふれあいユニオン運営委員・Aさんが
東京都千代田区に本社を置く業務請負会社・
「テー・ピー・エスサービス」(藤井義昭社長)を相手に
損害賠償などを求めていた訴訟の判決が
7月16日、
名古屋地裁であった。
名古屋地裁の多見谷寿郎裁判官は、
「解雇は、
 労働局に申告したものを企業から排除する
 強い反社会的行為」とAさんの訴えを認め、
テー・ピー・エスサービスに
約217万円の支払いを命じた
朝日新聞中日新聞、読売新聞、毎日新聞7月17日朝刊)。
筆者は以下の通り、
テー・ピー・エスサービスがこの判決に従い
問題の早期解決を図るよう強く求める。

■TPSの不当労働行為を認定
判決は、
テー・ピー・エスサービスが
派遣先において行なってきた違法行為を
明確に認定。
Aさんに対する解雇については、
「このような違法状態を改善するため,
 法律上の権利として保護された労働組合活動や
 監督機関への申告を行った者を
 企業から排除するという強度の反社会的な行為」と断罪し、
労働基準法104条2項及び労働組合法7条1号にも違反する
「違法な目的に基づいて……,
 故意に,本来解雇する理由のない原告に
 解雇という不利益を与えたものであるから,
 原告に対する不法行為となる」との判断を下した。
Aさんに対するテー・ピー・エスサービスの解雇が、
単に行政機関への申告者に対する不利益扱いであるにとどまらず、
わが名古屋ふれあいユニオンに対する
不当労働行為であったこと、
働く者の団結に対する
実に陰湿・破廉恥な攻撃であったことが
明確に認定されたのである。

そもそも、
テー・ピー・エスサービスの労働組合に対する徹底した嫌悪は
当初から露骨なものがあった。
名古屋ふれあいユニオンがAさんの加盟を伝え、
初めて団体交渉の開催を求めたとき、
TPSは、
「Aは自社の社員であるので団体交渉に応じられない」という
実に意味不明な回答を寄せている。
確かに、
偽装請負や派遣などの雇用形態で働く労働者たちが
労働組合に結集し、
団体交渉を求めたとき、
派遣先が
「自社の社員ではないので団体交渉には応じられない」
などと回答することは ままあることだ。
しかし、
「自社の社員であるので団体交渉に応じない」
などと主張する奇怪な企業は、
名古屋ふれあいユニオン9年の歴史の中で、
後にも先にもテー・ピー・エスサービスただ一社である。
TPSには労働者の団結権に関する
基本的な理解が根本的に欠如しているとしか思えない。

例えば東芝グループ各社には
「東芝グループ労働組合連合会」に結集する
立派な労働組合がある。
このことは、
天下の大企業に勤める直接雇用の正社員ですら、
労働組合を結成し、徒党を組んで集団でモノを申さなければ、
使用者側と対等な形で労働条件を決定することは
不可能であることを示している。
まして、
立場の弱い非正規労働者が自らの雇用をまもり、
使用者側と対等な交渉を行なうためには、
労働者自身が使用者側と対抗できる力量を
職場の内外で確立すること、
すなわち、
団結権・団体交渉権・団体行動権を持つ労働組合を組織し、
職場内外の仲間とともに使用者側と対峙し、
相手と対等な交渉力を築いた上で
成果を勝ち取る以外にはない。
だからこそ、組織労働者の労働条件は
会社と労組の交渉で決めねばならず、
個人との個別取引は許されないのだ。

