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――文脈上、「ナチス改憲」の肯定は明らか――

自民党の麻生太郎副総理が憲法改正をめぐり、
ナチス政権を引き合いに出して
その「手口に学んだらどうか」とした発言が
国内外の批判を呼んでいる。
麻生氏は8月1日に
「誤解を招く結果となった」として発言を撤回したが、
ナチス発言については
改憲の「悪しき例としてあげた」と弁明した
朝日新聞8月1日夕刊)。

確かに麻生氏の発言の全体を見ると、
彼がナチス政権を肯定的にとらえていないというのは
事実のようだ。
発言の冒頭で、
「ワイマール憲法という当時欧州で最も進んだ憲法下に
 ヒトラーが出てきた。
 常に、
 憲法はよくてもそういうことはありうる」と
言っている。
ここでは確かに、
「当時欧州で最も進んだ」ワイマール憲法に対して
ナチスの党首であるヒトラーが
「良くないもの」として出てきている。
しかし、
問題になっている改憲発言ではどうか。
その文脈からは、
麻生氏はナチスそのものについては否定的だが、
その改憲の「手口」については
肯定的にとらえているとしか聞こえないのだ。

麻生氏はこう述べている。
「今回の憲法の話も狂騒のなかでやってほしくない。
 ……静かにやろうや、と。
 憲法はある日気づいたら、
 ワイマール憲法が変わって、
 ナチス憲法に変わっていたんですよ。
 誰も気づかないで変わった。
 あの手口に学んだらどうかね。
 わーわー騒がないで。
 本当にみんないい憲法と、
 みんな納得してあの憲法変わっているからね。
 ぼくは民主主義を否定するつもりは
 全くありませんが、
 私どもは重ねて言いますが、
 喧噪のなかで決めてほしくない」
(朝日新聞8月1日)。
ここでは、
「狂騒のなか」・「喧噪のなかで」の憲法改正に対して、
「憲法はある日気づいたら……変わって」、
「誰も気づかないで変わった」ナチスの「手口」が
肯定的に評価されている。
「本当にみんないい憲法と、
 みんな納得してあの憲法変わっているからね」と、
それが麻生氏が否定する
「狂騒のなか」・「喧噪のなかで」の憲法改正では
なかったことを強調したあと、
「ぼくは
 民主主義を否定するつもりは全くありませんが……」と、
自らの発言が
見方によっては「民主主義を否定する」ものと
映りかねないものであると認識していたらしいことまで
示唆している。
麻生氏の言う、
「悪しき例としてあげた」との弁明が
ごまかしにすぎないことは明らかである。

この発言は麻生氏のいい加減な歴史認識と
危険な憲法観とを示すものだ。
ナチス政権は
正確には「ナチス憲法」なるものをつくっていない。
俗にそう言われているのは、
最高法規であったワイマール憲法を越える権限を
政府に与えるという「全権委任法」という法律だ。
ナチスはただの法律をもって
ワイマール憲法を骨抜きにし、
事実上の「改憲」を成し遂げた。
これは世界の憲政史上、
最悪の「改憲」例の一つである。
このような「手口」に見習うべきものは何もない。
麻生発言の本質は
単なる「ナチス発言」であるだけでなく、
憲政否定の発言であるということなのだ。

日本国憲法の第99条は、
「天皇又は摂政及び国務大臣、
 国会議員、裁判官その他の公務員は、
 この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と
明確に定めている。
正規の手続きをもって憲法を改正することは
何ら否定をしていないが、
ナチスのように法律や政府の決定をもって
憲法を骨抜きにする「改憲」を、
特に大臣などの権力者に対して
厳重に禁じているのである。
これは、
ナチスが行なった数々の非人道的犯罪行為を思えば
当然のことであるだろう。

憲政否認の大臣はただちに辞職しなければならない。
日本国憲法による憲政を否認する者に、
日本国憲法下で大臣をやる資格はないのである。
私は一人の日本国民として、
麻生副総理の大臣辞任を強く求めるものである。
麻生副総理が自ら職を辞さないならば、
安倍総理は麻生副総理を
きちんと辞めさせるべきである。

【参考記事】
批判は事実に基づいて行なって


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by imadegawatuusin | 2013-08-02 10:37 | 政治

(2013年9月6日掲載)

エジプト初の民主的選挙で大統領に選ばれたムルシ氏を
同国の軍部が拘束して政権を奪った政変について、
アメリカ国務省はクーデターと認定しないことにした。
アメリカ国務省の報道官は、
「そうした決定をすることは米国の国益にならない」と
説明したという。

アメリカの対外援助法は、
民主的な政府がクーデターで倒された国に対しては
援助を見合わせるよう定めている。
今回の事態をクーデターと認定した場合、
エジプト軍への軍事援助など
総額15億5千万ドルもの援助が凍結される。
そうなると、
軍事協力を通じてエジプト軍への影響力を強めることで
アメリカの友好国であるイスラエルの防衛を図ってきた
外交戦略に影響が出るため
判断を避けたのだと見られている(朝日新聞7月28日)。

確かにムルシ政権は、
稚拙な政権運営や経済立て直しの失敗などで
エジプト国民からの支持が低下していたとも
言われている。
イスラム主義を背景とする
ムルシ氏の「自由公正党」や
その母体である「ムスリム同胞団」が
政治権力を握る事態を
好ましくないとする考えも
理解できないわけではない。
しかしだからと言って、
エジプト初の民主的選挙で選ばれた政府を
軍部が武力で打倒して政権を奪う事態を
容認していいということにはならない。

民主的手続きを経て選出された政権が
直近の民意を反映しない場合の正当な対抗手段は、
署名活動や集会・デモ・ゼネラルストライキ・
不服従運動などの
平和的かつ大衆的な圧力で
辞任に追い込むことくらいだろう。
また宗教勢力が
民主的手続きを経て政権を取ること自体が
いけないのだということになれば、
宗教的な政治の実現を求める人々は
暴力的な政変に訴えるしか方法がなくなる。
民主主義は、
民主的な手続きに参加して政治を動かしていこうとする
あらゆる勢力に開かれたものでなければならない。
民主的システムがあらゆる勢力に開かれてこそ
社会は安定するのである。

イラク戦争などでアメリカは、
「民主化」を理由に
他国への侵略攻撃を正当化してきた経緯がある。
そのアメリカが「国益」を理由に、
こともあろうかクーデターを起こした軍部に
莫大な軍事援助を与え続けるのは
ご都合主義に他ならない。
軍による民主的政権の転覆は
どう言いつくろってもクーデターである。
自国の都合でクーデターと認定したり
しなかったりするのでは
二重基準のそしりを免れない。

アメリカはエジプト軍への軍事援助を
ただちに凍結するべきだ。
日本もエジプトへの援助の見直しが必要だ。
同志社大学大学院の内藤正典教授は、
「新博物館の建設など、
 不要不急のハコ物援助については、
 暴力で民主化を破壊した国には、
 断固として認めない姿勢を示す必要がある」と
指摘する(朝日新聞7月31日)。
自由と民主主義とを
本当に世界に広げてゆくのに大切なのは、
イラク戦争のような武力攻撃への追随ではなく、
今回のクーデターのような民主主義の危機に際して
筋の通った対応を地道にきちんと取ることであろう。

【関連記事】
エジプト治安当局の人民虐殺に抗議
ケリー氏のクーデター肯定発言を憂慮
エジプト新博物館援助は凍結を


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by imadegawatuusin | 2013-08-01 17:04 | 国際