名古屋ふれあいユニオンは1999年1月、
「不安定雇用労働者のよりどころ」とのキャッチフレーズを掲げ、
派遣・請負・パート・アルバイト・契約社員などの
不安定な雇用形態で働く労働者たちが
手を結びあい、助け合い、
共に雇用の安定を勝ち取るために設立された。
名古屋ふれあいユニオンが何よりも心を砕いてきたのが、
組合員の雇用の安定に他ならない。
にもかかわらずTPSの代表取締役・藤井義昭社長は、
2008年5月26日に名古屋地裁に提出した陳述書の中で、
何を勘違いしたのか名古屋ふれあいユニオンについて、
「『社会正義』が一番であり、
 組合員の将来のことは二の次」にしている、
「組合員の雇用を守る、確保する、収入を守ること」を
軽視しているなどと非難した。
労働局からの行政指導を受けてなお、
指導内容をきちんと履行しようともせず、
自らの手でAさんの雇用を奪い去ったTPSが、
いかなる道理をもってして
名古屋ふれあいユニオンに説教をたれようというのだろうか。

藤井社長は、
一貫して違法状態の解消を求めてきた
わが名古屋ふれあいユニオンの姿勢について、
「100%自分たちの要求を通すことばかりに終始し、
 当社の言う事には一切耳を貸さず、
 多少妥協しても本人の将来の為には何が一番良いのかを
 真剣に話し合う前向きな歩み寄りの行動が
 なされなかった」と批判する。
名古屋ふれあいユニオンが、
例えば賃上げ交渉においてこのような態度をとったのであれば、
なるほど このような批判も受忍する必要はあるだろう。
しかし、
Aさんに関するふれあいユニオンの要求は、
「違法状態の解消」であった。
この、
本来 労働組合が要求するまでもなく履行されるべき、
最低限の前提ともいうべき「要求」に、
いかなる「妥協」が存在するというのだろうか。
いかなる「歩み寄り」が可能であるというのだろうか。
およそ法というものを軽んじて恥じない
TPSならではの傲慢な理屈には もはや呆れ果てる他ない。

■「個人事業主」偽装は究極の偽装請負
そもそも、
名古屋ふれあいユニオンが「一切耳を貸」さなかったという
「当社の言う事」とは
一体どのような提案だったのだろうか。
Aさんに「個人事業主」として契約をさせ、
派遣先への派遣を続けようという、
TPSとは別の請負会社からの提案のことを指すのだろうか。

「個人事業主」偽装は
数ある偽装請負の形態の中でも
最も悪質な「究極の偽装請負」である。
労働法規に保護されている労働者を完全に個別分断し、
労災保険や雇用保険・厚生年金・被用者健康保険といった、
働く者にとって不可欠の社会保険への加盟資格を
奪うものだ。
組織労働者からは団結権を、
労働組合からは団体交渉権や団体行動権を剥奪する
極限的な偽装請負の形態である。
労働者の誇りと良心を完全に資本に売り渡さなければ、
このような卑劣な提案を
ユニオンが受け入れられるはずがないことは自明の理である。
(そもそもこの提案は
 TPSとは別の請負会社からなされたもので、
 TPSが恩着せがましく「本人の将来のため」などと
 胸を張る筋合いはないのであるが)。

藤井社長は4月9日の証人尋問において、
「もし,この問題が起こらなければ,
 原告は派遣先で引き続き
 働くことができただろうということですか」との
裁判官の質問に対し、
「問題が起こらなければ,
 ずっと仕事をそのまましてたと思います」と明確に言い切った。
名古屋ふれあいユニオンに対する
『社会正義を優先し、
 組合員の雇用を二の次にしている』との非難中傷は、
一言でいえば、
「ユニオンがよけいな文句を付けてこなければ、
 Aさんはずっと『そのまま』(=違法状態のまま)
 仕事を続けることができたのに」と、
自らの雇用責任をユニオンに転化しようとする詭弁に他ならない。
筆者はテー・ピー・エスサービスの、
こうした身勝手極まる主張を絶対に許すことはできない。

■違法状態の改善は労働者の闘いから
テー・ピー・エスサービス代表取締役の藤井義昭社長は、
5月26日付の「陳述書」の中で、
次のような弁解をこころみている。

現在は当時から3年経ち社会状況も大きく変わり、
又全国の労働局の努力・指導もあり
業界状況も大きく変わって来ました。
……この3年間の間に、
松下日立日本電気東芝といったメーカーのみでなく、
CSKを始めとする
その下の超大手SI企業に
労働局の指導が幾度となく繰り返され、
最近になってやっと我々も
堂々とコンプライアンスを唱って
営業できるようになったのが現実です。


藤井社長は、
この間の「社会状況」の変化が、
まるで季節が移り変わるかのように
「全国の労働局の努力・指導」の変化に応じ
自動的に変わってきたかのように言っている。
「全国の労働局」の姿勢の変化の裏にある、
自らの職をかけ、生活をかけて闘った
幾多の英雄的労働者の苦闘には
およそ視野が及ばないと見える。

「松下」に労働局の指導が入り、
その姿勢が変化したのは、
名古屋ふれあいユニオンと同じ
コミュニティユニオン全国ネットワーク加盟の
なかまユニオン組合員・吉岡力さんの決起があったからだ。
吉岡さんは2005年5月26日、
松下電器産業の子会社・松下プラズマディスプレイにおいて
偽装請負を告発し、
直接雇用を勝ち取った。
ところがその吉岡さんに対する松下の仕打ちは、
吉岡さんを1人だけ隔離された部屋に放り込み、
本来不要な修理作業に嫌がらせ的に従事させた上、
半年間の契約が切れると即座に解雇するという
冷酷非道なものだった。

しかし、吉岡さんは負けなかった。
松下の横暴なやり方に裁判を提起。
一審の大阪地裁では
「雇い止め」を有効とする不当判決を受けたが、
ひるむことなく高裁に控訴し、
松下プラズマディスプレイに引き続き雇用を命じる
画期的な逆転勝訴判決を勝ち取った。
吉岡さんが声を上げたことで
松下における偽装請負は社会問題となり、
その後 多くの前進を勝ち取ってきたのだ。

「日立」の姿勢の変化の裏には、
ガテン系連帯日立派遣ユニオンの闘いがある。
決して「全国の労働局」があるとき突然姿勢を変えたことで
事態が是正されたわけではない。

そして何より「東芝」においては、
コミュニティユニオン全国ネットワークの仲間である
武庫川ユニオンの小森彦さんが2006年11月に決起、
偽装請負の告発は全国的なうねりとなった。

そんな松下プラズマディスプレイの吉岡力さんにも、
東芝家電の小森彦さんにも先駆けて、
職場における違法状態を告発し、
職場の違法を許さない全国的潮流を切り開いたのは
名古屋ふれあいユニオンのAさんだった。
藤井社長の言う、
この「3年」の「社会状況」の変化を、
まさに先頭に立って「創り出してきた」のが、
名古屋ふれあいユニオンのAさんだったのだ。

TPS代表取締役の藤井義昭社長は言う。
「最近になってやっと我々も
 堂々とコンプライアンスを唱って
 営業できるようになった」と。
それは一体、誰のおかげだったのか。
誰がこの流れを切り開き、
理不尽な思いを強いられながら世を正したというのか。
職場の違法を一掃するため、
TPSは一体何をしたというのか。
この点を、
TPSはもう一度深く噛み締めるべきである。

■「突然切れる」!? それ、会社側弁護士のことじゃん
しかるにTPSは、
まさに「業界の恩人」ともいうべきAさんに対し、
能力・意欲・技術・「ヒューマンスキル」が
低いなどとケチをつけ、
個人攻撃の限りを尽くしてきた。
特に、
「ヒューマンスキル」の低さを立証すると称して、
「突然切れるなど奇怪な言動がある」などと、
その論難は法廷における人格攻撃にまで及んだのである。

しかし、
真実は明らかになるものである。
多数の傍聴人が見守るなかで開かれた証人尋問のなかで、
Aさんは実に落ち着いた、
筋の通った主張を堂々と展開した。
対するTPSの態度はどうだったか。
法廷で「突然キレる」本性を露呈したのはAさんではなく、
何とTPS側代理人・上山雅也弁護士だった。
上山弁護士は法廷で一人激高し、
多くの傍聴人の失笑を買い、
裁判官からもすっかりあきれられ、
たしなめられる一幕もあった。

そして、
「奇怪な言動があ」ったのは、
TPS代表取締役・藤井義昭社長その人だったのだ。
藤井社長は2007年12月25日付の「陳述書」の中で、
「やむを得ず原告を解雇するに至ったのです」と述べていた。
ところがその同じ藤井社長が、
2008年4月9日の証人尋問のなかで、
突如として
「(そもそもテー・ピー・エスは原告を解雇)してないです」
などと言いだし、
法廷の度肝を抜いたのである。
これまでずっと、
本件解雇に合理性があったかどうかを
審理していたにもかかわらず、
証人尋問に及んで突然
「そもそも解雇していない」などと言い出すのは、
明らかに「奇怪な言動」である。
(その後、藤井社長は
 「解雇だという認識を持っておりました」と言い直すなど、
 証言は二転三転しているが)。

結局 名古屋地裁は、
名古屋ふれあいユニオン運営委員・Aさんについて、
「仕事ぶりは真面目で,
 これにつき苦情があったり,
 原告に対し注意や指導がされたことはなかった」と認定。
能力・意欲・技術・ヒューマンスキルなどが
低いなどとする主張に対しては、
「証拠に照らして信用できないか、
 (被告の提出した「証拠」は)
 原告の能力等が低いことを裏付けるものとはいえないので,
 被告の同主張も採用できない」と言い切った。
そして、
「被告は,
 原告が本件組合とともに,
 違法状態を解消し,適法化するよう要求し,
 愛知労働局にその旨の行政指導を求めたことを嫌悪して,
 原告に対し,
 本件業務から排除するだけでなく,
 被告からも排除するべく
 解雇という不利益な処分を行った」と認めたのだ。

TPSはこれまでやってきた非道を省みて恥を知り、
7月16日の名古屋地裁判決を受け入れ、
直ちに履行すべきである。
もしTPSが高等裁判所に控訴し、
これ以上Aさんを苦しめ続けることがあれば、
名古屋ふれあいユニオンは全力を挙げてAさんを支援し、
地域・全国の仲間たちとともに、
最後の最後までAさんを守り抜く決意を明らかにするだろう。

すでに本件勝訴判決を知った
派遣ネットワークの高井晃さん(東京ユニオン)も
今回の勝利を
ラポールサービス事件に続く画期的判決」と大絶賛!
抗議FAXの集中などで
「みんなで勝利へサポートを」と
全国の仲間たちに呼びかけを発し、
すでに大阪のなにわユニオンUNIONひごろ
管理職ユニオン関西の3労組が
早速行動に加わった。

TPS地裁闘争勝利万歳!
働く仲間の団結と
闘う労組の勝利万歳!


【参考記事】
テー・ピー・エスサービス、名古屋高裁に控訴!
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愛知県に人権労働運動の灯をともそう!



労働組合名古屋ふれあいユニオン
雇用形態や国籍に関わりなく、
愛知県下で働くすべての労働者が一人から加盟できる
地域労働組合(コミュニティユニオン)。
コミュニティユニオン全国ネットワーク
コミュニティユニオン東海ネットワークにも参加。
今年3月に開かれた第10回定期大会では、
連合産別・全国ユニオンへの加盟について討議するとする活動方針を採択。
日ごろから組合員の学習会や交流会・相談会などを
積極的に企画しながら活動している。
現在、組合員数約200名。
組合員は組合費月額1500円。
賛助会員(サポーター)は年会費5000円。
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by imadegawatuusin | 2008-07-19 02:35 | 労働運動